国内外チョコレート商標紛争勃発! HERSHEY'SがKAISER'Sを告訴するも、知的財産裁判所はHERSHEY'Sに敗訴判決

2018-10-23 2017年
■ 判決分類:公平交易法

I 国内外チョコレート商標紛争勃発! HERSHEY'SがKAISER'Sを告訴するも、知的財産裁判所はHERSHEY'Sに敗訴判決

■ ハイライト
原告(ザ・ハーシーズ・カンパニー)は次のように主張している。被告(甘百世食品工業股份有限公司)は原告の同意を得ずに凱莎粒巧克力、凱撒巧克力、凱撒白牛奶巧克力、金凱莎巧克力及び甘百世72%黑巧克力等の製品(以下「係争製品」。訳注:これらはいずれもチョコレート)を生産、販売し、係争水滴(Misc Design)商標に類似する外包装を以って、又は同時に包装上に係争Hershey's商標に類似する文字と表示方法でその商品名「KAISER'S」を表示して、その商品の出所を表彰し、関連の消費者に原告の製品であると誤認させるに至っており、明らかに原告の商標権を侵害している。また被告と原告はいずれも水滴形のチョコレートを販売し、銀紙で包み、さらに被告は水滴形のチョコレートを包装の上に印刷してその商品の表徴とし、関連の消費者に混同を生じさせており、公平交易法(訳註:不正競争防止法、独占禁止法などに相当)第22条第1項第1号規定に違反している。

上述の問題について、知的財産裁判所は次のように指摘した:
1. 両商標における誤認混同のおそれの有無を判断するには、商標識別性の強弱、商標の類否とその類似度、商品/役務の類否とその類似度、先権利者の多角化経営の状況、実際の誤認混同の事情、関連の消費者の各商標に対する熟知度、係争商標の出願人の善意の有無、その他の誤認混同の要素等を参酌して、関連の公衆、消費者に誤認混同を生じさせるおそれに至っているかを総合的に認定しなければならない。
2. 法により登録商標を取得したときは、著名な氏名、商号又は社名、商標、商品の容器、包装、外観、その他他人の商品又は役務を表示する表徴であるかに関わらず、いずれも公平交易法の保護対象ではない。
3. 被告が販売する金凱莎巧克力及び甘百世72%黑巧克力等の係争製品に使用される「KAISER'S」、「KAISER」及び水滴図形には識別性があり、係争商標(原告の商標)とは類似を構成しない。さらに被告の係争製品には数十年にわたる販売の事実が有り、関連の消費者は係争製品及びそれが使用する「KAISER'S」、「KAISER」及び水滴図形の商標を一定の程度で熟知していること、そしてそれらの商標は1977年、1978年に被告によって登録されたことがファイルに記録されている。被告が係争製品に上記表示を行うことは、自らの登録商標の組合せを使用するものであり、係争商標にただ乗り(フリーライド)しようとする悪意はなく、両商標の商品は同一の出所からのシリーズ商品であると関連の消費者が誤認するには至らない。つまり、係争製品は係争商標の商標権を侵害していない。
4.「KAISER」は被告の社名であり、それを自社の係争製品に使用することは、自己の氏名を善意で使用する行為に該当する。改正後公平交易法第22条第3項第2号により同法第1項が適用されない。いうまでもなく、「HERSHEY」と「KAISER」の外観、呼称、観念はいずれも相当に異なり、同一又は類似の商品に使用しても混同は生じない。原告の登録商標の権利は公平交易法が保障する範囲ではないこと、さらに係争製品の包装上の表徴は被告の登録商標の組合せであり、被告が正当な権利を行使した善意の行為であること、ましてや被告の商標登録は係争商標より早い上、国内の主な販路で販売され、DMが印刷され、係争製品の広告が放送されていることから、他人に誤認混同を生じさせるおそれはなく、被告に欺瞞的な又は著しく公正さを欠く行為があったとは認め難い。原告の請求には理由がなく、棄却すべきである。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】105年度民公訴字第5号
【裁判期日】2017年9月22日
【裁判事由】公平交易法に係る損害賠償等

原告 サ・ハーシーズ・カンパニー(The Hershey Company)
被告 甘百世食品工業股份有限公司(Taiwan kaiser Foods Industrial Co., Ltd)

