台湾で前代未聞!高雄の公務機関ビル前にあるパブリックアート作品が著作権侵害、200万新台湾ドルの損害賠償と廃棄の判決

2026-08-17 2025年

■ 判決分類:著作権

I 台湾で前代未聞!高雄の公務機関ビル前にあるパブリックアート作品が著作権侵害、200万新台湾ドルの損害賠償と廃棄の判決

■ ハイライト
法務部行政執行署高雄分署の新ビルの前にあるパブリックアート作品に関して盗作疑惑が浮上し、台北地方検察署は下請業者の葛菲雅奇視像空間設計有限公司(以下、葛菲雅奇公司)とその代表者である蔡文祥を起訴した(刑事事件)。また、日本の陶芸家、木野智史は知的財産及び商事裁判所に民事訴訟を提起しており、同裁判所は、葛菲雅奇公司と蔡文祥が木野智史の作品「颪(眼)」を複製し、その著作権を侵害したと認め、葛菲雅奇公司と蔡文祥に対して、原告に連帯して200万新台湾ドルを支払うとともに、本件に関わるパブリックアート作品を廃棄するよう命じる判決を下した。
木野智史は次のように主張した:「颪(眼)」が完成した後、かつて台湾と日本で出展して受賞したことがあり、かつ書籍を製作して、その書籍が台湾のネット等で販売されたため、被告が(上記作品と)接触する機会は十分にあった。高雄分署ビル前に展示されている作品の外観、ライン、構造は「颪(眼)」とほぼ同じであり、複製の許諾を得ておらず、さらには作者を蔡文祥と表示しており、複製権及び氏名表示権を侵害している。よって、連帯して200万新台湾ドルを支払うとともに、作品を廃棄するよう請求する。
葛菲雅奇公司と蔡文祥は、「颪(眼)」が自然の曲線と螺旋のイメージから題材を得たもので、パブリックドメインの創作スタイルに属し、著作権保護の範囲にないと主張した。さらに彼らの作品は独立して創作したもので、材質はステンレスが採用されており、(作品の)比率、厚み及び周囲の環境との関係が異なり、木野智史の作品の「深層思考」とは完全に異なると主張するとともに、争議後に作品を撤去しており、不当利得はないと強調した。
裁判官は調べた結果、日本の陶芸家木野智史の作品「颪(眼)」は独創性を有し、著作権法で保護される美術の著作物であり、即ち自然界から題材を得ているが、陶芸技術により曲線と美観を表現しており、独自性を有し、パブリックドメインではないとしている。また裁判官は同時に、その作品は鶯歌陶瓷博物館での展示、専門誌や雑誌への掲載を通じて、一般大衆はいずれも接触する機会があり、葛菲雅奇公司と蔡文祥も見た可能性があると考えるので妥当であると指摘している。
さらに対比した結果、両作品は「前が薄く後ろが厚い」、「中央で半円を組み合わせている」、「両側に帯状の曲線が伸びている」等の特徴が高度に類似しており、両者の全体の観念と感覚はほぼ一致しており、実質的な類似の域に達している。
裁判官は、被告が許諾を受けずに複製した作品を以ってパブリックアート入札案件に入札して、木野智史の複製権を侵害し、かつ公開展示する時に作者を蔡文祥と表示することで、氏名表示権を侵害した。被告の行為が故意であり、かつ情状が重いため、葛菲雅奇公司と蔡文祥は連帯して200万新台湾ドルの賠償金を支払うとともに、葛菲雅奇公司は本件に関するパブリックアート作品を廃棄して侵害を排除することを命じた。

II 判決内容の要約

知的財産及び商事裁判所民事判決
【裁判番号】113年度民著訴字第92号
【裁判期日】2025年8月29日
【裁判事由】財産権関連の著作権侵害争議等

原告 木野智史
被告 葛菲雅奇視像空間設計有限公司
兼法定代理人 蔡文祥

上記当事者間における財産権関連の著作権侵害争議等事件について、次のとおり判決する。

主文
被告葛菲雅奇視像空間設計有限公司、蔡文祥は連帯して200万新台湾ドルの賠償金を支払え。
被告葛菲雅奇視像空間設計有限公司は法務部行政執行署高雄分署新築工事に係るパブリックアートを廃棄せよ。

一 判決理由の要約

心証を得た理由:
(一)係争作品は著作権法で保護される美術の著作物である:
 原告は陶芸専攻の学科を卒業しており、自身の陶芸の専門知識を生かして、係争作品では曲線的造形により左右でわずかに傾き、全体的にバランスのとれた美感を表現しており、かつ係争作品の中央にある主体は互いに組み合わされた二つの半円であり、左右にやや傾いた曲線につながり、視覚的美感を表現し、さらには原告、即ち創作者の思想、創意及び美感を表現しており、著作者の個性と独自性を表現するのに十分であり、独創性を有している。調べたところ、美術の著作物で保護されるものは、立体的な美術技巧により線、明暗又は形状等を表現し、美感を特徴として思想や感情を表現した創作であることに一致しており、かつ係争作品には著作権の対象としてはならないという事情はなく、当然ながら著作権法の保護を受ける美術の著作物であると認定すべきである。係争作品が著作権法上保護される美術の著作物であることは、至って明確である。

