「D&R」商標も香水販売、仏Dior社が台湾で異議申立成立の勝訴

2016-01-27 2015年
■ 判決分類:商標権

I 「D&R」商標も香水販売、仏Dior社が台湾で異議申立成立の勝訴

■ ハイライト
「DIOR」は国民が熟知するフランス香水の著名ブランド商標であり、「D&R」商標でも香水が販売されているが、同じ会社の商標なのだろうか。パルファン・クリスチャン・ディオール SA(Parfums Christian Dior S.A.、「以下「Dior社」)は海外から知的財産局が許可した「D&R」商標登録に異議を申し立て、知的財産裁判所は先日、異議申立成立、つまり台湾の鑫御実業有限公司(Sinyuu Industrial Co., Ltd.、以下「鑫御公司」)の「D&R」商標登録を取り消す内容の判決を下した。
知的財産裁判所の判決によると、商標法では、他人と同一又は類似の商品又は役務における他人の登録商標又は先に出願された商標と同一又は類似であり、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるもの、他人の著名な商標又は標章と同一又は類似し、関連する公衆に誤認混同を生じさせるおそれがあるものは「登録を受けることができない」と規定されている。
1947年に創業されたDior社の「DIOR」商標はその創業者の姓であり、鑫御公司の商標「D&R」は「Design & Research」の略称である。
裁判所は、両社の商標はいずれも外国語の単語であり、一般消費者は両社の商標の外国語部分における最初と最後のアルファベットが同じであることにより、両商標に対して誤認混同する可能性があると認定した。
鑫御公司は知的財産局に対して、当時の商標法施行細則に定める商品及び役務区分表第3類の化粧品、香水等42品目の商品における使用を指定して、「D&R」商標の登録を出願し、許可査定を受けた。
Dior社はこれを発見した後に異議を申し立てて、「両社の商標は類似しているため、知的財産局は鑫御公司にこの商標権を付与すべきではない」と主張したが、同局は「異議申立不成立」の審決を行ったため、Dior社は訴訟を提起した。本件はさらに上訴できる(2015年1月28日 工商時報 A21面)。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】103年度行商訴字第113号
【裁判期日】2015年1月15日
【裁判事由】商標異議

原告 仏パルファン・クリスチャン・ディオール(Parfums Christian Dior S.A.)
被告 経済部知的財産局
参加人 鑫御実業有限公司(Sinyuu Industrial Co., Ltd.)

上記当事者間における商業異議事件について、原告は経済部2014年7月15日経訴字第10306106810号訴願決定を不服として行政訴訟を提起した。当裁判所は請求に基づき鑫御実業有限公司が本件被告の訴訟に独立して参加することを許可した。当裁判所は次のとおり判決する。

主文
訴願決定及び原処分を共に取り消す。
被告は、登録第1469879号「D&R」商標に係る「異議成立による登録取消」審決を行え。
訴訟費用は被告の負担とする。

一 事実要約
参加人は以前、当時の商標法施行細則第13条に定められる商品及び役務区分表第3類商品における使用を指定して「D&R」商標の登録を被告に出願した。被告は審査した結果、登録第1469879号商標(以下「係争商標」)として登録することを許可した。その後原告はこれに対して異議を申し立て、被告は審理の結果、異議申立不成立の処分を下した。原告はこれを不服として行政訴願を提起したが、経済部に棄却されたため、なお不服として当裁判所に対して行政訴訟を提起し、原処分と訴願決定の取消とともに、被告による係争商標の登録取消の審決を請求した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求:1.原処分及び訴願決定を共に取り消す。2. 被告は登録第1469879号「D&R」商標に係る「異議成立による登録取消」審決を行え。
(二)被告の答弁:原告の請求を棄却する。

三 本件の争点
本件の主な争点は、係争商標の登録が登録当時の商標法第23条第1項第12乃至14号及び現行商標法第30条第1項第10乃至12号規定に違反し、登録を受けることができない状況に該当するか否か。

原告の主張(略)
被告の主張(略)

