「格子趣」が加盟者に十分情報を開示せず公平交易法に違反したとして処罰されたが、反対に勝訴

2014-05-15 2011年

■ 判決分類:不正競争

I 「格子趣」が加盟者に十分情報を開示せず公平交易法に違反したとして処罰されたが、反対に勝訴

■ ハイライト
陳列棚の一部を売り手にレンタルして店鋪とする「格子趣」が、公平交易委員会より加盟者に十分情報を開示していないと認定され、20万新台湾ドルの過料処分を受けた。これを受けて格子趣が行政訴訟を提起したところ、裁判所より勝訴判決を受け、処分も取消しとなった。
当初、公平交易委員会は、網禄科技股份有限公司(以下、網禄公司)が「格子趣微型百貨店」加盟者を募集する過程で、加盟経営関係の締結10日前までに、書面で取引相手に十分な関連重要取引情報を開示していないと認定した。
公平会の認定では、加盟者が網禄公司提供の書類又はウェブサイト資料では、商標権、専利権、著作権等の専用権に係わることを完全に知ることができず、その合法性を確認できないおそれがあるとされた。公平会は格子趣を経営する網禄公司が公平交易法に違反したとして、20万新台湾ドルの過料処分を決定した。いっぽう網禄公司は取引情報を隠匿したことはないとして、行政訴訟を提起した。
台北高等行政法院の合議体による審理の結果、公平交易委員会の処分は採用すべき評価基準に沿ったものではなく合理性を欠くとして、原処分を取消した。本件は更に上訴が可能である。(中央社記者呉沛綺、賴又嘉台北20100727)

II 判決内容の要約

基礎データ

台北高等行政法院判決
【裁判番号】 99年度訴字第592号 
【裁判期日】 2010年7月21日 
【裁判事由】 公平交易法

原      告 網禄科技股份有限公司
被      告 行政院公平交易委員会
上記当事者間における公平交易法事件につき、原告は行政院2010年1月12日院台訴字第0990090486号訴願決定を不服とし、行政訴訟を提起した。本裁判所は以下のように判決を下す。:

主  文
原処分及び訴願決定を取消す。
訴訟費用は被告の負担とする。

一 事実の要約
原告は2007年10月より「格子趣微型百貨店」(以下、格子趣)を経営する加盟事業の業主である。2008年9 月に、加盟者募集の過程で、十分に情報を開示していないと告発された。被告による調査の結果、原告は加盟経営関係の締結10日前までに、書面で取引相手に「授権加盟店による知的財産権使用の審査申請または取得時点、権利内容及び有效期限」、「加盟店とその他加盟店又は自営店間の営業地域に対する経営方案」及び「前会計年度の全国及び当該加盟店営業地域が所在する市、県(市)加盟店及び加盟契約終了の数字による統計資料」等重要な取引情報を十分に開示していないとされ、チェーン加盟取引秩序に影響するに足りる公正さを欠く行為があったので公平交易法第24条規定に違反すると認定された。その上で被告は2009年6 月18日公処字第098088号処分書(以下、原処分)を以って、同法第41条規定により、原告に処分書送達の翌日より、直ちに前述違法行為を中止するように命じ、並びに20万新台湾ドルの過料に処した。原告はこれを不服とし、訴願を提起したが棄却されたので、次いで本件行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告声明:訴願決定及び原処分の取消を請求する。訴訟費用は被告の負担とする。
(二)被告声明:原告の訴えを棄却するよう請求する。訴訟費用は原告の負担とする。

三 本件の争点
原告の行為が失公正さを欠く取引秩序に影響するに足りるもので、公平交易法第24条規定に違反するのか?
(一) 原告主張の理由:判決理由参照
(二) 被告主張の理由:判決理由参照

