従業員が会社の許可を得ずに作業内容を電子メールで送付した場合、会社の営業秘密保護に違反

2019-03-27 2018年
■ 判決分類:営業秘密

I 従業員が会社の許可を得ずに作業内容を電子メールで送付した場合、会社の営業秘密保護に違反

■ ハイライト
被告蔡○諭と被告蕭○羣はそれぞれ2010年12月20日、2011年2月8日から原告奇景光電股份有限公司に雇用され、被告2人はもともと原告の研究開発センターでエンジニアの職務を担当し、且つ原告が研究開発している関連製品技術等の営業秘密を握り、また被告蔡○諭及び蕭○羣はそれぞれ任職時に既に従業員秘密保持義務及び知財権譲渡同意書に署名していた(以下、係争同意書という)。原告は以下の通り主張した。即ち、被告蔡○諭、蕭○羣はそれぞれ原告会社に在職していた2011年7月から11月頃、2011年8月頃、原告会社の営業機密(以下、係争営業機密という)を、続々と原告会社の公務用の電子メールで被告二名自ら使用している個人電子メールアドレスに送付して、係争同意書の約定に違反し、原告の係争営業機密を漏洩し、営業秘密法及び係争同意書所定の秘密保持義務に違反したので、被告二名は民法第184条の不法行為及び第227条の加害給付の不完全給付規定により、原告に対し損害賠償責任を負わなければならず、原告は被告による原告の営業秘密侵害を排除し、且つ被告による以後の侵害及び原告の営業秘密所有の禁止を請求することができる。

一審裁判所(台湾台南地方裁判所102年度智字第4号民事判決)、二審裁判所(知的財産裁判所103年度民營上字第3号民事判決)の判決では原告の訴えを棄却したが、原告が三審裁判所に上告した(最高裁判所106年度台上字55号)後、最高裁判所から差し戻したの判決が下り、知的財産裁判所106年度民營上更(一)字第1号民事判決では、被告蔡○諭が原告に懲罰性違約金90万台湾ドル、被告蕭○羣が原告に懲罰性違約金40万台湾ドルを支払わなければならず、且つ蔡○諭、蕭○羣はその所有している上訴人営業秘密ファイル資料を削除、処分しなければならず、且ついかなる方法によっても保有、利用、または第三者への漏洩、告知または交付、もしくは他の方法により第三者に知らせたり、または利用させてはならないと改めて判決した。

知的財産裁判所106年度民營上更(一)字第1号民事判決は以下の通りである。:
知的財産案件審理法第10の1条第1、2項の規定を参考とし、営業秘密侵害の民事事件の、侵害事実及びその損害範囲の証拠については、往々にして当事者一方の証拠収集が困難で、もし他方に証拠の裁判所への提出を促すことができずに、営業秘密が侵害されるかまたは侵害を受けるおそれがある事実を主張した場合に、侵害事実及び損害範囲について全部の立証責任を負わなければならないとすると、被害者があるべき救済を得るのが難しい。よって、一方で主張者の立証証明度を低減し、一方で他方に主張者への疎明について具体的な答弁義務を課す。

II 判決内容要約

知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】106年度民營上更(一)字第1号
【裁判期日】2018年2月27日
【裁判案由】営業秘密損害賠償等

