公平会のクアルコム処罰事件、双方が訴訟上で和解

J180810Y4 2018年9月号(J229)
    公平交易委員会(以下「公平会」、日本の公正取引委員会に相当)はニュースリリースにて、公平会と米クアルコム社(Qualcomm Incorporated)は公平会2017年10月20日付け公処字第106094号処分の特許権行使に係る紛争(以下「原処分」)について、知的財産裁判所の合議法廷における和解を試みた結果、法に基づき訴訟上の和解が成立したと発表した。
    和解の内容によると、クアルコム社は台湾の携帯電話メーカー及びチップサプライヤに対して(和解内容の執行を)承諾するとともに、公平会への執行情報を報告する義務を負うという。またクアルコムはすでに納付した27億3千万新台湾ドルの課徴金については争わないことに同意するとともに、台湾で5ヵ年産業投資計画を推進することを承諾した。説明は次のとおり。
    一、公平会によると、クアルコムは移動体通信標準必須特許(以下「移動体通信SEP」)について台湾携帯電話メーカーに実施を許諾する承諾、及びクアルコムが移動体通信SEPを台湾チップサプライヤに許諾する場合のその他の承諾を遵守し執行するよう同意しており、これは原処分におけるクアルコムの移動体通信SEP許諾に対する反競争の疑いを解消するのに十分であるという。
1.善意を以って許諾条文について改めて協議する:
許諾される台湾携帯電話メーカーがクアルコムとの特許実施許諾契約において同意を迫られた不合理な許諾条文があると考える場合、クアルコムは善意を以って改めて協議し、再協議の条文の紛争については、許諾される台湾携帯電話メーカーとクアルコムが別途にその他の、例えば裁判所又は仲裁などの中立的な紛争解決手続きをとるよう協議することができる。
2.協議期間にチップの供給を拒絶しない:
再協議又は紛争解決手続きの期間において、許諾される台湾携帯電話メーカーがその供給及び許諾契約の義務を履行し続けるならば、善意を以って改めて協議し、クアルコムはモバイルモデム向けチップの該メーカーに対する供給を中止したり、中止すると脅したりしないことに同意する。
3.移動体通信SEP許諾に係る非差別的待遇:
クアルコムはその移動体通信SEP許諾プランについて、条件が相応である台湾携帯電話メーカーと台湾以外の携帯電話メーカーに対して非差別的待遇を与えることを承諾する。
4.台湾チップサプライヤに対する待遇:
クアルコムは、台湾チップサプライヤの要求により契約を提供することに同意した。該契約において、クアルコムが移動体通信SEP請求項についてチップサプライヤに対して事前に公平、合理的かつ非差別的(FRAND)の許諾条項を提出しなかったとき、クアルコムは移動体通信SEP請求項について該チップサプライヤを相手取り訴訟を一切提起してはならないことを約定する。
5.今後は100%調達の割戻約定を結ばず:
クアルコムは、それとチップ関連クライアントとの間の供給契約において、クライアントがモバイルモデム用チップをすべてクアルコムから調達することに同意することを条件とするロイヤリティ割戻の約定を今後は一切結ばないこと、及び該チップ関連クライアントがすべてのチップ調達のうち一定の割合でクアルコムから調達することを契約におけるロイヤリティ割引又はロイヤリティ割戻の約定の条件としないことを承諾した。
6.公平会に定期的に執行状況を報告:
クアルコムは5年間にわたり6ヵ月毎に(和解内容の執行の)承諾に関する執行状況を公平会に報告することを承諾した。クアルコムが台湾携帯電話メーカー又は台湾チップサプライヤと契約を変更する又は新規に結ぶ場合もそれらの契約締結後30日以内に公平会に報告する。
    原処分ではクアルコムに対して処分後に善意を以って信義誠実及び平等互恵の原則に基づき、チップに関する競合相手及び携帯電話メーカーと協議するとともに、反競争が疑われる行為を中止するよう要求し、そしてクアルコムが訴訟上の和解で承諾を提出しており、公平会は原処分の自由公正な競争を維持するという規制の目的を達成するために十分であると認めた。
    二、公平会によると、原処分で課した234億新台湾ドルの課徴金のうち、クアルコムはすでに分割で納付している27億3千万新台湾ドルについて争わないことに同意するとともに、5ヵ年産業投資計画で台湾に対して投資と提携を行うことを承諾したという。該投資計画には5G関連の提携、新市場の開拓、スタートアップ企業や大学との提携が含まれ、さらに台湾に運営製造拠点であるCOMET(Center for Operations, Manufacturing Engineering and Testing)を設立する。クアルコムは公平会や経済部、科技部等の関連機関と密接に協力して上記計画及び投資を実現していく。公平会はこの産業投資計画及びそれが承諾する投資は台湾の半導体、移動体通信及び5G技術の発展等において経済全体の利益と公共の利益を高めるのに役立つと認めた。
    これにより、本件について総合的に斟酌した後、公平会は2018年8月8日第1396回委員会会議にて(和解案を)可決し、2018年8月9日に知的財産裁判所にてクアルコムと公平会は公共の利益に基づく訴訟上の和解を成立させ、原処分は和解内容を以て代替され、これは公平会にとって初めてのケースとなった。公平会は本件が移動体通信産業にとってより良い競争環境を構築し、台湾の半導体、移動体通信及び5G技術の発展等の各方面にプラスの影響をもたらすことを期待している。(2018年8月)
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