Rowana商標がスーツケースブランドRIMOWAに類似で敗訴

2016-08-29 2015年
■ 判決分類:商標権

I Rowana商標がスーツケースブランドRIMOWAに類似で敗訴

■ ハイライト
世界的に著名なドイツの高級スーツケースブランドブランド「RIMOWA」を製造するリモア社(Rimowa GMBH)は台湾の康鉅国際有限公司(KGT International Corp.、以下「康鉅国際」)が楕円形の外枠を加えた「Rowana」を商標として用いインターネット、テレビショッピングチャンネルで旅行用トランク、スーツケースを販売していることを不満とし、両商標が類似しているため消費者を混同させるおそれがあるとして、海外から商標権侵害の民事訴訟を提起していた。知的財産裁判所は康鉅国際に敗訴の判決を下し、該商標の使用を禁じるとともにリモア社への賠償金335万余新台湾ドルの支払いを命じた。
リモア社によると、同社の商標は創業初期の経営者Richard Morszeck Warenzeichenの最初の2文字(RI+MO+WA)を組み合わせて商標としたもので、同社製のスーツケースは丈夫で、美しく、長持ちするため、世界をリードする高級スーツケースブランドの一つに数えられ、すでに著名商標となっているという。
さらにリモア社は、康鉅国際が使用する「Rowana」商標と「RIMOWA」にはいずれも横長の楕円形の外枠があり、またRで始まり、Aで終わり、そのアルファベットにはいずれもR 、O 、W 、Aが含まれており、両商標は高度に類似しているため、消費者に容易に誤認させたり、両者には使用許諾関係、加盟関係等があると誤認させたりすると主張した。
一方、康鉅国際側は、「Rowana」はすでに知的財産局により登録されており、またその創作構想は自ら飼育しているアロワナ(AROWANAFISH)から得られたもので、両者の構想は異なっており、さらにリモア社の「RIMOWA」商標はシンプルな印刷の字体で、特殊な字体デザインは施されておらず、両者の外観は異なり類似していないため、消費者に混同をもたらすことはないと強調した。
知的財産裁判所は、リモア社は1898年に創業され、台湾にはフラッグシップショップ、百貨店内のブランドショップ等14ヵ所の販売拠点を設置し、王菲、黄曉明、張曼玉、大S、仔仔、孫芸芸、Ella、Hebe、李心潔、梁詠琪、隋棠、許瑋甯(訳注:いずれも著名人)に愛用され、2013年台湾での総売上高は7億余新台湾ドルに達し、国内の消費者に広く知られているため、著名商標に該当すると認めた。
また、康鉅国際が知的財産局に登録を出願した商標には楕円形の外枠がないが、使用時には楕円形の外枠が使用されており、また両商標はいずれもアルファベット6文字で、Rで始まりAで終わっているため図案が類似しており、消費者は誤認する可能性が極めて高く、さらにいずれも旅行用トランク、スーツケース、アタッシュケース等の商品に使用していることから、知的財産裁判所は康鉅国際が「RIMOWA」商標権を侵害していると認め、康鉅国際に対してスーツケース、アタッシュケース等の商品に該商標を使用して、電子媒体、インターネット等で宣伝、販促をしてはならないとの判決を下した。
ただし裁判官は、リモア社からの2500万新台湾ドルの賠償請求を妥当ではないと認定した。康鉅国際はインターネット、テレビショッピングチャンネルで30種類余の商品を販売したことと、公式サイトに掲載された販売価格から100倍で計算するのが妥当であると判断し、康鉅に賠償金335万新台湾ドル余の支払いを命じた。全件はさらに上訴できる。(蘋果日報2015年09月2日)

II 判決内容の要約

知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】103年度民商訴字第40号
【裁判期日】2015年8月18日
【裁判事由】商標権侵害の財産権に係る争議等

