独創性を有する法規の沿革は編集著作物に該当し、著作権法の保護を受ける
2026-02-13 2025年
■ 判決分類:著作権
I 独創性を有する法規の沿革は編集著作物に該当し、著作権法の保護を受ける
■ ハイライト
法律データベース業者の法源資訊公司(Lex Data Information)は七法公司(Lawsnote)がクローラーを用いて法源のデータベース(「法源法律網(Lawbank)」)における50余万件に上る法規沿革、法規内容及び法規添付資料を取得し、「Lawsnote七法 - 法學資料庫」に保存した後に、検索に供して利益を得たと指摘している。法源資訊公司は七法のデータベースのコンテンツはその多くが、法源の法律データベースのコンテンツを直接コピーしたものであり、法源の「編集著作物」を侵害しているとして、告訴した。新北地方検察署が七法公司を捜索した時に、そのクラウドにある関連の電子ファイルを差し押さえた。しかしながら、七法公司の創業者である郭と謝の両名は、これらの資料は単に一部の漢字とアラビア数字の変換と符号の編集が行われただけで、著作権法の保護を受けないと主張した。検察側は、七法公司がクローラーを使って自動的に「法源法律網」で検索やコンテンツのダウンロードを行い、さらに「法源法律網」のコンテンツをハードウェア等の記憶メディアに複製して、顧客に有料及び無料で利用させているため、これは著作権法における「販売を目的として、無断で複製することにより他人の著作財産権を侵害する罪」及び刑法における「故なく、他人のコンピューターの電磁的記録を取得する罪」を犯していると認めて、2名を起訴した。
一審裁判所(判決は未確定)の見解は次の通りである。
一、法源の独創性を有する法規沿革は編集著作物に該当し、著作権法の保護を受ける。かつ七法の法源の法規沿革資料の使用は公正利用ではなく、著作権法第91条第2項、第101条規定に違反している。
(一)法源の「整篇法規沿革」(訳注:政府機関から毎回公開される政府広報、政府公文書、法規内容、政府の編集物等を選択、配列、新たに著述したもの)は資料の「選択」について考慮と判断が行われ、かつ独自の創意を加えて配列が行われており、その選択、配列及び著述は専門性の高い「独創性」を有し、「編集著作物」を構成し著作権法の保護を受けるものである。
(二)七法が法源の法規沿革資料を商品の一部分とし、七法のデータベースに複製したことは、商業目的である。かつそれがクローリングした法源の「法規沿革」資料の質と量は、七法のデータベースにあるすべての「法規沿革」資料の100%を占めている。さらに七法は「法規沿革」資料について、ほとんど「コストゼロ」の方法で法源から取得しており、七法は低価格で法源と競争することができ、法源の商品の潜在的な市場及び現在の価値に悪影響をもたらしており、七法の所為は公正利用ではないことが分かる。よって、七法が販売を目的として無断で当該法規沿革資料を複製し、法源の著作財産権を侵害したことは、著作権法第91条第2項、第101条規定の罪が成立する。
二、七法が法源の公開した係争法規沿革、法規内容、法規添付資料等の資料をクローリングした行為は、刑法第359条の故なく、他人のコンピューターの電磁的記録を取得した罪が成立する。
郭○○と謝○○の行為には明らかに正当な事由がなく、処分の権限もなく、法源の許可を得ていない他に、法源の意思に反しており、また明らかに法源サイトの利用規約の許諾範囲を超えており、それが係争クローラーで自動的に法源サイトのコンテンツを取得し、電磁的記録の形式で自ら開発したシステムに複製し、七法データベース内の法律資料として、七法は係争資料を構築するいかなるコストも払わずに、市場で顧客を奪い、法源のビジネス上の利益と機会に不利な影響をもたらした可能性があり、法源に損害をもたらした。よって、郭○○と謝○○の行為は、刑法第359条に定める「故なく、他人のコンピューターの電磁的記録を取得した罪」が成立する。
三、法源が「民法第184条権利侵害行為」等関連規定により、七法等被告に連帯損害賠償責任を負うよう請求することには、理由がある。
(一)七法等被告は故意に不法に原告の著作権と、刑法第359条に規定される電磁的記録を支配する権利とを侵害し、原告を保護する上記法律も違反して原告に損害をもたらしたため、法源に対する損害賠償責任を負わなければならない。
(二)もし七法が法源から係争資料を購入して、法源が係争資料を設置するコストのみで七法に販売したならば、それが即ち法源が得ることができた利益である。しかし本件を調べたところ、七法はいかなるいわゆる価額、即ち上記コスト費用も法源に支払っておらず、法源が通常の状況で得ることができていたはずのこの利益が得られなかったため、法源はこの部分の失われた利益を請求することができる。これにより、法源が民法第216条第1項、第2項規定により、七法に対して係争資料の設置に費やしたコストを請求できる。また、証人への尋問と参考とした関連証拠は、いずれも原告公司が係争資料について配列と著述を行い設置するのに費やした時間と人件費を証明するに十分である。法源は「各資料の作業時間(人・月/件)×人件費(新台湾ドル/人・月)×件数」の公式に基づいて、法規内容、法規添付資料及び法規沿革を設置したコスト等の費用として合計105,451,644新台湾ドルを、七法等被告等に連帯して賠償するよう請求するよう主張することには、理由がある。
II 判決内容の要約
台湾新北地方裁判所刑事判決
【裁判番号】111年度智訴字第8号
【裁判期日】2025年6月24日
【裁判事由】著作権法等
公訴人 台湾新北地方検察署検察官
被告人 七法股份有限公司(Lawstone Inc.)
