共同経営の届出せず過料900万新台湾ドルに処せられた銭櫃と好楽迪が敗訴

2016-08-29 2015年
■ 判決分類:公平交易法

I 共同経営の届出せず過料900万新台湾ドルに処せられた銭櫃と好楽迪が敗訴

■ ハイライト
台湾カラオケボックス業界の両雄である銭櫃企業股份有限公司(Cashbox Partyworld Co., Ltd.、以下「銭櫃公司」)と好楽迪股份有限公司(Holiday Co., Ltd.、以下「好楽迪公司」)は、公平交易委員会(訳注:日本の公正取引委員会に相当)から2012年、2013年に共同経営行為があったにも関わらず法に基づき届出を行っていなかったと認定された。同委員会は公平交易法(訳注:日本の独占禁止法、不正競争防止法等に相当)違反により昨年(2014年)銭櫃公司に対して500万新台湾ドル、好楽迪公司に対して400万新台湾ドルの過料に処した。両社はこれを不服として行政訴訟を提起したが、台北高等行政裁判所は処罰は合法であると認定し、両社に敗訴の判決を下したため、両社は900万新台湾ドルの過料を支払わなければならない。全案はさらに上訴できる。

同じ従業員が両社の調達を担当
本件は公平交易委員会が業界関係者から銭櫃公司と好楽迪公司が隠れて結合(共同経営)を行っているとの告発を受けたことにより、同委員会が調査したところ、2012年、2013年に両社は共同で本社オフィスを賃借し、両社の管理処採購部(訳注:調達担当部門)を好楽迪公司内に設置し、同じ従業員が両社の経営に使用する設備と物品の調達を担当していたことが分った。
さらに両社がそれぞれ独立の事業を統一管理関係に統合し、両社の内部ネットワークや電話の相互接続、交渉業務及び相互の店舗業務の連結を行ったことは「経常的な共同経営行為」であり、公平交易法に規定される結合の態様に該当するにも拘わらず、法により届出を行っていなかった。

結合後の市場シェアは1/3超
公平交易委員会は両社がかつてカスタマーセンター、コンピュータ視聴データ等の業務を共同経営したが、法により結合の届出を行わずに処分されたことがあった。今回も経常的な共同経営行為により両社に対して3ヵ月以内の改善を命じたほか、昨年(2014年)4月には銭櫃公司、好楽迪公司に対してそれぞれ500万新台湾ドル、400万新台湾ドルという重い過料に処した。しかしながら両社はこれを不服として、行政訴訟を提起した。
台北高等行政裁判所は、2012年「視聴及視唱業」(訳注:依行政院主計処の業種区分定義によると、視聴やカラオケの場所と設備を提供する業種を指す。以下「視聴・カラオケ業」という)売上総額から計算すると、銭櫃公司と好楽迪公司の子会社を含む売上高はそれぞれ40億新台湾ドルと36億新台湾ドルで、国内業者として1位、2位を占めていたが、両社は共同経営行為に係わり、両社が結合した後、市場占有率が1/3超となり、結合届出の基準に達したにも拘らず、法により届出をしていなかったため、公平交易委員会が両社に計900万新台湾ドルの過料に処したことに不当なところはないと認定し、両社に敗訴の判決を下した(2015年7月10日 中国時報 A6面)

II 判決内容の要約

台北高等行政裁判所判決
【裁判番号】103年度訴字第1700号
【裁判期日】2015年7月8日
【裁判事由】公平交易法

原告 銭櫃企業股份有限公司(Cashbox Partyworld Co., Ltd.)
原告 好楽迪股份有限公司(Holiday Co., Ltd.)
被告 公平交易委員会

上記当事者間における公平交易法事件について、原告は行政院2014年9月10日院台訴字第1030146103号訴願決定を不服として行政訴訟を提起し、本裁判所は次のとおり判決する。