上記当事者間における公平交易法に係る損害賠償等事件について、当裁判所は2017年8月15日に口頭弁論を終結し、次のとおり判決する。

主文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実の要約
原告は中華民国第18715号、第202127号、第1643419号、第1643420号「HERSHEY'S」商標、第1699648号(水滴)図形商標、第1433055号「HERSHEY'S KISSES BRAND AN AMERICAN ICON SINCE 1907 & Design」商標、第1594461号「HERSHEY'S KISSES」商標及び第257009号「HERSHEY'S KISSES」商標の商標権者である。
被告は1977年4月7日に「KAISER」、「KAISER'S」商標登録を出願し、相次いで第00091423号登録商標として登録された。1978年3月7日には経済部国貿局に社名(TAIWAN KAISER FOODS INDUSTRIAL CO., LTD)を登録した。
原告(ザ・ハーシーズ・カンパニー)は次のように主張している。被告(甘百世食品工業股份有限公司)は原告の同意を得ずに凱莎粒巧克力、凱撒巧克力、凱撒白牛奶巧克力、金凱莎巧克力及び甘百世72%黑巧克力等の製品(以下「係争製品」)を生産、販売し、係争水滴(Misc Design)商標に類似する外包装を以って、又は同時に包装上に係争Hershey's商標に類似する文字と表示方法でその商品名「KAISER'S」を表示して、その商品の出所を表彰し、関連の消費者に原告の製品であると誤認させるに至っており、明らかに原告の商標権を侵害している。また被告と原告はいずれも水滴形のチョコレートを販売し、銀紙で包み、さらに被告は水滴形のチョコレートを包装の上に印刷してその商品の表徴とし、関連の消費者に混同を生じさせた。原告は商標法第68条第3号、同法第69条第1項、第3項、公平交易法第22条第1項第1号、第25条、第29条、第30条及び民法第184条第1項前段、第195条第1項、公司法(会社法)第23条規定により、被告に侵害の排除、連帯での本件判決内容の新聞掲載の責任を負うよう請求する。さらに商標法第71条第2号、公平交易法第31条、民事訴訟法第244条第4項規定により、被告等に少なくとも166万新台湾ドルの損害賠償金を連帯で支払うよう請求する。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求:
1. 被告等は連帯で原告に対し166新台湾ドル及び訴状副本送達の翌日から支払い済みまで年5部の割合による金員を支払え。
2. 被告等は被疑侵害製品及び原告の第1699648号、第1433055号、第257009号、第1594461号、第18715号、第202127号、第1643419号及第1643420号商標を侵害する製品(チョコレート及びキャンディを含むがそれに限らない)の製造、販売の申し出又は販売、又はその他上記商標権を侵害する或いは公平交易法に違反する行為を一切してはならない。
3. 被告等は連帯で本件の商標権侵害の認定に関する原告勝訴確定判決書の当事者欄、事由欄、主文欄の内容を、5ポイントの字体で中国時報、自由時報、蘋果日報にそれぞれ一日掲載しなければならず、費用は被告等が連帯で負担する。
(二)被告の請求:
      原告の訴えを棄却する。

三 本件の争点
(一)係争製品は係争「HERSHEY'S」商標と同じ又は類似するもの使用しているのか。
(二)係争水滴形チョコレート製品の形状及び包装は係争商標を侵害しているのか。
(三)係争製品は、公平交易法改正前に原告の商標、社名、商品容器、包装、外観を以って、並びに現行公平交易法施行後に原告の社名、商品容器、包装、外観を以って商品を提供し、改正前後の公平交易法第22条第1項第1号及び現行公平交易法第25条の規定に違反しているのか。
(四)前項の状況には被告が自らの登録商標を使用することが含まれるのか。

