他人の商標登録出願日前に善意により類似商標を類似商品もしくは役務に使用したものは、他人の商標権效力の拘束を受けない

2014-05-15 2011年

■ 判決分類:不正競争

I 他人の商標登録出願日前に善意により類似商標を類似商品もしくは役務に使用したものは、他人の商標権效力の拘束を受けない

■ ハイライト
台湾商標法は原則的に登録主義を採用しているが、商標の実態表現は使用に重きを置いているので、同時に使用主義も採用している。善意による商標使用者は他人が登録した後の商標権效力の拘束を受けないことを認めており、これが即ち商標法第30条第1項第3号規定の趣旨である。他人の商標登録出願日前に、善意により同一もしくは類似した商標を、同一もしくは類似した商品又は役務に使用したものは、他人の商標権效力の拘束を受けないが、本来使用していた商品もしくは役務に限られる。商標権者は使用権の過度な拡張を防ぐ為、使用者に適切な区別表示を加えるよう要求することができる。また、公平取引法第20条第2項第4号も善意による商品もしくは役務の表記を使用したものについて免責規定を設けている。なお且つ当該表記を消費者に広く認知される前に善意により使用していた場合、やはり同法第24条規定の不当な競争の欺瞞もしくは公平さを欠く行為に該当するとは言い難い。

II 判決内容の要約

■ 基礎データ

知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】99年度民公上字第2号
【裁判期日】2010年09月02日
【裁判事由】公平取引法による侵害排除等

上 訴 人 全国不動産マネージメント股份有限公司
被上訴人  蔡蕙璟即全国不動産仲介企業行

上記当事者間における公平取引法による侵害排除請求等事件において、上訴人が2009年12月23日台湾高雄地方裁判所97年度智字第22号第一審判決に対し上訴を提起した後、本裁判所にて2010年8月12日に口頭弁論が終結し、次のとおり判決を下した。

主  文
上訴を棄却する。
第二審の訴訟費用は上訴人の負担とする。

一 事実要約
上訴人による原審起訴の主張:私たちは1984年11月28日経済部の許可を得て会社の設立登記を行い、1985年1月9日に台北市政府に営利事業者設立登記を届出た。土地仲介業、不動産仲介マネージメント業等の業務を経営して既に24年近くになる。なお且つ私たちは2005年4月6日、2007年8月17日、2007年11月14日にそれぞれ、「IR全国不動産」、「IR全国房屋」等図案(以下、係争商標)を以って経済部に商標登録し、経済部によりそれぞれ2006年1月1日、2008年6月16日及び2008年8月16日に登録を許可された。存続期間もそれぞれの商標登録日より起算して10年となっている。その後上訴人が、自社の同意を得ずに被上訴人が無断で「全国不動産」の名称を使用して不動産仲介役務を経営し、明らかにその商標専用権を侵害したことを理由として原審訴訟を提起し、被上訴人に対し使用中止及び損害賠償を求めた。原審では上訴人全面敗訴の判決が下されたが、上訴人はこれを不服として二審に上訴した。

二 両方当事者の請求内容
(一)上訴人声明:
(1)原判決の上訴人に不利な部分の破棄。(2)被上訴人による不動産売買仲介役務における「全国」を役務標章とした使用の禁止。(3)被上訴人は上訴人に100 万元を支払うべきであり、並びに本件起訴状副本送達の翌日より償還日まで週ごとに年利率5 %で利息を計算する。(4)被上訴人が費用負担して、添付に示す謝罪文を「半十批(1/4ページ)」の規格で(內容、自体及びサイズの詳細は添付のとおり)自由時報、蘋果日報のカラーページ版に各一日ずつ掲載するべきである。(5)第一、二審訴訟費用は被上訴人の負担とする。(6)担保供託(台湾銀行の譲渡可能定期預金証書、保証書もしくは全額現金)による仮執行許可を宣告すること。
(二)被上訴人声明:上訴の棄却。