四 判決理由の要約
(一)公平交易法第24条では:「本法に別段の規定がある場合を除き、企業はその他取引秩序に影響するに足りる欺瞞又は著しく公正さを欠く行為を行なってはならない。」と定められている。これは当該実体規定の最後に列記されており、概括的な条項の遺漏を補っている。現在の実務及び学会の通説では、既に広範且つ深く、競争の制限や不公平競争及び消費者保護の三大領域において適用されている。主務機関が本条規定を以って管制と介入を行う時は、一定の実体上の要件による制限を受けるはずであり、即ち「取引秩序に影響するに足りる」は(前述処理原則第2点第1 項もこれと同一の説明である)具体的な危険が構成要件となり、抽象的な危険ではまだ不足である。取引秩序に影響すると判断する一般的な考慮要素には次のようなものがある。つまり、被害者数の多寡、損害の量及び程度、他の事業者に対する警告効果があるかどうか、特定の団体若しくはグループに対する欺瞞若しくは公正さを欠く行為なのかどうか、将来的に潜在する多くの被害者への影響があるかどうか(以上、上記処理原則第5点第2 項を参照)、行為が採った手段方法、行為発生の頻度と規模、行為が商業倫理を破壊した程度、「競争パラメーター」に係わる種類、行為者と相手方の情報が対等であるかどうか、市場構造要素、例えば市場の集中度、行為者の市場占有率と市場力の大小、取引慣例と産業特色等により、行為の「取引秩序への衝撃度」を決定する。

(二)被告は公平交易法の中央主務機関であり、加盟事業の「公平競争」を確保し、加盟業主が加盟者募集の過程で、重要取引情報を隠匿してチェーン加盟の取引秩序に影響が生じないよう、「加盟情報開示処理原則」(上記原則制定の主旨は、当該原則第1 点参照)を制定している。当該原則第6 点第1 項は次のようになっている。「加盟業主が加盟者募集の過程で、本規範第4 点及び第5 点規定に違反し、重要取引情報の隠匿若しくは開示遅延に係わり、取引相手に対して公正さを欠き、チェーン店加盟の取引秩序に影響するに足りる場合、公平交易法第24条規定違反の虞がある。」また、被告が本件訴訟中に加盟業主が重要情報を開示しないのは、典型的な不公平競争行為である等と明確に述べていることを参酌すれば、被告は確かに加盟業主が重要取引情報を開示しないこの種の案件について、定例的に公平交易法第24条の明らかに公正さを欠く方法による不公平競争の類型としていると言える。被告が既にこのように加盟業主による前述情報隠匿行為について公平交易法第24条の適用を定例的に行っている以上、具体的な案例において、どのように「明らかに公正さを欠く」と判断するのか、どのように「取引秩序に影響するに足りる」と判断するのかについて、不公平競争の角度から理解するべきである。

