台湾商標法の改正について

J991101Y2 1999年12月号(J7)

台湾国際専利法律事務所
弁護士・弁理士 林志剛
商標部部長 陳前呈
1999
12

この程、台湾知的財産局(I PO)には商標法改正の草案が完成され、改正内容は一般に公布されたので、これから公聴会、学者、代理人との意見交換等を行いながら、その内容を再修正することになっている。改正商標法の施行日程については、目下知的財産局にて草案が出来ったところから見れば、最終の改正法案が制定する迄に時間を要し、又上級官庁である行政院の閣議決定及び国会(立法院)の承認を受ける必要があるので、短期間内に公布、施行できないであろうと思われる。尚、今回の改正法草案の背景、概要は次の通りである。

【背景】

台湾はWTOへ加盟のため、国内の知的財産権法制度の整備を整えるため、199759日に部分の商標法の改正が行なわれた。但し、国内の工商企業の経済競争が激しく、商標法改正の要請が強く求められており、且つ国際的に商標出願手続きの簡素化及び国際的調和を目的とする商標法が世界的な趨勢となり、商標制度をめぐる内外の情況が大幅に変化しつつあり、これらの情勢の変化に対応する必要性が生じている。依って、商標主務官庁となる知的財産局は今般の改正法を作成したことになる。

【改正法の概要】

1.      条項の再編成
現行の7章79条から9103条へ再編成する

2.      商標定義の拡大
実務及び国際立法の趨勢に応じて、商標という定義は商品標章及びサ-ビス標章を含むことになる。

3.      立体商標制度の導入
現行法では商標とは『文字、図形、記号、彩色の組合せ或いはこれらの結合式であって』と定義し、平面的なものに限定されたものであるが、国際的には立体商標も商標法による登録制度を以って保護することが趨勢となっていることから、今回の改正法において立体商標制度を導入した。

4.      商標使用定義の修正
商標の使用というのは、電子情報化及びインタ-ネットの発達・普及によって現行法が規定されている商標使用の定義を以って十分にカバ-することができないため、修正の必要性がある。

5.      不登録事由の統合
現行法において商標の不登録事由が各条項に分散され、それらを統合するため、改正法で一条文にまとめたことになる。

6.      著名商標の保護の強化
著名商標について出所表示機能の希釈化及び名声毀損を防ぐため、直接商標法上の措置を採ることができる。

7.      ティスクレイム制度の明文化
ティスクレイム制度は現行商標法施行細則第28に定めているが、今回の改正によって本法に移行させることになった。

8.      一出願多区分制度の採用
商標法条約及び世界諸国の立法趨勢に応じて、商品又は役務が一の区分に属するか2以上の区分に属するかにかかわらず一の出願で行うことができる。

9.      連合・防護商標制度の廃止
ストック商標の過剰、不使用商標の増大、審査処理の遅延等といった弊害を減少させ、又諸外国の商標法における連合商標制度の廃止という現状に鑑み、改正法においては連合・防護商標制度を廃止することになる。

10.  分割制度の導入
一出願多区分制度の採用に伴って、出願・登録商標の分割が認められることになる。

11.  審査官記名制度の採用
審査公告、拒絶査定を下すた時、審査官名が記入することになる。

12.  拒絶理由通知の明文化
現在審査実務において拒絶理由通知を出願人に発行されているが、改正商標法には当該制度を明文化されたものである。

13.  異議申立期間の短縮
出願人に商標権を早期に取得させるため、異議申立期間は従来の3ケ月から2ケ月と短縮されることになる。

14.  異議申立中の商標移転譲渡
異議申立された商標又は異議申立の根拠となる商標は第三者に移転譲渡となった場合、異議申立の審査を影響しないことになる。

15.  登録料金の分割納付
短ライフサイク商品に係る商標や不使用商標の整理を促すため、登録料の分割納付制度(分納制度)を導入した。

16.  更新出願において使用証明の審査を廃止
更新時における登録商標の使用チェックを廃止し、「更新登録申請」により商標権の存続期間の更新を認めることになる。

17.  移転登録によって使用許諾登記の存続
使用許諾登記をした使用権者の権利保護という観点から見れば、移転登録が当該使用許諾を影響しないものとする。

18.  使用許諾管理の強化
使用権者は使用許諾を受けたものが指定商品に明記しなければ、使用許諾登記を取消することになる。

19.  質権者の保護
質権者の同意を得ず、商標権者は第三者に再質権の設定登記が認められないことになる。

20.  商標権放棄の制限
商標権者は登録商標の指定商品の全部又は一部を放棄することができるが、使用許諾登記又は質権登記があった場合、使用権者又は質権者人の同意を得なければならないものとなる。

21.  商標権消滅規定の修正
改正法の分納制度により、第4年目の登録料を納付しなかった時、又は法人が解散された満6ケ月となった時、又は商標権者が死亡後承継人は存在せず、死亡後6ケ月となった時は商標専用権を消滅することになる。

22.  部分指定商品・役務に対する無効審判請求の追加
一出願多区分制度の導入において、第三者から部分指定商品・役務に対する無効審判請求することが認められる。

23.  除斥期間の規定
既得権の安定性及び商活動の維持を図る目的として除斥期間の検討が必要となる。

24.  審判請求における口頭弁論の導入
当事者、参加人の申請又は必要となった時、口頭弁論を行うことができる。

25.  審判請求の審決に対して直接に行政訴訟を提起することができる
審査期間を短縮させるため、当事者は商標主務官庁の審決に対して不服があった時、訴願、再訴願を経由せず、直接に行政訴訟が提起できることになる。

26.  審判請求の再審制度の採用
訴願決定には違法な点があった時、再審を提起することが認められる。

27.  「廃止」という名称の採用
現行法の「撤銷」という名称から「廃止」に修正することになる。

28.  廃止申請の利害関係人制限の排除
廃止申請には利害関係人の制限がなく、任何なる者は廃止申請を提起することができる。

29.  商標識別性喪失の明文化
商標の不当使用によって希釈されて一般名詞となったものは、他人の使用を拘束することができず、又は商標権廃止の事由を構成するものとする。

30.  商標審議委員会の導入
無効審判請求又は廃止等の審査において公正性を図るため、商標審議委員会を創設することになる。

31.  商標虚偽陳述或いは標示に関する規定の追加

32.  原産地標示保護の追加

33.  団体会員標章の修正
現行法の団体標章から団体会員標章に変更することになる。

34.  団体商標制度の明文化
団体商標とは団体がその構成員に使用をさせる商標であり、商品又は役務の出所が当該団体の構成員に係るものであることを明らかにするものである。

35.  標章不当使用態様の明文化

36.  新旧法律の適用に係る規定

37.  無効審判請求の制限

38.  電子出願の採用
具体的な方法は商標主務官庁にて定めることになる。

 

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