主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実要約
被告は告発の調査結果に基づき、原告銭櫃企業股份有限公司(以下「銭櫃公司」)と原告好楽迪股份有限公司(以下「好楽迪公司」)が経常的な共同経営を行っており、行為当時の(即ち2015 年2 月4 日改正以前の)公平交易法第6条第1項第4号に定める結合の型態に該当し、同法第11条第1項第1号の届出の基準に達しており、また同法第11条の1の適用除外の状況もなく、結合を届け出るべきにも拘らず届出を行わなかったため、行為当時公平交易法第11条條第1項規定に違反しており、同法第13条第1項及び第40条第1項の規定により2014年4月28日公処字第103051号処分書(以下「原処分」)を以って原処分送達翌日から3ヵ月以内に必要な改善を為すよう命じるとともに、原告銭櫃公司と好楽迪公司をそれぞれ500万新台湾ドル及び400万新台湾ドルの過料に処した。原告はこれを不服として行政訴願を提起したが棄却されたため本件行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求:訴願決定及び原処分を取り消す。
(二)被告の答弁:原告の請求を棄却する。

三 本件の争点
被告は原告が経常的に共同経営を行い、行為当時公平交易法第6条第1項第4号の結合形態に該当しており、同法第11条第1項第1号に基づいて結合を届け出るべきにも拘らず届出を行わなかったため、原処分を以って原告に期限内に必要な改善を命じ、原告銭櫃公司と好楽迪公司にそれぞれ500万新台湾ドル及び400万新台湾ドルの過料に処したことは、違法なのか。
(一)原告の主張理由:省略;判決理由の説明を参照。
(二)被告の答弁理由:省略;判決理由の説明を参照。

四 判決理由の要約
(一)公平交易法が事業結合を管制する目的は、事業者が他の事業者と結合を形成してその市場における支配力を強化して、当該関連市場に競争制限という不利な影響をもたらすことを監督及び回避するためであり、よって事業者の合併又はその他の方法で実質的に制御する従属関係の状況に達したときはいずれも適用対象となる。また事業者がその他の事業者と特定の業務を共同経営して、その結果、複数の事業者が当該特定業務について経済的一体性を形成するならば、これは単一事業者が複数の事業者の経営行為を制御、支配することと同じであり、行為当時の公平交易法第6条第1項第4号に「経常的な共同経営」は企業結合の様態の一つであると規定されており、経常的な共同経営の状況の有無については、個別の状況をみて具体的に認定すべきである。

(二)原告2社には行為当時の公平交易法第6 条第1項第4号に定められる経常的な共同経営の状況があった:
原告2社は元来競合する事業者であり、それぞれ経営方針を決定すべきであるが、原告2社は忠孝東路4、5階を賃借してオフィスとすることを共同で決定し、元来のオフィスの賃借の解約、立会い検査、新住所への移転等の事項については同じスタッフが処理した。両者の営業に必要な固定電話及びインターネット等の設備も同じスタッフが取付けの申請を担当した。原告好楽迪公司は原告銭櫃公司に予約専用電話の通信費用を支払っている。さらに原告2社の従業員は同じオフィスにて、両社の文書の受信/配信、従業員の福利厚生、物品の調達等の業務を同時に処理していた。原告銭櫃公司は、原告好楽迪公司と運営コスト節減のために内部統合を行い、原告2社は業務上リソースを共に享受できたとはばかることなく述べている。前述の経営態様は明らかに企業経営及び同業者との競争における常態に違背しており、便宜的に経営管理を統一する目的以外に合理的に説明し難い。被告はこれに基づき原告がそれぞれ独立した事業を統一指揮管理、共同運営の関係に統合したと認定しており、これらに経常的な共同の事実があったことを十分に証明でき、一般的経験則から逸脱していない。原告2社はオフィスの入り口を分け、それぞれ受付担当者を置いており、被告が原告銭櫃公司の営業処を調べることなく、2社は経済的単一体に達しており経常的な共同経営があったと認定したことには、証拠資料に関する倫理法則と明確性の原則に違背している云々とする原告の主張は採用できない。

