一行為が非親告罪である著作権法第91条の1第3項要件に該当するか否かは、複製物そのものの性質、製作方法等を観察すべき

2014-09-29 2013年

■ 判決分類:著作権

I 一行為が非親告罪である著作権法第91条の1第3項要件に該当するか否かは、複製物そのものの性質、製作方法等を観察すべき

■ ハイライト
本件被告の葉○青は著作権者である普威爾国際股份有限公司(Proware Multimedia International Co., Ltd.)、木棉花国際股份有限公司(Muse Communication Co.,Ltd.)の同意又は利用許諾を受けずに海賊版光ディスクを複製した後、著作財産権を侵害した光ディスク複製物を頒布し、又は頒布を意図して公開に陳列し若しくは所持する接続犯意に基づき、2012年4月4日からそれが経営する店内の陳列棚に公然と海賊版光ディスクを陳列し、それを知らない店員を雇い、1枚150新台湾ドルの価格で不特定の顧客に販売して利益を得たため、検察官は著作権法第91条の1第3項、第2項の規定に基づいて公訴を提起した。

主な争点:1.本件の行為が著作權法第91条の1第3項規定及び第2項規定の両方に抵触するものか否か。2.著作物が他人によって光ディスクの形式で複製されたものであるときは、第91条の1第3項規定の状況を構成すると認定できるか否か。

1.著作権第91条の1第3項は著作財産権侵害に係わる光ディスク複製物であると明らかに知りながら頒布する罪である。被告が著作権侵害に係わる光ディスク複製物の頒布を意図して公開に陳列し若しくは所持していたという低度の行為(軽い罪)は頒布したという高度の行為(重い罪)に吸収されるべきなので、別途論罪しない。さらに著作権法第91条の1第3項は同条第2項の加重規定であり、その罪刑はいずれも独立している。このため本件被告が著作権法第91条の1第3項に違反した罪の部分は、再び同条第2項の罪を以って論じる余地はない。

2.次に按著作権法第91条規定の文義をみると、第91条の1第1項が規定する頒布の対象は「原作品又はその複製物」であり、第2項が規定する頒布の対象は「著作財産権侵害に係わる複製物」であり、同上の立法の趣旨、法条の文義及び系統の解釈に基づいて、第91条の1第1項でいうところの「複製物」は「合法な複製物」に限られ、同条第2項でいうところの「複製物」は「違法な複製物」に限られるべきである。

行為者の行為が非親告罪である著作権法第91条の1第3項の違法複製物が光ディスクであるという要件に該当するか否かは、複製物「そのものの性質」、「複製製作の方法、目的」及び「複製製作の質と量」、「以前著作権者から利用許諾を受けたことがあるか否か」等も考慮して観察すべきであることから、著作物が他人によって光ディスクの形式で複製されたことを以ってすぐに第91条の1第3項の罪を構成すると認めることはできない。さもなければ著作権法第100条但書規定により、第91条の1第3項の著作権侵害に係わる光ディスク複製物のみを非親告罪とする立法の趣旨に反してしまう。

したがって、光ディスクが合法的に利用許諾を受けていない違法複製物であると立証できなければ、被告がこの部分についても著作権法第91条の1第3項規定に抵触しているとは性急に認定しがたい。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所刑事判決
【裁判番号】102年度刑智上易字第3号
【裁判期日】2013年4月11日
【裁判事由】著作権法違反

上訴人 台湾高雄地方裁判所検察署検察官
被告 葉○青

上記上訴人は被告の著作権法違反事件につき、台湾高雄地方裁判所101年度智易字第18号、2012年12月13日第一審判決(起訴案件番号:台湾高雄地方裁判所検察署101年度偵字第11679号及び併案101年度偵字第19073号)を不服として上訴を提起した。本裁判所は次のとおり判決する。

