辞典の内容に係る係争 裁判所は「著作権侵害せず」と判断

2014-04-30 2012年

■ 判決分類:著作権

I 辞典の内容に係る係争 裁判所は「著作権侵害せず」と判断

■ ハイライト
「軽軽鬆鬆査字典」の作者である李○盛は、自らの著作物において間違いやすい部首を表記した「字與不同部首組合体(字と異なる部首の組合体)」という創意を世一文化出版社の「標準国語辞典」に剽窃されたとして、知的財産裁判所に訴訟を提起した。しかし裁判所は、辞典の内容は事実資料であり、個人が独占することはできず、両者の配列(レイアウト)方法もすべてが同じというわけではないため、「標準国語辞典」は著作権を侵害するものではないと認定した。(2012年7月23日/中国時報/C2面)

II 判決内容の要約

知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】100年度民著訴字第35号
【裁判期日】2012年6月29日
【裁判事由】著作権侵害の財産権を巡る争議

原告 李○盛
被告 世一文化事業股份有限公司(Acme Cultural Enterprise Co., Ltd.)
兼法定代理人 莊○根

上記当事者間の著作権侵害の財産権を巡る争議事件について、本裁判所は2012年6月13日に口頭言論を終結し、以下のように判決を下すものである。

主文
原告の請求及び仮執行宣言申立はいずれも棄却する。
訴訟費用は原告が負担するものとする。

一 事実要約
原告は以下のように主張した。被告の世一文化事業股份有限公司(以下「世一公司」)と被告の莊○根は「軽軽鬆鬆査字典」(原名は「小学生形音義辞典」)が原告である李○盛の創作した著作物であると明らかに知りながら、原告の使用許諾を得ずに営利目的で「標準国語辞典」を販売し、原告が創作した「軽軽鬆鬆査字典」における「一」部首から「龍」部首まで169個の部首、合計1,192組に上る「字與不同部首之組合体(字と異なる部首の組合体)」、「部首與不同部首之組合体(部首と異なる部首の組合体)」の著作権(以下「係争著作物」という)を侵害した。わが国と日本の漢字辞書は「単字」、「部首」等の資料の選択と配列に関して、ある程度の相違性がある。中国語には漢字が4万字余りある。そのうち日本の漢字辞典は2千字しか選択していないのに対して、原告の字典は2万6千字余りを選択している。中国語には213個の部首があり、日本語の部首とは統一されていないため、中国語と日本語の漢字は資料の選択と配列の表現に関してある程度の相違性がみられる。被告の「標準国語辞典」は日本の辞典を参考して作ったものではなく、使用している資料の総数、字形、部首総数、画数及び字がどの部首に帰属するかの原則は日本とは異なっているが、原告とは完全に同じであり、明らかに係争著作物の編集著作権は侵害され、また原告の著作人格権も侵害されている。
一方、被告は以下のように主張した。原告が先に編集した「小学生形音義辞典」の中の「易誤判部首単字表」はその創作であり、編集著作権があると主張していたが、原告がいうところの「易誤判部首単字表」は独創性に欠け、著作権法が保護する著作物ではなく、原告が著作権を享有できないことは、前訴において確定されている。原告が本件訴訟で主張しているのは「字與不同部首之組合体」の編集著作物であり、「字與不同部首之組合体」は原告が前訴で主張した「易誤判部首單字表」と比べて異なるところがなく、両者は実質的に同一の編集著作物であり、本件は既判力が及ぶべきもの、又は争点効の適用を受けるべきものであるため、原告は再び争うことはできない。たとえ、原告が主張する「字與不同部首之組合体」の編集著作物が「易誤判部首単字表」と異なる著作物であったとしても、原告が主張する「字與不同部首之組合体」は以前から日本の辞典に見られる表現方法であり、原告による「字與不同部首之組合体」の表現方法には独創性がない。ましてや被告は「字與不同部首組合体」の選字について多くの箇所で原告とは明らかに異なり、被告による資料の選択が複製又は剽窃を構成するとは論断し難い。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求:
1.被告は原告に49万新台湾ドル、並びに起訴状副本の送達翌日から賠償金支払完了日まで年5%での割合による利息を支払うべきである。
2.担保を供託するので、仮執行宣言を申し立てる。
(二)被告の請求:
原告の請求を棄却すべきである。不利な判決を受けた場合は、担保を供託して仮執行免脱宣言を申し立てる。

