新旧「港園」麺店の商標をめぐる係争で老舗が敗訴

2016-12-28 2015年
■ 判決分類:商標権

I 新旧「港園」麺店の商標をめぐる係争で老舗が敗訴

■ ハイライト
    高雄で60年の歴史を持つ老舗「港園麺館」は三代にわたって牛肉麺の味を受け継いできたが、家族の内輪揉めが発生し、家族の構成員が「銘邦港園」という新しいブランドで麺店をオープンした。高雄地方裁判所は昨年8月に老舗敗訴の判決を下し、老舗は上訴を提起していた。知的財産裁判所は、その家族は利益の均等分配、商号の分かち合いを伝統とし、老舗は管理権を有するにすぎないと認め、上訴を却下するとともに、上告してはならないと決定した。
    食事の時間帯になると、港園麺館はいつも満席で、蒋経国(元総統)、呉敦義(前副総統)、林青霞(芸能人)等政財界の著名人も同店の上客である。港園麺館は2004年に代表者(訳注:創業者である孫黄貴嬌)が逝去し、その長男が事業を管理するようになった。2013年に創業者三男の長男が独立して、老舗から3分の距離の角地に「銘邦港園」麺店をオープンした。
    家族は対立し、老舗を経営する創業者の長男が創業者三男の長男を商標権侵害で告訴し、高雄地方裁判所は昨年8月に敗訴の判決を下したため、老舗側は不服として上訴を提起した。知的財産裁判所は、老舗の家族は利益の均等分配、商号の分かち合いを伝統としており、長男は単独出資の代表者となっているが、実質的には家族の構成員が商号を共同経営し、息子たちは娘たちより多く権利を分かち合ってきた。
    ちなみに新規進出店は「銘邦港園」を以って商標登録を出願したが、経済部知的財産局は港園の商標と誤認混同を生じるとして2015年4月16日に拒絶査定をしている。(2016年1月5日 中国時報 B2面)

II 判決内容の要約

知的財産裁判所刑事判決
【裁判番号】104年度刑智上易字第64号
【裁判期日】2015年12月25日
【裁判事由】商標法違反

上訴人 台湾高雄地方裁判所検察署検察官
被告人 孫慈邦

上記上訴人は商標法違反事件について、台湾高雄地方裁判所103年度智易字第11号、2015 年7月10日第一審判決(起訴事件番号:台湾高雄地方裁判所検察署103年度調偵字第892号)を不服として、上訴を提起した。本裁判所は次のとおり判決する。

