商事事件審理細則 2021-05-11
2021-05-18 その他
商事事件審理細則
公布期日:2021年 05 月11 日
2021年5月11日司法院院台庁民三字第1100014274号令により全文43条の制定、公布、並びに2021年7月1日より発効
第 1 条
本細則は商事事件審理法(以下本法という)第八十条の規定に基づき制定する。
第 2 条
下記の事件は、知的財産及び商事裁判所商事法廷(以下商事裁判所という)でこれを処理する。
一、商事事件の調停、訴訟、非訟、証拠保全、保全手続き、再審、再審の申立て及びその他申立て、関連決定等に関する事件
二、商事裁判所で成立した調停に対し、調停無効または調停取消を宣告するよう提起した訴訟事件
三、本法第六十一条第二項に基づき仲裁に付し成立した仲裁判断に対し、仲裁判断の取消を申立てて提起した訴訟事件、または執行許可の申立事件
下記の事件につき、その目的金額または価額が一億台湾ドル以上の場合は、商事裁判所でこれを処理する。
一、商事事件の仲裁判断に対し、仲裁判断の取消を申立てて提起した訴訟事件
二、商事事件の仲裁判断に対し、執行許可を申立てた事件
三、商事事件の外国、香港またはマカオにおける確定裁判に対し、執行許可を申立てて提起した訴訟事件
四、商事事件の外国、香港またはマカオにおける仲裁判断の承認決定申立事件
五、中国で作成された商事事件の民事確定裁判、仲裁判断の認可決定申立事件
第 3 条
商事事件の全部または一部が、知的財産事件または労働事件に関わるときは、商事裁判所でこれを処理しなければならない。
商事裁判所による処理の前項事件は、次の規定により、処理しなければならない。
一、知的財産権に関わる部分の処理については、本法及び本細則の規定による。本法及び本細則に規定がないときは、知的財産案件審理法及び知的財産案件審理細則の規定による。
二、労働事件部分に関わる部分の処理については、本法及び本細則の規定による。本法及び本細則に規定がないときは、労働事件法及び労働事件審理細則の規定による。
第 4 条
民事訴訟事件について、その訴訟目的が商事訴訟事件の訴訟目的または攻撃、防御方法と関わり、事実証拠資料も相互利用でき、且つ他の裁判所の管轄に専属しないときは、併せて商事裁判所に訴訟を提起し、または商事訴訟事件の係属中に反訴を追加または提起することができる。
第 5 条
犯罪により損害を受けた者が提起した刑事付帯商事訴訟事件について、刑事裁判所で終局裁判を下したときは、商事裁判所への移送決定を下してはならない。
第 6 条
当事者が商事事件に該当しない第一審管轄裁判所を商事裁判所とすることに合意したときは、管轄合意の効力が生じない。
第 7 条
訴訟の変更、追加により、訴訟の全部が商事訴訟事件に該当するとき、普通裁判所は他方当事者の申立てにより、訴訟の全部を商事裁判所に移送しなければならない。
訴訟の変更、追加により、訴訟の一部が商事訴訟事件に該当するとき、普通裁判所は他方当事者の申立てにより、当該一部を商事裁判所に移送しなければならない。
反訴を提起した目的が商事裁判所の管轄に専属するとき、他方当事者が移送を申立てた場合を除き、普通裁判所は棄却の決定を下さなければならない。
普通裁判所は第一項から第三項の移送決定を下す前に、当事者に意見陳述の機会を与えなければならない。
第 8 条
当事者または関係人が手続代理人に、申立ての代行、提訴、上訴、抗告、再審の訴訟提起または再審の申立てを委任していないか、または本法第六条第二項の規定により委任したが、裁判所が不適切だと認定したときは、まず期限を定めて補正するよう命じなければならない。補正期限を超えた場合、手続代理人の受任後に代行した時点から、はじめて当該手続行為の効力が生じる。
第 9 条
当事者または関係人が手続代理人を委任せずになした書面陳述または申立てについて、裁判所はこれを斟酌してはならない。
第 10 条
当事者または関係人が受託裁判所で行う手続行為については、手続代理人がこれを代行しなければならない。
第 11 条