 原告はさらに、原告2社は異なる会社であり、財務諸表はそれぞれ会計士による監査・証明が行われており、従業員の労働保険、健康保険、給与もそれぞれ独立しており、店舗の物品調達については、原告2社がそれぞれ発注・支払いを行い、調達資金の相互往来はなく、共同経営の事実はない云々と主張している。ただし調べたところ、行為当時の公平交易法第6条第1項第4号の経常的な共同経営は、同条項第1号に定める複数の事業者の合併とは異なる結合の様態に該当する。原告2社は異なる会社であり、それらは租税、労働保険・健康保険及び労働基準法等の法規に適合するよう、それぞれ会計士による財務諸表の監査・証明が行われており、それぞれ従業員と労働契約を結び、給与を支給し、労働保険・健康保険に加入する手続きを行っていることから、それら2社が合併していないことは説明でき、行為当時公平交易法第6条第1項第1号の結合形態には該当しないことはいえる。しかしながら、被告が調べたところ、前述のように2社は内部の運営コストを節減するため、オフィスの賃借、営業に必要な設備の取付け、物品の調達等の営業に係る事項を一緒に行い、経常的に人的資源とオフィス空間を共用していた状況等から、同条項第4号の「経常的な共同経営」に該当する。

(三)原告2社の全国視聴・カラオケサービス市場におけるシェアは、併せると1/3超となり、行為当時の公平交易法第11条第1項第1号に定める結合を届け出るべき基準に達している:

1.行為当時の公平交易法では「市場」に対して「……でいう特定市場とは、事業者が一定の商品又は役務につき競争する区域又は範囲をいう。」と定義されている。事業者結合の関連市場は、商品市場と地理的市場の二方面から画定すべきであり、いわゆる商品市場は機能、特性、用途又は価格の条件により、高度な需要を有する又は代替性のある商品又は役務から構成される範囲であり、地理的市場とは、結合により提供される特定の商品又は役務について、取引相手方がその他の取引対象を容易に選択又は切替できる区域の範囲を指す。

2.原処分では本件の商品市場を「視聴・カラオケサービス市場」と画定し、それに属する事業者は視聴・カラオケの設備及び場所を提供することを主なサービスとする事業者である。レストラン、ホテル、モーテル、蝦釣堀等の營業場所はいずれもそれ自身の特定なサービス内容(飲食、宿泊、蝦釣り)を有するため、たとえ視聴・カラオケサービスを同時に提供しても、付帯的な性質であり、原告のようにカラオケ設備、カラオケテープ、楽曲、営業空間を提供するトータルなサービスを主な内容とするものとは明らかに異なる。被告がそれらの視聴・カラオケの場所と設備を付帯的に提供している業種を本件商品市場に組み入れていないことについて調べたところ、法にあわないところはない。次に、原告2社が経営する区域はいずれも全国であり、原告2社が視聴・カラオケサービスを提供し競争する地理的区域は全国であるため、被告が本件の地理的市場を全国と画定したこともまた妥当である。

3.被告は最高行政裁判所103年度判字第195号判決趣旨に基づいて市場調査と試験を行い、直ちに本件の関連商品市場を視聴・カラオケの設備及び場所の提供を主なサービスとする業者に限定しており、レストラン、ホテル、モーテル、蝦釣堀等の営業場所に視聴・カラオケ設備を増設している複合経営業者を排除し、画定の標準が狭すぎる云々と原告は主張しているが、調べたところ、原告の商品はカラオケテープ、楽曲、営業空間等を提供するトータルなサービスを主、飲食等の付属するサービスを従とすることを特性としている。被告はこの特色の主な商品の代替可能性の程度を以って市場を画定していることは、商品市場の画定の要旨に合致しており、法に合わないところはない。被告が上述の主に飲食、宿泊又はカラオケ以外の娯楽サービスを主に提供し、視聴・カラオケ設備を付帯的に提供する業者を本件商品市場に組み入れておらず、商品市場の画定が狭すぎる云々と原告は主張しているが、採用し難い。最高行政裁判所103年度判字第195号判決において、被告がいかなる市場画定を行う時も、事前に事実証拠調査を行う必要があり、さもなければ違法となるとは述べられていない。上述の最高行政裁判所判決の一部の内容を拾い上げて、被告は本件商品市場の画定前に市場で事実証拠の調査を行っていないので違法であるとする原告の主張は、採用するに足りない。