原告 リモア社(Rimowa GmbH)
被告 康鉅国際有限公司(KGT INTERNATIONAL CORP.)
兼法定代理人 程〇智

主文
被告康鉅國際有限公司は付表一に示される商標と同一又は類似の文字又は図案、若しくは付表二と同一又は類似の文字及び図案を、各種スーツケース、旅行用かばん、化粧道具入れ、アタッシュケース、レザーバッグ、バックパック、革トランク、旅行用トランク、旅行用衣服かばん、手提げ旅行ケース、手提げ袋、登山用バッグ、ハンドバッグ、バッグ用ストラップ、車付買物袋、スポーツバッグ、ベビー用品収納バッグ、ペット用品バッグ、ヨガマットバッグ、雑のう、財布、カードケースの商品及びその包装容器又は関連のビジネス文書に使用してはならない。
被告康鉅國際有限公司は付表一に示される商標と同一又は類似の文字及び図案を標示、若しくは付表二と同一又は類似の文字及び図案を標示した各種スーツケース、旅行用かばん、化粧道具入れ、アタッシュケース、レザーバッグ、バックパック、革トランク、旅行用トランク、旅行用衣服かばん、手提げ旅行ケース、手提げ袋、登山用バッグ、ハンドバッグ、バッグ用ストラップ、車付買物袋、スポーツバッグ、ベビー用品収納バッグ、ペット用品バッグ、ヨガマットバッグ、雑のう、財布、カードケースの商品を所持、展示、販売、輸出、輸入、自ら又は他人に委託許諾して、デジタル音響・映像、電子メディア、インターネット又はその他のメディアの方式でプロモーション・販促をしてはならない。
被告は連帯で原告に対し335万7000新台湾ドル及びこれに対する2014年11月7日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
原告のその余の請求を棄却する。
訴訟費用は百分の十三を被告の連帯負担、その余を原告の負担とする。
本判決第3項は原告が112万新台湾ドルを被告に担保として供託した後に仮執行できる。ただし被告が335万7000新台湾ドルを原告に担保として供託したときは、仮執行を免脱できる。
原告のその余の仮執行宣言の申立てを却下する。

一 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求:1.被告は付表一に示される商標と同一又は類似の文字又は図案、若しくは付表二と同一又は類似の文字及び図案を、係争商品(訳注:ここでいう「係争商品」とは、各種スーツケース、旅行用かばん、化粧道具入れ、アタッシュケース、レザーバッグ、バックパック、革トランク、旅行用トランク、旅行用衣服かばん、手提げ旅行ケース、手提げ袋、登山用バッグ、ハンドバッグ、バッグ用ストラップ、車付買物袋、スポーツバッグ、ベビー用品収納バッグ、ペット用品バッグ、ヨガマットバッグ、雑のう、腕時計、財布、カードケースをいう)及びその包装容器又は関連のビジネス文書に使用してはならない。2.被告は付表一に示される商標と同一又は類似の文字及び図案を標示、若しくは付表二と同一又は類似の文字及び図案を標示した係争商品を所持、展示、販売、輸出、輸入、自ら又は他人に委託許諾して、デジタル音響・映像、電子メディア、インターネット又はその他のメディアの方式でプロモーション・販促をしてはならない。3.被告は連帯で原告に対し2500万新台湾ドル及び本件訴状送達の翌日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。4.原告は担保を供託するので、第3項の請求について仮執行宣言を申し立てる。
(二)被告の答弁:原告の請求を棄却し、仮執行宣言申立を却下する。

二 本件の争点
(一)係争商標は著名商標であるか。
(二)被告公司が被告商標に枠を加えて使用することは商標法第68条第3号及び第70条第1号に規定される権利侵害の状況に該当するのか。
(三)原告が被告に侵害の防止及び侵害の排除を請求することに理由はあるのか。
(四)原告が2500万新台湾ドルを連帯で支払うよう被告に請求することには理由があるのか。

三 判決理由の要約
(一)係争商標は著名商標である:(原告の)係争商標は1898年にドイツケルンで立ち上げられたスーツケースのブランドで、原告は台湾にフラッグシップショップ、百貨店内のブランドショップ、直営店等合計14ヵ所の販売拠点を設置している。2010年から2013年までに台湾で1000万新台湾ドル以上の広告費を投じて係争商標を売り込み、2013年「今周刊」第883期にはスーツケースブランド番付で2位にランクインしたと報じられている。新聞雑誌及びインターネットには多数の係争商標商品に関するオフィシャルな活動や報道がみられ、台湾における売上高は急成長し、2013年には7億余新台湾ドルに達し、係争商標はスーツケース等商品に関して原告が長期にわたって幅広い販売を継続してきた結果、被告商標が2012年、2013年に登録を出願される前にはすでに国内の関連の消費者に普遍的に知悉され、著名といえる程度に達しており、著名商標に該当すると認められる。

