登録拒絶された淡水「黒店」の商標が勝訴

2016-06-27 2015年
■ 判決分類:商標権

I 登録拒絶された淡水「黒店」の商標が勝訴

■ ハイライト
新北市淡水で有名な1970年創業の「黒店」は40年以上、三代にわたって経営が受け継がれてきたが、近年「黒殿飯店」に改名し、豚の頭の図と、「黒殿飯店」の中国語4文字と「DARK PALACE TAIWANESE GOURMET」のアルファベットとで構成される図案をデザインして、商標登録を知的財産局に出願した。
しかしながら高雄の三力食品有限公司(San Li Food Co., Ltd.)が2000年に「黒店」商標を登録していたため、知的財産局は両商標の称呼が同じであり、いずれも「軽食堂(原文:小吃店)」での使用を指定していることから、類似に該当し、消費者に誤認混同を生じさせる可能性があるとして、拒絶査定を行った。
黒殿飯店はこれを不服として(行政訴願を提起したが棄却され)、その後知的財産裁判所に行政訴訟を提起していた。知的財産裁判所は、「黒殿飯店」商標は豚の頭の図と「黒殿飯店」の中国語4文字はデザインが施され、「黒店」商標の単純な(中国語のフォントである)標楷体とは印象、視覚認知ともに異なり、類似度は低いと認定した。
次に、元来の商号が黒店である「黒殿飯店」は長年にわたり経営されており、マスコミも常に報道しているため、Google検索を行い得られた資料及びブログ記事は、いずれも「淡水黒店」、「黒殿飯店」を指すものであり、高雄の三力食品の「黒店」とは関係なく、すでに消費者に誤認混同を生じさせているとは認め難い。このため「黒殿飯店」に勝訴の判決を下し、知的財産局の「登録してはならない」との行政処分を取り消し、知的財産局に係争商標の登録出願案件について、本判決の法的見解に基づき改めて処分を行うよう命じた。全案はさらに上訴できる。(蘋果日報–2015年5月21日)

II 判決内容の要約

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】103年度行商訴字第151号
【裁判期日】2015年5月13日
【裁判事由】商標登録

原告 梁○佑
被告 経済部知的財産局

上記当事者間における商標登録事件について、原告は経済部2014年10月7日経訴字第10306109680号訴願決定を不服とし、行政訴訟を提起した。本裁判所は次のとおり判決する。

主文
訴願決定及び原処分をいずれも取り消す。
被告は出願第100009726号「黒殿飯店DARK PALACE TAIWANESE GOURMET及び図」商標の登録出願案件について、本判決の法的見解に基づき改めて処分を行わなければならない。
原告のその他の請求は棄却する。
訴訟費用はこれを二分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

一 事実要約
原告は2011年3月2日に商標法施行細則第19条に定められる商品及び役務区分表第43類の役務「ホテル、レストラン、軽食堂、旅館」での使用を指定して「黒殿飯店DARK PALACE TAIWANESE GOURMET 及び図」商標(以下「係争商標」という。添付図1のとおり。)の登録を被告に出願するとともに、商標図案の中の「飯店」及び「TAIWANESE GOURMET」については専用権放棄の声明を行った。被告は審査した結果、係争商標図案における「飯店」、「TAIWANESE GOURMET」はよく見かけられる商品/役務の名称又は自己標榜の記述的文字であり、商標権の範囲に疑義をもたらすおそれはなく、専用権放棄を声明する必要はなく、さらに係争商標は登録第00136256号「黒店」商標(以下「引用商標」という。添付図2のとおり。)と類似を構成している上、飲食等の類似する役務での使用を指定しており、引用商標は識別力を有し、係争商標の登録出願は関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるため、登録を許可すべきではないと認定し、2014年5月29日商標拒絶第355389号査定書を以って拒絶処分を行った。原告は行政訴願を提起したものの、経済部は2014年10月7日経訴字第10306109680号訴願決定を以って棄却したため、原告はこれを不服とし、その後本裁判所に行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求:原処分と訴願決定を取り消すとともに、被告に対して係争商標の登録許可処分を行うよう命じる。
(二)被告の答弁:原告の請求を棄却する。

三 本件の争点
本件の争点は係争商標が現行商標法第30条第1項第10号規定に違反しているか否かである。
(一)原告の主張理由:省略
(二)被告の答弁理由:省略

四 判決理由の要約
いわゆる「関連の消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある」とは、商標に関連する消費者がそれを表彰する商品の出所又は生産の主体に対して誤認混同を生じさせるおそれがある」ことをいう。つまり、二商標が同一又は類似を構成しているため、関連の消費者に同一の商標である、又は二商標が同一商標であると誤認するにいたらないものの、二商標の商品/役務が同一の出所からのシリーズ商品/役務である、又は二商標の使用者の間に関連企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在すると誤認混同させる可能性があることをいう。また、二商標における誤認混同のおそれの有無の判断については、(1)商標識別力の強弱、(2)商標の類否及びその類似の程度、(3)商品/役務の類否及びその類似の程度、(4)先権利者の多角化経営の状況、(5)実際の誤認混同の状況、(6)関連する消費者の各商標に対する熟知度、(7)係争商標の出願が善意であるか否か、(8)その他の誤認混同に関する要素等を参酌し、「関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれ」に至るか否かを総合的に認定すべきである。

