「老天祿」商標戦 「武昌街老天祿」勝訴

2020-04-23 2019年
■ 判決分類:商標権

I 「老天祿」商標戦 「武昌街老天祿」勝訴

■ ハイライト
 ダックタン(鴨の舌)の煮込みで有名な「武昌街老天祿」は、祿大食品の責任者周映明が「上海老天祿」二代目の名目で広告宣伝し、ウェブサイトに武昌街店舗の写真を掲載して、「武昌街老天祿」店舗から60メートル離れた場所で、金饌企業社と提携し、金饌の店舗で「上海老天祿」商標を使用した滷味(野菜などを煮込んだ軽食)を販売していることが、消費者に滷味商品が「武昌街老天祿」の商品なのか、またはお互いに加盟関係があるのか、と誤認混同させやすいと指摘した。そして「老天祿」等商標権を侵害したと訴えたところ、知的財産裁判所により「武昌街老天祿」の勝訴が認められた。しかし本件はまだ上訴できる。
 祿大食品の責任者周映明は、「上海老天祿二代目のオリジナルメーカー」または「上海老天祿二代目の店」の文字を使用し、「上海老天祿創始者の二代目」であり、「上海老天祿旧店」から技術を承継した、と表彰することが目的であり、「上海老天祿」を商標として使用したのではないと答弁した。
 裁判官は祿大食品が使用した文字の中のもっとも識別性を有する「老天祿」の3文字は、消費者に原告の「老天祿」商標と関係があると誤認混同させやすいので、祿大食品が「老天祿」登録商標を侵害したと認めた。又、祿大食品の責任者周映明は「上海老天祿」商標の使用は善意による先使用であると抗弁したが、これに対して裁判官は、周が挙証したのは「上海老天祿」商標の焼き菓子、あめ等での先使用であり、滷味商品での先使用ではなかったので、善意による先使用に該当しないと認め、祿大食品及び金饌企業社の宣伝資料に二度と「老天祿」の関連商標等を使用してはならないと判決した。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】108年民商訴字第8号
【裁判期日】2019年06月24日
【裁判事由】商標権侵害排除等

原告 謝玉泉即ち老天祿食品
被告 許俊傑即ち金饌企業社
被告 祿大食品有限公司

上記当事者による商標権侵害排除等事件について、2019年5月27日に当裁判所における口頭弁論を終了し、以下の通り判決する。

主文
1. 被告許俊傑、即金饌企業社、祿大食品有限公司は付表甲欄に示す通りの商標と同一または類似のものを付表乙欄に示す通りの商品と同一または類似のものに使用してはならず、上記の通りに使用した広告看板、シール、パネル、吊り看板、商品包装箱、商品カタログ、ウェブページ、フェイスブックページまたはその他マーケティング物品をすべて廃棄または削除すべきである。
2. 原告のその他の訴えを棄却する。
3. 訴訟費用の15%は原告の負担とし、残りは被告の共同負担とする。

一 事実要約
本件原告の主張は次の通りである:原告はわが国商標登録第00242159、01404218、00870559、00870558、01308342号及び「老天祿」関連商標(以下拠争商標という)の商標権者である。被告金饌企業社(以下金饌企業という)は原告の同意を得ずに、原告の店舗から60メートルを超えないところで「上海老天祿」商標(以下係争商標という)を使用して滷味を販売し、また被告祿大食品有限公司(以下祿大公司という)は各プラットフォーム、実体店舗の看板に係争商標を使用し、すでに原告の引用商標における商標権を侵害した。そのため、原告は本件訴訟を提起し、侵害排除及び防止を請求した。これに対して、被告は善意による先使用であり、商標使用ではない等と抗弁した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求
1. 金饌企業、祿大公司は「老天祿」商標図形と同一または類似のものを引用商標の指定商品/役務と同一または類似のものに使用してはならず、並びに「老天祿」商標図形と同一または類似の広告看板、シール、パネル、吊り看板、商品包装箱、商品カタログ、ウェブページ、フェイスブックページまたはその他マーケティング物品をすべて廃棄または削除すべきである。
2. 被告等が費用を負担し、本件判決書の番号、当事者、事由欄及び主文の全文を細明朝体黒10号字体で聯合報、中国時報、自由時報及び蘋果日報の全国版第一面に一日掲載すべきである。
(二)被告の請求:原告の訴えを棄却する。

三 本件の争点
(一)商標使用ではないとの被告による抗弁は成立するか?
(二)祿大公司、周映明の善意による先使用の抗弁は成立するか?

