実用新案の先使用権抗弁に係る認定
2018/07/24 | 2017年 前のぺージに戻る    
■ 判決分類:専利権

I 実用新案の先使用権抗弁に係る認定

■ ハイライト
    原告は係争実用新案の実用新案権者であり、実用新案権の存続期間は2014年7月1日から2024年6月30日までである。原告は、被告が製造及びネット販売を行った係争製品が係争実用新案を侵害しているとして、法に基づき被告に侵害の停止を請求した。被告は、係争実用新案の出願日前にすでに訴外人である大松發股份有限公司(TA SONG FA CO., LTD.、以下「大松發公司」)から係争製品を購入した際の領収書(被告証拠1)、被告が係争実用新案出願日前に販売した係争製品の実物(被告証拠2)、製品カタログ(被告証拠3)、ネットの資料(被告証拠4)等を証拠として提出し、先使用権を主張する抗弁を行った。裁判所は最終的に専利法(訳註:特許法、実用新案法、意匠法に相当)第59条第1項第3号に基づき、係争製品に係争実用新案権の効力は及ばないため、原告の請求には理由がないとの判決を下した。
    被告証拠2と原告が提出した係争製品の写真とは外観が一致し、さらに被告証拠2の包装に記載された型番と被告証拠1に記載された型番も同じであり、それが係争製品であると認定できる。被告証拠1に示されている係争製品は、2013年9月27日、つまり係争製品を大松發公司から調達した時点で、係争実用新案の技術的特徴を有していたはずである。
    専利法でいう販売とは単に「売ること」を指し、被告が大松發公司から係争製品を調達したことは、販売という実用新案権実施行為を直接的に構成しないが、被告が販売するためにネット上で紹介し、出荷するために調達していたことは、すでに販売に必要な準備を完了したと認めることができる。また専利法でいう「販売の申出」は、解釈上、申出の誘引が含まれるべきであり、被告がネット上で紹介、推薦することで消費者からの注文の申込(申出)を誘引することは、「販売の申出」に該当すると認められる。つまり、被告が係争実用新案出願日前、すでに国内で係争実用新案を実施していた、又は既に必要な準備を完了していたと認めるべきであり、係争製品に係争実用新案権の効力は及ばない。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】105年度民專訴字第98号
【裁判期日】2017年6月13日
【裁判事由】特許権侵害行為停止

原告 謝○育
被告 瑞奇喬伊有限公司(RICH JOY CO., LTD.)
上記当事者間における特許権侵害行為停止事件について、当裁判所は2017年5月2日に口頭弁論を終え、次のとおり判決する。

主文
原告の訴え及び仮執行宣言の申立てをいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実要約
    原告は実用新案M489174号「ずれ落ち防止編物地(原文:具防止下滑之針織物)」の実用新案権者であり、実用新案権の存続期間は2014年11月1日から2024年6月30日までである(以下「係争実用新案」)。被告の瑞奇喬伊有限公司(以下「被告会社」)とその法定代理人である被告の林○凱はいずれも原告から使用許諾を受けていないことを知りながら、係争実用新案と同じ製品「VITAL ENERGYゲルマニウムフレーム膝サポーター(原文:VITAL ENERGY防護鍺骨架護膝)」(以下「係争製品」)を製造し、それが経営するサイト「Vital Salveo紗比優機能服飾」、各オンラインショップ及び実体の店舗において販売した。
    原告が経営する忠盛有限公司(以下「忠盛公司」)は係争製品をネットを通じて購入して鑑定に送った結果、係争製品が係争実用新案の請求項の範囲に含まれることが確認された。よって専利法第120条の第58条第1、2項準用規定、第96条第1項規定等に基づき、被告等の侵害の停止を請求した。
    被告は次のように主張した。つまり被告証拠1~4を調べると、被告は係争実用新案出願日以前にすでに係争製品を販売し、メディアに露出していたことがわかり、係争実用新案出願前に国内で実施されていたことは明らかである。たとえ原告が実用新案権者であり、係争製品が係争実用新案の請求項に含まれる証拠を提出したとしても、被告証拠1~4から係争製品が係争実用新案出願日前に実施された事実が分かるため、専利法第120条に基づき第59条を準用し、係争製品は係争実用新案権の効力が及ばず、原告は被告に対して係争実用新案権を主張してはならない。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の主張:
1.被告等は中華民国実用新案第M489174号「ずれ落ち防止編物地」の実用新案権を侵害する物品について販売の申出、販売、使用、又は上述の目的のための輸入及びその他前記実用新案権を侵害する行為を行ってはならない。
2.訴訟費用は被告等の負担とする。
3.原告は担保を供託するので、仮執行宣言を申し立てる。
(二)被告の主張:原告の訴えを棄却する。

三 本件の争点
第一に、係争製品には係争実用新案の実用新案権(の効力)が及ぶのか。第二に、被告が抗弁する係争実用新案の無効原因は真実であるのか。
(一)原告の主張理由:省略。判決理由の説明を参照。
(二)被告の答弁理由:省略。判決理由の説明を参照。