三 本件の争点
1.係争著作物はわが国の著作権法で保護される編集著作物であるか否か。
2.原告は係争著作物の著作者か否か。
3.本件の法律関係は既判力の及ぶものか否か、又は争点効の適用されるものか否か。
4.被告は原告の所有する「軽軽鬆鬆査字典」の著作権を侵害したか否か。

四 判決理由の要約
(一)創作保護主義:
わが国の著作権法は創作保護主義を採用し、著作者が著作物を完成させた時に著作権を享有できるが、著作権者が享有する著作権は私権のカテゴリーに属し、一般私権の権利者と同じで、その著作権の存在に対しては、立証責任を負わなければならない。したがって、著作権者は著作権を証明するために、その著作物の創作過程、発行及びその他の権利に係わる事項の資料を保留して自己の権利を証明する方法としなければならない。後日、著作権の争議が発生したならば、関連資料を提出して裁判所に認定を受ける必要がある。つまり、原告は係争著作物の著作権者としての身分、独立して創作した証明及び著作物の完成時期を立証する必要がある。調べたところ、以下の通りであった。
1.原告は著作者であり、著作物を完成している:
原告は、原名が「小学生形音義辞典」である「軽軽鬆鬆査字典」、「欧州旅遊辞典」、「巧易成語修辞双解辞典」等の書籍は原告の創作した著作物だと主張し、すでに原告は「小学生形音義辞典」、「軽軽鬆鬆査字典」、「欧州旅遊辞典」、「巧易成語修辞双解辞典」の版権頁を証拠として提出しており、原告が前記著作物の著作者であると認定するのに十分であり、完成した著作物は既にファイルに記録されている。
2.原告の係争著作物には独創性がある:
(1)「欧州旅遊辞典」は編集著作物である。つまり「資料の選択及び配列によって創作性を有する者は、編集著作物であり、独立の著作物としてこれを保護する。編集著作物の保護は、それに収録された著作物の著作権に影響を及ぼさない。」と著作権法第7条に明記されている。「欧州旅遊辞典」に記載されている旅行資料の選択と配列は、その他の旅行書籍とは確かに異なる箇所があり、原告は知恵と精神をそれに注ぎ込み、その個性と独自性を十分に表現しているため、編集著作物として保護してもよいものである。
(2)「巧易成語修辞双解辞典」は原著作物である。いわゆる著作物とは、「文学、科学、芸術若しくはその他の学術の範囲に属する創作」を指すことが著作権法第3条第1項第1号に明記されている。調べたところ「巧易成語修辞双解辞典」は1999年10月に編集され、原告は該辞典に6千余の語彙又は見出し語を収録し、見出し語毎にその意味を解釈しており、確かに知恵と心血を注いだものである。単字の検索について、該辞典は各部首の脇に、「正確部首表(正確な部首表)」がある他、画数順に並んだ「易誤解偏旁之字群(間違いやすい偏旁の字群)」があり、それは従来の検字法とは極めて大きく異なるところである。各部首の最後には、作者が「溯源検字法」を利用した四字熟語の四文字目で検索する方法があり、「修辞」、「成語(四字熟語)」の両方(の辞典)を兼ねた「双解辞典」の目的と機能を達成している。「巧易成語修辞双解辞典」の内容と表現形式については、原告の個性と独自性が表現されており、著作法第5条第1項第1号の「言語の著作物」に該当するため、著作権法保護の客体となるに足る。
 (3)2001年の「小学生形音義辞典」は「巧易成語修辞双解辞典」の二次的著作物である。いわゆる二次的著作物とは、「原著作物を翻訳、編曲、書き換え、映画化又はその他の方法により新たに創作」した著作物をいう。「原著作物を改作した創作は二次的著作物であり、独立の著作物としてこれを保護する。二次的著作物に対する保護は、原著作物の著作権に影響を及ぼさない」とそれぞれ著作権法第3条第1項第11号、第6条に明記されている。原告は見出し語について解釈と説明を追加しており、いずれも精神と知恵の表われである。300余頁に上る追加又は補正補充された資料の質と量からみて、それは原告の個性と独自性を十分に表すものであるので、「巧易成語修辞双解辞典」の二次的著作物に該当し、著作権法保護の客体となる。
(4)2003年の「小学生形音義辞典」は二次的著作物である:「2003年版小学生形音義辭辞典」は資料の選択と追加・補正において、すでに相当な質と量を蓄積しており、原告の個性と独自性が十分に表れているため、独立の著作物として保護を受けることができる。
(5)「軽軽鬆鬆査字典」は著作権法保護の客体である:2007年5月の「軽軽鬆鬆査字典」は原名が「小学生形音義辞典」であり、2001年版と2003年版の「小学生形音義辞典」はいずれも著作権法保護の客体であり、前述の通りである。ゆえに原告の「軽軽鬆鬆査字典」も著作権法保護の客体となる。