(三)本件被告は原告が公平交易法第24条規定に違反し、加盟者募集の過程で加盟経営関係締結の10日前までに書面で取引相手に十分に「加盟情報開示処理原則」第4 点第4、6 、7 号の各項資訊を開示していないと主張し、原告が開示していない情報が「重大」であり、取引相手に対し「公正さを欠き」なお且つ、「全体」「加盟市場取引秩序」に影響するに足りると認定した。原告の行為が所謂「公正さを欠く」、「取引秩序に影響するに足りる」に該当するのかどうかは、「不公平競争」の類型を以って評価すべき基準で審査すべきである。
   1.係争行為が「公正さを欠く」のかどうかについて:
(1)所謂公正さを欠くとは、「公正さを欠く方法で競争若しくは商業取引に從事する」ことを指し(被告による公平交易法第24条案件の処理原則第7 条を参照)、市場での相対的優勢地位の濫用については、情報優位者が取引相手の情報非対等を「利用」して取引する場合に始めて、当該行為の效果が加盟業主と他の競争者の公正さを必ず破壊するので能率競争に違反すると言える。また、当該行為は必ず情報の非対等を利用して取引相手と取引して公正さを欠くものであり、従って高度に商業倫理に違反するものとなる。
(2)調べたところ、格子趣微型百貨店の商業モデルは原告の独創であり、原告が加盟店に協力して実体売場内部スペースを内装により数個のスペースに仕切り(即ち格子で、売場の面積により50、60個から200 個,300 個まで)、各スペースをその価額(位置により588 元から3000元まで)で業者にレンタルし、更に各業者が自ら商品や広告文宣を格子スペース内に陳列して展示若しくは販売するものであり、原告及び加盟店が業者を募集し、加盟店が内部を管理し、原告は関連販売促進キャンペーンの企画、基礎的な事務作業を行って毎月加盟店から事務サービス費及び会計処理費を徴収していることについては、双方とも争議していない。現在、この種の営業モデルの加盟業者は台湾では原告一社のみであることは、被告も自認している。つまり、この種の商業モデルのチェーン加盟業者は、台湾市場で他の競争相手がおらず、原告が取引情報を開示しないことが、実際に「不存在」の競争相手にどのような不公平となるかから言えば、当然ながら能率競争問題に影響することもないのである。
(3)原告は原告による増店地域制限について開示していなかったが、それは「大まかな経営方案」であると言える。なお且つ原告が行政救済手続き中に終始「周到で詳細」な書面による経営方案を証拠として被告に提出することができなかったことから、原告には「加盟店と他の加盟店若しくは直営店間の営業地域についての経営方案」に関して何も経営計画がなかったことは明らかである。「格子趣」の商品は自社ブランドがなく、また特定の販路もないので、販売している商品も各加盟店が自ら募集した業者の違いによって差異があり、市場衝突も大きいものではなく、客層も異なるので、加盟店の営業地域を区切ることには実益があまりない。原告が提出した書面による経営方案は、詳細を欠いているが(実際には、原告も提供できる詳細な経営方案がない)、この類の加盟商業モデルから言って、この情報がリスク評価の判断に与える影響は大きくないと言える。
(4)原告が上述のように書面で情報を開示しなかったことは、一般人が加盟する際の市場リスク評価判断に影響するに足りるものではなく、また、加盟、不加盟の選択に重要な情報がたとえ一部未開示であったとしても、やはり高度に商業倫理に違反して公正さを欠くとは認定しがたい。
   2.係争行為が「取引秩序に影響するに足りる」かどうかについて
現在台湾では係争商業モデルの加盟業主が原告一社のみであり、本質的にその行為が所謂係争「チェーン加盟市場」の取引秩序に実質的に相当の衝撃度があったと想像することはできない。被告はこのチェーン加盟市場に別の競争相手がいるか否かに係わらず、原告が「加盟情報開示処理原則」に従った情報開示をしていないのであれば、直ちに「その他商業」モデルの加盟業の加盟業主及び同市場の潜在的競争相手に対してよくない例となる可能性があるとし、なお且つ定型化契約方式で多くの取引相手(及び潜在競争者)と契約を締結することは、明らかに取引秩序に対して一定の影響を及ぼす云々とした。しかしこの推論方式は、疑いなく「取引秩序に影響するに足りる」の定義について抽象的な危険を構成要件としており、その生活経験における大量の観察に基づき、加盟業主がある種の取引情報を開示しない行為が公平交易法第24条で保護する客体(即ち取引秩序)に一般的な危険をもたらすと認定し、この類型行為に高度な危険があると予め定め、行為に上記加盟情報処理原則の不法な構成要件で述べられている事実(即ち、当該原則を遵守しない情報開示)があれば、それで直ちに抽象的な危険があり、取引秩序に影響するに足り、具体的な案件ごとの審査を必要としないとした。これは明らかに前述公平交易法第24条「取引秩序に影響するに足りる」という不確定な法律概念が「具体的な危険の構成要件」を採用しているという通説に反したものである。

(四)以上の論述をまとめると、被告は原告の行為が公正さを欠き取引秩序に影響するに足りるのかの判断において、加盟者募集の過程において「加盟情報開示処理原則」で示されている開示すべき事項を遵守しているか否かを以って行い、遵守していなかったことを判断時に採用すべき評価基準としたので、判断濫用の事情があり、行政手続法第9 条規定に違反している。そして、それに基づき原処分で原告が公平交易法第24条規定に違反したと指摘し、同法第41条前段を引用して過料20万新台湾ドルを科すとともに、その行為の停止を命じたことは、不適切であり、訴願決定を維持したことも誤りであった。原告による取消請求の訴えには理由があり、許可されるべきである。
以上、論結すると、本件原告の訴えには理由があるので、行政訴訟法第98条第1 項前段に基づき、主文のように判決する。

2010年7月21日
台北高等行政法院第一法廷
審判長裁判官 王立杰
裁判官 許麗華
裁判官 楊得君
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