四 判決理由の要約
(一)係争製品は係争「HERSHEY'S」商標と同じ又は類似するもの使用していない:
係争製品は原告が主張するように、「KAISER'S」、「KAISER」でその製品が表彰されており、係争「HERSHEY'S」商標と比べると、いずれもアルファベット大文字で構成され、その中の「KAISER'S」と係争「HERSHEY'S」商標とは「'S」の方式を採用している。しかしながら「'S」は「の(商品)」という意味であり、商品を説明する性質があり、英語ではよく用いられる表現方法で、識別性を有さない。かつ「KAISER'S」、「KAISER」の頭文字である「K」は右側のラインが「H」のような直線ではなく、左側へ陥没し、「K」と「H」とを区別する主な特徴を呈している。また「KAISER'S」、「KAISER」と係争「HERSHEY'S」商標とは、組み合わされたアルファベットが異なり、排列順序にも違いが有り、両者の外観には相当な違いが有り、その発音(呼称)、概念(観念)も全く異なる。かつ係争「HERSHEY'S」商標はシンプルな黒のアルファベット大文字であり、係争製品上の「KAISER'S」(濃い茶色で局部が白抜き)、「KAISER」(銀白色)の配色とも極めて大きな違いがあり、時間と場所を異にして隔離的かつ全体的に観察したとき、両者が異なると区別できるため、類似を構成しない。

(二)係争水滴形チョコレートの形状及び包装上の組み合わされた商標は係争商標の商標権を侵害していない:
1. 係争製品にある「KAISER'S」、「KAISER」と係争「HERSHEY'S」商標とはいずれも既有の文字ではなく独創的商標に該当し、識別性を有する。さらに前述したとおり、両者の外観、呼称、観念がいずれも異なり、類似を構成していない。いうまでもなく前記係争製品は「KAISER'S」、「KAISER」が水滴図形の中に配置されており、全体をみると、「HERSHEY'S」のシンプルで黒いアルファベットとは異なり、たとえ同じキャンディという商品に使用されても十分に識別できる。
2. さらに前記係争製品の包装上にある水滴図形には「KAISER'S」、「KAISER」が組み合わされ、それぞれ濃い茶色、薄い茶色を水滴の色としている。一方、係争水滴商標は「HERSHEY'S」と「KISSES」のアルファベットを組み合わせたもので、配色されていない。つまり前述のとおりに、両者の文字、図形はいずれも類似しておらず、両者の文字と図形との結合体はさらにそれらの違いが明らかで、類似商標には該当しない。
3. 係争製品で使用される「KAISER'S」、「KAISER」、及び水滴図形は、いずれも被告が所有する登録商標であり、「KAISER'S」商標は1977年4月7日に出願、同年9月1日に登録されたこと、水滴図形は同年8月に出願され、1978年2月1日に登録されたことがファイルに記録されている。そして被告会社は1978年3月に設立が登記され、係争製品の販売の事実も今まで数十年にわたることが記録から確認でき、関連の消費者に認知されるのに十分である。一方、係争水滴商標はそれぞれ1984年、2010年、2013年、2015年に台湾で登録され、係争製品に使用されている水滴図形商標よりも遅い。「HERSHEY'S」は1964年10月にわが国で登録されているが、明確にチョコレートでの使用を指定したのは1983年1月10日に登録された係争「HERSHEY'S」商標である。原告が提出した係争商標商品の販売資料には期日、その販売期間、数量等の状況が記載されておらず不明である。さらに係争商標がフォーブスの「世界で最も価値あるブランド」ランキングで99位に格付けされたこと、海外市場調査等の資料はいずれも海外メディアの報道又は資料であり、そこで挙げられているテレビチャンネルは国内では放映されておらず、それらが係争商標の商品の海外販売が事実であることを証明できたとしても、原告が主張するようにチョコレートの関連消費者である主婦、学生、子供等が容易に接触できるものではなく、国内消費者に熟知される依拠とすることはできない。
4. 以上をまとめると、係争製品に使用される「KAISER'S」、「KAISER」及び水滴図形は識別性を有し、また係争商標とは類似を構成しない。さらに係争製品には数十年にわたる販売の事実が有り、関連の消費者は係争製品及びそれが使用する「KAISER'S」、「KAISER」及び水滴図形の商標を一定の程度で熟知していること、そしてそれらの商標は1977年、1978年に被告によって登録されたことがファイルに記録されている。被告が係争製品に上記表示を行うことは、自らの登録商標の組合せを使用するものであり、係争商標にただ乗り(フリーライド)しようとする悪意はなく、関連の消費者に両商標の商品が同一の出所からのシリーズ商品であると誤認させる、又は両商標の使用者の間に関連企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在すると誤認させることで、誤認混同を生じさせるおそれには至らない。つまり、係争製品は係争商標の商標権を侵害していない。