主文
上訴を却下する。

判決理由
一.本件につき本裁判所が審理した結果、第一審判決が被告人孫慈邦に無罪を告知したことに失当はなく、維持すべきであると認め、下記理由を補充するほか、第一審判決書に記載される証拠及び理由(添付資料のとおり)を引用する。
二.調べたところ、証人の孫粘秀梅、羅孫大英、孫○○はいずれも原審にて証言している。証人の証言により港園麺館の商号は孫黄貴嬌の長男、すなわち告訴人の孫大楓が単独出資の代表者であり、その経営管理の責を負うが、家族構成員の間で港園麺館の売上げを分かち合う権利を有すること、その中で、孫黄貴嬌の息子である孫大楓(長男一家)、孫○○(次男一家)、孫大銘(三男一家)(未亡人である孫粘秀梅が受領)はより多く分配を受ける権利があるのに対して、配偶者である孫国振と娘の羅孫大英、孫大玲が受け取る分配はより少なく、告訴人孫大楓一人に帰属するものではないこと等の事情は認めるに足る。そして、港園麺館の商号権について孫国振、羅孫大英、孫○○、孫粘秀梅、孫大玲が2004年7月26日に相続放棄申述書を提出し、2004年8月4日に告訴人孫大楓が唯一の代表者として登記された。商標権については、孫国振、孫大英、孫○○、孫大玲が2010年8月4日に同意書を提出し、被告人孫慈邦、孫慈璇は2010年11月3日に同意書を提出して、告訴人孫大楓による単独の所有に移転した。ただし該権利移転の挙動については、家長である孫国振の指示に基づき、家族構成員が孫国振の意思に従ったものであり、逆らうことができなかった。さらに何ら対価も支払われていない。(それらは)告訴人孫大楓、証人羅孫大英、孫○○、孫粘秀梅、孫大玲、孫慈璇、被告人が共同で承認したものであり、その過程は一般的な権利譲与において相当の対価が支払われる状況とは明らかに異なる。さらに孫黄貴嬌が2004年に死亡した際、三男一族は被告人孫慈邦と証人孫慈璇が代襲相続したが、二人とも未成年で学生だったため、商号権移転については、孫大銘の未亡人孫粘秀梅が処理し、孫粘秀梅が相続放棄申述書を提出しており、その後2010年に係争商標権について処理した際にも証人孫粘秀梅が三男一族を代表して孫大楓、孫○○、羅孫大英と相談し、孫粘秀梅が三男一族を代表して同意書を提出した。その後被告人孫慈邦と証人孫慈璇が法定相続人であることを発見したため、さらに被告人孫慈邦と証人孫慈璇にも同意書に署名するよう要求した。これらから被告人孫慈邦と証人孫慈璇は家族の中では下の世代であり、商号権と商標権の移転について上の世代とは直接討論しておらず、いずれもそれらの母である孫粘秀梅を通じて知らされており、上の世代の家族構成員間での相互の約定内容や達成した合意についてはよく知らなかった。さらに、証人孫粘秀梅、孫慈璇、孫○○、羅孫大英、蘇泰吉等はいずれも、告訴人孫大楓、証人孫○○、羅孫大英等は以前から「樹が大きくなれば枝分かれする」(訳注:人が成長すれば分家する、の意)ので、子孫が望むならば店を出してもよい等と述べていたと証言しており、さらに被告人が出店する約半年から1年前に、告訴人孫大楓の子供がすでに「港園」商標を使用して支店を開いている等の状況があり、ファイルされている証人孫○○、告訴人孫大楓の供述によると、孫大楓は「(あなたの息子は自強路に支店を開きましたか)はい、彼は私の父に言いました。(その他の相続人の同意は得ましたか)はい、彼らは皆、若者がこのように出店することは大変良いことだといいました。私も息子が一緒に働くのではなく、外で出店することを希望しました。ただし私の父の同意が必要であり、上の世代を尊重しなければなりません」等と述べている。告訴人は一方で自らが港園麺館の商号権及び商標権の単独権利者であると主張し、もう一方では下の世代が出店するときはその父親である孫国振の同意が必要で、その他の相続人にも伝える必要があり、また麺館の営業収益については銀行口座を開設し記帳し、その他の家族構成員にボーナスを分配し、住宅ローンを代わりに返済している等と供述しており、家族構成員の間には港園麺館に関わる権利と営業収益の帰属に対して明確な区分がないことは明らかである。すなわち証人孫粘秀梅が告知した内容、家族構成員が港園麺館の利益を分かち合う権利を有しており、告訴人孫大楓の子がすでに「港園」商標を使用して外に出店している等の客観的状況に基づき、港園麺館の商号権と係争「港園」商標権は家族構成員が共同で所有しており、告訴人孫大楓が単独で所有するものではなく、自分も「港園」商標を使用して出店してもよいと被告人が考えることは、根拠が全くないものではない。その主観的認知が法律規定及び関連当事者の意思、及び家族構成員同士の港園麺館の商号及び係争商標に係る権利と義務の関係に適合するものであるのか否かについて、組合(共同事業体)、合有若しくは(狭義の)共有を適用すべきか、又は告訴人孫大楓の同意を得て始めて使用できるのかは、民事の法的紛争であり、被告人における係争商標侵害の故意の有無とは別のものである。