(二)被告公司は被告商標に枠を加えて使用し、係争商標の商標権を侵害した:
1. 商標権者の同意を得ずに、販売を目的として同一又は類似の商品又は役務に、登録商標と類似する商標を使用し、関連の消費者に混同誤認を生じさせるおそれがあるものは商標権の侵害となる、と商標法第68条第3号に規定されている。本件は以下のように斟酌した。:
(1)被告公司は付表三に示される商品又は包裝に、会社及びネット広告販売サイトに、関連の活動及びテレビショッピングチャンネルの看板に、いずれも枠を加えた被告商標が使用されており、被告公司は市場における商品の販促や販売のために商品に枠を加えた被告商標を使用しており、客観的に関連の消費者にそれが商品の出所を示すと認識させるに十分であり、商標として使用していた。
(2)係争商標はアルファベット大文字のRIMOWAと楕円形の外枠から構成されている。枠を加えた被告商標はアルファベット大小文字Rowanaと楕円形の外枠から構成されている。そのアルファベットRowana部分の外観設計と、添付図二の1乃至3の被告商標のアルファベットRowana部分は同じである。係争商標と枠を加えた被告商標を比べると、両者とも外枠内の外国語部分は見慣れない意味を持つアルファベットであり、外枠はいずれも楕円形で、その単線は枠内のアルファベット6文字の線による表現に合わせたもので、枠内の文字間隔は極めて小さく、アルファベットはRで始まり、Aで終わっている。両者の全体の図案は楕円形の外枠内に密集して排列された見慣れないアルファベットの組合せが配置され、目立つ最初と最後の文字はRとAであり、両者の意匠は類似しており、通常の知識経験を有する消費者が購買時に普通の注意を払うとき、枠を加えた被告商標と係争商標の商品は同じ出所のシリーズ商品である、又は異なるが関連がある出所からのものであると誤認する可能性があり、枠を加えた被告商標と係争商標は類似を構成し、類似の程度は低くない。枠を加えた被告商標の図案における枠内の文字の密集排列をみると、係争商標とは最初と最後の文字が同じで、いずれもR 、O 、W 、Aが含まれており、全体の構図は楕円形の外枠内にRで始まりAで終わる6個の見慣れないアルファベットが含まれる意匠であり、係争商標と類似を構成している。商標間で類似を判断するときは、全体を対比すべきであり、楕円形の外枠は識別性を有さず、また原告は係争商標の外枠に対して専用権を有さないため、被告商標が外枠を加えたことで類似を構成するとは主張できない云々とする被告の答弁も採用できない。
(3)係争商標は著名商標であることは前述のとおりであり、それが消費者に与える印象は高度な識別性を有し、枠を加えた被告商標の文字も係争商品に関する説明ではなく、商品の出所を表彰し、他人の商標と区別する機能を具えており、相当な識別性を有する。枠を加えた被告商標が使用されている係争商品の「各種スーツケース」の部分と、係争商標が使用を指定しているスーツケース、旅行用トランクかばん、化粧道具入れ、アタッシュケース等の商品とは、いずれも消費者の収納に対するニーズを満足でき、機能、材料、製造の方面で相当の関連性を有する。もし類似の商標を標示したならば、商品の消費者はその出所が同じである、又は出所が異なっているが関連があると容易に誤解を生じさせてしまい、両者の商品には同一又は類似の関係が存在する。さらに枠を加えた被告商標を使用した係争商品の中の「腕時計」の部分については、腕時計は時間を表示することを主な機能としており、係争商標を使用する商品の収納機能とは異なり、両者の商品の生産者及び販売ルート等の要素は必ずしも関連がなく、類似の程度は高くない。両者は商品の消費者にその出所が同じである、又は異なるが関連がある出所からのものであると誤認させる可能性は低い。
(4)枠を加えた被告商標を使用した係争商品の「各種スーツケース」の部分については、係争商標が使用を指定する前記商品と同一である又は類似していること、枠を加えた被告商標と係争商標の図案が類似していること、係争商標が高度の識別性を有すること等要素を参酌して総合的に判断すると、関連の消費者が両者の商標商品の出所が同じである、又は異なるが関連がある出所のものであると誤認する可能性が極めてあり、誤認混同のおそれがあり、商標法第68条第3号を適用すべきである。また枠を加えた被告商標を使用した係争商品における「腕時計」の部分については、係争商標が使用を指定する商品の類似の程度が低く、関連の消費者に誤認混同を生じさせるおそれはなく、商標法第68条第3号規定は適用されない。

2.本件の枠を加えた被告商標が腕時計以外の係争商品に使用されたときは、原告商標権の侵害となることはすでに前述したとおりである。この部分については本条項が商標権侵害と見なすか否かを斟酌する必要はない。枠を加えた被告商標を使用した係争商品の腕時計の部分は、係争商標の著名なスーツケース等の商品及び実際に販売するレザーバッグ、財布等の商品との類似の程度が低いことは、前述のとおりであり、さらに原告がすでにスーツケース等収納とは関連性のない腕時計市場に参入したことを示す事実証拠はなく、係争商標の識別力及び信用・名声を毀損するおそれがあるとは認め難い。