4.さらに公平交易法施行細則第4条には「事業者の市場占有率を算出するときは、先ず当該事業者並びに当該特定市場の生産、販売、在庫、輸入及び輸出額(量)の資料を参酌しなければならない。市場占有率の算出に必要な資料は、中央主務機関の調査で得られた資料又はその他の政府機関に記載された資料を基準とすることができる。」と規定されている。調べたところ、以下のとおりであった。

(1)被告はそれぞれ原告銭櫃公司とその関連企業の2012年度売上総額4,081,751,000新台湾ドル、並びに原告好楽迪公司とその関係企業の2012年度売上総額3,680,120,000新台湾ドルを分子とし、同年度の中華民国税務業種標準分類「9322視聴・カラオケ業」に属する5,201社の視聴・カラオケサービス業者の売上総額17,219,889,408新台湾ドルを分母として、2012年原告銭櫃公司の市場占有率を23.70%、好楽迪公司を21.37%と算出して、それにより両者の合計市場シェアは1/3超となるとしており、前述の公平交易法施行細則第4条規定に合わないところはない。原告は被告がその関連企業の売上高をそれら2社の市場占有率に入れていることは不当だと主張しているが、それぞれ原告2社それぞれの2012年度売上高(銭櫃公司:3,346,053,671新台湾ドル、好楽迪公司:3,150,994,854新台湾ドル)で当該年度視聴・カラオケサービス市場における占有率を算出しても、市場占有率はそれぞれ19.43%と18.30%、合計37.73%となり、尚1/3を超えているため、原告に有利な認定とはならない。
(2)また原告は以下のように主張している:被告は税務業種標準分類を視聴・カラオケサービス市場売上高算出の基準としており、当該標準分類細類9323特殊娯楽業の下位にある「9323-18特種カラオケボックス・視聴センター」、「9323-14カラオケホール」、「9323-13居酒屋、バー」(飲み屋)及び該標準分類の「5510-12旅館」等の事業者の売上高を計算に入れておらず、また複合経営業者の視聴・カラオケサービス市場における売上高も計算に入れていない。また原告2社が提供する料理・飲料及びアルコール飲料の売上高も控除されていない。これにより原告の市場占有率及び市場での影響力を高く評価しすぎており、理由不備及び証拠未調査という誤りがある云々。ただし調べたところ「9323-18特種カラオケボックス・視聴センター」、「9323-14カラオケホール」、「9323-13居酒屋、バー」(飲み屋)及び宿泊サービスを主に提供する同標準分類「5510-12旅館」等事業者はいずれも視聴・カラオケの設備及び場所の提供を主なサービスとはしておらず、被告が市場占有率を算出するとき、上記事業者の売上高を計算に入れなかったことは、その市場画定方法と一致し、何ら誤りもない。また消費者が視聴・カラオケサービスを受けることに着目し、原告の営業場所に出向いて消費するが、一定額の食べ物、飲み物を消費する必要があり、これらの売上高を原告の売上総額から切り離す必要はなく、また適宜でもない。原告はさらに食べ物と飲み物の売上高を控除すべきであり、それによって正確にそれらの市場占有率を算出できると主張しているが、採用するに足りない。