三.港園麺館の商号権と係争「港園」商標権は孫黄貴嬌の相続人が相続放棄申述書及び同意書を提出し、告訴人孫大楓に移転して単独の所有としているが、港園麺館の利益(ボーナス)はその他の家族構成員にも分配されており、一般的な権利譲渡後に譲受人が単独で権利を享受する状況とは異なっている。かつ港園麺館に係る営業収益を、告訴人孫大楓個人が自由に処分できるのか、又はその他の家族構成員に分配する義務があるのかについて、証人孫○○、羅孫大英、孫大玲は一方で港園麺館の商号権と商標権は告訴人孫大楓に移転した、つまり孫大楓の所有に帰すとしながら、もう一方では港園麺館の利益については自分たちに分配を受ける権利があると述べており、当事者間に互いの権利と義務と関係には明確な約定と区分がなく、それにより前後で一致しない主張が発生し、これらの不明確な要素が当事者の商号権及び商標権の権利帰属に対する認知に影響していると認めるに足る。かつ本件当事者はいずれも法律の専門知識を持たない一般市民であり、何に対して各家族の権利が派生するのか、何が商号権と商標権の範囲に属するのかについても、彼らが明確に区分できるとは期待しがたい。また原審判決は証人孫粘秀梅、羅孫大英、孫○○、孫大楓、孫大玲、孫慈璇、蘇泰吉等の供述内容を総合的に判断しており、証人孫粘秀梅、孫慈璇の証言だけを被告人無罪判決の基礎とはしていない。また、係争商標については家族構成員による合有なのか、又は合意によって(狭義の)共有になっているのか、又は告訴人孫大楓が単独で所有しているのか、その他家族構成員はその(告訴人の)同意を得て始めて出店できるのかについて当事者間の認知が不明確であり、たとえ係争商標が家族構成員による合有であり、被告人がその使用権を誤認し、その他全体の共有者の同意を得ずに使用したとしても、それは民事紛争であり、故意に商標権を侵害したことを以って刑事責任を問い法で裁いてはならず、検察官の上記主張は理由がないものである。
四.証人孫○○等の供述によると、告訴人孫大楓が家族構成員に分配するボーナスは、(創業者の息子の)三家族に分配され、息子たちは娘たちよりも多く分配され、店内で働いていない孫大玲(娘)にも分配はあり、従業員であるかどうかは関係ない。また証人らはいずれも今はまだ(父親である)孫国振が存命であるので、財産は分配しておらず、孫国振が亡くなったらば、証人らはいずれも港園麺館の利益分配を受ける権利を有すると述べている。証人孫大玲は、孫大楓、孫○○、孫粘秀梅等が常に財産のことで喧嘩していると証言していることから、上記当事者間では、港園麺館で得られた利益についてそれらには分配を請求する権利があり、告訴人孫大楓が単独で所有するものではないと考えられていることがうかがわれ、告訴人孫大楓が、港園麺館は自分一人が所有するもので、「親族間で善意により余っているものを足りないところに分ける」ことのみによって利益をその他の家族構成員に分配したという状況とは異なり、告訴人の主張は採用できない。また調べたところ、被告人が外部に出店し、「港園」商標の前面に「銘邦」の二文字、つまり父である孫大「銘」と自分の孫慈「邦」から一字ずつとったものを加えて区別し、それは港園麺館創業者の三男の息子であることを示しており、それが係争商標を合法的に使用してもよいという考えに基づいて為したものであり、主観的に正当な権原がないことを知っていたとは認めがたい。経済部知的財産局が「銘邦港園」商標と「港園」商標が誤認混同を生じさせるため登録を許可しなかったことについては、商標主務機関が審査の職権を行使したものであり、被告人に商標権侵害の故意があったかの判断とは無関係であるため、告訴人の主張は採用できない。告訴人はさらに、被告人が2013年1月26日にガソリンで港園麺館に放火し、2013年11月6日から20日には○○街53 -1号の厨房に理由なく鍵をかけたり、1階シャッターに「当方の許可なく無断で侵入しないこと。さもなければ一律通報する。」という警告を貼ったりしたため、港園麺館は休業を余儀なくされ、原材料及び営業の損失は100万新台湾ドルに達すると推算され、被告人の悪質さは重大であることがわかる等の状況を主張したが、本件の商標権侵害の事実とは関連性がなく、斟酌しない。
五.以上をまとめると、公訴人が提出した証拠は被告人孫慈邦に販売を目的として同じ役務で類似する他人の登録商標を使用した行為であると証明することができず、さらに再度調べたところ、被告人には公訴趣旨で指摘された商標法違反の犯行があったと認められるその他の積極的証拠は見つからず、被告人の犯罪を証明できない。原審が刑事訴訟法第301条第1項前段規定に基づいて被告人に無罪の判決を告知したことは、事実認定と法の適用に誤りはなかったと認められる。検察官が上訴趣旨で原判決の不当を指摘し、原判決を取り消して判決を翻すよう請求することには理由がなく、上訴を却下すべきである。

