広告における最上級の用語が確かに最上級に属すると推論するに足る客観的なデータ等の情報出所を提出できない場合、「虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示」に属し、客観的陳述ではないとみなされる事例

2014-05-15 2011年

■ 判決分類:不正競争

I 広告における最上級の用語が確かに最上級に属すると推論するに足る客観的なデータ等の情報出所を提出できない場合、「虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示」に属し、客観的陳述ではないとみなされる事例

■ ハイライト
事業者が広告において自社の商品や役務に「第一(1位)」、「冠軍(チャンピョン)」、「最多」、「最大」等の最上級表現を用い、客観的陳述であると主張する場合は、販売統計又は意見調査等の客観的なデータに基づく必要がある。事業者が広告に関して商品又は役務が最上級に属すると推論するに足る情報出所を提出できないことにより、普通の知識経験を有する一般消費者が合理的に事実の是非を判断することができず、その取引決定に影響を及ぼす場合、「虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示」に属し、不正競争の手段とみなされる。当該広告が「偶然」に事実と符合したかどうかはすでに評価の範疇にない。
もし事業者が故意に不実証広告をもって不正競争を行った場合は、不実証広告について主観的責任要件をそなえているとみなすものである。

II 判決内容の要約

■ 基礎データ

台北高等行政裁判所判決
【裁判番号】民国99年度(2010年度)訴第1323号
【裁判期日】2010年9月29日
【裁判事由】公正取引法

原  告 育達文教事業股份有限公司
被  告 行政院公正取引委員会
上記当事者間の公正取引法事件につき、原告は2010年4月29日院台訴字第0990096520号訴願決定を不服として行政訴訟を提起した。本裁判所は以下のように判決を下すものである。

主  文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実要約
原告は短期補習塾であり、2009年6月16日に2009年度「四技二専」(訳注:職業高校卒後に進学する4年制の科技系大学と2年制の短大・専門学校を指す)の統一入学試験(以下「統一試験」)合格者リストについて、「祝!2009年度統一試験で育達系列は全国番付1位を獲得」という文言と塾生徒の成績が全国及び各地区の3位内に入ることが予測されるという内容を含む広告文(以下、「係争広告」)を印刷し、2009年6月22日、23日に台中育達補習班の入り口で配布した。被告は審査を経て役務の品質が「虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示」であり、公正取引法第21条第3項の第1項準用規定に違反しているため、同法第41条前半部分の規定に基づいて2010年3月11日公処字第099029号処分書(以下、「原処分」)をもって原告に対して処分書送達の翌日から直ちに前項の違法行為を中止するよう命じるとともに、10万新台湾ドルの過料に処した。原告はこれを不服として行政訴願を提起したが棄却されたため、その後、本行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告:訴状にて訴願決定及び原処分の取消を請求する。
(二)被告:答弁書にて原告の訴えを棄却することを請求する。

三 本件の争点
係争広告が虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示であるのか否か。不実である場合、原告が主観的責任要件をそなえているか否か。
(一)原告の主張:略(詳しくは判決理由を参照)
(二)被告の答弁:略(詳しくは判決理由を参照)

四 判決理由の要約
(一)公正取引法第21条第1項規定「事業者は、商品若しくはその広告に、若しくはその他公衆に知らせる方法で、商品の価格、数量、品質、内容、製造方法、製造日期、使用期限(賞味期限)、使用方法、用途、原産地、製造者、製造地、加工者、加工地等について、虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示又は表記をしてはならない」及び第3 項規定「前二項の規定は事業者の役務に準用される」、第41条前半部分の規定「公平取引委員会は本法規定に違反した事業者に対して、期限を定めてその行為の中止、改善又はその是正に必要な措置を命じ、並びに5万新台湾ドル以上、2500万新台湾ドルの過料に処することができる。……。」に基づいて上記の不実証広告の管制とは、市場の公正競争の秩序と市場機能が当該広告の内容によって損害を受けない状況を確保するために、事業者が広告において真実を表示するよう規範するものであり、社会秩序の維持と公共利益の増進のために必要なものである。例えば、憲法第23条に掲げられているように、法律をもって人民の言論の自由と財産権に対して必要な制限を加える規範である。
このため,事業者が広告において自社の商品や役務に「第一(1位)」、「冠軍(チャンピョン)」、「最多」、「最大」等の最上級表現を用い、客観的陳述であると主張する場合は、販売統計又は意見調査等の客観的なデータに基づく必要がある。事業者が広告に関して商品又は役務が最上級に属すると推論するに足る情報出所を提出できないことによって、普通の知識経験を有する一般消費者が合理的に事実の是非を判断することができず、その取引決定に影響を及ぼす場合は即ち「虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示」に属し、不正競争の手段とみなされる。当該広告が「偶然」に事実と符合したかどうかはすでに評価の範疇にない。このため進学補習塾業者が広告に生徒の試験点数、進学率等の情報を載せて取引相手からその取引を獲得しようとする場合、その情報出所の資料とデータを提示し、その資料及びデータの真偽の評価に供する義務がある。これによって補習塾業者が選別又は曲解した資料及びデータで虚偽不実又は人に誤解を与えるような広告内容を作成して取引相手に謝った認知または決定を生じさせることを回避する。以上を先ずは説明しておく。