四 判決理由の要約
(一)同一又は類似の商品又は役務における他人の登録商標又は先に出願された商標と同一又は類似であり、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある商標、他人の著名な商標又は標章と同一又は類似し、関連する公衆に誤認混同を生じさせるおそれがある商標は登録を受けることができないと、登録当時の商標法第23条第1項第12号前段及び第13号本文、即ち現行の商標法第30条第1項第11号前段及び第10号本文にそれぞれ規定されている。よって本件において上記各号規定に該当する状況の有無を判断するには、先ず両商標における同一又は類似の有無を判断する必要がある。次にいわゆる商標が同一又は類似を構成するか否かは、通常の知識経験を有する一般商品消費者が購買時に普通の注意を施し、両商標の要部の外観、観念又は称呼について隔離的に観察して誤認混同を生じさせるおそれの有無で判断する。よって両商標が外観、観念又は呼称について、その要部の文字、図形又は記号に類似があれば、一般消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあり、類似の商標となる。商標が外観又は観念において誤認混同のおそれがあるかを斟酌するには、客観的事実に基づいて判断すべきである。例えば(1)通常の知識経験を有する消費者が購入時に普通の注意を施すことを基準とする、(2)商標の文字、図形又は記号は時間と場所を異にして隔離的かつ全体的に観察することを基準とする、(3)商標が文字、図形又は記号の組合せ商標であるときは、その各部分について観察し、要部を構成する部分を基準とする。よって、両商標の類否は各商標の「外観」、「観念」、「呼称」において特に突出し、消費者がマーク全体に対して核心的な印象を形成する要部を、時間と場所を異にして隔離的かつ全体的に観察し、通常の知識経験を有する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるかを判断する。さらに、商標法でいう著名とは、該商標又は標章がすでに広く関連の事業者又は消費者に普遍的に認知されていると認定できる客観的証拠があることを指す。また該号でいう著名商標の認定を行う時間の基準点は商標登録出願時とすべきであり、つまり商標登録出願時において市場に同一又は類似する他人の著名商標があるか否かを判断する。

(二)原告が引用商標である「DIOR」商標はそのブランド創業者の姓であると主張しているのに対して、参加人は係争商標に使用する「D&R」がその「設計及び研究開発」という経営理念の外国語、即ち「Design & Research」の略称であると主張している。しかしながら、通常の知識経験を有する消費者は係争商標が使用する「D&R」の外観だけで係争商標が表現しようとする概念である「Design & Research」を推知することは難しい。前述の説明から判るように、両商標はいずれもよく知られ、よく見かけられる外国語の単語ではなく、その外観と呼称の対比が両商標の類否を判断するための主要な部分となる。両商標を比較すると、最初と最後のアルファベットはいずれも大文字の「D」、「R」であり、「D」、「R」の間に挟まれるアルファベット又記号が「IO」と「&」である点のみが異なっており、両商標はいずれも国民がよく知っている又はよく見かける外国語の単語ではなく、通常の知識経験を有する一般消費者は両商標の外国語部分で使用される最初と最後のアルファベットが同じであることにより、両商標を誤認混同する可能性がある。また両商標の呼称についてみると、通常の知識経験を有する消費者にとって、引用商標である「DIOR」商標は「dior」のようにつなげて呼んだり、「d」、「i」、「o」、「r」と分けて呼んだりするのに対して、係争商標「D&R」は「d」「and」「r」と呼ぶため、その呼称はやや異なっているが、「d」、「i」、「o」、「r」と分けて呼ぶと「d」「and」「r」に類似している。たとえ「DIOR」がすでに著名商標であるため、一般消費者は分けて呼ぶことが無かったとしても、「d」「and」「r」はもう一つの引用商標である「迪奧」の発音とは類似している。被告は「ㄠˋ(アウ)」と「r」が明らかに異なると主張しているが、それはいずれも反り舌音であり、明らかに異なるものではない。よって観念、外観、呼称を問わず、両商標は類似の商標に該当する。