商事事件弁護士の報酬を、訴訟費用の一部とする金額については、裁判所が終局裁判を行う際に、併せてこれを決めなければならない。裁判を経ずに、事件が終結するとき、裁判所は申立てに基づき決定をもって定めなければならない。
裁判所が弁護士報酬の金額を定めた裁判については、抗告することができる。
第 12 条
本法第六十条第一項の規定に基づき、地方裁判所は証拠保全を実施するにあたり、商事調査官が立ち会う必要があると認めたとき、派遣するよう商事裁判所に連絡することができる。
前項の場合、商事調査官の回避について、本法第十七条第三項の規定を適用し、その申立てについては、地方裁判所がこれを決定する。
第 13 条
商事調査官は指定を経て、裁判官の命令に従い、次の方法で職務を遂行しなければならない。
一、専門知識に基づき、当事者または関係人の書状及び資料の分析、その論点の整理、専門分野における参考資料の提出且つ説明を行う。
二、争点及び証拠の整理、証拠調べの範囲及び方法について、参考意見を提供する。
三、裁判官の命令に従い、指定期日に立会い、当事者または関係人、手続代理人、証人、専門家証人または鑑定人に対し必要な尋問を行う、またはそれらが陳述した専門用語を説明する。
四、検証、鑑定、証拠保全または保全手続きにおいて、関連事項を説明し、協力する。
五、職務遂行の成果について、報告書を作成する。もし、事件の性質が複雑で、且つ必要があるときは、それぞれ中間報告書及び最終報告書を作成しなければならない。
第 14 条
商事調査官が期日通り審理に参与したときは、書記官が下記の各事項を調書に記載しなければならない。
一、商事調査官の氏名
二、期日における当事者または関係人、手続代理人、証人、専門家証人または鑑定人に対する説明または尋問の事由
三、説明または尋問の要領
当事者または関係人は、商事調査官が期日に行った説明について、商事裁判所に意見を陳述することができる。
第 15 条
商事調査官が作成した報告書において、提供した特殊な専門知識、または当該知識に基づいた意見について、商事裁判所は、下記のいずれかに該当するときに、はじめて裁判の根拠としてこれを採用することができる。
一、当事者または関係人が提出した、または証人の陳述により、専門家証人若しくは鑑定人が作成した意見が、既に当事者または関係人に知られていたとき。
二、商事裁判所が既に当事者または関係人にこれを知らせ、且つ弁論または意見陳述の機会を与えていたとき。
第 16 条
当事者または関係人が商事事件について調停を申立てたときは、本法第二十条第一項但書所定の場合を除き、商事調停手続きを行わなければならない。それが訴訟の提起、申立て、または法により調停とみなすその他の申立ても、また同様である。
第 17 条
本法第三条第二項または第五条第一項により商事裁判所に移送される商事訴訟事件については、本法第二十条第一項但書所定の場合を除き、商事調停手続きを行わなければならない。
第 18 条
裁判所は申立てによりまたは職権で、複数の商事調停事件の調停を併せて行うことができる。
前項の場合は、当事者または関係人に意見陳述の機会を与えなければならない。
当事者が本法第二条第四項の規定により、併せて提起した民事訴訟事件も商事訴訟事件と併せて調停を行わなければならない。
第 19 条
当事者または関係人の申立て、または商事調停と見なす調停の申立てについて、申立てが合法でない場合を除き、裁判官は、速やかに調停期日を指定しなければならず、且つ直ちに事件の性質及び調停委員の専門により、商事調停委員を選任してこれを行うことができる。
当事者または関係人が合意して選任した商事調停委員が明らかに不適切である場合を除き、裁判官は、その合意によりこれを選任しなければならない。
当事者または関係人が合意して選任した商事調停委員について、裁判官は、その合意を得て、交代させることができる。但し、交代合意は一回に限る。
商事調停委員が、回避、解任、死亡またはその他の事由により職務を執行することができないとき、裁判官は別途これを選任しなければならない。
第 20 条
商事調解事件に利害関係がある第三者は、裁判官の許可を得て、商事調停手続きに参加することができる。裁判官は、事件を通知し、その参加を命じることができる。
