実用新案の無効審判審理では、原則的に請求人が挙証責任を負い、例外として審判官が関連証拠を明らかに知った等の状況において、無効審判請求の範囲で職権審理を発動してもよい

2018-10-23 2017年
■ 判決分類:専利権

I 実用新案の無効審判審理では、原則的に請求人が挙証責任を負い、例外として審判官が関連証拠を明らかに知った等の状況において、無効審判請求の範囲で職権審理を発動してもよい

II 判決内容の要約

最高行政法院裁判所
【裁判番号】106年度判字第559号
【裁判期日】2017年10月12日
【裁判事由】実用新案無効審判

上訴人 臺灣菸酒股份有限公司(Taiwan Tobacco and Liquor Corporation)
被上訴人 経済部知的財産局
参加人 元譽精業有限公司(Yuan Yu Ching Yeh Co., Ltd.)

上記当事者間における実用新案無効審判事件について、上訴人は2017年1月19日知的財産裁判所105年度行専訴字第51号行政判決に対して上訴を提起し、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
上訴を棄却する。
上訴審の訴訟費用は上訴人の負担とする。

一 事実の要約
参加人は2013年2月1日に「王冠と瓶口の密封構造(原文:瓶蓋與瓶口封合結構)」を以って被上訴人に実用新案登録の出願を行い、被上訴人の方式審査を経て、2013年4月16日に登録が許可された。その後参加人は証書料及び第1年の登録料を支払い、被上訴人は2013年7月1日に公告し、第M456361号実用新案登録証(以下「係争実用新案」)を交付した。そして上訴人は2015年6月23日に係争実用新案が専利法(訳註:特許法、実用新案法、意匠法に相当)第120条の第22条第1項第2号、第4号準用規定に違反しているとして、これに対する無効審判を請求した。被上訴人は審理した結果、2016年1月29日に「請求項1乃至2に対する無効審判請求は不成立」との処分を下した。上訴人はこれを不服として行政訴願を提起したが、棄却された。上訴人はなおも不服として、知的財産裁判所(以下「原審」)に行政訴訟を提起した。原審は職権により参加人に本件被上訴人の訴訟に独立して参加するよう命じ、請求棄却の判決を下した。上訴人はなおも不服として、本件上訴を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)上訴人の請求:
原処分及び訴願決定をいずれも取り消し、被上訴人は第M456361号「王冠と瓶口の密封構造」実用新案無効審判事件について請求項1乃至2の無効審判請求成立により実用新案登録を取り消す処分を行う。

(二)被上訴人の請求:上訴人の原審における請求を棄却する。

三 原審の判決要旨
原審は上訴人が原審にて提出した証拠である王冠の写真及び図等について、証拠2乃至6は係争実用新案の新規性欠如を証明できず、証拠7及び原告証拠3乃至8は係争実用新案の進歩性欠如を証明できず、証拠8及び原告証拠3乃至8は参加人が係争特許の出願権者ではない等の主張を証明できないと認定し、原決定と原処分をいずれも維持し、上訴人の原審における請求を棄却した。

四 両方当事者の理由
(一)上訴人の主張理由:省略。判決理由の説明を参照。
(二)被上訴人の答弁理由:省略。判決理由の説明を参照。

五 判決理由の要約
(一)専利法第119条第3項本文には「実用新案権の無効審判を請求できる事情は、その許可処分時の規定による。」と規定されている。調べたところ、係争実用新案の出願日は2013年2月1日で、被上訴人は方式審査を経て2013年4月16日に登録を許可し、2013年7月1日に公告した。その後上訴人は2015年6月23日に無効審判を請求し、被上訴人の審理を経て、2016年1月29日に「請求項1乃至2に対する無効審判請求の不成立」処分を下した。よって係争実用新案の取消理由の有無は許可処分時に適用されていた2011年12月21日改正公布、2013年1月1日施行の専利法(以下「許可時の専利法」)規定により判断すべきである。
(二)専利法第120条の第75条準用規定により、専利主務機関は無効審判を審理するとき、無効審判請求範囲内において、職権に基づき、無効審判の請求人が提出していない理由及び証拠を斟酌することができる。ただし専利法は2011年12月21日に第75条規定が新設されており、その立法趣旨は「無効審判請求範囲内において、審判官が職権により知った事実証拠があったとき、又は改正条文第78条規定により合併審理において、異なる無効審判案件の証拠間で相互に補強できるとき、審判官が職権によりこれを斟酌できるようにすべきである。よって専利主務機関が審理するとき、無効審判請求範囲内において見つけ、当事者が提出していない理由も斟酌できる」というものであった。そして、無効審判の審理は原則的に請求人が挙証責任を負う必要があり、例外として審判官が職権により関連証拠(例えば、その他の無効審判案件の証拠)を知った場合、又は民事判決で係争専利の請求項が無効であると認定された場合、無効審判請求範囲内において職権審理を発動できる。よって実用新案に前記無効審判請求事由があり、その実用新案権を取り消すべきであるか否かは、原則的に請求人が提出した証拠で証明すべきである。
(三)調べたところ、係争実用新案は王冠と瓶口の密封構造に関するものであり、その創作の主な目的は有効に密封でき、さらには異物が瓶内部に混入することを防止できる王冠のヒダと瓶口との密封機能を有する王冠と瓶口の密封構造を提供することである。原判決はそれが証拠調査の弁論結果から確定された事実により、上訴人が提出した証拠はいずれも係争実用新案の新規性及び進歩性が欠如していることを証明できず、参加人が係争実用新案の出願権者ではないことを証明できないため、原審判決は論理法則又は経験法則に反しておらず、また判決に法令の不適用、法令の不適切な適用、理由不備等の法令違背の事情はないと認定する。以上をまとめると、上訴請求にて原判決の法令違背を指摘し、取消しを請求することに理由はなく、棄却すべきである。

以上の次第で上訴には理由がなく、智慧財産案件審理法(知的財産案件審理法)第1条及び行政訴訟法第255条第1項、第98条第1項前段により、主文のとおり判決する。

2017年10月12日
最高行政裁判所第三法廷
裁判長 呉東都
裁判官 黄淑玲
裁判官 鄭小康
裁判官 姜素娥
裁判官 林欣蓉
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