商標戦 台湾靴下業者がディズニーを破る

2020-03-24 2019年
■ 判決分類:商標權

I 商標戦 台湾靴下業者がディズニーを破る

■ ハイライト
米国企業・ディズニーエンタープライズ(DISNEY ENTERPRISES, INC)が「Disney小公主蘇菲亜及び図形」(ディズニー小さなプリンセスソフィア及び図形)商標を知的財産局に登録出願したのに対して、洋服・靴下を製造している立蕎服飾行が自社で「蘇菲亜SOPHIA」を先に登録出願していると主張したので、両者の商標争いが始まった。知的財産裁判所は、立蕎が先に登録出願したため、ディズニーの商標を取り消すべきであると認定した。案件は上訴することができる。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】107年度行商訴字第77号
【裁判期日】2019年6月27日
【裁判事由】商標異議

原 告 朱峻葳
被 告 経済部知的財産局
参加人 米国企業・ディズニーエンタープライズ(DISNEY ENTERPRISES, INC)

上記当事者間の商標異議事件につき、原告は経済部による2018年8月2日付経訴字第10706307520号訴願決定を不服とし、行政訴訟を提起した。本裁判所は、参加人に被告の訴訟に独立参加を命じ、且つ次のとおり判決する。

主文
訴願決定及び原処分をともに取り消す。
被告は第1815676号「Disney小公主蘇菲亜及び図形」(ディズニー小さなプリンセスソフィア及び図形)商標登録の取消処分を下すべきである。
訴訟費用は被告の負担とする。

一 事実概要
参加人は2015年11月9日に「Disney小公主蘇菲亜及び図形」商標を当時の商標法施行細則第19条所定の商品及び役務区分表第25区分のエプロン等商品に使用指定し、且つ被告に登録出願した。被告は審査したうえ、第1815676号商標(以下係争商標という)として登録査定した。また、原告は係争商標の登録出願について、商標法第30条第1項第10号の規定に違反するとして、原告が登録した第188171号(以下「引用商標1」という)及び第801240号「蘇菲亜Sophia」商標(以下「引用商標2;併せて「引用商標」という)をもって異議を提出した。被告は審査したうえ、107年3月26日中台異字第1060248号商標異議審決書をもって異議不成立との処分(以下原処分という)を下した。原告がこれを不服とし、訴願を提起したところ、経済部が107年8月2日経訴字第10706307520号決定をもって、棄却したが、原告はなおも不服として、本裁判所に行政訴訟を提起した。
原告は請求趣旨により、判決をもって原処分と訴願決定を取り消し、且つ被告は第01815676号「Disney小公主蘇菲亜及び図形」登録商標の取り消しを審決すべきであると求めた。
被告は請求趣旨により、判決をもって原告の訴えを棄却するよう求めた。

二 判決理由
(一)商標が「同一又は類似の商品又は役務における他人の登録商標又は先に出願された商標と同一又は類似であり、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるもの」に該当するときは、登録を受けることができないと商標法第30条第1項第10号に規定されている。いわゆる「関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある」ものとは、二商標が同一又は類似を構成するため、同一又は類似の商品/役務の関連する消費者に二商標が同一の商標であるとの誤認を生じさせるか、又は二商標が同一の商標であるとの誤認は生じさせなくても、二商標の商品/役務が同一の出所に由来するシリーズ商品/役務であると誤認させる可能性が極めて高いか、又は二商標の使用者に関係企業、許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在すると誤認させるものをいう。また、誤認混同のおそれがあるかどうかを判断するにあたっては、商標識別性の強弱、商標の類似程度、及び商品/役務の類似等関連要素の強弱程度、相互影響関係及び各要素等を参酌して、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるかを包括的に認定すべきである。

(二)二商標の類似程度が高い。
わが国は、非英語圏であるので、政府機関及び民間で普通使用している文字は中国語であり、国民が受ける教育も、中国語で行うのが殆どである。それ故、英語で表現する物事について、国民は主に中国語に翻訳してこれを理解且つ表現し、ひいては一般の知識と経験を有する関連消費者は、中国語を使用した商標について、中国語の表現する意味から判断するので、引用商標の中国語「蘇菲亜」は、明らかに消費者の注意を引く部分である。更に係争商標と引用商標には、同一の中国語「蘇菲亜」があり、消費者にとって、「蘇菲亜」と呼称したり、これを識別の対象とすることが当然一番便利である。それ故、二商標の中国語「蘇菲亜」は、明らかに関連する消費者が記憶又は識別する主要部であり、且つ関連する消費者も引用商標の「蘇菲亜」が係争商標の「小公主蘇菲亜」であると認める可能性がある。よって、二商標の類似程度は高い。

