作詞作曲家の許○○、約900曲分の音楽著作権で借金を相殺

2014-05-15 2011年

■ 判決分類:著作権

I 作詞作曲家の許○○、約900曲分の音楽著作権で借金を相殺

■ ハイライト
東森得易購股份有限公司(Eastern Home Shopping & Leisure Co., Ltd.)董事長の梁○○は無利息で58万米ドルを著名な作詞作曲家の許○○に貸与し、双方は返済されなかった場合は、歌詞と楽曲の著作権を梁○○に譲渡して借金を相殺すると約定していた。許○○は期限までに借金を返済しなかったため、梁○○は訴訟を提起して著作権の譲渡を請求していたが、裁判所は梁○○に勝訴を言い渡した。本件はさらに上訴することができる。
知的財産裁判所の判決によると、許○○は自らが創作した900曲余りの歌詞と楽譜の原本を梁○○に渡さなければならない。後日900曲余りの価値を鑑定し、鑑定額にすでに返済した1500万新台湾ドルを加え、その総額が債務を越えたならば、許○○は訴訟を提起して不当な利益取得分を返還するよう請求することができる。
判決によると、許○○は3年余り前に会社を設立し、梁○○から無利息で58万米ドル(当時のレート換算で1763万2000新台湾ドル)を借り受けた。双方は貸借契約を締結し、半年後までに返済できなかった場合、音楽著作権を梁○○に譲渡すると約定するとともに、(許○○が)58万米ドルの約束手形を担保として提出した。
許○○は期限までに返済しなかったため、梁○○は約束手形を以て台北司法裁判所に強制執行を申し立て、その競売額は1500万新台湾ドル余りとなった。許○○はさらに200万新台湾ドル余りの未返済があったため、梁○○は知的財産裁判所に訴訟を提起し、契約に基づいて900曲余りの歌詞と楽譜の原本を譲渡するよう許○○に請求した。
裁判官は、許○○が約束手形を発行し、契約の返済期限までに返済しなかったため、梁○○が契約に基づいて著作権の譲渡を請求するのは理にかなうと認め、梁○○側の勝訴判決を下した。【2011-05-13/聯合報/A10面/社会】

II 判決内容の要約

基礎データ

知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】98,民著訴,49
【裁判期日】2011年5月10日
【裁判事由】著作権譲渡等

原      告 梁○○
被      告 許○○

上記当事者間での著作権譲渡侵害等の事件をめぐり、当裁判所は2011年4月12日に口頭弁論を終結し、以下のように判決を下すものである。

主文
被告は付表に記載される音楽著作物の著作権を原告に譲渡する旨の意思表示をすべきである。
被告は付表に記載される音楽著作物の歌詞原本、楽譜原本、及び付表の音楽著作物に係わる使用許諾契約書原本を原告に引き渡すべきである。
被告は付表に記載される音楽著作物の使用許諾により2007年12月29日からすでに取得した、もしくは今後取得する債権をすべて原告へ移譲する旨の意思表示をすべきである。
原告のその他の請求は棄却する。
訴訟費用は被告が負担するものとする。
原告による仮執行宣言の申立はいずれも棄却する。

一 事実要約
(ハイライトと同じため、省略)

二 両方当事者の請求内容
(一) 原告の請求:
1. 被告は付表1に記載される音楽著作物の著作財産件を原告に譲渡する旨の意思表示をすべきである。
2. 被告は付表1に記載される音楽著作物の歌詞原本、楽譜原本、及び付表の音楽著作物に係わる使用許諾契約書原本を原告に引き渡すべきである。
3. 被告は付表1に記載される音楽著作物の使用許諾により2007年12月29日からすでに取得した、もしくは今後取得する債権をすべて原告へ移譲する旨の意思表示を提出すべきである。
4. 訴訟費用は被告が負担する。
5. 原告は担保を提供するので、仮執行宣言を申し立てる。
(二) 被告の請求:
1. 原告の請求を棄却する。
2. 訴訟は原告が負担する。
3. 不利な判決を受けた場合、被告は担保を提供するので、仮執行の免除を請求する。

三 本件の争点
(一)本件の原告が係争売買契約に基づき被告に係争著作物の著作財産権を譲渡するよう請求することは、正当な理由が有るか否か。係争売買契約と双方が締結した貸借契約とは、いかなる関係があるのか。
(二)原告側が一方で係争売買契約に基づき発行した契約手形により被告に対する強制執行を行い、一方で係争売買契約に基づき被告に著作財産権の譲渡を請求することは、重複請求となるか否か。