主文
上訴を棄却する。
葉○青を執行猶予3年とする。

一 事実要約
葉○青は明らかに、付表一に示される映像著作物がそれぞれ普威爾国際股份有限公司(Proware Multimedia International Co., Ltd.、以下「普威爾公司」)、木棉花国際股份有限公司(Muse Communication Co., Ltd.、以下「木棉花公司」)が独占的利用許諾を受け著作財産権を取得した映像著作物で、わが国の著作権法の保護を受けており、普威爾公司、木棉花公司から同意又は利用許諾を受けずにその著作物財産権を侵害する複製物を頒布し、又は頒布を意図して公開に陳列し若しくは所持してはならないことを明らかに知っていた。ところが、2012年3月中旬、年籍資料が不詳で、通称を「譚大哥」とする成人(この部分は台湾高雄地方裁判所検察署検察官が別途捜査)から付表一に示された普威爾公司、木棉花公司の同意又は利用許諾を受けずに複製された海賊版光ディスクを1枚あたり60新台湾ドルの価格で購入した後、その著作物財産権を侵害する光ディスク複製物を頒布し、又は頒布を意図して公開に陳列し若しくは所持する接続犯意に基づき、2012年4月4日からそれが経営する○○○○○○○○○○○○○に位置する「萌漫畫公仔便利屋」の店内陳列棚に公然と付表一に示した海賊版光ディスクを陳列し、事情を知らない店員、黄○芳を雇い、1枚150新台湾ドルで不特定の顧客に販売させて利益を得た。

二 両方当事者の請求内容
(一)上訴の趣旨:被告は著作権法第91条の1第3項、第2項に違反しており、原判決は量刑が不当である。
(二)被告の答弁:著作権法違反に係る事実を包み隠さず認める。

三 本件の争点
(一)本件の行為が著作權法第91条の1第3項規定及び第2項規定の両方に抵触するものか否か。
(二)著作物が他人によって光ディスクの形式で複製されたときは、第91条の1第3項規定の状況を構成するか否か。
1.上訴人の主張:省略。判決理由の説明を参照明。
2.被告の答弁:省略。判決理由の説明を参照。

四 判決理由の要約
一.証拠の証拠能力に関する部分:
供述証拠を斟酌したところ、その任意性には瑕疵がなく、また違法に取得したものでもなく、証明力が明らかに低すぎるという状況もみられない。さらに原審及び本裁判所が審判期間に法に基づいて証拠の調査、弁論を行ったところ、被告の訴訟における手続権がすでに保障されているため、証拠はすべて採用することができる。

二.訊問において被告は前述の著作権法違反の事実を包み隠すことなく認めており、被告の自白は事実と一致しており、採用できるものである。よって本件の事実証拠は明確であり、被告の犯行を確かに認定できるため、法に基づいて論科すべきである。

三.論罪科刑:
(一)調べたところ、被告の行為は著作権法第91条の1第3項の著作財産権侵害に係わる光ディスク複製物であることを明らかに知りながら頒布した罪を犯している。被告が著作財産権侵害に係わる複製物を頒布を意図して公開に陳列し若しくは所持していたという低度の行為(軽い罪)は、頒布したという高度の行為(重い罪)に吸収されるべきなので、別途論罪しない。さらに著作権法第91条の1第3項は同条第2項の加重規定であり、その罪刑はいずれも独立している。このため本件被告は著作権法第91条の1第3項の罪を犯しており、さらに同条條第2項の罪を論じる余地はない。起訴で主張する法条には同条第2項の罪が列挙されているが、これは誤りであることをここに併せて指摘するものである。
(二)被告は事情を知らない店員、黄○芳を利用して付表一に示された違法複製物の光ディスクを販売しており、間接正犯である。被告は付表一に示される著作物財産権侵害に係わる光ディスク複製物であることを明らかに知りながら、2012年4月4日から同年4月19日の摘発日まで、事実欄に示されたとおりの犯行を行った。それは主観的に単一の犯意によるもので、その先後する行為において、時間及び空間的に反復して実行する密接な関係にあり、被告の行為は客観的に包括される一行為を以って評価するのが合理的であり、接続犯に属するため、一罪として論じるべきである。
(三)被告の一の頒布行為は、告訴人である普威爾公司及び木棉花公司の付表一に示される映像著作物の著作物財産権を同時に侵害するもので、これは観念的競合が成立し、刑法第55条の規定に基づき、一の重い刑に従って処断すべきである。
(四)被告が本裁判所の審理において犯行を認め、深く反省しており、告訴人と和解して告訴人の赦しを得ていることを斟酌した。これは本裁判所の2013年3月7日の審理口述記録を証拠とすることができる。一時の気の迷いから法に抵触したことに加えて、著作権法規の高度な技術性と難解性を考慮して、被告は今回の教訓を経て注意深くなっており、再犯のおそれはないため、本裁判所は被告に対して処した刑について執行を猶予することが妥当であると考え、更生のために3年の執行猶予を宣言する。
(五)検察官は上訴において原判決の量刑が不当である云々と主張している。原審はその量刑の理由を詳述しており、量刑の重さは裁判所の職権で行使するものであり、原審の量刑は刑法第57条に定められる各号の科刑の斟酌すべき事項を斟酌している。被告の犯行量に対して妥当な刑について、原審が酌量した刑度はなお比例原則を満たしており、被告の刑度は妥当であるため、検察官の上訴には理由がなく、棄却すべきである。