兼代表人 郭○○
被告人 謝○○
上記被告人等は著作権法違反等事件により、検察官から公訴を提起され、本裁判所は次の通り判決する。
主文
郭○○は共同して販売を目的として無断で複製することにより、他人の著作財産権を侵害したため、懲役4年に処する。
謝○○は共同して販売を目的として無断で複製することにより、他人の著作財産権を侵害したため、懲役2年に処する。
七法股份有限公司法人の代表者、被用者は、業務を執行するため、著作権法第91条第2項の罪を犯したため、罰金150万新台湾ドルを科す。
差し押さえられた付表一に示す物を没収する。
差し押さえられていない郭○○の犯罪収益462万5000新台湾ドルを没収し、全て又は一部が没収できない又は没収を執行するのが好ましくないときは、その価額を追徴する。
差し押さえられていない謝○○の犯罪収益370万新台湾ドルを没収し、全て又は一部が没収できない又は没収を執行するのが好ましくないときは、その価額を追徴する。
一 事実要約
郭○○は弁護士資格を有し、謝○○はプログラミングの専門能力を有し、それらは共同で七法股份有限公司を設立した。七法公司は法律情報のインターネット検索サービスを提供し、利用プランによって異なる利用料を徴収している。郭○○と謝○○は故なく他人の電磁的記録を取得するという連続的な犯意の下で連絡し、自らの利益と便宜のために、事前に法源公司の同意又は許諾を得ることなく、法源公司の意思に反して、正当な権原がなく、法源公司の「法源法律網」の利用規約の許諾範囲を超えた状況において、謝○○は自ら作成したクローラー(Crawler)を使って、「法源法律網」にアクセスし、自動的にコピーして、本判決に添付する光ディスクにある計98068件の法規沿革、計102520件の法規内容、及び計130936件の法規添付資料等の電磁的記録をダウンロードし、七法公司の「Lawsnote 七法-法學資料庫」データベースのコンテンツとした。郭○○と謝○○はこの方法で故なく、法源公司が所持し、支配する係争法規資料の電磁的記録合計33万1524件を取得し、それらは係争資料の電磁的記録を設置するいかなるコストも支払わずに、市場でより安い料金で顧客を奪い、法源公司の現実的又は潜在的なビジネス上の利益と機会に不利な影響をもたらした可能性は極めて大きく、法源公司に損害をもたらした。
二 被告人の抗弁
(一)告訴人公司が作成し、そのサイトで公開している係争法規沿革の資料は、著作権法第7条第1項「編集著作物」の規定を満たしていない。かつ「法規沿革」資料の表現方法には限りがあり、「アイデアと表現の融合」論を適用するべきであり、告訴人公司は上記対象に対して、著作権を有しない。
(二)被告人等が告訴人公司の係争法規沿革資料を使用することは、著作権法第65条の公正利用の規定に適合し、著作財産権の侵害を構成しない。
(三)法規沿革、法規内容、法規添付資料等の資料は、政府資訊公開法(The Freedom of Government Information Law)の対象又は公開すべき公共財に該当し、告訴人の権益を侵害していない。
三 本件の争点
(一)告訴人公司が作成し、そのサイトで公開する係争法規沿革資料は、著作権法第7条第1項「編集著作物」の規定に適合し、「独立の著作物としてこれを保護する」ものであるのか。
(二)被告人等が告訴人公司の係争法規沿革資料を使用することは、著作権法第65条の公正利用規定に適合し、著作財産権の侵害を構成しないのか。
(三)被告人等が告訴人公司の係争法規沿革資料をクローリングしてコピーし、さらに被告人等の七法データベースに複製したことは、著作権法第91条第2項、第101条の規定に違反するのか。
(四)被告人等が、告訴人がその「法源法律網」で公開した係争法規沿革、法規内容、法規添付資料等の資料をクローリングして収集した行為は、刑法第359条の故なく、他人のコンピューターの電磁的記録を取得した罪が成立するのか。
(五)法規沿革、法規内容、法規添付資料等の資料は、政府資訊公開法の対象又は公開すべき公共財に該当するのか。
四 判決理由の要約
(一)係争法規沿革資料は、著作権法第7条第1項「編集著作物」の規定に適合する:
1.著作権法第7条の規定によると、資料の選択及び配列につき独創性を有するものは、編集著作物であり、独立の著作物としてこれを保護し、編集著作物の保護は、それが収録された著作物の著作権に影響を及ぼさない。また、著作権法の主務官庁である経済部知的財産局の2012年6月20日電子メール0000000号解釈通達によると「データベースにおけるコンテンツの選択と配列には創作性があり、たとえそれに収録されたものが著作権法の保護を受ける著作物でなくても、当該コンテンツの全体の配列も著作権法第7条でいう『編集著作物』に該当し、著作権法の保護を受けることができる。」とあり、当該解釈通達から「編集著作物」の収録されている「資料」が著作権法で保護されない「非著作物」である可能性があることが分かる。いわゆる「編集著作物」は単に著作物の創作形態における分類にすぎず、最終的にはなおその性質により著作権法第5条第1項でいう、言語の著作物、音楽の著作物等10種類の各著作物に帰納すべきである。調べたところ、告訴人公司のサイトにおける係争「法規沿革資料」は言語の編集著作物であり、多数の独立した「言語の著作物」及び「多数の独立した言語の著作物及び法規資料について総合的に選択及び配列を行った創作性を有する編集著作物」を含む。
2.また編集著作物は著作物の一種であり、なお「著作物」に関する基本的要素を備える必要があり、即ち選択、配列を行った資料が編集著作物となることができる場合も、一定の表現形式以外に、その表現形式は作者の思想又は感情における一定の精神の内包を提示する又は表現することができる必要があり、同時にその精神の内包は作者の個性又は独自性を表現するに十分な独創性を有しなければならない。いわゆる「独創性」とは、他人の著作物に対するアクセスや盗用をすることなく、著作者が著作物を原始的に独立して完成したものである必要があり、著作者が内心の思想又は感情を表現し、最低限度の創造性(Minimal Requirement of Creativity)を有して、始めて排他的権利を付与する必要がある。独創性とは、原初性と創作性を含む。いわゆる「原初性」とは著作者が原始的に独立して完成した創作を指し、他人の作品を盗作又は剽窃するものではない。創作性はかつて古人が至ったことのない程度に達する必要はなく、社会通念によって前記著作物がすでに存在する作品と区別できる変化があり、著作者の個性を表現できる程度で十分である(最高裁判所97年度台上字第1214号、99年度台上字第2314号、104年度台上字第1251号民事判決を参照)。わが国の著作物の独創性に対する認定は「最低限度の創造性」原則を採用していると証明するに十分であり、また異なる者が同じ範囲の資料について「選択と配列」を行った後、異なる結果の「表現」となった場合、「創作性」を有し、即ち独立して著作権法の保護を受ける「編集著作物」となる。係争法規沿革資料の一部を調べたところ、告訴人公司は「立法院法律系統」(訳注:立法院の法律検索サイト)に比べて、少なくとも多くの「*発行機関、発行文書番号の註釈」、「*法規改正後の新名称の註釈」、「*所管官庁変更の註釈」、「*施行日の註釈」等の内容がさらに示されており、「数字を漢字への変更又はダッシュ(符号の編集)」だけではなく、告訴人公司の「整篇法規沿革」は、資料の「選択」について考慮と判断が行われ、かつ独自の創意を加えて配列が行われており、機械的に選択したり全て選択したりしたものではなく、その選択、配列及び著述は専門性の高い「独創性」を有することがうかがわれ、告訴人公司の法規沿革資料は「編集著作物」を構成し、著作権法の保護を受けるものである。
3.さらに著作権法第10條の1には、本法律により取得した著作権は、その保護が当該著作物の表現にとどまり、それによって表現しようとする思想、手続き、製造過程、システム、操作方法、概念、原理、発見には及ばないと規定されている。つまり著作権の保護対象は表現だけに及び、アイデア(思想)には及ばず、これは即ち「アイデア・表現二分論」である。しかしアイデアに一種類のみ又は限られた表現方法しかないとき、その他の著作者に他の種類の方法がないため、又はごく限られた方法でしかそのアイデアを表現できないため、著作権法がそれらの限られた表現方法の使用を制限すると、アイデアは原著作者によって独占されてしまうので、その限られた表現はすなわちアイデアとの融合によって著作権保護の対象ではない。