(一)係争商標と引用商標との類似の程度は低い:
係争商標は豚の頭の図案、横書きの中国語「黒殿飯店」と字体が極めて小さい外国語「DARK PALACE TAIWANESE GOURMET」が上から下へと配列されて構成されており、その中で商標図案の中央に位置する豚の頭の図が全体の三分の二を占めて明確に突出しており、下方にある「黒殿飯店」の字形もデザインが施され、単純な(中国語のフォントである)標楷體「黒店」二文字で構成される(引用)商標とは明らかに異なり、外観において消費者が一見した時の印象、視覚認知はいずれも異なる。「黒殿」は黒くて大きなホールという意味を持ち、「黒店」とは観念上も異なり、「黒殿」と「黒店」は称呼が同じであるが、二商標の全体的印象については関連する消費者に誤認を生じさせる可能性が低く、係争商標と引用商標を全体的に観察した結果、類似の程度は低い商標に該当する。

(二)係争商標と引用商標の指定役務は同一又は類似:
係争商標の指定役務である「ホテル、レストラン、軽食堂」と、引用商標の指定役務である「ホット/コールドドリンクスタンド、飲食店、軽食堂、ビュッフェ形式食堂」とは、いずれも食品又は飲料品を消費者の飲食に提供するもので、係争商標が指定する「ホテル」も消費者に飲食を提供するため、二商標の指定役務の間において、消費対象、消費者ニーズの満足及び役務提供者等の面で共通又は関連する箇所があり、一般的な社会通念と市場における取引状況からみて、同一又は類似の役務に該当する。

(三)商標識別力の強弱:
引用商標の図案は横書きの「黒店」二文字であり、指定役務とは直接的な関連性がなく、識別力を有する。係争商標は豚の頭の図案、横書きの中国語「黒殿飯店」と字体が極めて小さい外国語が上から下へと配列され、飲食関連の役務での使用を指定しているため、これも識別力を有する。

(四)係争商標の登録出願は善意である:
係争商標と引用商標の指定役務は同一又は類似に該当するが、二商標の全体的な外観及び観念の類似の程度は低く、係争商標が引用商標を模倣する、又は(引用商標の信用・名声に)ただ乗りするという不正競争の意図があったとは認め難く、原告の係争商標の登録出願は善意であると認められる。

(五)原告が提出したインターネット、(一般紙である)「蘋果日報」「聯合報」の報道資料をみると、原告は引用商標の出願日(2000年2月29日)よりも前に60年間「黒店排骨飯」商号を経営しており、原告が提出した「黒店排骨飯」のキーワードでGoogle検索を行い得られた資料及びブログ記事は、内容が「黒殿飯店(元黒店排骨飯)」、「黒店排骨飯(黒殿飯店)」、「淡水黒店排骨飯(黒殿飯店)」等にリンクするサイト資料を示すもので、大部分は原告が経営する飲食店を指し、前記資料はいずれも引用商標とは関係ない。前記資料が示す係争商標と原告が長年経営する飲食店との相互使用の状況から、直接引用商標にまで拡大し、二商標がすでに消費者に誤認混同を生じさせていると断定することはできず、これは原告に不利な認定である。 

(六)係争投票と引用商標が使用を指定している役務は同一又は類似しているが、二商標の類似度は低く、いずれも識別力を有するほか、原告の係争商標の登録出願は善意であり、また関連の消費者に誤認混同を生じさせるという証拠もないことを斟酌し、前記の商標図案の類似の程度、指定役務の類似の程度、商標識別力の強弱、商標登録出願の善意の有無等の要素が特に該当し、その他の要素に対する要求を引き下げていることを総合すると、係争商標には相当の識別力があり、引用商標の全体の構図デザインとは明らかに異なり、関連の消費者が普通の注意を施し、時間と場所を異にして隔離的観察したとき、二商標が異なる出所からのものであり、二商標の使用者の間に関連企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在すると誤認させるには及ばず、商標法第30条第1 項第10号本文規定は適用されない。

以上をまとめると、被告が係争商標の登録出願に対して商標法第30条第1項第10号本文規定違反を以って「登録してはならず、拒絶すべきである」との行政処分を行ったことは法に合わず、訴願決定を維持することも妥当ではない。ゆえに原告がこれに基づき訴願決定及び原処分の取消しを請求することには理由がある。また係争商標は登録を許可すべきか否か、その他に拒絶理由はあるか否かは、以前被告の審査が行われておらず(本裁判所ファイル第101ページ)、被告が調べた後、併せて本裁判所の上記法的見解に基づき改めて適法な処分を行うものとする。原告が被告に係争商標の登録を許可するよう命じる処分を請求していることについては、全面的に理由があるという程度には達しておらず、この部分の請求は許可せず、棄却すべきである。

以上の次第で、本件原告の請求には一部に理由があり、一部には理由がないため、智慧財産案件審理法(知的財産案件審理法)第1条,行政訴訟法第200条第4号、第104条,民事訴訟法第79条に基づき主文のとおり判決する。

2015年5月13日
知的財産裁判所第三法廷
裁判長 蔡惠如
裁判官 林静雯
裁判官 陳端宜 
 
 
添付図1 係争商標
出願案件番号第100009726号
使用指定区分:(第43類)
ホテル、レストラン、軽食堂、旅館。
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添付図2 引用商標
登録第00136256号
出願日:2000年2月29日
登録日:2001年1月1日
登録公告日:2001年2月1日
使用指定区分:(第42類)
ホット/コールドドリンクスタンド、飲食店、軽食堂、ビュッフェ形式食堂
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