「玉里想」に類似で提訴された「理想」牌が勝訴、商標は維持

2017-01-24 2016年
■ 判決分類:商標権

I 「玉里想」に類似で提訴された「理想」牌が勝訴、商標は維持

■ ハイライト
「玉里想」ブランドで湯沸し器、ガスレンジを製造、販売している全鉅多有限公司は、理想牌有限公司(Lisian Co., Ltd.)の「理想」商標が「玉里想」商標と類似しているとして、(知的財産裁判所に)「理想牌」商標の登録取消しを請求する訴訟を提起した。同裁判所は審理した結果、両商標はそれぞれ二文字と三文字であり、外観がやや類似しているが、称呼及び観念は異なっており、かつ「理想」商標は1967年に登録され、その後理想牌有限公司が使用するようになり、また理想牌有限公司も1993年に台湾瓦斯器材工業同業公会(Taiwan Gas Appliance Manufacturers Association,以下「瓦斯公会」。訳注:台湾地区のガス機器同業組合)に加入してTGAS標章を取得しており、全鉅多有限公司と同じ瓦斯公会会員として長年にわたり市場に並存してきたため、消費者に誤認混同を生じさせることはないと認め、全鉅多有限公司敗訴の判決を下し、理想牌有限公司は商標を維持することができた。(2016年1月27日工商時報)

II 判決内容の要約

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】104年度行商訴字第114号
【裁判期日】2016年1月7日
【裁判事由】商標異議

原  告 理想牌有限公司
被  告 経済部知的財産局
参加人 全鉅多有限公司

上記当事者間における商標異議事件について、原告は経済部2015年6月30日経訴字第10406309880号訴願決定を不服として行政訴訟を提起した。本裁判所の決定により参加人に対し被告の訴訟に独立して参加するよう命じた。本裁判所は次のとおり判決する。

主文
訴願決定及び原処分をいずれも取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。

一 事実要約
原告は以前「理想」商標について出願当時の商標法施行細則第13条に定められる商品及び役務区分表第11類の商品での使用を指定して該商標の登録を被告に出願した。被告は審査した結果、登録1531565号商標(以下「係争商標」)として登録を許可した。その後参加人はこれに対して異議を申し立てた。被告は審理した結果、「異議不成立」の審決を下した。参加人がこれを不服として行政訴願を提起したところ、経済部は「原処分を取り消し、改めて原処分機関が適法な処分を行う」との決定を下した。被告は改めて審理した結果、係争商標の登録を取り消す処分を行った。原告はこれを不服として行政訴願を提起したが、経済部は棄却を決定した。原告はなおも不服として、その後裁判所に行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求:訴願決定及び原処分をいずれも取り消す。
(二)被告の答弁:原告の請求を棄却する。

三 本件の争点
係争商標は商標法第30条第1項第10号に該当して登録を受けることができないか否か。
(一)原告の主張理由:省略。判決理由の説明を参照。
(二)被告の答弁理由:省略。判決理由の説明を参照。
(三)参加人の主張理由:省略。判決理由の説明を参照。

四 判決理由の要約
(一)商標法第30条第1項第10号本文には、同一又は類似の商品又は役務における他人の登録商標又は先に出願された商標と同一又は類似であり、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるものは、登録を受けることはできないと、規定されている。いわゆる「関連の消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある」とは、両商標が同一である又は類似を構成することにより関連する消費者に、同一の商標であると誤認させる、又は両商標が同一商標であると誤認させるにいたらないものの、両商標の商品/役務が同一の出所からのシリーズ商品/役務である、又は両商標の使用者の間に関連企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在すると誤認させる可能性が極めて高いことをいう。次にいわゆる「両商標が同一である又は類似を構成する」かは、普通の知識・経験を有する一般商品の消費者が購買時に普通の注意を払い、両商標の要部の外観、観念又は称呼について隔離的に観察したとき、誤認混同を生じさせるおそれの有無で判断する。

(二)調べたところ、係争商標(判決書の添付資料添付図一を参照)は左から右へ横書きされた中国語「理想」2文字で構成され、その字体はよく見かけられる中国語の字体であり、文字にはいかなる変更も特殊なデザインも加えられておらず、シンプルな文字の外観と意味に商標デザイナーが伝えようとするいかなるコンセプトやイメージももたらされていないため、シンプルな中国語文字の商標に該当する。一方、引用商標(判決書の添付資料添付図二を参照)は左から右へ横書きされた中国語「玉里想」3文字で構成される文字の商標、又は左上から右下へ斜めに書かれた中国語「玉里想」3文字で構成される文字の商標であり、文字にはいかなる変更も特殊なデザインも加えられておらず、シンプルな文字の外観と意味に商標デザイナーが伝えようとするいかなるコンセプトやイメージももたらされていないため、これもシンプルな中国語文字の商標に該当する。
双方の商標を構成する中国語は、文字数に2文字、3文字という違いがあり、最初の文字も「理」と「玉」で異なっており、さらに引用商標である第490005、481264号商標と係争商標とは斜め書きと横書きの違いがあり、双方の商標は外観上、明らかな違いがある。また、称呼については、双方商標の中国語は字数が異なるため、発音も二音節と三音節で異なり、さらに前述のとおり最初の文字が異なるため、双方の商標を一連に称呼すると、明らかに異なる。
観念についてみると、係争商標で用いられる中国語「理想」という2文字は中国語固有の語彙であり、「未来の事物に対する希望及び想像」並びに「満足させる、希望に沿っている」を意味するもので、係争商標は「理想」の2文字を通じてそれが表現しようとする意味合いを伝達している。一方、引用商標で用いられる中国語「玉里想」という3文字は、中国語固有の語彙ではなく、商標デザイナーが創造したもので、その語彙を通じて特定の意味合いを消費者に伝えることはできず、双方の商標は観念上も異なっているため、双方の商標の類似度が高いとは言い難い。

(三)係争商標と引用商標はいずれも湯沸し器と台所用品での使用が指定されており、同一又は高度に類似する商品であるが、双方の商標を比較すると類似度が高くないことは前述のとおりである。係争商標の中国語「理想」は原告及び原商標権者によって長年にわたり前述商品に使用されており、印刷されたカタログにマーケティングと販売の事実があり、関連する消費者は「理想」が原告によって上述商品に用いられた商標であると認識できるはずである。
双方の商標が表彰される商品はいずれも一定の販売量があり、係争商標が表彰される商品の販売量は引用商標が表彰される商品よりも数倍多い。よって関連する消費者は識別でき、双方の商標の商品が同一の出所からのシリーズ商品である、又は双方の商標の使用者の間に関連企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在すると誤認混同させるには到らず、誤認混同のおそれはない等の原告主張は、採用できないものではない。

(四)以上をまとめると、係争商標の登録は商標法第30条第1項第10号に該当しない。被告が係争商標異議申立案件について、経済部2014年10月2日経訴字第10306110070号訴願決定趣旨(訳注:「異議不成立の原処分を取り消し、原処分機関が改めて適法の処分を行う」とする決定)に基づいて改めて審理を行い、係争商標の登録を取り消すとの審決を下したことには誤りがあり、訴願決定でその(原告の)訴願を棄却したことも法に合わない。したがって、原告が原処分と訴願決定を取り消すよう請求することには理由があり、許可すべきである。

(五)以上の次第で、本件原告の請求には理由があり、智慧財產案件審理法(知的財産案件審理法)第1条、行政訴訟法第98条第1項前段により、主文のとおり判決する。

2016年1月7日
知的財産裁判所第一法廷
裁判長 陳忠行
裁判官 林洲富
裁判官 熊誦梅
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