以上の次第で、刑事訴訟法第368条、第373条により主文のとおり判決する。
本件は検察官田炳麟が法廷にて職務を執行した。

2015年12月25日
知的財産裁判所第三法廷
裁判長 蔡惠如
裁判官 范智達
裁判官 彭洪英

添付資料:

台湾高雄地方裁判所刑事判決
103年度智易字第11号

公訴人 台湾高雄地方裁判所検察署検察官
被告人 孫慈邦

上記被告人は商標法違反事件により検察官に公訴(103年度調偵字第892號)を提起され、本裁判所は以下のとおり判決する。

主文
孫慈邦は無罪。

判決理由
一.公訴の趣旨は概ね以下のとおりである:被告人孫慈邦は、告訴人孫大楓の母が2000年に経済部知的財産局に対して商標登録第00000000号の「港園」商標(以下、「本件商標」)を登録して専用権を取得し、軽食堂、ホット/コールドドリンクスタンド等役務での使用を指定しており、その後告訴人が移転によって(専用権を)取得し、権利期限を延長したため、現在の商標専用期間内にあり、告訴人の同意又は許諾を得ずに同じ役務に類似の商標図案を使用してはならないことを明らかに知っていた。被告人は告訴人の同意又は許諾を得ずに、2013年11月某日高雄市○○区○○○路00号に「銘邦港園牛肉麺」という軽食堂をオープンして、同じ役務に告訴人の上記登録商標に類似する商標を使用したため、関連の消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある。被告人は商標法第95条第3号に違反して商標権者の同意を得ずに、同じ役務に登録商標に類似する商標を使用し、関連の消費者に誤認混同を生じさせるおそれをもたらした犯罪の嫌疑がある等。
二.被告人はもとより、かつて告訴人への商標移転に異議はないと記載された同意書に署名したことがあると認めているが、商標法第95条第3号に規定される同意を得ずに同じ役務において登録商標に類似する商標を使用して関連の消費者に誤認混同を生じさせるという犯行については堅く否認している。
三.調べたところ以下のとおりである:
(一)本件商標は港園麺館商号への使用を指定しており、商号は1987年12月14日に設立が許可され、本件商標は役務標章の登録出願が許可され、専用期限が2000年9月16日から2010年9月15日までとされた。本件商標の権利者と商号代表者は孫黄貴嬌であった。その後2004年6月15日に孫黄貴嬌が死亡し、孫国振、孫大楓、孫大成、羅孫大英、孫大玲、及び孫慈邦、孫慈璇(これら2名は代襲相続した孫)が法廷相続人となった。その後港園麺館の商号については孫大楓が2004年8月4日に単独の代表者として登記され、本件商標については孫大楓が2010年8月4日に同意書を添付して存続期間を2020年8月27日まで延長した。同意書を補充提出した後、存続期間は2020年9月15日まで延長された。これらは被告人孫慈邦の供述から明らかであり、証人孫粘秀梅の供述、孫大楓が告訴を委託した代理人が陳述した告訴の趣旨とも符合する。孫黄貴嬌の死亡及び前出の配偶者、子、孫が共同で相続する件については、家系図、戸籍謄本があり、調べることができる。港園麺館の商号設立及び代表者変更の過程は上述のとおりであり、本件商標について港園麺館における使用を申請した営業範囲、商標登録許可日及び権利存続期間、延長期間は前述部分のとおりであり、経済部商業司商業登記資料検索結果、役務標章登録出願書及び添付された高雄市政府営利事業登記証(訳注:事業・商業登記証に相当)、誓約書各1部、経済部知的財産局商標資料役務登録検索結果明細2部、同局2010年5月30日(89)智商0261字第000000000号役務標章許可査定書、同局2010年10月16日(89)智商字0090第000000000号書簡及び添付の役務標章登録証、登録延期申請書(訳注:存続期間更新登録申請書に相当)及び添付の高雄市政府営利事業登記証、同局2010年12月30日(99)智商0105字第00000000000号書簡、2010年8月4日同意書、同局2010年11月3日同意書各1部で調べることができ、前記事項は被告人、検察官及び告訴人が争うものではなく、いずれも真実であると信用することができる。
