「宅貓妙可」と「愛蜜莉と波奇のイラスト」は実質的に類似せず、盗作ではないため著作権侵害を構成せず

2020-06-22 2019年
■ 判決分類:著作権法

I 「宅貓妙可」と「愛蜜莉と波奇のイラスト」は実質的に類似せず、盗作ではないため著作権侵害を構成せず

■ ハイライト
告訴人林O君は2009年から自らが飼っている猫「波奇(Pocky)」を参考として独創性を有する美術著作物「愛蜜莉(Emily)と波奇(Pocky)のイラスト」を創作したが、被告人朱O萱は2015年5月の某日より上記美術著作物を複製し、外観デザイン及びグラフィック全体の表現が実質的に類似している「宅貓妙可(Milk Cat)」を形にして、ソーシャルメディアにて不特定のユーザーの閲覧に供し、通信アプリLINEにてスタンプを販売し、この手段を以って告訴人の美術著作財産権を侵害した。従って被告人は著作権法第91条第1項の複製による著作財産権を侵害した嫌疑、同条第2項の販売を意図して複製の方法で著作財産権を侵害した嫌疑、同法第92条の公開伝達の方法で著作財産権を侵害した嫌疑が認められる。
第一審裁判所(台湾新北地方裁判所107年度智訴字第4号判決)は、告訴人の美術著作物「愛蜜莉と波奇のイラスト」は公表の時期がグラフィック「宅貓妙可」より早く、しかも被告人は告訴人とともにフェイスブックのグループ「貓咪也瘋狂CrazyCatclub」等ネット上のグループ等に参加しており、「愛蜜莉と波奇のイラスト」に接触(アクセス)した可能性が十分に認められ、また「愛蜜莉と波奇のイラスト」と「宅貓妙可」は耳の先端の角度や間隔の部分が同じであるが、両者には多くの違いがあり、実質的な類似を構成ししているとは認めがたく、被告人は無罪であると判決した。

第二審裁判所(知的財産裁判所108年度刑智上訴字第41号判決)も同様に「宅貓妙可」と「愛蜜莉と波奇のイラスト」の両者は実質的な類似を構成せず、盗作はないと認め、被告人は無罪であると認定している。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所刑事判決
【裁判番号】108年度刑智上訴字第41号
【裁判期日】2019年11月14日
【裁判事由】著作権法違反

上 訴 人 台湾新北地方検察署検察官
被  告  人  朱O萱
選任弁護人 呂聿雙弁護士

主文
上訴を棄却する。

一 事実要約
告訴人林O君は2009年から自らが飼っている猫「波奇」を参考として独創性を有する美術著作物「愛蜜莉と波奇のイラスト(愛蜜莉と波奇のイラスト)」を創作したが、被告人朱O萱は2015年5月の某日より上記美術著作物を複製し、外観デザイン及びグラフィック全体の表現が実質的に類似している「宅貓妙可」を形にして、ソーシャルメディアにて不特定のユーザーの閲覧に供し、通信アプリLINEにてスタンプを販売した。これにより、告訴人はその美術著作財産権を侵害されたと主張した。

二 本件の争点
(一)「愛蜜莉と波奇のイラスト」は告訴人が著作権法の保護を受けることができる美術著作物か否か。
(二)被告人が盗作し、告訴人の「愛蜜莉と波奇のイラスト」美術著作財産権を侵害していることを証明できるか否か。

三 判決理由の要約
(一)「愛蜜莉と波奇のイラスト」は告訴人が著作権法の保護を受けることができる美術著作物である。
1. 「愛蜜莉と波奇のイラスト」は告訴人が自身で飼育している猫「波奇」を基にして、2012年から「波奇」の特徴を擬人化してイラストを創作し始め、2012~2013年に画法を変更し、2014年以降は同じ画風を採用し、キャラクターのイメージを固定して、フェイスブックの愛蜜莉粉絲團(ファンページ)、愛蜜莉出版書、メモ用紙等で次々と発表しており、告訴人が提出した手描き原稿コピー、2012年6月Yahoo奇摩ホームページのスクリーンショット、2014年12月の修士論文「療癒系寵物插畫創作研究(癒し系ペットイラスト創作研究)」抜粋資料等があり、「愛蜜莉と波奇のイラスト」は猫の造形、表情、動作、道具、背景、さらにはデザインや構図を生き生きと変化させ、一定の視覚的美感をもたらしており、創作者の知恵やインスピレーションの精神作用を通じて具体化して表現したものであり、告訴人が創作した美術著作物であると認められる。
2. さらに「愛蜜莉と波奇のイラスト」の細部の造型、顔のライン、耳の角度と間隔、色及び比率のデザイン、視覚的角度、背景配置、コンセプトの表現等に変化があり、独特な個性が突出しているため、この基本的な表現手法、特徴の要素を超える創作部分については、思想の精神作用を表現があり、著作権法で採用している最低限の創意原則に基づき、なお独創性を有して著作権法の保護を受けるべきだと認められる。

(二)本件は被告人が盗作し、告訴人の「愛蜜莉と波奇のイラスト」美術著作財産権を侵害していることを証明できない。
1. 裁判所は著作権侵害の事実の認定において、一切の関連する情状を斟酌すべきであり、著作権侵害の認定要件2つ、即ちいわゆる「接触」と「実質的な類似」を慎重に調べる必要があり、その中の「実質的な類似」とは量の類似だけではなく質の類似も示している。質を考慮する際、著作物間の「全体の観念と感覚」に注意しなければならない。
2. 「接触」:
「愛蜜莉と波奇のイラスト」の公表の時期は「宅貓妙可」よりも早く、告訴人が主張しているとおり、被告人が告訴人とともにフェイスブックのグループ「貓咪也瘋狂CrazyCatclub」、「天下貓貓一樣貓」及び「FandoraClub」に参加しており、しかもいずれもPTT(批踢踢實業坊)コミュニティの猫専用掲示板で書き込みしたことがあり、被告人が「愛蜜莉と波奇のイラスト」に接触した可能性はあったと十分に認められる。
3. 「実質的な類似」:
「愛蜜莉と波奇のイラスト」と「宅貓妙可」の両者について、(1)毛の色:「愛蜜莉と波奇のイラスト」はほとんどが淡くてやわらかいオレンジであり、「宅貓妙可」は鮮明なオレンジであり、額と両頬に明らかな縞模様がある、(2)口と鼻:「愛蜜莉と波奇のイラスト」はほとんどが白であり、「宅貓妙可」はオレンジに赤が組み合わされている、 (3)頬紅:「愛蜜莉と波奇のイラスト」はほとんどに頬紅がないか、又は小さな範囲の薄いピンク色の頬紅があるだけだが、「宅貓妙可」はほとんどが顕著な丸い赤い頬紅がある、(4)キャラクターの個性:「愛蜜莉と波奇のイラスト」は柔和で、大人しく、温かい印象を与えるのに対して、「宅貓妙可」はツンデレで、ずる賢くて、可愛らしい印象を与える。これ以外に、両者を詳細に対比した結果、いずれも多くの違いがあり、両者の主要な特徴、つまり顔の部分の全体を観察すると実質的な類似は構成しておらず、盗作はみられない。原審が被告人に無罪判決を下したことに、誤りはない。

2019年11月14日
知的財産裁判所第一法廷   
裁判長 李維心
裁判官 林洲富
裁判官 陳忠行

TIPLO ECARD Fireshot Video TIPLO Brochure_Japanese TIPLO News Channel TIPLO TOUR 7th FIoor TIPLO TOUR 15th FIoor