三 本件の争点
(1)被上訴人は上訴人商標権を侵害したのか。
(2)被上訴人は公平取引法第20条第1 項第2号規定に違反したのか。
(3)被上訴人は公平取引法第24条規定に違反したのか。
(4)もし商標法及び公平取引法規定に違反したのなら、損害賠償はどうすべきか。
(一)原告主張の理由:略、判決理由の説明を参照。
(二)被告答弁の理由:略、判決理由の説明を参照。

四 判決理由の要約
(一)善意により商標を使用したものは、たとえ登録を怠っていたとしても、その商標使用の事実について抹殺されることは許されない。後日出願登録したものは、善意による商標の先使用者の使用行為について遡及することはできないが、商標使用者が登録を怠った以上、他人による登録後は、その商標使用も自ずと適度に制限されなければならない。商標專用権者は使用権の拡張によって登録者の権利が損なわれる事態を回避し、また双方の利益の共存を図る為に、先使用者に対して適切な区別表示を加えるよう要求することができる。
また、写真を見ると、被上訴人は看板に「全国不動産」の文字を使用している外、「土地仲介」も付記しており、その新たに登録した商標も、CHUANKUO REAL ESTATE、及び統一番号00000000号等を区別標識としており、明らかに上訴人の係争商標に適切な区別表示を加えたことは、明確である。よって、被上訴人は善意により係争商標「全国不動産」を先使用して不動産仲介マネージメント、不動産代理販売マネージメント等役務の識別表示にしており、また、所在地を移転した後も継続して元の役務の不動産マネージメント、代理販売マネージメント業務を範囲としている上、本来の役務において使用すると同時に区別表示を加えているので、善意による使用状況ではないとは言い難い。従って上訴人の上記主張は採用することができない。

(二)被上訴人は公平取引法第20条第1 項第2 号規定に違反したのか?
被上訴人が経営する「全国不動産仲介企業行」は2001年8月1日に高雄県政府の許可を経て登記されている。営業項目は不動産仲介マネージメント業及び不動産代理販売マネージメント業等であったことは上述のとおりである。このことから、被上訴人が「全国不動産」を不動産仲介業及び不動産仲介マネージメント業に使用したのが上訴人よりも早く、もし前述のとおり悪意による使用等の事情がないので、上訴人「全国不動産」の表記は、関連事業者もしくは消費者に広く認知される前に、既に被上訴人により善意で使用されていたと言える。前記に掲げた条文に依拠しても、公平取引法第20条第1項第2号違反の事情はなく、上訴人の主張は採用することができない。

(三)被上訴人は公平取引法第24条規定に違反したのか?
確かに上訴人は被上訴人よりも早く「全国の」二文字を不動産仲介等の役務に使用したが、被上訴人が「全国」をその役務の表記の一部として使用開始した時、双方使用の名称には差異があった。なお且つ「全国房屋」が当時既に関連事業者もしくは消費者に広く認知されていたのかには疑問があり、被上訴人が「全国」をその役務の表記の一部として使用したことが消費者の混同を招いたり、もしくは商業的名誉にフリーライドしたり、もしくは搾取により成果を得て取引秩序に影響を与えたとは認定しがたい。

(四)以上をまとめると、被上訴人は上訴人の係争商標の商標権を侵害しておらず、公平取引法第20条第1 項第2 号、第24条にも違反していない。従って、上訴人が商標法第61条、第62条第1号、第63条第1項第1号、第2号、第64条及び公平取引法第20条第1項第2号、第24条、第30条、第31条、第32条等規定に基づき、被上訴人に対し「全国」を役務の標章として不動産売買仲介役務に使用するのを中止するよう求め、同時に被上訴人に100万元及び新聞に謝罪文を掲載するよう請求したことには理由がないので、棄却しなければならない。

2010年9月2日
知的財産裁判所第一法廷
審判長裁判官  李得灶
裁判官  林欣蓉
裁判官 王俊雄

五 関連条文抜粋
民事訴訟法 第 78、449 条(98.07.08)
商標法 第 30、61、62、63、64 条(92.05.28)
商標法施行細則 第 13 条(92.12.10)
公平取引法 第 20、24、30、31、32 条(91.02.06)
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