(二)孫黄貴嬌が死亡した後、港園麺館は孫大楓が登記上の代表者であるが、実質的には家族の共有であることについて、証人孫粘秀梅は、姑の孫黄貴嬌が2004年に亡くなった後、孫大楓夫妻、孫大成夫妻、羅孫大英、孫大玲及び自分の間で協議し孫大楓を推挙して管理を任せ、港園麺館の代表者として登記したが、家族構成員は港園麺館に対する持ち株を有し、每年ボーナスの分配を受けること、主に姑の3人の息子、即ち孫大楓、孫大成、孫大銘(自分の亡夫)が三大株主であり、孫慈邦はまだ年少であったため自分が代表して年に2回のボーナスを受け取り、各兄弟の分配額は同じで、(ある時は)20万新台湾ドルずつ、(ある時は)30万新台湾ドルずつであり、これは給料以外のもので、時によって手形、振込、時には赤い封筒に入った現金で支給され、その後に分配された金額は少なくなったこと、さらに孫国振、羅孫大英、孫大玲は1株を持ち、孫大玲は以前から麺館の内部で働いたことがないが、孫大玲自身はこれが臨時収入であるため、支給された金額だけ文句を言わずに受け取ることに同意していたこと、羅孫大英は麺館を手伝ってきたため、港園麺館は七賢路に羅孫大英が住むための家を買ったこと、港園麺館び家族構成員の間でいつも諍いがあり、孫大楓は非難されたくないため、いつもこれ(港園麺館)はみんなの店なので、独り占めしたくてもできないといっていたこと、港園麺館の利益には分配されないものが多くあり、孫大楓は多くの利益を溜め込んでおり、孫大成の次女が癌を患い多くの治療費がかかったときに医療費を出してくれるよう頼んだが、孫大楓は父親が存命のためこの金を使うことはできないとして孫大成の要求を拒絶したこと等を証言した。証人羅孫大英は、港園麺館が孫大楓によって管理され、売上高から経費を差し引いた利益は彼一人のものではなく、銀行に預金され、口座は専用のもので、自分は孫大楓、孫大成、孫粘秀梅(孫大銘の未亡人)が港園麺館のボーナスを受け取り、ここ2年は自分も受け取っており、自分が住んでいる家は港園麺館が自分のために住宅ローンを負担して買ってくれたもので、住宅ローンは320万新台湾ドルであり、7年余り前から支払われており、かつて孫粘秀梅、孫大玲は自分が引退したときは300万新多湾ドル余りを受け取ることができると言ったのを聞いたことがある等と証言した。証人孫大成は、自分はボーナスを受け取ったことがあるが、金は妻が管理しており、ある年は30万新台湾ドル、またある年は10万新台湾ドル、5万新台湾ドルを受け取ったことがあり、給与以外の収入で、旧正月に受け取ったこと、港園麺館が儲かって利益が出れば、それは孫大楓一人のものではなく、皆に分配するのが道理であり、自分に分配されなければ頭にくるが、上の世代が存命であるため財産分与に関することを話し合うのは好ましくない等と証言している。証人孫大楓は、港園麺館には従業員給与を差し引いた後の利益があり、利益は自分が管理しているが、この金は父親のもので、銀行口座にある資金は自分が用途を注記しており、たとえば孫慈邦のバイクが無くなって新しいものを購入したときも注記しており、父親は自分を信頼し、自分に決定を任せてくれているのであって、この金を独り占めすることはないこと、被告人は自分には利益を分配されず、孫大楓が独り占めしているといい加減なことを外で言っているが、自分には持分があり、以前物価が高くなかった時は麺館の利益が多かったのに対して今は物価上昇で利益が減少しているものの、年末にはボーナスを皆に分配し、分配額は1人当たり10万新台湾ドル以上であり、孫粘秀梅に分配した額は少なくとも15万新台湾ドルはあること、利益はすべて分配しておらず、残りは銀行口座に預けており、調べることができ、港園麺館の売上げは自分のものではなく、父親が我々にくれているものなので、利益を子供の留学のために使うようなことはしてはならず、これは皆が一緒にがんばって稼いだものなので、自分の主張を通してはならず、自分は支出については明確に注記したり、皆に金の流れを説明したりしており、もし父親が亡くなったら、この金を皆に分配できること等を証言している。