老舗ブランド「黒人歯磨き粉」が「白人歯磨き粉」の模倣による権利侵害嫌疑を主張して行政訴訟を提起。消費者が白黒区別できるので模倣に当たらないと最高裁判所が判断。

2014-05-15 2011年

■ 判決分類:不正競争

I 老舗ブランド「黒人歯磨き粉」が「白人歯磨き粉」の模倣による権利侵害嫌疑を主張して行政訴訟を提起。消費者が白黒区別できるので模倣に当たらないと最高裁判所が判断。

■ ハイライト
長年にわたり黒人歯磨き粉が白人歯磨き粉を権利侵害として訴えてきた事件について、最高行政裁判所は不成立と判決し、消費者が両種歯磨き粉ブランドについて識別能力を有していると認定した。
歯磨き粉界の「白黒戦争」が遂に幕を下ろした。老舗ブランド「黒人歯磨き粉」を製造している好來化工公司は、嘉聯公司が製造販売している「白人歯磨き粉」に模倣による権利侵害の嫌疑があるとして行政訴訟を提起していた。十一年もの争いの末、消費者が白黒を明確に区別できるとの、最高裁判所による好來化工敗訴の判決が下され、確定した。
本来、好來化工は裁判所による判決を通じて公平取引委員会を促すことで、白人歯磨き粉の名称、パッケージが消費者に誤認混同を与えることによる期限付き是正命令、過料処分が行なわれるものと目論んでいたが思いがけず敗訴した。これにより黒人歯磨き粉、白人歯磨き粉はこれからも同じ市場で競争してゆくことになる。
黒人歯磨き粉は伝統あるブランドであり、国内の歯磨き粉市場で重要な地位を占めていたが、白人歯磨き粉の出現後は、少なからず市場を奪われ、「白黒戦争」の局面を呈していた。
好來化工は1997年公平会に対し、白人歯磨き粉の名称及び商品外観が全て当該公司製造の黒人歯磨き粉を模倣していると告発した。しかし公平会は調査を経て、違法を構成しないと認定した。好來化工がこれを不服として行政訴訟を提起した。
これを受けて裁判所も一度は公平会の認定を取消したが、公平会の審査を経て原議が維持された。好來化工が公平会の二度目の処分を不服として再度訴訟を起こしたところ、台北高等行政裁判所も白人歯磨き粉による権利侵害を認めて好來化工公司勝訴の判決を下した。
その為、公平会が不服として上訴する立場に回り、その後審理裁判所の見解が不一であったので、案件も行きつ戻りつを繰り返した。その後、最終的に好來化工の敗訴と判決された上、最高行政裁判所への上訴も棄却されたので、再度逆転することはできず、判決が確定した。
訴訟の過程では、好來化工が両公司に関する市場調査会社のレポートを提出し、消費者が黒人、白人歯磨き粉をひどく誤認混同しており、ある売場の広告チラシには「黒人、白人同じくよい」と宣伝されていたと証明した。
好來化工によれば、白人歯磨き粉は黒人歯磨き粉の商業的名誉に便乗して、その成果を搾取したので不公平競争を構成したということである。
しかし、最高行政裁判所は黒人歯磨き粉、白人歯磨き粉のパッケージ図案、構想、と全体的なデザインが異なっており、黒人歯磨き粉は帽子を被った人頭図であるのに対し、白人歯磨き粉にはこれがなく、白人のパッケージ文字は橫書きで、黒人歯磨き粉は縦書きであると指摘した。
裁判官は、消費者が異なる時間と場所で黒人、白人歯磨き粉を観察しても誤認混同をきたすことはなく、量販店が都合により同類の歯磨き粉を一緒に消費者に提供して比較購入できるようにしたが、このことを以って白人歯磨き粉が便乗したと認定することは出来ないとした。
判決では、白人歯磨き粉が1989年から96年にかけて巨額の広告費をかけて宣伝していた上に、「白人」が商標登録されてから二十年にもなり、一定の知名度があるので、黒人歯磨き粉とはそれぞれに市場を有していると指摘し、両者の名称に相対性があることを以って消費者が誤認混同すると黒人歯磨き粉が主張することはできないとした。

II 判決内容の要約

基礎データ

最高行政裁判所判決
【裁判番号】99年度行判字第28号 
【裁判期日】2010年1月21日 
【裁判事由】公平取引法

上 訴 人 好來化工股份有限公司
被 上訴 人 行政院公平取引委員会
参 加 人 嘉聯実業股份有限公司

上記当事者間における公平取引法事件につき、上訴人は2008年1月17日台北高等行政裁判所96年度訴更一字第67号判決について上訴を提起したが、本裁判所は次のように判決する。:

主  文
上訴を棄却する。
上訴審訴訟費用は上訴人の負担とする。

一 事実の要約
上訴人は1997年に参加人が製造する「白人歯磨き粉」が上訴人製造の「黒人歯磨き粉」の名称及び商品外観を模倣し、行為時の公平取引法第20条第1項第1号及び第24条の規定に違反していると告発した。案件は被上訴人の1998年4月21日付(87)公参字第8601261-009号書簡により、被告発人は行為時の公平取引法第20条第1項第1号及び第24条規定に違反していない等とされた。上訴人がこれを不服として行政訴訟を提起したところ、本裁判所89年度判字第2549号判決により再訴願決定、訴願決定及び原処分が取消された。被上訴人は再び審査を行って、2002年3月5日公参字第09100001962号書簡(以下、原処分と称す)を上訴人に返信し、本件の現有事実証拠に基づいてもやはり被告発人による「白人歯磨き粉」商品の製造販売行為が行為時の公平取引法第20条第1項第1号及び第24条規定に違反しているとは認定できないとした。上訴人はこれを不服として訴願を提起したが、棄却されたので行政訴訟を提起した。原審は参加人に被上訴人の訴訟に独立参加するよう命じ、後日次のように92年度訴字第706号判決を下した。:
「訴願決定及び原処分をともに取消す。被告(即ち本件被上訴人)は、原告(即ち本件上訴人)が参加人が製造する『白人歯磨き粉』が『黒人歯磨き粉』商品の表徴及びパッケージ外観を模倣したので公平取引法第20条第1項第1号及び第24条規定に違反したと告発した事件について、本判決の法律見解に基づき別途処分すべきである。」被上訴人はこれを不服として上訴を提起した。本裁判所96年度判字第400号判決では前審の原判決を破棄し、原審裁判所の審理に差戻すとし、原審もやはり審理後に96年度訴更一字第67号判決(以下、原判決)を以って上訴人の訴えを棄却したので、上訴人はこれを不服として本件上訴を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)上訴声明
原処分及び訴願決定を取消す判決を求める。被上訴人は公平取引法第41条の規定に従い、参加人に原判決付録2頁以下に示されている「白人歯磨き粉」商品パッケージの変更を命じると同時に、公平取引法違反行為について5万新台湾ドル以上2,500万新台湾ドル以下の過料を科すべきである。
(二)答弁声明
上訴人の訴えを棄却する判決を下すこと。

三 本件の争点
参加人が「白人歯磨き粉」商品を製造販売する行為は、公平取引法第20条及び24条の規定に違反するのか?
(一)上訴人の主張:判決理由参照
(二)被上訴人の答弁:判決理由参照

四 判決理由の要約
(一)「事業者はその営業において提供する商品又は役務について、次に挙げる行為をしてはならない。一 関係事業者又は消費者に通常認知されている他人の氏名、商号若しくは社名、商標、商品容器、包装、外観又はその他他人の商品の表徴と同一若しくは類似のものを使用し、他人の商品の表徴と混同誤認を生じさせる行為又は、当該表徴を使用した商品を販売、運送、輸出若しくは輸入する行為」、「本法に別段の規定がある場合を除き、企業はその他取引秩序に影響するに足りる欺瞞又は著しく公正さを欠く行為を行なってはならない。」、「公平取引委員会は本法規定に違反した事業者に対して、期限を定めてその行為の停止、改善又はその是正に必要な措置を命じ、並びに5万新台湾ドル以上2,500万新台湾ドル以下の過料に処すことができる。期限を超えてもなおその行為を停止、改善せず、又はその更正に必要な措置を講じなかったときは、引き続きその行為の停止、改善又はその是正に必要な措置を命じることができ、またその行為が停止若しくは改善されるか、又はその是正に必要な措置が講じられるまで、回数に応じて連続して10万新台湾ドル以上5千万新台湾ドル以下の過料に処すことができる。」以上は、公平取引法第20条第1項第1号、第24条、第41条でそれぞれ明確に定められている。