四.別途無罪の告知を行わない部分:
著作権法条の文義をみると、第91条の1第1項が規定する頒布の対象は「原作品又はその複製物」であり、第2項が規定する散布の対象は「著作財産権侵害に係わる複製物」であり、同上の立法の趣旨、法条の文義及び系統の解釈に基づいて、第91条の1第1項でいうところの「複製物」は「合法な複製物」に限られ、同条第2項でいうところの「複製物」は「違法な複製物」に限られるべきである。従って、契約に複製発行の期限が明記され、約定に違反して期間が満了となった後も在庫の著作副生物を販売し続けた場合に、初めて第91条の1第1項の規定に基づいて処罰すべきである。ナイトマーケット又は商店で海賊版光ディスクが販売される場合、又は第87条第1項第4号に違反する商品(即ち並行輸入違反)を販売した場合、第91条の1第2、3項の規定で処罰されるべきである(最高裁判所98年度台上字第5238号の裁判要旨を参考できる)。一行為が、非親告罪である著作権法第91条の1第3項に規定される違法複製物が光ディスクであるという要件に該当するか否かは、複製物「そのものの性質」、「複製製作の方法、目的」及び「複製製作の質と量」、「以前著作権者から利用許諾を受けたことがあるか否か」等も考慮して観察すべきであることから、著作物が他人によって光ディスクの形式で複製されたことを以ってすぐに第91条の1第3項の罪を構成すると認めることはできない。さもなければ、前述の著作法規定が第91条の1第3項の著作権侵害に係わる光ディスク複製物のみ(著作権法第100条但書規定を参考)を非親告罪とする立法の趣旨に反してしまう。
光ディスク合計1410枚は付表二に示される光ディスクが合法的に利用許諾を受けていない違法複製著作物であると証明するに足る、又は明らかにするものはなく、被告がこの部分についても著作権法第91条の1第3項、第2項の著作権侵害に係わる光ディスク複製物を頒布することを意図して公開に陳列した罪を犯したとは性急に認定し難く、犯罪を証明できないと認定すべきである。

以上の次第で、刑事訴訟法第368条,刑法第74条第1項第2号に基づき主文のとおり判決する。

2013年4月11日
知的財産裁判所第一法廷
裁判長 李得灶
裁判官 歐陽漢菁
裁判官 林靜雯

五 関連条文抜粋
著作権法第91条の1
無断で所有権を移転することにより著作物の原作品又はその複製物を頒布し他人の著作財産権を侵害したものは、3年以下の懲役若しくは拘留に処し、又は50万新台湾ドル以下の罰金に科し、又はこれを併科する。
著作財産権侵害に係わる複製物であることを明らかに知っていながら、これを頒布し、又は頒布を意図して公開に陳列し若しくは所持していたものは、3年以下の懲役に処し、又は7万新台湾ドル以上75万新台湾ドル以下の罰金を併科する。
前項の罪を犯し、その複製物が光ディスクであるときは、6ヵ月以上3年以下の懲役に処し、又は20万新台湾ドル以上200万新台湾ドル以下の罰金を併科する。ただし、第87条第4号に違反して輸入された光ディスクは、この限りではない。
前二項の罪を犯した者がその物品の出所を供述し、これにより(捜査機関による)検挙が成功したときは、その刑を軽減することができる。
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