上訴人 奇景光電股份有限公司
法定代理人 呉○昇   
被上訴人  蔡○諭   
                 蕭○羣   

主文
一、 原判決の上訴人による下記第二、三、四項の訴えを棄却し、下記第二、三項の仮執行の申立て、訴訟費用の裁判を、いずれも破棄する。
二、 被上訴人蔡○諭は上訴人に90万台湾ドル、及び2013年5月18日から弁済日まで、年5%で計算した利息を支払わなければならない。
三、 被上訴人蕭○羣は上訴人に40万台湾ドル、及び2013年5月18日から弁済日まで、年5%で計算した利息を支払わなければならない。
四、 被上訴人蔡○諭、蕭○羣はその所有している付表一の上訴人営業秘密ファイル資料を削除、処分しなければならず、且ついかなる方法によっても保有、利用、または第三者への漏洩、告知または交付、もしくは他の方法により第三者に知らせたり、または利用させてはならない。
五、 上訴人の他の上訴を棄却する。
六、 第一、二審上訴費用は被上訴人蔡○諭が17%を負担し、被上訴人蕭○羣が13%を負担し、残りを上訴人が負担する。
七、 本判決第二項について、上訴人は30万台湾ドルまたは国内金融機関無記名譲渡可能定期預金証書を担保として、被上訴人蔡○諭のため供託したうえで、仮執行を行うことができる。但しもし被上訴人蔡○諭が90万台湾ドルを上訴人のため担保を供託した場合、仮執行を免じることができる。
八、 本判決第三項について、上訴人は13万4000台湾ドルまたは国内金融機関無記名譲渡可能定期預金証書を担保として、被上訴人蕭○羣のため提供した後、仮執行を行うことができる。但しもし被上訴人蕭○如が40万台湾ドルを上訴人のため担保を供託した場合、仮執行を免じることができる。

一 事実要約
被告蔡○諭、蕭○羣は原告会社に勤務していた期間に、それぞれ2011年7月から11月頃、2011年8月頃、原告会社の営業機密を、次々に原告会社の公務使用の電子メールで被告二名自ら使用している個人電子メールアドレスに送付し、従業員秘密保持義務及び知的財産権譲渡同意書の約定に違反し、原告の係争営業機密を漏洩したので、営業秘密法と従業員秘密保持義務及び知的財産権譲渡同意書(以下係争同意書という)所定の秘密保持義務に違反した。

二 両方当事者の請求内容
(一) 上訴人(原告)の請求内容:
1. 被上訴人(被告)蔡○諭は原告に4,511,250台湾ドルを支払わなければならない。
2. 被上訴人(被告)蕭○羣は原告に3,769,250台湾ドルを支払わなければならない。
3. 被上訴人(被告)蔡○諭及び蕭○羣はその所有している付表一の上訴人営業秘密ファイル資料を削除、処分しなければならず、且ついかなる方法によっても保有、利用、または第三者への漏洩、告知または交付、もしくは他の方法により第三者に知らせたり、または利用させてはならない。
(二)被上訴人(被告)答弁内容:上訴人の訴えを棄却する。

三 本件の争点
(一) 係争同意書第1条第1、3、4項の約定は、民法第247条の1第2、4号規定に違反したか?
(二) 被上訴人蔡○諭、蕭○羣に係争同意書第1条第1項違反の行為があるか?
(三) 上訴人が被上訴人蔡○諭、蕭○羣に請求した賠償懲罰性違約金には、理由があるか?上訴人が請求した懲罰性違約金は高すぎるか?
(四) 被上訴人蔡○諭、蕭○羣は送付したファイルを既に削除したか?被上訴人蔡○諭、蕭○羣はその所有している付表一の上訴人営業秘密ファイル資料を削除、処分しなければならず、且ついかなる方法によっても保有、利用、または第三者への漏洩、告知または交付、もしくは他の方法により第三者に知らせたり、または利用させてはならないと上訴人が請求したことには、理由があるか?

