商品又は役務の表示又は表記が客観的に多重な合理的解釈を持つ場合、その中の一つが真実ならば、虚偽不実又は人に誤解を与えるとはいえない。

2014-05-15 2011年

■ 判決分類:不正競争

I 商品又は役務の表示又は表記が客観的に多重な合理的解釈を持つ場合、その中の一つが真実ならば、虚偽不実又は人に誤解を与えるとはいえない。

■ ハイライト
商品又は役務が虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示又は表記であるか否かの判断原則については、表示又は表記が客観的に多重な合理的解釈を有する時、その中の一つが真実であり、且つ表意者に人に誤解を与えようとする明らかな意図が認められるというその他の事実証拠がない場合は原則的に不実ではないとする「行政院公平交易委員会の公平交易法第21条案件に対する処理原則」第7点第4項規定を参照する。
又、いわゆる「原価」とは商品・役務提供側が通常の状況において定めた販売価格であり、販売店が販促活動を行うために調整した「割引価格」と通常の状況における原価とを並べて比較することは、尚合理性を具えないとは認め難い。さらに掛け率はもとより「実際の販売価格」を計算の基礎としているが、一般的な取引習慣で「定価」を割引の基礎としている状況もあり、客観的な状況においていずれも真実だと解釈でき、割引広告が不実又は誤解を与えるとは認め難い。

II 判決内容の要約

■ 基礎データ

台北高等行政裁判所判決
【裁判番号】99年度訴,1393
【裁判期日】2010年10月21日
【裁判事由】公平交易法(公正取引法)

原告 星全安旅行社有限公司
被告 行政院公平交易委員会
以上の当時者間で公平交易法事件をめぐり、原告が行政院による2010年4月29日院台訴字第990096564号訴願決定を不服として行政訴訟を提起した。台北高等行政裁判所は以下のように判決を下した。

主  文
訴願決定及び原処分を取り消すものとする。
訴訟費用を被告が負担するものとする。

一 事実要約
被告は、原告と興奇科技股份有限公司(英語名MONDAY TECHNOLOGY CO., LTD.)。2009年に雅虎國際資訊股份有限公司(Yahoo! Taiwan Inc.、以下「雅虎公司」)と合併し、雅虎公司が存続会社となった)等がオンラインショッピングサイト「興奇購物網」に「ファイブスターホテル晶華飯店の『晶饗美食聯合餐券(共通食事券)』4 人分……「101 WASABI」高級日本料理バイキング休日1人当たり原価880新台湾ドルのところをわずか499新台湾ドル!(平日休日を問わず/サービス料込み)56%掛けの超格安」という広告を掲載したが、その商品価格が虚偽不実及び人に誤解を与えるような表示であり、公平交易法第21条第1 項の規定に違反しているとして、同法第41條条前段の規定に基づいて、2009年12月4 日公処字第098171号処分書を以って原告等に処分書送達の翌日から違法行為を停止することを命じすとともに、原告と雅虎公司に対してそれぞれ8 万新台湾ドル及び12万新台湾ドルの過料に処した(以下「原処分」とする)。原告はこれを不服として、訴願を提起したが棄却されたため、本件行政訴訟を提起していた。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告:訴願決定及び原処分の取消を請求する。訴訟費用の被告負担を請求する。
(二)被告:原告の請求を棄却することを請求する。訴訟費用の原告負担を請求する。

三 本件の争点
原告が係争広告において販売した商品価格が虚偽不実及び人に誤解を与えるような表示であるか否か?
(一)原告主張の理由:省略(判決理由の説明を参照)。
(二)被告答辯の理由:省略(判決理由の説明を参照)。