四 判決理由の要約
(一) 本件の双方は以下について争ってはいない。原告は確かに被告に対して借款、即ち58万米ドルを支払った。これ以外に、双方の間には他のいかなる借款もない。被告は確かに貸借契約書で定められた返済期限2007年12月28日現在で、原告の借款を全額返済することができなかった。したがって、係争売買契約書第6条の約定に基づき、係争売買契約書は締結日、即ち2007年6月15日に遡って発効した。双方間において借款契約書を適用する余地はなく、売買契約書の約定を適用すべきである。買賣契約書第3条第(3)項の約定に基づき、双方間において2007年12月28日に被告が借款を全額返済できないことにより、双方が締結した買賣契約書が2007年6月15日に遡って発効した場合、原告は被告に改めて売買代金を支払う必要がなく、貸借契約書を提携した際に支払った借款58米ドルを売買代金とすることができる。したがって、買賣契約の履行についてみると、明らかに原告は売買代金給付の義務を履行しており、被告は付表1に記載される音楽著作物の著作財産権を原告に譲渡する義務を履行していない。この部分の事実について、被告は否認していない。原告は売買契約書に基づき被告に対して、付表1に記載される音楽著作物の著作財産権を原告に譲渡する旨の意思表示をすること、付表1に記載される音楽著作物の歌詞原本、楽譜原本、及び付表の音楽著作物に係わる使用許諾契約書原本を原告に引き渡すこと、さらには被告が付表1に記載される音楽著作物の使用許諾により2007年12月29日からすでに取得した、もしくは今後取得する債権をすべて原告に移譲する旨の意思表示をすること等を請求しており、根拠がないものではないため、許可すべきである。
(二) ここにおける疑義は、原告が一方では売買契約書に基づいて被告に対し付表1に記載される音楽著作物の著作財産権を原告に譲渡するよう請求し、他方では貸借契約書に基づいて借款の返済を請求し、現時点までに裁判所の強制執行により原告に15,145,623元が分配されており、原告はさらに本件請求を行うことは明らかに重複の主張である等を被告が主張していることである。調べたところ、原告が約束手形を以て被告に対する強制執行を申し立てた事件は、台北地方裁判所が2008年度票字第14722号事裁定を強制執行の名目とし被告に対する強制執行を行い、すでに原告が上記金額の返済を受けた点について、原告は争っていない。上記約束手形は、すなわち本件被告が売買契約書第5条に基づいて発行したものであり、該条の約定主旨に基づき、上記約束手形は主に被告が他人に音楽著作物の使用を許諾することで取得し、原告に支払われる権利金(または類似の性質の款項)が58万米ドルに達することを保証する担保であり、もしこの金額に達したならば、原告は約束手形を返還しなければならない。さらに係争売買契約書第3条第(3)項の約定を参照すると、「買い手(即ち原告)は売り手(即ち被告)に対する借款債権58万米ドルで支払うべき売買代金を相殺することができ、改めて売買代金を支払う必要はない。2008年1月31日までに、買い手(即ち原告)が受け取った権利金(または類似の性質の款項)の金額が58万米ドルに達していなかった場合、不足分について売方が2008年2月28日までに補う責任がある」等の文言から、原告が被告に約束手形を発行するよう要求した目的は、主に被告が引き渡す付表1に記載される音楽著作の価値が原告の支払った売買代金(借款を代金に転換)58万米ドルとの間に差があることが懸念され、被告が上記音楽著作物の権利金を以て補償し、被告がこの差額を補填する義務の担保とするためであり、被告に別途約束手形を発行して担保とするよう要求したことがわかる。原告が被告に約束手形の発行を要求したのは、被告が引き渡す係争音楽著作物の価値が58万米ドルあることの担保であり、原告は将来得られる係争音楽著作物の権利金収益から借款58万米ドルの返済を受けることができ、もし全額返済に足りなければ、被告は補填の責任を負うとことになる。現在、原告は一方で売買契約書に基づいて付表1に記載される音楽著作物の著作財産権、第三者に対する上記音楽著作物によって生じた債権を移譲するよう請求し、他方では約束手形の裁定に基づいて被告に対する強制執行を申し立て、15,145,623元の償還を得た。音楽著作物の価値に、強制執行して得られた金額を加えると、58万米ドルを超えるのか否かについては、双方とも挙証していない。原告が売買契約書で得た付表1に記載される音楽著作物の価値に、強制執行手続きにより得られた金額を加え、確実に58万米ドルに達していない場合は、原告は一方で被告に係争著作物の著作財産権を譲渡するよう請求し、他方では分配金を受け取っても、双方が売買契約書で原告が58万米ドルに値する対価を十分に得られるという主旨に該当する。ただし、原告が取得した音楽著作物と得た分配金の合計が58万米ドルを超える場合、該超過部分について過剰受取にならないとはいえない。
(三) しかるに、双方は現時点までに原告が付表1に記載される音楽著作物の著作財産権と、強制執行手続きにより得た分配金とを加えた価値が58万米ドルを超過しているかについては挙証されていない。また原告が係争売買契約書に基づき被告に対して付表1に記載される音楽著作物の著作財産権と係争音楽著作物によって発生した債権を移譲するよう請求することは、根拠がないものではない。原告が重複請求しているか、過剰受取があるかという争議については、原告が強制執行手続きで十分な償還を得るか、あるいは原告が係争音楽著作物と分配金の総額がすでに58万米ドルを超えていることを十分に証明するかした後、被告が他の法律関係に基づいてさらに主張するものとする。

2011年5月10日
知的財産裁判所第一法廷
裁判官 汪漢卿
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