(三)二商標が登録、使用している商品は同一又は類似であり、且つ類似程度も高い。
係争商標を使用する指定商品と、第188171号、801240号引用商標をそれぞれ使用している指定商品とを比較すれば、二者ともに、人が着用し、又は美しい装飾、シェード保護の用途があるほか、且つ常に同一又は類似の場所で販売され、材料、機能、用途、製造者、消費者、販路及び販売場所等の要素において共通又は関連する箇所があるので、一般的社会通念及び市場での取引状況に基づけば、同一又は類似の商品を構成し、且つ類似程度も高い。

(四)商標識別性の強弱について:
引用商標は、周知されている外国女性の名前「Sophia」及びその中国語訳名「蘇菲亜」から構成されているが、指定商品と関連性がないので、相当な識別性があるはずである。また、係争商標の「Disney」、「小公主」及び「蘇菲亜」等文字も、その指定商品に関する説明文字に該当しないので、消費者が出所を指示及び区別する標識として認識するため、相当な識別性がある。

(五)関連消費者の二商標に対する熟知度:消費者は係争商標のほうをより熟知している。

(六)参加人が善意で係争商標を登録したとは認定できない。
係争商標と引用商標の類似程度が高く、その使用している商品の類似程度も高いことは、前述の通りである。原告は消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあることを懸念し、参加人と協議のうえ、消費者に係争商標が参加人会社の商標であると識別させ、消費者の誤認混同を避けるため、係争商標の「Disney」英文字の拡大、「蘇菲亜」文字の縮小を参加人に提案した。しかし、参加人はこれを拒否したので、仮に参加人に善意があれば、なぜ原告の提案を全く検討しなかったのか、またもし原告の提案で消費者による誤認混同を避けることができなければ、参加人は係争商標を登録すべきではない。このため、係争商標の登録が善意によるものであるとは認定できない。

(七)係争商標の登録は関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある。
係争商標と引用商標が提供する商品はともに、人が着用する物品であり、又は組み合わせて使用する関係があり、機能、材料、製造者又は他の要素において共通する又は関連する箇所があるので、もし同一又は類似の商標を表示するならば、一般的社会通念及び市場での取引状況から、関連する消費者に同一の出所に由来するものであり、同一又は類似の商品を構成するはずであると誤認させやすいほか、類似の程度が高い。よって、一般の知識、経験を有する消費者が購入の際に普通に注意しても、係争商標の商品又は役務が、引用商標の商品又は役務と同一の出所に由来するか、又は二商標の使用者の間に関連企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在するとの誤認混同が生じる可能性がある。

(八)わが国における商標法は先願登録主義を採っている。
わが国の商標法は登録主義を採用している。つまり、最も先に登録した出願人が商標権を取得すべきである。たとえ、後願の商標権者に先願の商標権者の名声・信用にあやかる目的がないとしても、後願商標はすでに消費者が先願商標の商品又は役務を識別する能力に影響を及ぼし、これにより関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある。よって、後願の商標権者が恣意的にその市場における強い地位を利用して、先願商標権の価値及び発展の機会を奪い、二商標が衝突した際には、先願登録主義の原則により、保護すべきなのは先願商標であり、後願商標ではないことは当然である。たとえ、消費者が後願商標をより熟知しているとしても同様であるので、他の比較法例においても同じである。この制度におけるもう一つの目的は、市場における公正な競争を確保し、大きな財力を持つ企業が強力なマーケティングの力をもって先に登録された商標を奪い取ることを避けることにある。本件引用商標は早くも1981年12月8日及び1997年4月14日に登録出願され、1982年9月1日及び998年4月16日にそれぞれ登録査定されたが、係争商標は2015年11月9日に登録出願され、2017年1月1日に登録査定されたことから、引用商標が先に登録された商標であり、前記の説明により、先に保護を受けるべきである。

前記を総合すると、係争商標の登録は、商標法第30条第1項第10号の規定を適用すべきであるので、被告が行った異議不成立の処分は適切ではないばかりか、訴願決定の維持も妥当を欠くものである。原告が、原処分及び訴願決定を取消し、被告に係争商標の登録取消し処分を命じるよう申し立てたことには理由があるので、主文の通り判決する。

以上を総じて、原告の訴えには理由があるので、知的財産案件審理法第1条、行政訴訟法第200条第3号、第98条第1項前段に基づき、主文の通り判決する。

中華民国108年6月27日
知的財産裁判所第一法廷
審判長裁判官 李維心
裁判官 林洲富
裁判官 陳忠行
 
SOPHIA 
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