(二)本件は前訴の既判力の客観的範囲が及ぶものではない:
別途規定がある場合を除き、「確定判決は裁判の訴訟物に既判力を有する」と、民事訴訟法第400条第1項に規定されている。訴訟法におけるいわゆる「一事不再理の原則」とは、同一の事件についてすでに確定判決があることを指す。また「同一の事件」とは、同一の当事者が同一の法律関係、即ち訴訟物について同一の請求を行うことをいう。同一でないものが一つでもあれば、同一の事件ではなく、確定判決の拘束を受けない。原告は、本件の訴訟物が「字和不同部首的組合体」であり、それは先の12件の判決である「易誤判部首単字表(間違いやすい部首単字表)」、「巧易中文部首快速索引(簡単な中国語部首スピード検索)」とはいずれも異なり、著作物の出版時期も異なる云云と主張している。しかし被告は、裁判所は複数回にわたって原告の係争著作物は著作権法保護の対象ではない、又は原告はその検字法が独創的であることを証明できないとの判決を受けており、いずれも被告がその著作物を侵害してないことを認めるものであるため、本件は既判力が及ぶべきである云々、と抗弁している。本裁判所は本件の訴訟物が確定判決をすでに受け、一事不再理が適用されるか否かを審理した結果を、以下の通り論述する。
1.「巧易成語修辞双解辞典」、「小学生形音義辞典」及び「欧州旅遊辞典」:
(1)前訴の事件:被告の主張によると、原告は先に被告が採用した「巧易成語修辞双解辞典」、「小学生形音義辞典」及び「欧州旅遊辞典」の「巧易中文部首快速索引」が該辞典の著作財産権を侵害しているとして、著作権法第88条第1項の規定に基づき、本件の被告である世一公司に損害賠償責任を負うよう請求した。そして同一の事実を以って、著作権法第88条第1項と会社法第23条の規定に基づき、本件の被告である世一公司、莊○根に対して連帯で賠償責任を負うべきだと請求した。これらの著作財産権侵害の法律関係はいずれも敗訴の確定判決を受けていることがすでにファイルに記録されている。原告はこれを争っておらず、真実であると認めるに足る。
(2)本件の事件と前訴の事件の比較:本件の「軽軽鬆鬆査字典」と前訴の「巧易成語修辞双解辞典」、「小学生形音義辞典」、「欧州旅遊辞典」はいずれも異なる著作物である。かつ本件における権利侵害疑義著作物は2010年版「標準国語辞典」であり、前訴における権利侵害疑義著作物は被告である世一公司の2002年版「実用国語辞典」、2003年版「新編国語辞典」及び2004年版「新編国語辞典」、「常用国語辞典」、「新選広用国語辞典」、「学生標準国語辞典」、「活用国語辞典」、「新編実用国語辞典」、「新編国語辞典」である。このため、本件の原告が起訴し主張する侵害の原因事実について、先の民事判決内容と比べると、両者の「著作物」と「権利侵害疑義対象」が異なり、同一の事由で被告に損害賠償責任を負うよう起訴し請求したものではなく、本件は先の民事確定判決の既判力が及ぶ範囲ではないと認めるに足る。
2.「軽軽鬆鬆査字典」の著作財産権と著作人格権:
(1)前訴の事件:被告の主張によると、原告は被告が採用した「軽軽鬆鬆査字典」の「巧易中文部首快速索引(簡単な中国語部首スピード検索)」が該字典の著作財産権と著作人格権を侵害しているとして、著作権法第88条第1項、第85条第1項及び会社法第23条等の規定に基づいて、本件の被告である世一公司、莊○根に連帯で損害賠償責任を負うよう請求した。これらの著作財産権と著作人格権の侵害等の法律関係は、いずれも敗訴の確定判決を受けていることがすでにファイルに記録されている。原告はこれを争っておらず、真実であると認めるに足る。
(2)本件の事件と前訴の事件の比較:本件の原告が起訴し主張する侵害の原因事実について、先の民事判決内容と比べると、原告はいずれも「軽軽鬆鬆査字典」の著作物を訴訟物としており、前後の訴訟の当事者も同じである。法律関係はいずれも著作財産権と著作人格権であるが、権利侵害疑義著作物は本件が2010年版「標準国語辞典」であり、前訴が被告である世一公司が出版した2002年版「常用国語辞典改訂第一版」である。本件の著作物は「字與不同部首之組合体(字と異なる部首の組合体)」、「部首與不同部首之組合体(部首と異なる部首の組合体)」であり、前訴の著作物は「巧易中文部首快速索引」である。このため、原告が前訴と本件の訴訟で指摘している被告による「軽軽鬆鬆査字典」著作物の権利侵害行為は、両者の出版時期と著作物が前後の訴訟で異なるため、その原因と事実の間には隔たりがあり、本件の原告の起訴と前訴と同一の事件だとはいい難い。本件も前述の民事確定判決の既判力が及ぶものではない。