以上の争点を判断した結果、(一)商標使用ではないとの被告による抗弁は不成立である(二)祿大公司、周映明の善意による先使用の抗弁も不成立である。

四 判決理由の要約
(一)被告による商標使用ではないとの被告による抗弁は不成立である。
1. 金饌企業は店内で祿大公司の滷味商品を販売し、並びに「上海老天祿二代目のオリジナルメーカー」、「上海老天祿台湾二代目のオリジナルメーカー」、「上海老天祿台湾二代目のインスタントオリジナル滷味」の文字を使用し、祿大公司の滷味商品を描写していた。又、祿大公司は販売していた滷味商品に「上海老天祿二代目のオリジナルメーカー」、「上海老天祿二代目の店」等文字を使用し、自社の商標「祿大」と併せて示していた。
2. 問題は次のことにある。上記金饌企業及び祿大公司が使用した文字が商標使用に該当するか否かについて、「上海老天祿二代目のオリジナルメーカー」は文字から、商品の出所が元「上海老天祿」経営者の子女が創立したメーカーであるという意味を示しているが、実質的に、商品の出所が「上海老天祿」の経営者とある関係が存在していることを示し、または関連消費者にこのような連想または感覚を持たる意味があり、商品と特定の符号標識とを連結し、その間に連結関係を結ぶということは商標と同一の効果と機能がある。よって、「上海老天祿二代目のオリジナルメーカー」という文字は実は商標の効果、機能のある商標使用である。
3. 金饌企業と祿大公司は上記文字を滷味商品に使用し、引用商標が使用を指定している商品と類似、または同一であり(付表乙欄と対照)、且つその中のもっとも識別性のある部分は「老天祿」という文字であり、引用商標と同一で、関連消費者に「老天祿」商標の商品との出所が関連していると連想、または誤認させるので、引用商標の排他効力の及ぶ範囲にある(即ち、これ等の文字の使用は、すでに商標法第68条引用商標の商標権侵害を構成する)。

(二)祿大公司、周映明の善意による先使用の抗弁も不成立である。
祿大公司、周映明が挙証した「上海老天祿」商標先使用の状況によると、「上海老天祿茶食品糖果総号」を使用した看板写真、及び「上海老天祿食品有限公司登記事項表」(その営業事項に「一、焼き菓子、あめ及びその他食品の製造販売業務二、各種類の缶詰、食品、ギフトの売買業務」と記載している)を含め、いずれの「上海老天祿」商標も滷味商品に先使用していた状況を認めることができないので、祿大公司、周映明は「上海老天祿」商標をもって滷味商品での善意による先使用を抗弁することができない。
 
(三)新聞掲載という措置は不必要
商標権は無体財産権に該当し、無体財産権の権利境界については、裁判所の判決を受けたり、または類似判決が出る前は、明確に範囲を定めたり、予見したりすることができない。この部分において、境界について裁判所から判決を受けた場合、併せて侵害排除及び防止を請求することができるが、さらに侵害者に判決結果の内容の全部または一部を新聞に掲載するよう要求することは、苛酷になり、バランスを失うおそれがあるので、商標法第69条第2項但書の必要な措置に該当しないと認めるべきである。よって、判決の一部を新聞に掲載する措置は必要ではない。

(四)以上の説明をまとめると、本件原告の訴えについて、本判決主文の第一項は支持することができるため、許可すべきであるが、その他部分は認めることができないため、棄却すべきである。

2019年6月24日
知的財産裁判所第三法廷
裁判官 蔡志宏
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