(二)本件の争点は、係争広告が虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示であるのか否か、不実である場合は、原告が主観的責任要件をそなえているか否かに他ならない。ここでは以下のようにそれぞれ述べる。
1. 原告がいうところの情報出所は自ら収集した補習塾の宣伝広告であり、公正かつ客観的な第三者が行ったものではなく、完全性と精度については疑わしい。原告が収集した他の同業者の宣伝広告からみて、又は特定の点数以上の人数だけを掲載していたり、又は紙面の関係ですべての人数を表示することができず各補習塾間の合格者数の比較ができないのに、どうして「1位」と自称できるのか。原告はこれについて、いわゆる「1位」とは同人が収集した宣伝広告に記載されていた600点以上の人数から推測したものであり、、すべての合格者人数から統計をとったものでないと認めている。原告の公告で宣伝した「ランキング1位を獲得」は、「1位」を宣伝したいがために資料やデータ基準を選別して作成した広告で、普通の知識経験を有する一般消費者が合理的に事実の是非を判断することができず、その取引決定に影響を及ぼしており、「虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示」に属すると認定できる。
2. 次に調べたところ、原告は同一の広告に個別の生徒の成績を載せ、各類別の予測される各地区の1位である云々と称している。統一試験センターは順位を公告していないのに、公正かつ客観的な依拠なくして各地区の1位であると宣伝している。況してや各地区の範囲とは何を示すのかは統一試験センターが定義するものではなく、客観的な基準もない。原告によると、その生徒が各地区の「予測される」1位であると宣伝した根拠は、同じ性質の補習塾が発表した番付、国立○○高工教務処サイトが公告した2009年度四技二專統一試験の各類別成績分析表、及び生徒の所属学校が公布した上位番付である。情報を分解しており、その質と量はいずれも各地区の1位を「予測」するのに十分ではない。前述の広告が各地区の1位であると予測されるのがその生徒である云々と述べていることは、資料を選別、曲解して得られたものであり、確かに虚偽不実又は人に誤解を与える表示であると判断できる。
3. 原告は進学補習教育に従事し、取引相手が進学率で進学補習塾を選ぶものであり、完全な進学試験番付情報を取得し正確に解読して適切にそれを潜在的な取引相手に伝達することこそ、基本的な職業道徳であることを熟知している。しかしながら進学試験合格者が発表されて補習塾業界で激しい競争が展開された際に、原告は正確な公的統計資料がない中で一部の情報だけを取り出しており、当然ながら原告の合格者数は全国補習塾で「1位」である確信を支えるのには不十分である。また情報の一部だけを引用して自分の都合のいいように解釈することで、自らの合格率を「1位」又は予測される「1位」がその生徒である云々と称し、生徒獲得の主導権を獲得しようとしたもので、広告の内容が事実に合っているかどうかを全く考慮していない。故意に不実証広告をもって不正競争を行ったことは明らかである。原告は不実証広告について主観的責任要件はない云々と主張しているが、採用するに足らない。

(三)従って、本件原告が係争広告において記載した「2009年度統一試験合格率が補習塾のトップ」、且つ「多数の生徒が全国、各地区の1位を獲得」等の内容は、役務の品質について虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示又は表記である。原処分は原告が公正取引法第21条第3項、第1項の規定に違反したと判断し、同第41条の規定に基づき原告の動機、予期される不当な利益等一切の状況を斟酌して原告を10万新台湾ドルの過料に処すとともに、直ちに前項の違法行為を中止するよう命じたが、この処分に誤りはなく、訴願決定を維持し、これも法に合致している。原告の請求取消は理由がないため棄却するものとする。
以上の論結に基づき、本件原告の訴えは理由がないため、行政訴訟法第98条第1項前半部分に基づいて主文の通り判決を下す。

五 関連条文抜粋
公正取引法 第21、41条(99年6月9日)
TIPLO ECARD Fireshot Video TIPLO Brochure_Japanese TIPLO News Channel TIPLO TOUR 7th FIoor TIPLO TOUR 15th FIoor