四 判決理由の要約
(一) 係争同意書第1条第1、3、4項の約定は、上訴人が同社の営業秘密を保護する正当な措施であり、且つ従業員は雇用関係の忠実義務に基づき、任職期間または離職後、その職務関係で知ったまたは接した使用者の営業機密について、本来秘密保持義務を負うので、前記約定は被上訴人の責任を加重しているわけではなく、または被上訴人に重大な不利益を生じさせることもなく、公平を欠く状況もないので、民法第247条の1第2、4号規定に違反しない。
(二) 調べたところ、被上訴人二名が締結した係争同意書第1条第1項では、従業員は作業期間に接した上訴人の営業秘密または他の機密情報について、秘密保持義務を負い、上訴人の同意を得ずに任意に保有、漏洩または上訴人会社以外の場所に持ち出してはならない等と明確に規定されており、作業上の秘密情報について、被上訴人二名は秘密保持義務を負い、任意に上訴人会社以外の場所に流出させてはならないことを、よく知っていたはずである。且つ証人陳○○、邱○○のの証言では、上訴人会社は会社内部の電子メールアドレスでメールを送付できるだけで、外部電子メールを使用することができず、作業上の書類送付時には上司の同意を得なければならず、従業員は公用ノートブックを申請した後、家に持ち帰って残業することができるが、当該部分の規定については、各部門主管者が決定するという。2011年頃に会社設計部門の従業員への情報伝達について、営業秘密漏洩を防ぐために、上訴人は多項の厳しい管理措施をとっていたが、被上訴人二名は任職から事件発生まで、それぞれの任職期間が9ヶ月及び6ヶ月あり、前記管理措施を知らなかったわけがない。また、被上訴人二名はテスト、検証等やや低次の作業を担当しただけであるが、プログラムを修正する権限がなく、当然ソースコードを外部に送付する権限もないのに、被上訴人二名はあえて会社規定に違反し、主管者の同意を得ないで、無断でMIPIDSI開発計画及びPA5389プロジェクトのソースコードを、電子メールの添付として二名が使用している外部メールアドレスに送付したことは、明らかに係争同意書第1条第1項約定に違反しており、被上訴人二名は当然事件発覚後、主観的、一方的に「業務ニーズ」を口実として、その負わなければならない営業秘密侵害責任を逃れてはならない。
(三) 被上訴人二名はプログラムの検証作業を担当していただけだが、あえて無断で上訴人MIPIDSI開発計画、PA5389プロジェクトの主な研究開発成果を、被上訴人二名の外部メールアドレスに送付し、上訴人の営業秘密をリスクに曝した。被上訴人二名がファイルを送付した時に故意にファイル名及び副ファイル名を変更して、被上訴人蔡明諭が更にファイルのスタートコードを変更して暗号化したので、上訴人会社がその内容を見られなくしたので、明らかに上訴人会社の調査及び管理を逃れていて、実に規定違反の状況が重大である。本裁判所は総合的に被上訴人の侵害行為回数、被上訴人離職前6ヶ月の平均給料、任職期間等一切状況を斟酌し、上訴人が被上訴人蔡○諭、蕭○羣に請求した違約金451万台湾ドルあまり、376万台湾ドルあまりは高すぎるので、それぞれ90万台湾ドル、40万台湾ドルに減じることが妥当であると考える。
(四) 被上訴人二名には営業秘密侵害行為があり、且つ被上訴人二名は確かに本件送付のメールを全部削除してもう所有していないことを証明することができないので、上訴人の権益を保障するために、被上訴人蔡○諭、蕭○羣に送付したファイル資料の削除、処分、且ついかなる方法による保有、利用、または第三者への漏洩、告知または交付、もしくは他の方法による第三者への告知をしたり、または利用させてはならないと上訴人が請求したことには理由があると認めるべきである。
(五) 以上をまとめると、上訴人が係争同意書第1条第4項により被上訴人蔡○諭に懲罰性違約金90万台湾ドル、被上訴人蕭○羣に懲罰性違約金40万台湾ドルを支払わなければならず、且つ起訴状写し送達後の翌日より、返済日まで、年5%で計算した利息を請求し、及び営業秘密法第11条規定により、被上訴人蔡○諭、蕭○羣に主文第四項の侵害排除を請求したことには理由があるので、許可すべきであるが、この範囲を超えた部分には、理由がない。

2018年2月27日       
知的財産裁判所第二法廷           
審判長裁判官 李維心             
裁判官 林洲富             
裁判官 彭洪英
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