よって同じアイデアについて限られた表現しかないという状況において、たとえ他人の表現方法と同一又は類似していても、これは同じアイデアを表現が限られていることによる必然的な結果であり、著作権の侵害を構成しない。これは「アイデアと表現の融合」論である(最高裁判所99年度台上字第2314号民事判決を参照)。ただし調べたところ、上記詳論と比較説明によると、各種「法規沿革」の表現方法は一種類のみ又は「限られた」表現方法しかないというものではなく、表現者によって「法規沿革」の表現方法はいずれも大きく異なり、告訴人公司の整篇法規沿革資料の「表現」は明らかに政府機関の「単発的な法改正情報」又は「法規沿革」とは異なっているため、「アイデアと表現の融合」論は適用されない。
(二)被告人等が告訴人公司の係争法規沿革資料を使用することは、公正利用ではない:
1.著作権法第65條第1項と第2項には、「著作物の公正利用は、著作財産権の侵害を構成しないものとする。著作物の利用が第44条から第63条までに定める公正な範囲又はその他の公正利用に該当するか否かは、一切の事情を斟酌しなければならず、特に判断の基準として、次に掲げる事項に留意しなければならない。一、利用の目的及び性質。商業目的又は非営利の教育目的であるかを含む。 二、著作物の性質。 三、利用された部分の質(重要性)と量及びそれが著作物の全体に占める割合。 四、利用の結果が著作物の潜在的な市場及び現在の価値に及ぼす影響。」と規定されている。本件について調べたところ、被告人公司は利用者及びサービス内容により異なる価格プランを定め、被告人等が告訴人公司の係争「法規沿革」資料を自らの商品コンテンツとしたことは、明らかに商業目的である。また、被告人等は取り調べにおいてもそれがクローリングしてダウンロードした範囲は、告訴人公司サイト内のすべての法規記録(法規沿革、法規及びその添付資料を含む)に及ぶことを認めており、即ちそれがクローリングした告訴人公司の係争「法規沿革」資料の質と量は、告訴人公司のデータベースにあるすべての「法規沿革」資料についていずれも100%を占めている。被告人はその商品の特色は機能が優れた「検索エンジン」にあり、法規資料ではないと主張しているが、いかなる法律検索会社の「データベース」もコンテンツが最も重要な「基礎」であり、「基礎」がなければ、優れた「検索エンジン」があっても資料を適切に見つけることはできない。被告人等は係争「法規沿革」資料について、ほとんど「コストゼロ」の方法で告訴人公司から取得しており、被告人等は低価格で告訴人公司と競争することができ、告訴人公司の商品の潜在的な市場及び現在の価値に悪影響をもたらしていることに、疑う余地はない。
2.また、米国連邦裁判所のReuters v. Ross Intelligence事件判決を参考にすると、当該事件では告訴人データベースの一部のコンテンツが著作権法を受けると認定した。当該事件の被告人は告訴人の資料でAIを訓練し、AIを学習させるのに供して、これは「フェアユース(公正利用)」の範疇に入ると主張したが、米国連邦裁判所は被告人の使用は商業的性質を有し、かつそのAIツールと告訴人が直接競合し、さらに原作品に対して新たな註釈や変形的利用はなく、また告訴人の商品の潜在的な市場及び現在の価値に対する悪影響以外に、被告人の商品と告訴人とは市場における代替(Market Substitution)を構成し、かつ告訴人がその資料をAI訓練資料として利用許諾する潜在的市場に影響する可能性があるため、被告人は「公正利用」の要件に適合しないと認めた。本件と比較すると、本件がクローラーを利用して告訴人公司サイトから、「編集著作物」の性質を有し、かつ98068件に上る係争「法規沿革」資料をクローリングして、被告人等はAIの訓練やAIの学習に利用せず、直接に自社のサイトデータベースのコンテンツとして低価格で告訴人公司と商業的に競争した。これらの行為が告訴人公司にもたらした侵害は、被告人がAI訓練に利用するよりもさらに「直接的」であり、情状はさらに「重大」である。わが国のデータベース市場における取引の秩序と企業倫理を維持するため、さらには「労せずして得る」という僥倖の心理を持たせないため、被告人の所為は著作権法第65条の公正利用には該当しないと認めるべきである。