(三)係争製品は改正前公平交易法第20条第1項第1号及び改正後同法第22条第1項第1号、第25条の規定に違反していない:
1. 係争製品は改正前公平交易法第20条第1項第1号の規定に違反していない:
原告は係争商標、社名及びチョコレート製品の外包装がいかに関連の事業者又は消費者の多くに周知されていたかについて依拠に欠け、関連の事業者又は消費者に誤認混同を生じさせるおそれに至るには十分ではなく、改正前公平交易法第20条第1項第1号には該当しない。ましてや「KAISER」は被告の社名の主要部分であり、係争製品に「KAISER」、「KAISER'S」を使用するのは自社名を使用する善意の行為であり、同法第2条第3号規定により、改正前公平交易法第20条第1項第1号規定を適用しない。水滴形チョコレートの外観に至っては、係争製品が銀色の錫箔で包装されており、原告の水滴形チョコレート(原告が提出した証拠を参照)が金色の錫箔で包装されているのとは違いがある。かつ両者の水滴形状については係争製品が金型への注入で形成するものであり、異なっている。ましてや両者の水滴形チョコレートはばら売りの商品ではなく、いずれも区別できる異なる商標を外包装又は箱に表示しており、関連の事業者又は消費者に誤認混同を生じさせるおそれには至らない。
2. 係争製品は改正後即ち現行の公正交易法第22条第1項第1号の規定に違反していない:
(1)その立法趣旨は「本条で保護する表徴が登録商標であるならば、商標法の関連規定を適用すべきであり、本法で重複して保護せず、明確にするため、第2項を新設する」ことであり、法により登録商標を取得したときは、著名な氏名、商号又は社名、商標、商品の容器、包装、外観、その他他人の商品又は役務を表示する表徴であるかに関わらず、いずれも公平交易法の保護対象ではない。
(2)原告社名の主要部分である「HERSHEY」はそれが所有する登録商標「HERSHEY」と完全に同じである。ただし「KAISER」は被告の社名であり、それは自社の係争製品に使用することは、自己の氏名を善意で使用する行為に該当する。改正後公平交易法第22条第3項第2号の「自己の氏名を善意で使用し、または当該氏名が付いた商品もしくは役務を販売、運送、輸出または輸入すること」は同法第1項が適用されない。いうまでもなく、「HERSHEY」と「KAISER」の外観、呼称、観念はいずれも相当に異なり、同一又は類似の商品に使用しても混同は生じない。
3. 係争製品は公正交易法第25条に定める事情を有しない:
原告の登録商標の権利は公平交易法が保障する範囲ではないこと、さらに係争製品の包装上の表徴は被告の登録商標の組合せであり、被告が正当な権利を行使した善意の行為であること、ましてや被告の商標登録は係争商標より早い上、国内の主な販路で販売され、DMが印刷され、係争製品の広告が放送されていることから、他人に誤認混同を生じさせるおそれはなく、被告が欺瞞的な又は著しく公正さを欠く行為があったとは認め難い。

(四)係争製品の上記公平交易法に違反する事情の有無に、被告が登録商標を使用することが含まれるのか:
係争製品には上記公平交易法に違反する事情がなく、原告は係争商標、水滴製品の外観が関連の事業者又は消費者に広く認知されている又は著名であることについて挙証できないため、商品の混同には至らない。さらに係争商標が改正後公平交易法の保護対象ではない。また被告が自社名を善意で使用することは、不正競争からは除外され、被告が自社の登録商標を使用することとは関わりがない。ましてや被告はその上記登録商標を、それらの商標が使用を指定するチョコレート上に同時に使用しており、商標法が許さないものではなく、被告が自らの登録商標を使用することは正当な権利の行使であり、欺瞞的な又は著しく公正さを欠く事情がない。その使用状況がその登録商標と一致し、同一性を有しており、被告が自らの登録商標を使用することに対して欺瞞的な又は著しく公正さを欠く結果はなく、影響を生じない。

(五)以上の次第で、係争製品が使用する商標と係争商標とは類似を構成せず、さらに係争製品には改正前公平交易法第20条第1項第1号及び改正後同法第22条第1項第1号、第25条に規定される事情がなく、原告が法により本件訴訟を提起したことに根拠はなく、訴状の請求には理由がなく、棄却すべきである。

2017年9月22日
知的財産裁判所第三法廷
裁判官 魏玉英
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