四 判決理由の要約
(一)係争製品には係争実用新案の実用新案権(の効力)が及ぶのか。
1.専利法第59条第1項第3号に、特許権の効力は出願前、すでに国内で実施されていたもの、又はすでに必要な準備を完了していたものには及ばないと規定されている。この規定は専利法第120条に基づいて実用新案に準用される。いわゆる実用新案権の実施とは、専利法第120条に基づいて第58条第2項が準用され、即ち、該実用新案の物品の製造、販売の申出、販売、使用、又は上述の目的のための輸入をする行為をいう。よって係争製品が係争実用新案の出願前に、被告によってすでに係争製品の製造、販売の申出、販売、使用、又は上述の目的のための輸入がされていたならば、係争製品に係争実用新案の実用新案権の効力は及ばない。
2.被告は、係争実用新案の出願前にすでに販売の行為があったと抗弁しており、係争実用新案出願前に被告が大松發公司から係争製品を含む商品を購入した際の領収書(被告証拠1)、被告が販売した係争製品の実物(被告証拠2)、被告が販売した係争製品を含む製品のカタログ(被告証拠3)、係争製品を販売したネットの資料(被告証拠4)を証拠として提出している。
3.しかしながら原告は被告による上述抗弁に対して反論し、次のように主張している。(1)領収書だけでは購入した物品が係争製品であることを証明できず、たとえ同一の製品だったとしても、被告と大松發公司との間に製造と販売という内部の分業があったことを証明できるだけであり、係争製品がすでに市場に流通していたことは証明できない。(2)被告証拠3のカタログには期日が記載されておらず、それが係争実用新案出願日前にすでに存在していたことを証明できない。(3)被告証拠4のネット資料については、その内容が本質的に変造されやすく、被告がサイトのウェイバックマシン等のプログラムで係争実用新案出願日前にすでに存在していたことを証明していないため、証拠能力はない。
4.ただし調べたところ次のとおりであった。
(1)被告証拠1に示されている係争製品は2013年9月27日、つまり被告が大松發公司から調達した時点で、係争実用新案の技術的特徴に適合していたはずである。
(2)原告は、被告証拠4のネット資料はその内容が本質的に変造され易く、さらにウェイバックマシン等のプログラムでそれが存在する時期を証明していないと主張しているが、被告が提出したネット資料はその内容とサイトのURLからみて、第三者のサイト(www.fever38.com及びmypaper.pchome.com.tw)の資料であり、原告がさらに挙証して攻防しなかったため、被告が随意改変を制御できるものではないと認めるべきである。
被告が提出した上述のネット資料には、URLと印刷期日がいずれも印刷されており、すでに実用新案が実施されていることを証明しようとするものであることは双方にとって明らかであり、原告がそれは証拠とできないと根拠なく疑義を呈する主張は、採用できない。
(3)被告が提出した被告証拠3の製品カタログには確かに期日が印刷されていないため、係争実用新案の出願日前に存在した証拠として直接的に採用できない。ただし、前述の被告証拠1(調達の領収書)、被告証拠2(係争製品の実物)、被告証拠4(ネット資料)により、被告は係争実用新案出願日にはすでに大松發公司から係争製品を調達し、かつてネットでそれを紹介、販売しており、さらに当時の係争製品は係争実用新案の技術的特徴に適合していたと認めることができる。専利法で定める実用新案権の実施における販売の部分については、単に売ることを指し、買入れを含まない(刑事法上の販売犯罪とは異なる)ため、被告が大松發公司から係争製品を調達したことは、販売という実用新案権実施行為を直接的に構成しない。ただし、被告証拠4のネット資料と併せると、被告はすでに販売に必要な準備(販売するためにネット上で紹介し、出荷するために調達)を完了していたと認めることができ、それは係争実用新案権の効力は及ばないものでもある。さらに被告証拠4のネット資料から被告は係争実用新案を有する係争製品について、すでに販売のための申出を行っていた(専利法における「販売の申出」には、解釈上、申出の誘引が含まれるべきであり、それによって始めて立法の趣旨に合う。ここでは契約の成立の有無を判断するのではなく、実用新案権出願日前に実用新案の実施行為が存在していたかを判断して実用新案権の効力を排除するため、専利法第59条第1項第3号に「すでに必要な準備を完了していたもの」が特許権の効力が及ばない事由であると規定されていること、並びにこのように実用新案権の効力が及ばない場合も同条第2項で定められる範囲制限[訳註:第2項では「前項第3号、第5号及び第7号之実施者は、その元来の事業の目的範囲内においてのみ引き続いて利用することができる。」と規定されている]を受ける必要があることを参酌して、ネット上で紹介、推薦することで消費者からの注文の申込[申出]を誘引することは、「販売の申出」に該当すると認められる)。これらはすべて、被告が係争実用新案出願日前、すでに国内で係争実用新案を実施していた、又は既に必要な準備を完了していたと認めるべきである。

(二)上述争点の判断結果に基づき、本件原告の訴えには理由がなく、棄却すべきである。

双方のその他の攻撃防御方法については、判決結果に影響を及ぼさないため、ここでさらに論述しない。

2017年6月13日
知的財産裁判所第三法廷
裁判官  蔡志宏