(三)被告人等が告訴人公司の係争法規沿革資料をクローリングしてコピーし、さらに被告人等の七法データベースに複製したことは、著作権法第91条第2項、第101条の規定に違反する:
被告人謝○○は確かに、係争6本のクローラーで係争資料をダウンロードし被告人公司のデータベースに入れており、かつそれは被告人郭○○の指示を受けたものであり、被告人郭○○も上記事情を知っていた。被告人公司がダウンロードしたデータベースのコンテンツである「差押えの光ディスク」にある法規沿革コンテンツと告訴人公司のデータベースとを対比すると、明らかに両者は完全に同じものであることが分かる。合計98068件の係争法規沿革資料を抽出して検証し対比した結果、いずれも同じであるという結果であり、被告人等が確かにクローリングして告訴人公司のデータベースにある「法規沿革」資料をコピーし、被告人公司のデータベース内に複製したことが十分に分かる。よって被告人等は著作権法第91条第2項、第101条規定に違反すると認定できる。
(四)被告人等が、告訴人がその「法源法律網」で公開した係争法規沿革、法規内容、法規添付資料等の資料をクローリングした行為は、刑法第359条の故なく、他人のコンピューターの電磁的記録を取得した罪が成立する:
1.刑法第359条には「故なく、他人のコンピューター又はその関連設備の電磁的記録を取得、削除又は変更し、大衆又は他人に損害をもたらした者は、5年以下の懲役、拘留若しくは60万元以下の罰金に処し、又は併科する。」と規定されている。またいわゆる「取得する」とは、コンピューター等の科学技術を用いて、他人の電磁的記録を自分の所有に移転することをいう。いわゆる「故なく」とは、正当な権原又は正当な事由がないことをいう。つまり、立法において「他人の電磁的記録を取得する」、「大衆又は他人に損害をもたらす」という構成要件行為を定めているほか、さらに本罪の成立は違法性を備え、違法事由の阻却に欠ける場合に始めて成立することを明らかに定めている。まさに、「正当な理由がない」、「所有者の許可を得ていない」、「処分権限がない」又は「所有者の意思に反する」、「許諾範囲を越える」等の状況は、いずれも「故なく」に該当する(最高裁判所110年度台上字第90号刑事判決を参照)。さらに、他人の電磁的記録を取得又は削除する権限がない場合、又は電磁的記録の所持を剥奪する或いは処分権者に喪失させることで、現実的に損害を与えるに至らない場合でも、電磁的記録の権益を単独で所持、支配することに支障がないとは言い難い。よって、上記規定でいうところの「損害をもたらす」とは、すでに大衆又は他人に財産又は経済上の利益における実質的な損害をもたらした場合に限らず、すでに電磁的記録の処分権者の電磁的記録に対する独占的に支配、制御又は完全な使用を破壊して、電磁的記録の所有者、処分権者又は大衆の利益に悪影響をもたらすならば、即ちこれに該当するものである(最高裁判所112年度台上字第1029号判決を参照)。
2.本件を調べると、被告人郭○○と謝○○の行為には明らかに正当な事由がなく、処分の権限もなく、告訴人公司の許可を得ていない他に、告訴人公司の意思に反しており、また明らかに告訴人サイトの利用規約の許諾範囲を超えており、被告人等は係争クローラーで自動的に告訴人サイトのコンテンツを取得し、電磁的記録の形式で自ら開発したシステムに複製し、被告人データベース内の法律資料としており、被告人等は係争資料を構築するいかなるコストも払わずに、市場で顧客を奪い、告訴人公司のビジネス上の利益と機会に不利な影響をもたらした可能性があり、告訴人公司に損害をもたらした。よって、最高裁判所の上記110年度台上字第90号刑事判決趣旨により、被告人郭○○と謝○○の行為は、刑法第359条に定める「故なく、他人のコンピューターの電磁的記録を取得した罪」が成立する。
(五)法規沿革、法規内容、法規添付資料等の資料は、告訴人が公開すべき資料ではない:
政府資訊公開法によると、政府情報を公開する義務を有する者は政府であるが、告訴人は民営企業であり、政府機関ではない。これを以って、告訴人公司が所有し支配する「係争資料」は、政府資訊公開法の対象ではない。また、係争「法規沿革」資料は、告訴人公司の独自性を備え著作権を有する「編集著作物」であり、「公共財」ではない。「法規内容及び添付資料」には著作権がないが、告訴人公司が自ら苦労して収集した電磁的記録である。被告人等は自ら時間と手間をかけて、各政府の情報公開サイトで前記のいわゆる「公共財」をクローリングして取得することができたが、被告人等は故なく競合関係にある告訴人公司が所持し支配する係争資料の電磁的記録を取得し、なお「公共財」という理由で強く主張し、それらの違法行為を正当化しており、弁解は採用するに足りない。
(六)以上の次第で、被告人等の犯行の事実証拠は明確であり、法に基づいて処罰を論じるべきである。
2025年6月24日
刑事第二法廷
裁判長 許必奇
裁判官 鄧煜祥
裁判官 梁世樺
書記官 田世杰
III 判決内容の要約
台湾新北地方裁判所刑事付帯民事訴訟判決
【裁判番号】112年度智重普付民字第1号
【裁判期日】2025年6月24日
【裁判事由】著作権法等
原告 法源資訊股份有限公司(Lex Data Information Inc.)
被告 七法股份有限公司(Lawstone Inc.)
兼代表人 郭○○
被告 謝○○
上記被告人等の著作権法違反等事件(新北地方裁判所111年度智訴字第8号)により、原告は付帯民事訴訟を提起して損害賠償を請求し、本裁判所は口頭弁論を終結して、次の通り判決する。
主文
被告七法股份有限公司、郭○○、謝○○は、原告法源資訊股份有限公司に対し、連帯で1億545万1844新台湾ドルを支払え。及び被告七法股份有限公司は2023年2月21日から、被告郭○○、謝○○はいずれも2023年2月18日から、支払い済みまで、年5分の割合による金員を支払え。
被告七法股份有限公司、郭○○、謝○○は原告の同意を得ることなく、複製することにより原告の所有する「法源法律網」の「法規沿革の電磁的記録」を侵害したため、その3名が所有又は所持して侵害する「法源法律網」の「法規沿革の電磁的記録」を廃棄せよ。
原告のその余の訴えを棄却する。
本判決第一項については、原告法源資訊股份有限公司が3515万548新台湾ドルを以って担保を立てたとき、仮執行をすることができる。ただし被告七法股份有限公司、郭○○、謝○○が1億545万1844新台湾ドルを以って原告に担保を立てたときは、仮執行を免れることができる。
原告のその余の仮執行宣言申立てを棄却する。
一 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求
1.本件の犯罪事実により、被告等は明らかに公平交易法(訳注:日本の不正競争防止法及び独占禁止法に対応)第25条、「公平交易委員会の公平交易法第25条事件に対する処理原則」第7点第2項第2号第4目の規定に違反しており、「著しく公正を欠く行為」を以って原告と公正ではない競争を行った。よって原告は同法第29条、第30条を請求権の基礎として、同法第31条第2項により損害額を計算し、即ち被告はクローラーを利用して「法源法律網」のすべての「係争資料」を取得して自らのために使用しており、「自ら構築するコストの節約」は被告が「受けた利益」であり、原告が支出したコストを不当に享受していることから、原告はそれが支出したコストを損害額として計算して請求することができる。さらに同法第31条第1項の規定により、被告の侵害の情状が重大であるため、裁判所に損害額の3倍の賠償を酌量するよう請求できる。
2.民法第179条の不当利得規定により、被告には法律上の原因がなく、原告の同意を得ずに、原告の許諾の範囲を超えて、クローラーで原告サイトのすべての法規資料を取得し、原告が支払ったコストを不当に享受し、原告が努力したことで得るべき正当な報酬を分割したことで、原告に損害をもたらした。被告等が「得た利益」、即ち原告が法規資料を設置するために「費やしたコスト」を返還すべきである。
3.民法第184条の権利侵害行為等規定により、被告等は故意に不法に原告の権利を侵害し、原告を保護する法律に違反して、原告に損害をもたらしたため、原告に対する損害賠償責任を負わなければならない。かつ被告郭○○は七法公司の代表者であり、被告謝○○は七法公司の最高執行責任者であることから、原告に対して連帯して損害賠償責任を負わなければならない。