証人孫大玲は、一年あたり港園麺館から2万新台湾ドル又は3新台湾ドルを受け取り、受取時には署名しており、これは港園麺館の支出であり、麺館には利益の預金があるはずだが、以前3人の兄(孫大楓、孫大成、孫大銘)のために1人1軒ずつ家を買ったので、多くは残っていないはずであり、港園麺館の中で気まずい雰囲気であると感じることがあり、自分が傍で見ていて判るのは、その原因が財産分配のためであるということで、自分は父親が存命であるうちは財産を分配してはならず、本当に分配するのならば、自分は家を買ってもらっていないので、先に自分にその穴埋めをしてから分けるべきであること等を証言している。港園麺館の商号登記上、孫大楓は単独出資の代表者となっているが、事実上は家族全体に帰属しており、従来の観念により主に孫大楓、孫大成、孫大銘(死亡により未亡人孫粘秀梅が受領)、つまり3人の息子の家族が権利を有し、娘である羅孫大英、孫大玲が受け取る利益はそれより少なく、麺館で働いていない孫大玲の取り分は最も少なく、かつ累積された未分配利益は家族全体に帰属するもので、被告人を含む三家族の構成員はより多くの権利があり、孫大楓個人に帰属するものではないことは事実であると認めることができる。これ以外に、孫粘秀梅は、羅孫大英が港園麺館から多くの利益を得ており、かつて夫が3人の息子の1人だった立場から、羅孫大英に金を受け取ってそこから退くよう署名するよう要求したことがある。証人羅孫大英は審理において、孫粘秀梅はかつて自分が引退する時に300万新台湾ドル余りを受け取ることができると言ったことがあり、つまり300万新台湾ドルを自分に支払うことで自分を追い出し、港園麺館からは今後金を受け取らないという誓約書を書くように言ったことがあり、孫粘秀梅は金銭については理性を失う等と証言している。したがって、港園麺館の商号は孫大楓を代表者として登記しているが、実質上は単なる管理人であり、家族構成員全体が伝統的な観念に基づいて港園麺館の売上げを分かち合う権利を有する等とする被告人の抗弁は、採用できる。
(三)商標移転同意書の署名は、事前、事後のいずれにおいても権利を清算しておらず、その過程は簡素で一般的な権利処分の状況とは異なる。証人孫粘秀梅は、商標権の存続期間が間もなく満了となるとき、孫大楓は書類をみせて満了となるので代表者(元来は孫黄貴嬌が登録されていた)を変更しなければならず、港園麺館商号についてそれが代表者となり、管理し、その名義で登記しても、皆が同様に権利を有し、利益を皆で分けてきたのと同じだと述べたが、商標権について明確に会議を開いて話し合ったことがなく、勤務時間内に麺館で話したもので、孫大楓は兄弟姉妹が皆同意したと述べ、自分にも署名するように言い、孫大楓は以後も3兄弟の家族の子供はいままで通りに出店することができ、金も分配されると言ったので、自分は何らメリットも得ることなく署名し、他人に対する商標の利用許諾したときはどのように金を分配するかについては話し合ったことがなく、彼らの家族は商標使用を他人に許諾したことはないので、自分たちの子孫だけが出店できる等と証言した。証人孫慈璇は、自分が同意書(2010年8月4日より前の分であるはず)に署名したのは港園麺館の中であり、当時は祖父孫国振、大伯父孫大楓夫妻とその子供、次伯父孫大成夫妻、羅孫大英、自分の母親孫粘秀梅、兄孫慈邦、そして自分が店内で働いており、孫大楓は商標(権の存続期間)が間もなく満了となり、延長する必要があり、皆が今後外地に出て行ったとき手続きのために戻ってくるのは不便であるという状況を避けるため直接孫大楓に管理を任せる署名するよう求めたこと、当時店が忙しく、兄孫慈邦がすでに署名しており、厨房の中にいた兄が孫大楓の言うとおりにするよう手でサインを送ってきたため、自分は署名したのであり、署名したときにその文書が意味するものについて知らず、また商標登録を共有して管理人を選出する手続きも選択できたことを知らなかったこと等を証言した。証人羅孫大英は、孫大楓が同意書署名の数日前自分たち(孫粘秀梅が代表し、孫慈邦と孫慈璇は参加していない)に同意書に捺印して商標を(孫大楓に)移転し、店の管理を任せることに同意するかを訊ね、皆は孫大楓が処理し、管理することに同意し、いかなる条件もなく、当時は署名で港園麺店の管理を放棄する必要があるとは触れられず、署名した後に港園のボーナスを受け取れないとは考えたことはなく、以前父親孫国振が、歳をとったので、もう手を出さず、港園の二文字を長男である孫大楓に譲ると言っていたこと等を証言した。