独創性がなく他人の作品を模倣するもの又は量産できる工業製品については、創作性を有する芸術品と認め難いため、わが国の著作権法の保護を受けることができない。

2014-05-15 2011年

■ 判決分類:著作権

I 独創性がなく他人の作品を模倣するもの又は量産できる工業製品については、創作性を有する芸術品と認め難いため、わが国の著作権法の保護を受けることができない。
 
■ ハイライト
わが国の著作権法第3条第1項第1号には「著作物:文学、科学、芸術もしくはその他の学術の範囲に属する創作物をいう」と規定されており、いわゆる創作物は独創性、つまり独自性と創作性をそなえ、著作者の個性や特異性を十分に表現できる必要があり、それで初めて著作権法の保護を受けることができる。最高裁判所中華民国90年度(2001年度)台上字第2945号判決要旨を参考することができる。よって著作権保護法の保護範囲が過度に広がることを避けるため、独創性がなく他人の作品を模倣するもの又は量産できる工業製品については、創作性を有する芸術品と認め難く、わが国の著作権法の保護を受けることができない。

II 判決内容の要約

■ 基礎データ

知的財産裁判所刑事判決
【裁判番号】 98年度刑智上更(三),30
【裁判期日】 2010年6月10日
【裁判事由】 著作権法違反

上訴人 台湾台北地方裁判所検察署検察官
上訴人 即ち 被告 甲○○
上訴人 即ち 被告 乙○○
上記2人の共同選任弁護人 何愛文 弁護士
             張 靜 弁護士
上記上訴人は被告が著作権法に違反したため、台湾台北地方裁判所85年度(1996年)訴字第1650号、88年(1999年)4月21日第一審判決(起訴案件番号:台湾台北地方裁判所検察署84年度(1995年度)偵字第25187号)を不服として上訴し、台湾高等裁判所で判決が出された後、最高裁判所は第三次差戻審を行うよう本案件を本裁判所(知的財産裁判所)へ移送し、本裁判所が以下のように判決を下した

主  文
原判決の甲○○、乙○○に係わる部分をすべて削除。
甲○○、乙○○はいずれも無罪。

一 事実要約
公訴要旨:
(一) 起訴要旨並びに違反法律:甲○○と乙○○は太欣半導体股份有限公司(以下「太欣公司」)の責任者と総経理(訳注:取締役社長に相当)であり、概括的犯意を以って1994年7月から連続して多数回にわたり無断で米マイクロチップテクノロジー社(英語名:Microchip Technology Incorporated、中国語名:美商微晶片科技公司、以下「マイクロチップ社」)が著作権を所有する「PIC16C5Xマイクロプログラム」を複製し、太欣公司製品番号「STK56C110マイクロコントローラ」の製造に用いた。且つ太欣公司が印刷作成したSTK56C110シリーズマイクロコントローラの資料パンフレットにおいて、無断でマイクロチップ社が著作権を所有するPIC16C5Xマイクロプログラム製品の資料パンフレットを盗用した。その後1995年5月23日に太欣公司の販売店である永濬股份有限公司(以下「永濬公司」)が前述のマイクロチップ社の「PIC16C5X」を複製したマイクロコントローラをSecuritec PIC社に販売したため、マイクロチップ社の知るところとなった。
(二) 起訴の証拠と依拠:公訴人は告訴人であるマイクロチップ社の訴えを以って被告が前述の犯行に係わったと認めた。著作権証明書、永濬公司の送り状(インボイス)、梱包明細書(パッキングリスト)、マイクロプログラム分析証明書、資料パンフレット等がファイルにある。さらに告訴人であるマイクロチップ社が著作権を所有するPIC16C5XマイクロプログラムPLA(プログラマブル ロジックアレイ)において2つの余分なトランジスタが被告である太欣公司が製造した製品番号STK56C110マイクロコントローラのマイクロプログラムPLAにもみつかった。被告等はかつて無断で告訴人のPIC16C5Xマイクロプログラムを複製したため公訴され、その後審判中に告訴人と和解したが、再び本案件の犯行が発生したため、それを論拠とし被告に対して公訴を提起する。

二 両方当事者の請求内容
検察官:被告である甲○○と乙○○が犯行時(改正前)の著作権法第91条第2項、第93条第3号、第87条第2号に違反した容疑がある。
被告:被告乙○○と甲○○のいずれも犯行を否認する。

三 本件の争点
(一)手続き事項:
1. 委任人が代理人に委任した後、代理人は委任人の名義で告訴を提起できるのか。委任人による告訴状の署名、捺印がない場合、刑事訴訟法第53条の規定に違反していることになるのか。
2. 条件付の告訴においてその付帯する条件が告訴と切り離せない場合、付帯条件が中止又は解除の条件のいずれに係わらず、その告訴の意思が不確定であるならば、告訴の効力は発生するのか。
(二)実体の判断:
1. コンピュータプログラムは著作権法第5 条第10号で定められるところの保護を受ける著作物であるのか否か。
2. 独創性がなく他人の作品を模倣するもの又は量産できる工業製品については、創作性を有する芸術品と認め難いため、わが国の著作権法の保護を受けられないということがあるのか。
3. 登録された著作物に対して、著作法保護の要件に適合するかどうか。わが国の司法機関が具体的な個別案件ついて、職権に基づき法を依拠として調査、認定すべきか。米国著作権局が発給した著作権登録だけで判断してはいかないのか。
4. 刑事処罰については、被告2人が事件発生時に企業の董事長(訳注:代表取締役に相当)と総経理を担当していたというだけで、犯行成立と推測してもよいのか。