(二)被告作品は係争作品に係る財産権の複製権及び著作者人格権の氏名表示権を侵害している:
 1.著作者は他に規定がある場合を除き、その著作物を複製する権利を専有する。また、複製とは、印刷、複写、録音、録画、撮影、筆記又はその他の方法により、直接的、間接的、永久的又は一時的に再製することをいう。著作者は、その著作物のオリジナル又は複製物に、又はその著作物の公表に際し、本名、別名を表示する権利、或いは著作者名を表示しない権利を有する。
 2.著作権侵害の事実の有無を認定するとき、「接触(アクセス)」と「実質的な類似」という二つの要件について、一切の関連する情状を斟酌して判断しなければならない。
 いわゆる「接触」とは、「直接接触」と「間接接触」に分けられ、「間接接触」は社会の一般的状況において、行為者が著作物に接触する又は見聞する合理的な機会を有することをいう。いわゆる「実質的な類似」とは、量と質の類似を含み、争われる剽窃部分の著作物の文字部分又は非文字部分について対比分析を行い、両者の類似度が極めて高い又は著作の主要な要素であると認められるならば、たとえ著作物の小さな部分しか占めていなくても、実質的な類似を構成する。また、図形、写真、美術、視聴覚等の芸術性又は美感を有する著作物が剽窃されたかを判断するとき、言語の著作物と同じように分解式判断方法(dissection approach)を用いて細かく対比したならば、往々にして困難が生じ、その公平性を失う可能性があるため、質を考慮するときは、著作物間の「全体の観念と感覚(Total Concept and Feel)」に特に留意しなければならない。いわゆる「全体の観念と感覚」とは、著作物に対して分解することで、分解した各詳細部分を抽出して詳しく対比するべきではなく、一般的な理性をもって閲読、視聴する大衆の反応又は印象を判断基準とすべきであり、専門の知識と経験を有する者が鑑定方法で判断するべきではない。
 3.原告は、被告作品は係争作品を複製したものであると主張しており、被告等が提出した被告作品の完成写真と係争作品とを全体的に対比してみると、一般的な理性をもって閲読、視聴する大衆の観点からみて、両者の「全体の観念と感覚」は高度に類似しており、すでに実質的な相似の域に達している。被告作品が係争作品を複製したものであるとする原告の主張は根拠があり、信じることができるものである。かつ原告の学歴、経歴は高等学校、大学から大学院まで陶芸、陶器の専門学科で学び、かつ陶芸分野で受賞した経歴があり、長年にわたり陶芸分野に深く関わり、数々の賞を獲得している。また係争作品が属する当該シリーズの創作過程も証拠とすることができ、原告は確かに陶芸の方面で専門家であり、独立して係争作品を創作したと認定できる。
 4.原告は、係争作品が受賞して博覧会で展示されたほか、ネットでも閲覧でき、相当な知名度があり、不特定の第三者が任意に閲覧することができ、また被告公司は商品、景観及び室内設計を業としており、被告が係争作品に合理的に接触した可能性は極めて高いとする原告の主張は、根拠があり、信じることができる。被告等が原告係争作品の著作財産権の複製権を侵害したと認定できる。

(三)被告等による200万新台湾ドルの連帯賠償という原告の請求には理由がある:
 1.原告が請求する著作者人格権の氏名表示権に係る損害賠償部分:
 原告は国際的な有名な陶芸家である。被告公司は係争入札案件で落札した後、被告作品を高雄分署(ビル)の前に展示し、作者が被告であると表示したことについて、原告が提出した写真があり、一般の社会大衆に著作者が被告であると誤認させるのに十分である。さらに原告は陶芸を専攻し、長年にわたり陶芸分野に関わり、数々の賞を受賞しており、被告公司は故意に係争作品の著作者人格権を侵害し、被告作品をパブリックアートとして公務機関(ビル)の前に展示し、公衆に見聞できるようにして、原告に大きな精神的苦痛という非財産的損害等を与えた一切の情状を考慮して、原告が50万新台湾ドルの非財産的損害の賠償を請求することは妥当であると認める。
 2.原告が請求する著作財産権の複製権に係る損害賠償部分:
 本裁判は、被告公司が係争作品を複製することで係争入札案件に入札し、係争作品を複製した行為は故意によるものであり、かつ係争入札案件はパブリックアートのプロジェクトであり、侵害の情状は重いこと、並びに係争作品は原告が長年にわたって創作したシリーズ作品の一つであり、国際的な賞を受賞し、創作性は極めて高く、また被告公司のパブリックアートで入選したことがある経営規模から考えて、被告公司は原告に同意又は許諾を得ずに係争作品を使用したことを明らかに知りながら、私利を求めて、無断で係争作品を複製し、被告作品で係争入札案件に入札して利益を得て、これにより創作に必要なコストと時間等を節約したものであり、著作財産権者である原告に対する侵害状況が深刻であること等の一切の情状を斟酌し、本件の賠償額を150万新台湾ドルとするのが妥当であり、原告のこの範囲を越える請求には理由がないと認定する。

(四)被告公司による被告作品の廃棄という原告の請求には理由がある:
 被告公司は確かに原告の係争作品の複製権を侵害し、かつ被告作品は被告公司に返還されており、被告作品は著作財産権を侵害して作製した物であり、原告が被告公司に廃棄を請求することには根拠があり、許可すべきである。

以上の次第で、係争作品は著作権法に保護される美術の著作物であり、かつ原告は係争作品の著作者であり、著作財産権及び著作者人格権を享受できる。被告公司は原告の同意又は許諾を得ずに係争作品を複製して被告作品とし、高雄分署ビル前に展示し、被告が作者であると表示して、原告の複製権と氏名表示権を侵害した。被告等に連帯して200万新台湾ドルと、法定遅延利息を支払うとともに、被告公司に被告作品を廃棄するよう請求することには理由があり、いずれも許可すべきである。

付表(係争作品と被告作品との対比):

係争作品 被告作品
本裁判所ファイル一第13頁 本裁判所ファイル一第103頁

 

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