(3)さらに原告は以下のように主張している:それらが提出した2011年日本カラオケ白書に基づき、カラオケ設備を設置した場所の設置台数で視聴・カラオケサービス市場の売上総額を計算するか、又は地方娯楽税課税基準を参考にするか、又は原告2社が著作権仲介団体に支払ったロイヤリティを調査して、該団体が受け取ったロイヤリティ全体に占める割合からそれら視聴・カラオケサービス市場における占有率を算出するかのいずれに拘わらず、それらの市場影響力が実際より高く評価されたため、誤りに該当する云々。しかしながら前述したように、本件商品市場は「視聴・カラオケサービスの提供を主な業務」とする市場であり、原告は2011年日本カラオケ白書の記載内容に照らして、全国の営業用に供された視聴・カラオケ設備の数量をもって市場占有率を算出し、同じ商品市場に属さない視聴・カラオケサービスを主な業務としない事業者が視聴・カラオケ設備を付設した場合も市場占有率の計算の基礎に含めるべきであると主張しており、前述商品市場の画定基準には合わない。次に調べたところ、著作権使用者が著作権仲介団体に納付するロイヤリティは、性質上著作権使用の報酬であり、楽曲著作権の利用形態は極めて多く、劇中のBGMとして使用したり、店舗で公開放送に提供したり、消費者が料金を支払いインターネットで聞くのに供したりする等々はいずれもこれに属し、視聴・カラオケサービスを提供するだけではない。よって著作権仲介団体が徴収するロイヤリティだけで納付者が著作権を使用する形態、それらが提供する商品又は役務の特性、内容、それらの間に代替性があるかどうかを知ることはできず、さらにそれに基づいて本件市場占有率の計算を正確に行うことはできない。原告は2社が著作権仲介団体に納付したロイヤリティの当該団体が徴収したロイヤリティに占める比率で、それらの視聴・カラオケサービス市場占有率を算出すべきだと主張しているが、採用することはできない。さらに、娯楽税法第5条には最高税率のみ規定され、同法第6条で直轄市及び県市政府に地方の実情に合わせて娯楽税徴収率をそれぞれ規定することを授権しているため、全国県市の娯楽税税率はそれぞれ異なり、娯楽事業者が課徴される娯楽税額は当該事業の実質的な経営状況を十分に反映できず、従って娯楽税の課税総額から視聴・カラオケサービスを主な業務とする商品市場における原告の市場シェアを正確に推算できない。原告が提出した「2012年娯楽税統計分析」は経済部統計処が2012年度の娯楽税課徴状況を分析した報告であり、その中に記載されている2012年度娯楽税課徴認定を受けた視聴・カラオケ業者は7,496社であり、以上の説明のとおり本件商品市場に含まれない飲食、宿泊、又はカラオケ以外を主なサービスとし、カラオケ設備を付設する事業者が含まれており、よって同年度中華民国税務業種標準基準の「視聴・カラオケ」者5,201社とは根拠となる計算の基準が異なるため、両者を混同して一緒に論じることはできない。原告は、後者の計算の業者数が前者より2,295社少ないため、被告が後者に基づいて算出したそれらの視聴・カラオケサービス市場における占有率は視聴・カラオケサービス市場の現状とは大きな隔たりがあり、誤りがある云々と主張しているが、採用できない。
(4)さらに前記公平交易法施行細則第4条には、被告の市場占有率を算出する時、中央主務機関の調査で得られた資料又はその他の政府機関に記載された資料を基準とすることができると規定されており、被告に必ず消費者に対するアンケートや意見調査を行い、さらには専門機関の鑑定へ送ることを強制していない。原告は本裁判所に台灣尼爾森行銷研究顧問股份有限公司(The Nielsen Company Taiwan Ltd.)に鑑定を嘱託するよう請求したが、その必要はないことをここに併せて説明しておく。