(三)本件は争点効が適用されない:
いわゆる争点効とは、裁判所の確定判決理由において、訴訟物以外の当事者が主張する重要な争点について、当事者の弁論の結果すでに判断されているとき、明らかに法令に反する、又は当事者がすでに新たな訴訟資料を提出し、それが原判断を覆すに足るという状況を除き、同一の当事者は重要な争点と関連する提起したその他の訴訟において、再び相反する主張を行ってはならず、裁判所も相反する判断を行ってはならず、民事訴訟法の信義誠実の原則を満たさなければならない。争点効の適用は、前後の訴訟の当事者が同じでなければならず、かつ前訴の重要な争点について明らかに法令に反しておらず、当事者が原判断を覆すに足りる新たな訴訟資料を提出していない等の状況があってこそ相当する。被告は、裁判所の確定判決ではすでに被告が係争著作物を侵害していないと認められているため、本件は争点効が適用され、原告は再び争うことはできない云々と抗弁している。しかし本案と前訴では争う著作権、著作物及び権利侵害行為がいずれも異なり、これは著作権侵害の重要な争点である。本裁判所は前訴の判決理由における争点(即ち、本件の訴訟物以外の当事者が主張する重要争点と当事者の弁論の結果)に基づいて、判断することはできない。これにより、たとえ、本件と前訴が関連事件で、当事者が同じであり、いずれも著作権侵害による民事事件であるが、前訴の裁判所は双方による本件の重要争点を判断していない。十分に本件の当事者に訴訟上の攻撃防御方法提出権を十分に保障するため、本件は争点効を適用しない。