第 21 条
当事者または関係人が、商事調停手続きにおける手続代理人を委任するときは、書面で特別に約定し、裁判所に提出する場合を除き、その委任の効力は同審級で続行される手続きに及ぶ。
第 22 条
裁判所が本法第三十八条第二項の規定により、助言への参加を要請する商事調停委員は、同事件の商事調停手続きに参加しない者に限る。
第 23 条
裁判所または受命裁判官は、当事者双方と審理計画を協議する前に、当事者双方に民事訴訟法第二百六十六条、第二百六十七条の規定により関連書類を提出するほか、本法第三十九条第二項第一号、第二号の規定により所要期間及びその理由を説明するよう命じることができる。
裁判所または受命裁判官は、事件の性質、繁簡程度、当事者双方が説明に要する期間及び訴訟手続の進行可能性に基づき、速やかに当事者双方と審理計画の策定を協議しなければならない。
裁判所または受命裁判官は、本法第三十九条第四項の規定により、審理計画を変更する必要があると認めたときは、速やかに変更部分について当事者双方と協議してこれを変更しなければならない。
第 24 条
裁判所または受命裁判官は、当事者双方と、審理計画を策定できなかったとき、本法第三十八条第一項の規定により、及び当事者双方が協議の過程において知悉したことについて、本法第三十九条第二項各号及び第三項規定の事項を定め、計画通り、訴訟手続きを行わなければならない。
前項の場合、裁判所または受命裁判官は、所定の各種事項及び期間を当事者に告知しなければならない。
第 25 条
当事者が本法第四十三条第一項の規定により、問い合わせる事実または証拠に関する事項は、主張または挙証のために必要であり、且つ当該当事者がこれを調査することが難しいものに限る。
前項問い合わせの事実には、主要事実、間接事実及び補助事実が含まれる。
第一項問い合わせの証拠事項は、証拠と関係のある情報に限る。
第 26 条
当事者が、本法第四十三条第一項の規定に基づき行う問い合わせの請求は、書面で問い合わせの具体的な事項、及びその主張または挙証との関連性及び必要性を表明しなければならない。
他方当事者は、前項問い合わせについて、問い合わせを受けた事項について書面で具体的に説明しなければならない。もし回答を拒否する場合、拒否の事由及び根拠を表明し、且つ疎明しなければならない。
第 27 条
専門家証人が作成した専門的意見には、次の各号の事項を記載しなければならない。
一、その専門知識に基づいた意見、及びその理由
二、作成した専門的意見の根拠とする事実及び証拠
三、作成した専門的意見の根拠とする参考資料または個人の専門知識
四、本法第四十九条第二項の規定に基づく情報
五、誓約の文章
前項第五号の誓約の文章は、公正、誠実な陳述でなければならず、もし虚偽な陳述をした場合、専門家証人偽証罪の処罰を受ける等と記載し、且つ署名しなければならない。
第 28 条
商事訴訟事件の当事者による攻撃または防御方法が、当事者または第三者のプライバシー、業務秘密に関わるときは、民事訴訟法第一百九十五条の一の規定により処理する。
第 29 条
当事者、関係人または第三者が裁判所書記官に、ファイル書類の閲覧、抄録または撮影を請求し、または予め費用を納付し、副本、コピーまたは節本を付すよう請求したときは、民事訴訟法第二百四十二条の規定により処理する。
第 30 条
裁判所は、本法第五十三条の規定により、証拠所有者に開示拒否の理由があるかを判断するにあたって、営業秘密事項と要証事実の関連性を斟酌し、証明の方法または事実推定の代替の規定があるか、及び秘密保持命令申立ての可能性など事情を酌量して認定しなければならない。
第 31 条
本法第五十六条第一項第一号所定の秘密保持命令を受けるべき者は、自然人でなければならない。秘密保持命令の申立書には、当該自然人の住所または居所を記載しなければならない。
本法第五十六条第二項所定の間接引用形式による開示とは、営業秘密の内容を開示する必要がなく、ただ営業秘密の内容に該当するかについての裁判所の判断に供するだけで十分である。