(四)被告が行為当時の公平交易法第13条第1項及び第40条第1項規定により原告に期限付きで改善するよう命じるとともに原告に過料に処したことに誤りはない:

1.行為当時の公平交易法第13条第1項及び第40条第1項には、第11条第1項の規定に違反する結合行為について、違反の実情に応じて必要な処分と過料に処してもよいと被告に授権することが規定されており、これは即ち法律が主務機関に裁量権の行使を授権したものであり、この行使は放任してはならず、法律優先の原則を遵守する必要があり、個別の案件の判断についても信義誠実の原則、平等原則及び比例原則等の一般的な法律原則の違背を避けなければならない。原告2社には上述の経常的な共同経営の行為があり、結合後に市場占有率は1/3超となり、結合の届出基準に達しているにも拘らず届出をしなかったため、行為当時公平交易法第11条第1項規定に違反していることは前述のとおりである。被告は原告が以前被告に対して事業者結合の届出をしたことがあることを参酌し、結合によりもたらされた競争制限の不利益は全体の経済の利益よりも大きいと認定し、前後して96年公結字第096002号決定書、97年公結字第097002号決定書及び98年公結字第098002号決定書を以ってそれらの結合を禁止しており、(それらの資料が)ファイルされている。原告2社は2007年銭育公司と銭声公司に共同出資し、それぞれ契約で原告銭櫃公司及び原告好楽迪公司のカスタマーセンターとコンピュータ視聴データの業務を銭育公司と銭声公司に委託し、原告銭櫃公司は原告好楽迪公司取締役・監査役の過半数(取締役5 席中3席、監査役3席中2席)を占め、その子会社である裕銘公司の法人代表が原告好楽迪公司の執行長職務を兼任する等の方法で、直接的、間接的に原告好楽迪公司の業務経営、執行及び人事の任免等を制御しており、被告は行為当時公平交易法第6条第1項第4号及び第5号の結合形態に一致すると認定し、かつそれらは結合により市場占有率が1/3に達しているが、同法第11条第1項規定に基づき被告に届出を行っておらず、被告は2010年3月26日に前処分を下し、原告に処分書送達の翌日から3ヵ月以内に継続中の共同経営行為を停止し、関連する人員が同時に原告等双方の取締役、監察人、執行長の職務を担当することを免じ、実質的な制御が無い状態を達成するよう命じるとともに、原告銭櫃公司及び原告好楽迪公司をそれぞれ300万新台湾ドル及び150万新台湾ドルの過料に処した。原告2社は事業者が結合により市場占有率1/3を上回る状況に対して届出義務を負うことを明らかに知っていた。しかしながら再び2012年、2013年に共同経営行為を為し、なお結合前に被告に対して届出を行わず、違法期間が1年を越えている。原告銭櫃公司と好楽迪公司の2012年度における子会社を含む売上総額はそれぞれ40億新台湾ドルと36億新台湾ドルであり、視聴・カラオケサービス市場における最大、第二の規模を持つ事業者であるため、市場に対する競争制限の懸念は極めて大きい等の事情から、原告に3ヵ月以内に必要な改善を為すよう命じるとともに、原告銭櫃公司及び好楽迪公司に対してそれぞれ500万新台湾ドル及び400万新台湾ドルの過料に処したことは、公平交易法施行細則第36条に示される各項の裁量基準に合わないところはない。裁量には法律の授権目的又は上記の一般的法律原則からの逸脱、若しくは裁量の濫用、裁量の怠惰等の状況はない。

2.原告は、原処分は被告が前処分で原告を処罰したときと同じ行為に対して再び処罰したものであり、明らかに二重処罰禁止の原則に違背している云々と主張している。ただし前述のとおり、被告が前処分を下したのは2007年であり、原告銭櫃公司には直接的、間接的に原告好楽迪公司の業務経営、執行及び人事の任免について制御していた状況があり、原告2社が共同出資して新会社を設立し、新会社が同時に2社の一部の業務経営を担当しており、経常的に共同経営を行った。原告2社はすでに行為当時公平交易法第6条第1項第4、5号の結合の形態に該当したことが認められ、それを依拠としている。これと、被告が今回、原告2社が2012年2013年に共同の利益に基づきオフィスを賃借した他、人的資源とオフィス空間、業務経営に係るインターネット、電話等の設備の申込み、物品の調達等の事項についていずれも統一指揮管理、共同運営の関係に統合しており、それらには経常的な共同経営の事実が有ると認めて原処分を行ったこととは、行為の態様が明らかに異なり、行為発生の時期も離れており、同一の行為ではないと認められる。原処分では前処分ですでに処罰されたものと同じ行為を重複して処罰しており、二重処罰禁止の原則に違背する云々とする原告の主張は採用するに足りない。

以上の次第で、本件原告の請求には理由がなく、行政訴訟法第98条第1項前段のより主文のとおり判決する。

2015年7月8日
台北高等行政裁判所第六法廷
裁判長 蕭惠芳
裁判官 陳姿岑
裁判官 鍾啓煒
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