証人孫大成は、孫大楓が店の中で自分に署名するよう同意書を渡し、同意書2部はいずれも父親がいつも座っているレジカウンターの後方にある机にあり、皆が次々と署名し、自分は勤務時間、約10時過ぎに署名したこと等を証言した。証人孫大楓は、自分が港園麺館の商号の代表者に登記、本件商標の権利者に登録し、これにより家族構成員にはいかなる対価も支払っておらず、これは自分に引き継がせたいという父親の意思を受けたもので、商標権移転においては、誰も自分が港園麺館を独り占めするとは疑っておらず、自分は1977年から現在まで今までやってきたので非常に経験が豊富であるため、父親は他の構成員に自分がこの件を処理すると告げたこと等を証言している。よって、孫大楓は2010年8月4日より前の某日、港園麺館の営業時間内に「商標権移動同意書」の書類を羅孫大英、孫大成、孫粘秀梅、孫慈邦、孫慈璇を含む麺館で働く構成員に署名するよう渡し、本件商標権がまもなく存続期間満了となることを理由に、皆に経験豊富な孫大楓に管理を任せるよう要求し、商標権移転の代価等については触れておらず、皆がすぐに署名した。この過程からも、家族構成員は港園麺館の商号について上の世代である孫国振が存命のうちは本当の分家をせず、家族構成員が共同で商号を経営し、男(息子)は女(娘)より多く分配するという伝統的な規則により権利を享受する状況を維持する中、本件商標権を孫大楓に登録させることは当然全部の商標権を放棄するということではなく、上の世代の意思に従うために商標を長男の管理に手渡すことに署名し、その署名は本件商標権を放棄する真意によるものではないことを認めるべきである。証人孫大玲が移転同意書に署名する真意は本件商標の権利継承を放棄することだったと述べているが、孫大玲は港園麺館の営業成果である利益を分配する権利を有すると考えていることは前述したとおりであり、且つ孫大楓が商標売却を決定する権限を有することを否定しており、商標使用を他人に許諾して収入を得たと仮定する問題に直面したならば、自分が分配に参与しないとははっきり答えられず、実質上それが述べるように対価なしで商標権を放棄するというものではないことが判る。それは多くとも孫大玲は出店しないということしか示すものにすぎない。しかしながら、それは港園麺館で長い間働いておらず、収入は麺館に依存したことはなく、ずっと麺館の経営には関わったことがなく、出店の意向もない。事後に通知を受けて現場に行き署名しており、それは麺店の経営に従事する意欲はなく、放棄すると述べることに意味はなく、これに基づいて孫慈邦の同意書署名が即ち本件商標の使用を放棄することに同意したと見なすことはできない。
(四)孫慈邦、孫慈璇は2010年11月3日に再び、商標延長の申請手続きにおいて補充提出するための同意書に署名した。ここに2010年11月3日付同意書がファイルされているので調べることができる。ただし、港園麺館の家族は「樹が大きくなれば枝分かれする」と考え、将来若い世代が外に「枝葉を伸ばす」ことを薦めており、同意書に署名したから何かがそれまでとは異なるということはなく、前記同意書への署名は署名人が外に港園の名義での出店を放棄したという協議に至ったことを示すものではないことについては、証人孫粘秀梅は、孫黄貴嬌が亡くなった時、家族で協議して孫大楓を代表者に推挙して登記することになり、当時孫大楓は孫家の男子のみ出店できると言っていたが、孫大成一家には娘しかいないため、その後孫家の子孫ならば誰でも出店できると意見を翻しており、孫大成の娘は良い仕事があり出店する必要がなく、孫粘秀梅に対して息子の将来のために出店してもよいと言ったことがあること、同意書に署名したときは、孫大楓に管理を任せることに署名しただけで、すべてを孫大楓に譲るということではなく、港園麺館の利益は年間に数百万新台湾ドルに上り、我々は人生後半においてもまだ店が儲かるよう手伝っており、金をすべて孫大楓にあげることは不可能であり、誰もそうしないだろうこと等を証言している。証人孫慈璇は、同意書(供述における孫大楓がそれぞれに同意書を渡して署名を求めた状況から、2010年8月4日より前に署名を求めた同意書を指すはずである)に署名した後、孫大楓は我々に皆が商標を共有し、経営することを証明する手紙を渡すと約束したが、その後はもらっていないこと、日頃孫大楓は我々が港園の名義で出店してもよく、みんなの店なので、独り占めしたくてもできない等と言っていたと証言している。