秘密保持命令を受ける者による、本法第五十五条第三項の規定に基づく請求は、前二項の規定を準用し、且つ営業秘密の数量が膨大であるか、若しくは専門性があるため、同条第一項以外の者に開示する必要がある事由を疎明しなければならない。
第 32 条
当事者は、秘密保持命令の発出を申立てるとき、営業秘密を記載した書類または物品を封じた後、別途裁判所に提出しなければならず、本法第十四条第一項の規定を適用しない。
第 33 条
裁判所は秘密保持命令の発出申立てについて、決定前に当事者、秘密保持命令を受けるべき者、訴訟関係人に尋問するか、またはその他必要な証拠を調査し、且つ当事者双方に通知し、協議のうえ確定することができる。
第 34 条
秘密保持命令発出申立の決定原本については、営業秘密を記載した書類と併せて保存しなければならない。
秘密保持命令についての決定は、営業秘密を記載した書類を添付としてはならない。
第 35 条
秘密保持命令の送達は、公示送達でこれを行ってはならない。
秘密保持命令を受けるべき者は、住所または居所を移転する際に、裁判所に陳述しなければならない。
第 36 条
裁判所は暫定状態を定める処分の申立てを審理するにあたって、保全の必要性について、次の各号の事由を斟酌しなければならない。
一、申立人の今後の勝訴可能性
二、申立ての許否が申立人または相手にとって、補填できない損害をおよぼすかどうか
三、処分が当事者双方に対し、現在及び継続的に損害をおよぼす可能性及び程度
四、公益に対する影響
暫定状態を定める処分の方法は、裁判所で状況を酌量してこれを定め、申立人による声明の拘束を受けない。
前項暫定状態を定める処分の方法は、執行可能、且つ暫定状態を定める処分の目的に合致するものに限定し、必要な程度を越えてはならない。
第 37 条
裁判所は商事事件を審理するにあたって、会社の代表者が忠実に業務を遂行し、且つ善良なる管理者の注意義務を尽くしたかを判断するために、次の各号の事由を酌量することができる。
一、その行為が、善意で且つ信義則によるかどうか
二、その判断に供するための根拠にできる十分な情報があるかどうか
三、コンフリクト、独立性判断の欠如、または回避事由があるかどうか
四、裁量権の濫用があるかどうか
五、会社の運営に必要な監督を行っているかどうか
第 38 条
本法第六十七条第一項所定の決定事件とは、株券発行会社またはその株主が会社法第一百八十七条第二項、第三百十六条の二第三項、第三百十七条第三項、企業合併買収法第十二条第七項、金融控股公司(金融持株会社)法第二十四条第二項、第三十二条第四項所定の商事裁判所による買収株式価格の決定を申立てた事件をさす。
第 39 条
同一の株券発行会社による数件の買収株式価格決定の個別申立事件については、併せて処理しなければならない。
第 40 条
買収株式価格決定事件の株式価格監査について、商事裁判所は関係人に次の書類の提出を命じることができる。
一、会計士が監査した会社の財務諸表及び公平価格評価説明書。
二、公開買収をしたことがある場合は、その公開買収説明書及び法律意見。
三、株式価格の算定に関係があるその他の書面資料。
前項事件について、買収株式が上場または店頭公開である場合、商事裁判所は、証券取引の実際取引価格を酌量してこれを決定することができる。。
第 41 条
本法でいう臨時管理人選任の申立事件とは、商事裁判所が会社法第二百八条の一の規定により、株券発行会社の臨時管理人を選任する事件を指す。
本法でいう臨時管理人解任の申立事件とは、商事裁判所が前項の選任臨時管理人の解任を決定する事件を指す。
第一項事件による臨時管理人の報酬の決定または報酬予納命令などの事件については、商事裁判所がこれを管轄する。
第 42 条
本法でいう検査役選任の申立事件とは、株券発行会社の株主が会社法第二百四十五条の規定により、商事裁判所に検査役の選任を申立てる事件を指す。
本法でいう検査役解任の申立事件とは、商事裁判所が前項の選任検査役の解任を決定する事件を指す。
第一項事件による監査役への株主会招集の命令、過料の決定、検査役の報酬決定等事件については、商事裁判所がこれを管轄する。
第 43 条
本細則は2021年7月1日より施行する。