(三)本件について係争商標の登録許可当時の商標法第23条第1項第12号前段、即ち現行の商標法第30条第1項第11号前段に定める状況の有無を判断する時、二引用商標が係争商標登録出願時にすでに著名商標であったかを判断する必要がある。調べたところ、引用商標の「DIOR」商標は、原告が当初化粧品、香水等の商品に使用した商標であり、原告が数十年という長期にわたり世界各国及びわが国で広く宣伝、使用してきたことにより、その表彰する商品の品質と信用は2008年にはわが国において関連の事業者又は消費者が熟知するところとなっていた。以上をまとめると、二引用商標は原告が長期に継続的使用を行ったことにより、係争商標登録出願日である2010年12月7日にはすでに化粧品、香水等商品において国内の関連の事業者又は消費者に普遍的に知悉されており、著名商標の水準に達していると認定できる。

(四)また、係争商標は「化粧品、美白化粧水、クレンジングクリーム、アイクリーム、日焼け止めクリーム、保湿液、美白スキンクリーム」等商品と二引用商標が表彰される「各種香水、メーキャップ化粧品、美容クリーム、ボディパウダー等化粧品」等商品とは、同じく人体に使用する化粧品、香水であったり、常にクレンジングや手入れ等の関連商品を併せて使用されるものであったり、同じく人体に使用できる芳香成分や洗浄成分を含有する商品であったりするため、用途、性能、材料、生産者、消費者及び販路等の要素において、いかなる共通又は関連の箇所も無いとは認め難く、よって一般的社会通念と市場取引状況のいずれにも同一又は類似の箇所があり、関連の消費者に両商品又は役務が同一の出所のものである、又は出所は異なるが関連があると誤認混同を生じさせる可能性がある。

(五)参加人は、原告が生産する商品において実際に使用しているのは、頭文字のみが大文字で、その他は小文字である外国語「Dior」であるため、すべて大文字である引用商標「DIOR」の保護密度は適度に調整し引き下げるべきであり、かつ両商標の商品の販路は大きく異なっており、市場においても商標図案に「DR」の含む商標が多数併存しており、関連の消費者が誤認混同する可能性はない云々と主張している。しかしながら調べたところ、外国語の「Dior」と「DIOR」は頭文字「D」に接続する「ior」と「IOR」が大文字か小文字かの違いのみであり、これらの大文字と小文字の違いは、外国語「Dior」と「DIOR」の同一性を阻害するものではなく、即ち関連の消費者が観察する時いずれを見ても、それが代表するものが同じ商品生産者であることを連想させる。さらに商品の販路については、両商標の商品がいずれもネットで販売されており、両商標の類似の程度により、関連の消費者がネットで類似の商品を購入する時、両商標(の商品)の出所が同じである、又は同じではないが関連があると混同する可能性がある。

(六)係争商標登録時の商標法第23条第1項第12号は、現行商標法第30条第1項第11号に改正されているが、条の番号が変更されただけで、内容は同じであり、本件は登録時及び改正施行後の条文規定に違反する事由がみられることを、ここに併せて述べる。

(七)また、登録時商標法同条第14号の規定は他人が創作した商標を剽窃して先取り登録することを回避し、不正競争行為を防止して、先に商標を使用した者が他人にその商標を先に登録されてしまった時に権利救済の機会を与えることを趣旨としている。即ち本号は他人が創作した商標を剽窃し先取り登録することを回避することを目的としており、本件係争商標には先取り登録の状況がみられないため、本号は適用されないことをまとめてここに説明する。

(八)以上をまとめると、二引用商標は係争商標の出願前すでに著名商標であり、両商標の指定商品は同一又は高度に類似する商品であり、両商標の図案の類似の程度により、関連の消費者に両商標が表彰される商品が同一の出所からのシリーズ商品であると誤認させる、又は両商標の使用者の間に関連企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在すると誤認させる可能性が極めて高く、関連の消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある。したがって、原告が訴願決定及び原処分の取消を請求し、被告にこの部分の異議成立審決を命じるよう請求することには理由があり、許可すべきである。

2015年1月15日
知的財産裁判所第二法廷
裁判長 曾啓謀
裁判官 陳容正
裁判官 熊誦梅
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