四 判決理由の要約
(一)「事業者は、商品又はその広告に、あるいはその他公衆に知らせる方法で、商品の価格、数量、品質、内容、製造方法、製造日期、使用期限(賞味期限)、使用方法、用途、原産地、製造者、製造地、加工者、加工地等について、虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示又は表記をしてはならない」、「公平取引委員会は本法規定に違反した事業者に対して、期限を定めてその行為の停止、改善するか、又は必要な是正措置を行うよう命じ、並びに5万新台湾ドル以上、2500万新台湾ドル以下の過料に処することができる」とそれぞれ公平交易法第21条第1 項、第41条前段に規定されている。
(二)次に、被告は公平取引法の主務官庁であり、別に「行政院公平交易委員会の公平交易法第21条案件に対する処理原則」を定めて準拠に供している。その中で以下のように規定している。
第5点規定:「本法第21条に定めるところの虚偽不実とは、表示又は表記が事実と合致せず、その差異を一般又は関連する公衆が受け入れ難く、誤った認知又は決定を生じさせるおそれがあるものを指す。」
第6点規定:「本法第21条に定めるところの人に誤解を与えるとは、表示又は表記が事実に合致しているかどうかに係らず、一般又は関連する公衆に誤った認知又は決定を生じさせるおそれがあるものを指す。」
第7点規定:「虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示又は表記か否かの判断基準は以下の通りとする。(一)表示又は表記は関連する取引相手の通常の注意力による認知を以って、虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示又は表記であるか否かを判断するものとする。(二)表示又は表記を隔離して観察すると真実だが、併せて観察した全体の印象と効果が関連する取引相手に誤った認知と決定を生じさせるおそれがある場合は、人に誤解を与えるものに属する。(三)表示又は表記の内容が対比又は特に顕著な方法であり、特に顕著な主要部分が消費者にとって取引するかどうかを決定させる主要な要素となる場合、虚偽不実又は人に誤解を与えるか否かは、当該の特に顕著な主要部分について単独で観察して判定する。(四)表示又は表記が客観的に多重な合理的解釈を有する時、その中の一つを真実である場合は、不実ではない。但し、それが人に誤解させようとする明らかな意図がある場合、この限りではない。」
第8点規定:「前一点各号の判断原則を適用する際に以下の要素を考慮するものとする:(一)表示又は表記の実際の状況の差異程度。(二)表示又は表記の内容が通常の知識経験を持つ関連する取引相手が合理的に判断し取引を決定することに影響するに足るか否か。(三)競合事業及び取引相手の経済的利益に対する影響。」
前述の処理原則は公平交易法第21条の規範の内容を具体化し、被告の関連案件処理における参考に供している。「行政の自我拘束」原則に基づき、被告は自らこれを準拠しなければならない。
(三)調査したところ、本件の原告が広告、販売した食事券は晶華酒店と結んだ契約書の約定に基づくもので、晶華酒店の価格表のホテル定価は平日と休日、昼食と夕食によって異なるが、食事券は適用内容の各項目に基づき示された時間帯、営業時間に持っていけば、当該レストランで食事することができる。原告は晶華酒店から食事券を購入した後、「晶饗美食聯合優惠券」という広告を雅虎公司が運営する「興奇購物網」に掲載した。係争広告では原価880新台湾ドルと販売価格499新台湾ドルとを比較して、56%掛け(499/880=0.567)としており、これは不実ではない。係争広告の割引に関する表示を単独に観察すると、原告はホテルの定価を原価として、販売価格の掛け率を計算するという販促の手法を用いており、その表示は事実に合致しない部分はない。
(四)原告が広告において使用している「原価」という言葉は一般的な通常観念に基づいて、商品提供側が通常の状況において定めた販売価格を指す。晶華酒店は確かに割引キャンペーンを行い価格を調整しているが、比較する原価又は定価が存在して初めて、晶華酒店は消費者に割引があるか否かを判断する基礎を与えることができる。従って、原告は持久性、不変性を具える価格を「原価」とし、臨時的で特殊な「割引価格」と区別して、その販売価格の掛け率算出の基礎としており、尚それが合理性を具えないとは認め難い。ゆえに原告は晶華酒店の元来の定価で掛け率を計算している。晶華酒店の割引キャンペーン価格の掛け率とは異なるが、この差異は合理的な解釈を具えており、一般又は関連する公衆が受け入れ難く、誤った認知又は決定を生じさせるおそれがあるものとは認め難い。原告は、「販売価格」は取引習慣に基づいていずれも定価と比較しており、その他の割引価格と比較するものではないと主張しており、これは採用すべきものである。一般消費者が商品の定価を異なる販路、活動の割引価格と差別することにおいて、比較識別の能力を具えており、係争広告は虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示ではないとする原告の主張は採用するに堪える。
(五)本件の原処分では掛け率算出の基礎を「実際の販売価格」とするべきだとしており、これは考えられないことではない。しかしながら係争の食事券の記載方式と一般的な取引習慣は「定価」を掛け率の基礎とするケースが多くみられる。ゆえに係争広告の割引表示方式について客観的に多重な合理的解釈の余地があり、原告の解釈は合理的な事実に属し、その他の事実証拠から人に誤解を与えるようとする明らかな意図があるとは認められないため、被告の「公平交易法第21条案件に対する処理原則」第7点第4項の規定に基づき、係争広告は不実ではない。又、原告が提供する1人あたり499新台湾ドルという価格は晶華酒店のすべての時間帯の割引価格(600 ~730新台湾ドル)より大幅に安い。ゆえにこの差異は関連する取引相手が合理的に判断し取引を決定することに影響するとは認め難く、且つ競合事業及び取引相手の経済的利益に対して大きな影響があるとも認め難く、被告は係争報告の表示が虚偽不実又は人に誤解を与えるか否かについて前述処理原則第7点第4項の判断原則に準拠していない。且つ判断原則を適用したとしても、当該処理原則第8点の規定に基づいて取引相手の合理的判断と決定及び経済的利益等の要素による影響の程度を考慮していないため、事実認定の誤りは違法であると認定すべきである。
(六)以上をまとめると、被告による原告の係争広告の表示が虚偽不実又は人に誤解を与えるか否かについて事実認定が誤っているという違法の状況がある。つまり公正取引法第21条、第41条前段に基づいて原告に8万新台湾ドルの過料に処し、さらに違法行為の停止を命じたことは誤りであり、訴願決定の維持も法に合致していない。したがって原告の訴願決定及び原処分の取消請求には理由があるため、許可すべきである。

つまり、本件原告の主張には理由があり、行政訴訟法第98条第1項前段に基づき、主文の通り判決を下すものである。

五 関連条文抜粋
公平交易法 第 21、41 条(91.02.06)
行政院公平交易委員会の公平交易法第21条案件に対する処理原則 第 5、6、7、8 条(98.11.19)
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