3.被告は枠を加えた被告商標を使用することは商標権の正当な行使であると答弁しているが、本件の権利侵害使用に係る判断において、被告公司が実際に使用した枠を加えた被告商標の全体図案は添付図二で示される被告商標とは一致せず、係争商標と類似を構成しており、たとえ添付図二の被告商標が登録されていても、本件の権利侵害の認定を妨げるものではない。

(三)原告は被告公司に対して侵害の防止並びに排除を請求できる:
本件において枠を加えた被告商標を使用して原告の商標権を侵害したのは被告公司であり、被告程〇智個人ではない。原告からの被告公司に対する第1、2項の請求である侵害の防止及び排除の請求は、腕時計以外の係争商品については根拠があるため許可し、その余の部分は棄却する。

(四)原告が請求できる損害賠償:
1.「商標権者は、故意又は過失によりその商標権を侵害された場合、損害賠償を請求することができる」と商標法第69条第3項に規定されている。本件被告公司に係争商標を侵害した行為があったことは前述のとおりである。商標登録の公示性及び公告性を参酌し、被告公司は係争商標の存在を注意すべきであり、注意できるのに注意しなかったと認められ、その過失責任を逃れることはできない。さらに原告は2013年4月19日に書簡を以って被告公司に枠を加えた被告商標の使用を停止するよう通知したが、被告公司は使用し続けたため、被告公司は少なくとも該書簡を受け取った日からは係争商標が存在し、さらにそれが使用する枠を加えた被告商標と係争商標とが類似している状況を明らかに知りながら、枠を加えた被告商標を標示した商品を販売し続けたことは、権利侵害の故意が無かったとは認め難く、原告が被告公司に損害賠償責任を負うよう請求することには根拠がある。

2. 商標権者が損害賠償を請求するとき、押収した商標権侵害商品の小売単価の1500倍以下の金額をその損害として算出でき(商標法第71条第1項第3号)、前項(第1項)の賠償金額が明らかに不当であるときは、裁判所が参酌して減額することができる(同法同条第2項)と規定されている。本件双方は枠を加えた被告商標の商品に関する生産販売証拠資料を提出していないが、被告公司が枠を加えた被告商標を実際に使用して原告の商標権を侵害したことは前述のとおりであり、原告が前記規定の法定損害賠償に基づき原告が受けた損害の範囲を推算することには法的根拠がある。被告公司が係争商標に類似する枠を加えた被告商標を同一又は類似の商品に使用したという前記の状況があり、その行為には関連の消費者に両者の商品を誤認混同させるおそれがあり、原告が書簡で通知したにもかかわらず侵害行為を継続し、被告公司が主にインターネットとテレビショッピングチャンネルで関連の商品を販売していた等の一切の状況を斟酌して、被告公司のサイトに陳列される商品とその販売価格を以って付表三の分類商品に示される番号(三)項目5、6、7の腕時計を除く商品の価格の100倍を損害賠償額と認めることは妥当である。

以上をまとめると、被告公司は付表一に示される商標と同一又は類似の文字又は図案、若しくは付表二と同一又は類似の文字及び図案を、腕時計以外の係争商品及びその包装容器又は関連のビジネス文書に使用してはならない;被告は付表一に示される商標と同一又は類似の文字及び図案を標示、若しくは付表二と同一又は類似の文字及び図案を標示した腕時計以外の係争商品を所持、展示、販売、輸出、輸入、自ら又は他人に委託許諾して、デジタル音響・映像、電子メディア、インターネット又はその他のメディアの方式でプロモーション・販促をしてはならない;被告は連帯で原告に対し335万7000新台湾ドル及び訴状送達の翌日、即ち2014年11月7日から支払い済みまで年5分の割合による法定遅延金利を支払え、と原告が請求することには理由があり、許可すべきである。これを越える請求には理由がなく、棄却すべきである。

以上の次第で、本件原告の請求の一部には理由があり、一部には理由がなく、智慧財產案件審理法(知的財産案件審理法)第1条、民事訴訟法第79条、第85条第2項、第390条第1項、第392条第2項に基づき、主文のとおり判決する。

2015年8月18日
知的財産裁判所第三法廷
裁判官 陳端宜
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