(四)原告の「字與不同部首之組合体」には独創性がある:
「資料の選択及び配列によって創作性を有する者は、編集著作物であり、独立の著作物としてこれを保護する。編集著作物の保護は、それに収録された著作物の著作権に影響を及ぼさない」と著作権法第7条に規定されている。「易誤解部首(間違いやすい部首)」の「字與不同部首之組合体(字と異なる部首の組合体)」が、相当の創意と原告の個性を表現できるものであれば、その編集著作権は保護されるべきである。
1.原告の「軽軽鬆鬆査字典」は編集著作物である:
資料の選択と編集について、原告は勤勉に資料収集を行った他、資料の選択と配列についても創作性があり、原告の個性と独自性を十分に表現しているため、編集著作物の要件を満たしており、著作権保護の対象となる。
2.「軽軽鬆鬆査字典」は独立の著作物である:
被告は、原告の主張する「字與不同部首之組合体」は以前から日本の字典にみられる表現方法であり、原告の表現方法には独創性がない云々と抗弁している。しかしながら、中国語と日本語の文字は異なり、両者の部首も相違性が極めて大きく、日本語の中の漢字も中国語とすべて同じというわけではないため、わが国と日本の漢字辞書は「単字」、「部首」等の資料の選択と配列について大きな相違性が存在し、それぞれの表現方法を有する。原告の「軽軽鬆鬆査字典」を参酌したところ、その客観的表現方法は日本の字典における選択及び配列とは異なる。このため、「軽軽鬆鬆査字典」は独立の著作権であり、他人の著作物を複製又は剽窃したものではない。

(五)被告の「標準国語辞典」は原告の「軽軽鬆鬆査字典」を複製又は剽窃していない:
原告が選択した「字與其部首之組合体」について、被告は一部選択しているが、個別の「字與其部首之組合体」自体はその他の表現方法を採用しにくいものであり、それは事実資料に属し、個人が独占することはできないため、著作権法の保護を受けることはできない。被告と原告が選択した「字與其部首之組合体」のみは同じであるが、なお両者が編集著作物の複製又は剽窃を構成するとは論断できず、編集著作物の性質から、双方が資料の選択と配列について複製と剽窃を構成しているか否かを判断する必要がある。本裁判所は以下の通り検討した。
1.被告による資料の選択は複製又は剽窃を構成しない:
いわゆる「アイディアと表現の融合法理」とは、アイディアと表現が識別できない若しくは分離できない、又は思想若しくは概念の表現方法がたった一つ若しくは極めて限られているとき、表現とアイディアを融合しているとして、著作権法保護を認めないというものである。さもなければ思想も著作権法で保護されることになり、思想が独占されてしまうためである。人類の文化、芸術の発展に影響を与えるのみならず、憲法が人民の言論、講学、著作及び出版の自由等の基本的人権に対する保障を侵害してしまう。「アイディアと表現の融合法理」に該当する場合、著作物に実質的類似があっても、著作権侵害は構成しない。調べたところ、以下の通りである。
(1)表現とアイディアの融合:原告が選択したすべての「字與其部首之組合体」を被告も一部選択しており、「字與不同部首之組合体」において両者に大量の重複がみられる。しかしすべての部首には間違いやすいという状況があり、本質的には局限的である。両者の辞典又は字典はいずれも小学生と中学生向けに編集されており、間違えやすい部首の選択又は「字與不同部首之組合体」が難しくなりすぎないようにするために多くの制限を受けることは避けられず、同じ表現が多々生じてしまい、表現方法が限られ、概念や表現が一致することもある。
(2)実質的類似は成立しない:被告が「字與不同部首組合体」の選字において、多くの箇所が原告とは異なり、それは著作物の重要部分であり、被告による「字與不同部首組合体」選択の客観的表現が異なることを十分に示しているため、実質的類似は成立しない。このため、被告の資料選択が原告の「軽軽鬆鬆査字典」に対する複製又は剽窃を構成しているとは論断できない。
2.被告による資料の配列は複製又は剽窃を構成しない:
(1)表現方法は独占されない:原告の「字與不同部首組合体」と被告の「標準国語辞典」の両者の編集方法はいずれも「字」の下方の括弧内に部首を配列しており、その字がある頁数を標示しているが、これは簡単な表現方法であり、いかなる者も独占して著作権の保護を受けることはできない。さもなければ、人民の言論、講学、著作及び出版の自由等の基本的人権に対する保障を侵害してしまう。
(2)配列の形式は大量に複製されていない:原告の「軽軽鬆鬆査字典」と被告の「標準国語辞典」の両者の配列の最も大きな相違は、被告の「易誤判為該部首之字(間違いやすいその部首の字)」において画数順に配列されておらず、明らかにありきたりなものではない。また、両者は「字與不同部首之組合体」における配列形式が必ずしも同じではない。編集著作物の保護される創作性が「資料の配列」にあることに鑑みて、その「配列形式」が大量に複製されていなければ、被告が原告の「資料の配列」に対して複製又は剽窃を構成することを証明するのは難しい。