4.著作権法第88条第1項規定により、被告等は故意にクローラーで原告サイトのすべての「整篇法規沿革」を取得しており、原告の「整篇法規沿革」は「編集著作物」を創作の方法として書かれた「言語の著作物」であり、被告等はそれを自分のために使用して原告と市場で競争したため、被告公司、郭○○、謝○○は共同で不法に侵害した者であり、連帯して原告に対する損害賠償責任を負わなければならない。並びに同法第88条第2項第2号規定により、被告が侵害行為により得た利益、即ち原告がすべての法規の「整篇法規沿革」を配列・著述するのに費やしたコストを請求することができる。
5.著作権法第84条 、第88条の1 及び公平交易法第29条の規定により、被告は原告の同意を得ずに、複製することにより原告サイトの「法規沿革、法規内容及びその添付資料」等電磁的記録を侵害してはならず、その3名が所有する、或いは所持する、又はすでに第三者に提供して侵害した原告の「法規沿革、法規内容及びその添付資料」等電磁的記録をすべて廃棄しなければならないことを主張する。
6.損害賠償の算出方法は原告の設置コストであり、即ち「各資料の作業時間(人・月/件)× 人件費(新台湾ドル/人・月)× 件数」であり、法規内容:33,480,412新台湾ドル、法規添付資料:31,317,440新台湾ドル、法規沿革:40,653,792新台湾ドルであり、合計は105,451,644新台湾ドルとなる。また、公平交易法第31条により、斟酌して損害額の3倍とする賠償額は316,354,932新台湾ドルとなる。
7. 原告は担保を条件とする仮執行宣言を求める。
(二)被告の答弁
1.刑事事件(新北地方裁判所111年度智訴字第8号)の答弁と同じ。
2.起訴状において被告を公平交易法違反で起訴していないため、原告が請求権の基礎の一つを公平交易法とすることには、理由がない。
3. 原告の訴え及び仮執行宣言申立てを棄却する。不利な判決を受けたときは、担保を条件とする仮執行免脱の宣言を求める。
二 本件の争点
(一)原告が公平交易法第2条第1項、第25条規定に基づいて主張するにあたり、同法第29条、第30条を請求権の基礎とし、同法第31条規定を損害賠償額算出の根拠としたことに、理由はあるのか。
(二)原告が「民法第184条権利侵害行為等の関連規定」を請求権の基礎とし、被告に連帯損害賠償責任を負うことを請求することに、理由はあるのか。
(三)原告が前記民法の権利侵害行為等の関連規定により、被告に連帯損害賠償額の算出方法と金額を請求することに、理由はあるのか。
(四)原告が「公平交易法第29条」を請求権の基礎として、変更後の請求の趣旨第二項に述べられている、被告等の原告に対する侵害を排除し、被告等が再び原告を侵害する行為を行うことを防止するよう請求することに、理由はあるのか。
(五)原告が「著作権法第84条及び第88条の1」規定を請求権の基礎として、被告等の原告に対する侵害を排除し、被告等が再び原告を侵害する行為を行うことを防止するよう請求することに、理由はあるのか。
三 判決理由の要約
(一)原告が公平交易法第2条第1項、第25条規定基づいて主張するにあたり、同法第29条、第30条を請求権の基礎とし、同法第31条規定を損害賠償額算出の根拠としたことに、理由はない:
犯罪により損害を受けた者は、刑事訴訟手続きに付帯して民事訴訟を提起して、被告及び民法により賠償責任を負うべき者に対して、その損害を回復するよう請求することができるが、その損害の回復の請求は、訴えられた犯罪事実によって受けた損害に限られ、またそれが提起する当該訴訟は、起訴された犯罪事実により個人の私権に損害がもたらされた場合に限り、これを行うことができる。さもなければ、たとえその他の事由により民事訴訟を提起しても、刑事訴訟手続きにおいてこの請求を付帯してはならない(最高裁判所70年度台抗字第510号民事決定を参照)。本件起訴状では被告の公平交易法違反が起訴されておらず、本裁判所も被告には公平交易法の犯罪事実があったとは認めず、原告は公平交易法と無関係である本件の刑事付帯民事訴訟を利用して、公平交易法関連規定にある請求権を基礎として主張することはできず、したがって、原告のこの部分の主張には理由がない。
(二)原告が「民法第184条権利侵害行為」等の関連規定により、被告に連帯損害賠償責任を負うことを請求することに、理由はある:
1.民法第184条第1項前段、民法第184条第2項本文の規定により、被告等は故意に原告の著作権と、刑法第359条に規定される電磁的記録を不法に支配する権利とを侵害し、原告を保護する上記法律も違反して原告に損害をもたらしたため、原告に対する損害賠償責任を負わなければならない。
2.さらに、民法第185条第1項前段、民法第28条、公司法第23条條第2項規定により、被告郭○○は被告公司の代表者であり、被告謝○○は被告公司の本事件に関連する情報スタッフであり、上記両名と被告公司は原告に対して連帯して損害賠償責任を負わなければならない。
(三)原告が前記民法の権利侵害行為等の関連規定により、被告に連帯損害賠償額の算出方法と金額を請求することに、理由はある:
1.もし被告が原告から係争資料を購入して、原告が係争資料を設置するコストのみで被告に販売したならば、それが即ち原告が得ることができた利益である。しかし本件を調べたところ、被告はいかなるいわゆる価額、上記コストを支払っておらず、通常の状況で得ることができていたはずのこの利益が得られなかったため、原告はこの部分の失われた利益を請求することができる。これにより、原告が民法第216条第1項、第2項規定により、被告に対して係争資料の設置に費やしたコストを請求することは、理にかなっている。よって「原告が請求できる損害賠償額=原告が通常の状況で得られるはずであった(が実際には得られていない)予期された利益、それを失われた利益と見なす=原告が請求できる、それが支出したコストにより算出された損害額」と認定する。
2.証人への尋問と参考とした関連証拠は、いずれも原告公司が係争資料について配列と著述を行い設置するのに費やした時間と人件費を証明するに十分である。原告は「各資料の作業時間(人・月/件)× 人件費(新台湾ドル/人・月)× 件数」の公式に基づいて、法規内容、法規添付資料及び法規沿革を設置したコスト等の費用として、被告等に合計105,451,644新台湾ドルの係争資料設置コストを連帯して賠償するよう請求することには、理由がある。原告が公平交易法の関連規定により、三倍の金額の賠償を請求することは、本件刑事付帯民事訴訟には公平交易法が適用されないため、原告のこの部分の請求は採用できない。したがって、105,451,644新台湾ドルを越える範囲の原告の請求については許可すべきではなく、棄却する。
(四)原告が「公平交易法第29条」を請求権の基礎として、被告等の原告に対する侵害を排除し、被告等が再び原告を侵害する行為を行うことを防止するよう請求することについて、本件は公平交易法が適用されていないため、原告のこの部分の請求に理由はない。
(五)原告が「著作権法第84条及び第88条の1」規定により、被告等の原告に対する侵害を排除し、被告等が再び原告を侵害する行為を行うことを防止するよう請求することには、一部理由はある:
被告による原告の著作権の侵害は独創性を有する「法規沿革」の部分に限られる。「法規内容」、「法規添付資料」の部分については、それらの資料に著作権がないため、被告はこの部分について刑法第359条の故なく、他人のコンピューターの電磁的記録を取得した罪のみを犯し、著作権法には違反していない。したがって、原告が著作権法第84条及び第88条の1規定により、被告公司、郭○○、謝○○は原告の同意を得ることなく、複製することにより原告サイトの法規沿革の電磁的記録を侵害したため、その3名が所有又は所持して侵害する原告サイトの法規沿革の電磁的記録を廃棄するよう請求することには理由があり、許可すべきである。原告が著作権のない「法規内容」、「法規添付資料」等電磁的記録の部分について、被告に「法規沿革」と同じ処分を要求することは、根拠に乏しく、棄却すべきである。また、刑事訴訟法第487条第1項規定により、本件被告は被告公司、郭○○、謝○○の3名のみであり、損賠賠償責任を有する者も上記3名のみである。よって被告に第三者に提供した「法規沿革」の電磁的記録を廃棄するよう原告が請求することは、第三者も賠償責任を負うべき者であることになってしまい、これは前記規定に適合しないため、原告のこの部分の請求に理由がなく、棄却すべきである。
四、以上の次第で、本件原告の訴えは一部に理由があり、一部に理由がない。
2025年6月24日
刑事第二法廷
裁判長 許必奇
裁判官 鄧煜祥
裁判官 梁世樺
書記官 田世杰