(二)公平取引法第20条第1項第1号で言う表徴とは、ある種の識別力若しくは二次的意義(セカンダリーミーニング)を有する特徴を指し、商品又は役務の出所を表彰することができ、関連事業者若しくは消費者にそれを用いることによって異なる商品若しくは役務を区別させるものである。識別力とは、ある種の特徴が特別顕著で、関連事業者若しくは消費者がその特徴を見ただけで直ちに当該商品がある特定事業者が製造したものだとわかるものである。二次的意義とは、ある識別力を有さない特徴が、長期的に継続使用されたことにより消費者に商品若しくは役務の出所を連想させ、その為に商品若しくは役務の出所の区別を生じさせるもう一つの意義である。同一若しくは類似の使用について、同一とは文字、図形、記号、商品容器、包裝、形状若しくはその総合的外観、排列、色使いが完全に同一であることで、類似とは購買者が商品の主要部分に対し普通の注意を払ったときに、誤認混同の虞があることである。ここで言う混同とは、商品の出所に関する誤認や誤信である。即ち他人が事業者について識別力を必要とするか若しくは二次的意義の特徴と同一又は類似したものを使用し、取引相手の商品出所に対する誤認誤信を生じさせるとき、始めて公平取引法第20条第1項第1号規定違反となる。よってもし事業者が、その営業においてが提供する商品に、関連事業者若しくは消費者が普遍的に認知している他人の商品表徴と同一若しくは類似のものを使用して他人の商品と混同させたときは、上記規定違反として論じることができる。また、もし事業者が他人の商品の外観若しくは表徴を盗用し、積極的に他人の商業的名誉に便乗したか、他人の努力の成果を搾取し、市場での競争効果を妨害したとき、始めて公平取引法第24条の取引秩序に影響するに足る明らかに公平を欠いた行為を構成することになる。

(三)商品表徴の判断は、当該商品にデザインの独創性と全体により他の商品と区別できる特徴が存在するかを見るべきであり、商品表徴は全体的な観察に合致しているべきであり、全体パッケージを色、形状、文字等の独立項目に分解して観察することはできない。消費者若しくはその他取引相手による「黒人歯磨き粉」商品の識別は、商標の「黒人」と「白人図」の外、商品全体の外観、正面と裏面にある黒人の文字、白人図及び黄色を主要な特徴としており、単にある色を分割して観察識別するのではない。上訴人は、係争商品のパッケージについて、その基底色が黄色以外に緑色もあり、なお且つその上に黒人文字があり、中間位置には顕著な白黒二色の帽子を被った人頭図があり、その下方には「歯を丈夫、清潔、清涼に」若しくは「スーパーフッ素」、「天然ミント」等の文字の記載があると述べているが、つまり、当該商品のパッケージ図案は多くの色、図案及び文字等の組合わせで成り立っており、単なる黄色を商品パッケージに使用したのではないことがわかる。よって上訴人が主張しているような単に「黒人歯磨き粉」商品が使用した黄色の基底色によって、単独に関連事業者若しくは消費者に普遍的に認知されている表徴を形成しているとは認定し難い。また、上訴人が広告量等の販売促進資料を提出したが、全て黒人歯磨き粉商品の全体的外観を以って訴求しているので、当該商品のパッケージに使用している黄色の基底色が既に関連事業者若しくは消費者が普遍的に認知している表徴であるとすることはできない。さらに、上訴人が販売している歯磨き粉のパッケージには多種の異なるデザイン、例えば白黒緑色のパッケージ及び単一の深黄色基底色パッケージ等があるので、消費者が上訴人の商品出所を識別する際、単に黄色で区別しているわけではない。即ち、やはり黄色の基底色が単独で関連事業者若しくは消費者が普遍的に認知している表徴を形成すると認定できるに足る具体的な事実証拠はない。

(四)本件原判決は上訴人が提出した証拠に基づき、参加人が製造する「白人歯磨き粉」について、上訴人が製造する「黒人歯磨き粉」の名称及び商品外観を模倣してはおらず、また行為時の公平取引法第20条第1項第1号及び第24条規定にも違反していないと認定したが、既にその理由を詳述しており、その認定事実と適用法についても不適切なところはない。

(五)以上の論述を纏めると、原判決を調べてみても判決に法規の不適用や不適切な適用、及び判決理由の矛盾等法令違反の状況はなく、その適用した法規と当該案件で適用すべき現行法規にも違背していないので、原判決に法令違反の事情はないと言える。上訴論旨は原判決の誤りを指摘して破棄を求めたが、理由があるとは認め難く棄却すべきである。
以上から、本件上訴には理由がないと論結する。行政訴訟法第255条第1項、第98条第1項前段に従い主文のとおりの判決とする。

2010年1月21日
最高行政裁判所第五法廷
審判長裁判官 鄭忠仁
裁判官   張瓊文
裁判官   黄秋鴻
裁判官   呉東都
裁判官   陳金圍
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