(六)以上をまとめると、被告の著作物「標準国語辞典」は原告の編集著作物「軽軽鬆鬆査字典」を複製又は剽窃しておらず、原告の著作権を侵害していないと認定するに足るため、原告は著作権侵害の法律関係に基づき、被告に対して連帯損害賠償請求権を行使してはならない。つまり原告が著作権法第85条第1項、第88条第1項、第3項及び会社法第23条等の規定に基づき、被告に49万新台湾ドル、並びに起訴状副本の送達翌日から賠償金支払完了日まで年5%での割合による利息を連帯で支払うよう請求することには理由がなく、棄却すべきである。原告の請求を棄却したことにより、仮執行宣言申立もその理由を失うため、併せて棄却すべきである。

2012年6月29日
知的財産裁判所第二法廷
裁判官 林洲富

五 関連条文
著作権法
第7条
資料の選択及び配列によって創作性を有する者は、編集著作物であり、独立の著作物としてこれを保護する。
編集著作物の保護は、それに収録された著作物の著作権に影響を及ぼさない。

第10-1條
この法律により受けた著作権は、その保護が当該著作物の表現にのみとどまり、それによって表現しようとする思想、手順、製造工程、システム、操作方法、概念、原理、発見には及ばない。

第85条
著作権人格権を侵害した者は、損害賠償の責任を負わなければならない。財産上の損害ではない場合においても、被害者は相当の金額の賠償を請求することができる。
前項の侵害について、被害者は著作者の氏名又は名称の表示、内容の訂正又はその他名誉回復に適当な処分を請求することができる。

第88条
故意又は過失により他人の著作財産権又は出版権を不法に侵害した者は、損害賠償の責任を負う。数人が共同で不法に侵害したときは連帯して賠償責任を負う。
前項の損害賠償について、被害者は次の規定により択一して請求することができる。
一.民法第216条の規定により請求する。ただし、被害者がその損害を証明できないときは、その権利の行使により通常の状況からして予期できる利益から、侵害を受けた後に同一の権利を行使して得た利益を差し引いた差額を以ってその受けた損害の額とすることができる。
二.侵害者に対して侵害行為により得た利益を請求する。ただし、侵害者がその原価又は所要費用を証明できないときは、その侵害行為により取得した全部の収入をその得た利益とする。
前項の規定により、被害者が容易にその実際の損害額を証明できないときは、裁判所に対して損害の情状を斟酌して1万新台湾ドル以上100万新台湾ドル以下の賠償額を算定するよう請求することができる。損害行為が故意に為され、かつ情状が重大な場合は、損害額を500万新台湾ドルにまで増やすことができる。

会社法
第23条
会社の代表者は、忠実に業務を行い、善良な管理者としての注意義務を尽くさなければならず、これに違反して会社に損害を与えた場合は、損害賠償責任を負わなければならない。
会社の代表者は、会社業務の執行において、法令に違反し第三者が損害を受けるに至った場合、第三者に対して会社と連帯して賠償責任を負わなければならない。
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