四 判決理由の要約
(一)手続き事項
わが国の刑事訴訟法第242条第1項には「告訴、告発は書面又は口頭で検察官又は司法警察官に対して行うものとする」と規定されている。他人に告訴を代行するよう委任してもよいかどうかについて、わが国の刑事訴訟法には日本の刑事訴訟法第240条前半「告訴は、代理人によりこれをすることができる」というような規定がないが、被害者は第三者に告訴の代行を委任することは、司法院第89号、第122号の解釈要旨により法が禁ずるものではない。委任人が代理人に委任した後、代理人は委任人の名義で告訴を提起できるのか。委任人による告訴状の署名、捺印がない場合は刑事訴訟法第53条の規定に違反していることになるのか。被告は最高裁判所86年台非字第194号判決を以って前述法条文を適用すべきだという証拠を挙げているが、当該判決では当該案件が「非合法の告訴」だと断言しておらず、審判期日に改めて告訴したことが合法であるか否かを調査すべきだとしただけである。最高裁判所70年度(1981年度)台上字第7369号判例要旨の指摘するところによると、代理人である董○○は委任を経て自訴代理人となったが、当該代理権は訴訟手続きにおいて代理人が訴訟を進行する部分に限られ、代理人董○○に自訴代理の権利はない。従って、当該自訴状に董○○の署名、捺印しかなく、当該委任人の会社と代表者の署名、捺印がないのは法に合わない。これと、本案件の告訴人が委任状において明白に代理人に対して「提訴及び訴訟の進行」を授権した状況とは異なり、一概に論じることはできない。
条件付の告訴においてその付帯する条件が告訴と切り離せない場合、付帯条件が中止又は解除の条件のいずれに係わらず、その告訴の意思が不確定であるならば、告訴の効力は発生したとは認められない。条件付きの告訴取消も同様である。告訴人が取消の意思が不確定である場合、告訴取消の効力が発生したとは認められない。従って、本案件の告訴は依然有効である。

(二)実体の判断
コンピュータプログラムはわが国の著作権法第5条第10号で定める保護を受ける著作物であり、内政部の1991年12月2日付(80)台内著字第8073630号通知ではさらにコンピュータプログラムの定義について説明している。「(旧)著作権法第3条第1項第19号に定められるコンピュータプログラムとは、直接的又は間接的にコンピュータに一定の結果をもたらすことを目的として組成された命令を指す。いわゆる命令の組合せ(命令セット)とは、一連の命令を指し、その間には一定のロジックの順序関係があり、コンピュータを命令して一定の結果をもたらしたり、特定の問題を解決したりできる」(台湾高等裁判所95年度(2006年度)上更(二)字第604号巻二30ページを参照)。且つ経済部知的財産局は2008年12月23日付智著字第09700113030 号通知で前述の通知が示す見解に変更がないことを再び通知している。当該通知がファイルにあるので参照することができる(台湾高等裁判所95年度(2006年度)上更(二)字第604号巻五18ページを参照)。
わが国の著作権法第3条第1項第1号では「著作物:文学、科学、芸術若しくはその他の学術の範囲に属する創作物をいう」と規定されており、いわゆる創作物は独創性、つまり独自性と創作性をそなえ、著作者の個性や特異性を十分に表現できる必要があり、それで初めて著作権法の保護を受けることができる。最高裁判所90年度(2001年度)台上字第2945号判決要旨は参考になる。よって著作権保護法の保護範囲が過度に広がることを避けるため、独創性がなく他人の作品を模倣するもの又は量産できる工業製品については、創作性を有する芸術品と認め難く、わが国の著作権法の保護を受けることができない。
ただし米国の著作権法は著作者の著作物に対して、登録保護主義ではなく創作保護主義を採用している。ゆえに米国著作権局は著作権登録書類の審査に対して実質的な審査を行わない。つまり登録出願の作品に対して登録する作品が著作権法で保護される著作物であるか否かの実質的認定は行わない。登録される著作物に対して、著作権法で保護される著作物の要件に適合するかどうかは、わが国の司法機関が具体的な個別案件ついて、職権に基づき法を依拠として調査、認定すべきであり、米国著作権局が発給した著作権登録だけで当該著作物がわが国の著作権法に保護される要件に適合すると認定してはならない。
刑事処罰については、実際の行為者が犯罪行為の対象とすべきであり、被告2人が事件発生時に企業の董事長と総経理を担当していたというだけで、犯行成立と推測してはならない。
告訴人が指摘する前述の同一の文言を斟酌すると、コンピュータ業界における慣用語であり、この種の文字の使用はコンピュータ業界において一定の意味を持ち、その中の「CMOS」、「EPROM」、「RAM」のような一部の文言はその他の文言で表現することができないため、これらの文言だけで盗用があったか否かを判断することはできない。

五 関連条文抜粋
刑事訴訟法第53条、第242条第1項、著作權法第3条第1項第1号、第5条第10号、旧著作権法第91条第2項、第93条第3号、第87条第2号。
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