創作性(創作非容易性)の審査は意匠登録出願に係る意匠全体を対象とすべきであり、各面図毎に完全に対応して特徴が開示されていることを要求するものではない。

2021-12-21 2021年
■ 判決分類:専利権

I 創作性(創作非容易性)の審査は意匠登録出願に係る意匠全体を対象とすべきであり、各面図毎に完全に対応して特徴が開示されていることを要求するものではない。
 
II 判決内容の要約

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】109年行専訴字第18号
【裁判期日】2021年4月29日
【裁判事由】意匠登録無効審判

原告 施文富
被告 経済部知的財産局
参加人 蔡志華

上記当事者間の意匠登録無効審判事件について、原告が経済部2020年4月22日経訴字第10906303460号訴願決定を不服として行政訴訟を提起し、当裁判所は参加人に被告の訴訟に対する独立参加を命じることを決定した。当裁判所は次のとおり判決する。

主文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実要約
原告は2016年4月8日に「鞋底」を以って被告に意匠登録を出願し、被告は登録を許可して、意匠第D179735号登録証(以下「係争意匠」という)を交付した。その後参加人は係争意匠には許可時の専利法第122条第1項第1号及び第2項に該当して特許を受けることができないとして、これに対する無効審判を請求した。被告は「無効審判請求は成立し、登録を取り消す」との審決を下した。原告はこれを不服として行政訴願を提起したが、経済部に棄却されたため、原告は当裁判所に行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求:訴願決定及び原処分をいずれも取り消す。
(二)被告の請求:原告の請求を棄却する。

三 本件の争点
証拠2、4の組合せは係争意匠が創作性(創作非容易性)を有しないことを証明できるか。
(一)原告主張の理由:省略。判決理由の説明を参照。
(二)被告答弁の理由:省略。判決理由の説明を参照。

四 判決理由の要約
(一)証拠2(添付図2)には係争意匠である靴底の爪先上がりと靴底の底部の外観的特徴がすでに開示されている。また、証拠4の上面図(訳注:六面図の平面図に相当)(添付図3を参照)から、当該靴底上部の前足部には山形模様が、中足部には横向きリブ2本、中央に縦向きリブ2本、中足部から後足部に複数の横向きリブと、複数の横向きリブを貫通する1本の中央リブを有するという特徴を有することが分かる。

(二)証拠4と係争特許とは、(係争特許では)複数の横向きリブと山形のリブが交互に設置されているという特徴を有している点でやや異なるが、この相違はその意匠の属する技術分野における通常の知識を有する者(当業者)にとって、証拠4の靴底に対して前足部に横向きリブを追加し、中足部から後足部に山形のリブを追加するという変更をしたにすぎず、即ち係争意匠に係る前記の異なる外観設計の特徴は簡単になし得るものであり、しかもそれらの変更は係争意匠の外観全体に特異な視覚的効果をもたらしておらず、係争意匠の全体の造形は当業者が証拠2、4の先行技芸(先行意匠)に基づいて容易に想到できる創作であり、証拠2、4の組合せは係争意匠が創作性(創作非容易性)を有しないことを証明できる。

(三)原告は、証拠2の靴底の歯状山形模様は山部と谷部において緩やかな曲線であるが、係争意匠の「上面図」における山形模様の山部と谷部は鋭角に近い曲線であり、両者の設計の特徴は異なっており、しかも無効審判の証拠の組合せはいずれも係争意匠の各面図の特徴を完全に開示していない云々、と主張している。しかし証拠2の靴底と係争意匠「上面図」の山形模様を比較すると、両者の山部と谷部はいずれも90°以上の鈍角であり、原告が主張する鋭角ではなく、しかも両者の山形模様は屈曲角度と数量、比率において極めて類似しており、同じ全体的な視覚的効果を創出し、意匠の特徴は異なるところがない。

(四)さらに、創作性の審査は意匠登録出願に係る意匠の全体を対象とするべきであり、そして選定された主な引用文献と対比して、さらに両者の相違は当業者が先行意匠と出願時の通常の知識知識を参酌して容易に想到できるか否かを判断するものであり、その重点は全体の対比にあり、各面図毎に完全に対応して特徴が開示されていることを要求するものではない。係争意匠が開示される各面図の目的は、一つの全体としての靴底の意匠を構成し、製品としての靴底は造形が基本的に左右対称であり、証拠2はすでに係争意匠である靴底の側面と底面の造形を開示しており、その靴底の上面の特徴も証拠3又は証拠4の簡単な変更によりなし得るため、全体的にみて、証拠2、4の組合せは係争意匠の設計の特徴を開示することができ、係争意匠は創作性を有しない。

以上の次第で、本件原告の請求には理由がなく、知的財産案件審理法第1条、行政訴訟法第98条第1項前段、第218条、民事訴訟法第385条第1項前段により、主文のとおり判決する。

2021年4月29日
知的財産裁判所第一法廷
裁判長 李維心
裁判官 林洲富
裁判官 蔡如琪
  

添付図1:係争意匠の主な図面
附圖1 
添付図2:証拠2の主な図面
附圖2
 
添付図3:証拠4の主な図面
附圖3 
  
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