証人孫大成は、孫慈邦に(麺店の経営を)よく勉強すれば出店してもよく、我々は歳を取ったので、若者が外で店を出させる必要があり、「樹が大きくなれば、枝分かれする」と言ったことがあると証言した。証人羅孫大英は、自分も出店したければできると言ったことがある等と証言している。証人蘇泰吉は、自分は港園麺館の馴染みの客で、羅孫大英とは長い知り合いであり、自分の息子と孫慈璇は婚約したことがあり、孫大楓夫妻と息子、孫大成夫妻、羅孫大英の娘等もパーティに参加しており、その後破談となり結婚しなかったが、若者の相性が悪かったのは本人たちのことであり、自分は港園麺館の年長者たちとは長年の知り合いで、親戚になる寸前までいったことがあり、普段から往来があること、孫慈邦たちが本件商標の移転同意書に署名した時、自分は孫粘秀梅、羅孫大英から本件商標は孫大楓に管理を任せるためだけの署名であり、皆はボーナスを受け取ることができると聞いており、さらに孫粘秀梅、孫慈邦から相続人は自分で出店してもよいと聞いており、羅孫大英も日頃より皆外に出店してもよく、「樹が大きくなれば枝分かれする」もので、皆この看板で出店できると言っていたこと、その後2014年に自分が羅孫大英と電話で話したとき、自分は孫粘秀梅が言っていたことを羅孫大英に聞いてみたところ、羅孫大英も本件商標は孫大楓に管理を任せるために署名しただけで、皆ボーナスを受け取ることができると答えており、さらに孫家の子孫は港園の看板を掲げて支店を出せるのか訊ねたところ、羅孫大英はそうだと答え、さらに自分も出店できると言っており、この電話は孫粘秀梅に頼まれてかけたものではなく、自分自身の意思でかけたもので、その後不公平だと思ったので、通話の録音を孫慈邦に渡したこと等を証言しており、蘇泰吉と羅孫大英との通話を録音した光ディスク1枚、本裁判所検証報告書1部を調べることができる。孫慈邦、孫慈璇は2010年11月3日の同意書に署名したことにより、経済的に実質利益を得たことはなく、それらが該同意書に署名したことが本件商標の一切の権利を放棄したことを示すとは認められない。証人羅孫大英は審理において、自分は港園麺館のボーナスについては知らず、自分も港園牛肉麺店を出店できるというような話を言ったことはなく、自分は蘇泰吉を知っているが、家族は彼とは面識がなく、麺を食べにきたときに挨拶するだけで、自分が蘇泰吉と電話で話したときは眠たくて頭がぼんやりしていたため、適当に答えてしまった云々と供述していたが、それは供述を反復し、かつファイルの反訳書から判るように何度もその話題を避けた後、最後に返答したことを肯定しており、それがいうところの眠たくて頭がぼんやりしていたという状況には合致せず、その部分の陳述は採用できない。被告人孫慈邦は、自分が本件商標権の一人であり、自ら外に牛肉麺店を出し、「港園」商標の前面に父親と自分の名前における最後の一字である「銘」、「邦」を加えて区別しており、それは港園麺館創業者の三男孫大銘の息子であることを示すもので、この方法で本件商標の「港園」文字と図案部分を使用することは、商標法第95条第3号でいうところの商標権者の同意を得ずに同じ役務において登録商標に類似する商標を使用して関連の消費者に誤認混同を生じさせるという状況には該当しないと抗弁しており、採用できるものである。
四.以上をまとめると、被告人が商標法第95条第3号に違反したと検察官が認定した証拠は、一般人が疑わず、真実であると確信できる程度には達しておらず、刑事訴訟制度の無罪推定原則により、なお被告人に対して不利な認定を為しがたい。さらに再度調べたところ、被告人が確かに詐欺取材幇助の主観的な犯意が有ったと認定するに足るその他の積極的な証拠はなく、被告人の犯罪を証明することができず、最初の説明により被告人に無罪を告知すべきである。

以上の次第で、刑事訴訟法第301条第1項により主文のとおり判決する。
本件は検察官王建中が法廷にて職務を執行した。

2015年7月10日
刑事第十七法廷裁判官  張谷瑛
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