商標権者の許諾又は同意を得ずに、記述的表示で他人の商標図案を使用することは、フェアユースを主張できる。

2025-12-18 2025年

■ 判決分類:商標権

I 商標権者の許諾又は同意を得ずに、記述的表示で他人の商標図案を使用することは、フェアユースを主張できる。

■ ハイライト
商標図案の使用について、全体の商品包装箱の図案及び販売広告等の資料を観察した時、商品の品質、性質、特性等に対する記述的表示にすぎず、商品の出所を示していない場合は、商標的使用行為ではない。

II 判決内容の要約

知的財産及び商事裁判所刑事判決
【裁判番号】114年度刑智上易字第4号
【裁判期日】2025年4月30日
【裁判事由】商標法違反等

上訴人 伊詩嘉國際企業有限公司(Isgreat Bio International Company Limited)
即ち私人訴追人
代表者 謝嘉容
私人訴追代理人 李榮唐弁護士
        陳欣怡弁護士
        蔡㚡奇弁護士

被告人 劉慧美(マレーシア籍)
国選弁護人 林亮宇弁護士
      王雲玉弁護士

主文
上訴を棄却する(劉慧美は無罪)

一 事実要約
私人訴追人の主張は概ね以下の通りである。
被告人劉慧美は曼妙思企業有限公司(Mamosy International Co., Ltd.、以下「曼妙思公司」という)の代表者であり、商標登録第01802917号「BIOSKIN」商標(添付図一の通り。以下「本件商標」という)は私人訴追人伊詩嘉國際企業有限公司(Isgreat Bio International Company Limited、以下「伊詩嘉公司」という)が知的財産局に登録した商標権であり、化粧品、フェイシャルマスク及びスキンケア製品等の商品での使用を指定している。
曼妙思公司は各大手オンラインショッピングのプラットフォームにて「BIOSKIN」に類似する「BIO✙SKIN」商標(添付図三の通り)を使用したフェイシャルマスク商品(以下「係争フェイシャルマスク商品」という)を陳列、販売した。私人訴追人は2022年12月21日、弁護士に委託して書面で曼妙思公司に係争フェイシャルマスク商品には商標法違反のおそれがあり、陳列棚から卸して、今後販売しないよう請求する告知を行った後、曼妙思公司はなお販売を目的として、オンラインショッピングのプラットフォームに上記商品を公開陳列し続けたため、被告人は商標法第95条第3号の商標権を侵害する罪及び刑法第253条の商標を偽造又は模倣する罪等の罪を犯した嫌疑がある。

二 両方当事者の請求内容
(一)私人訴追人の上訴の趣旨:
1.被告人が係争フェイシャルマスク商品の包装に最も濃い色の字体を以って表示している「BIO✙SKIN」という文字と図(以下「図案」)は、本件商標との類似度が高く、指定商品は同一又は高度な類似を構成しており、かつ本件商標は相当の識別性を有し、消費者はオンラインショッピングのプラットフォームで係争フェイシャルマスク商品を購入する時、顕著で明瞭な「BIO✙SKIN」のみを有し、背面には図案がなく、被告人が経営する曼妙思公司、住所等の情報もないため、関連する消費者に本件商標商品と誤認混同を生じさせるおそれがある。
2.「BIOSKIN」という単語は生物の肌又は生物の皮膚という意味の複合語であり、被告人は係争フェイシャルマスク商品が生物繊維の材質であることを表彰していると述べているが、生物繊維の英語は「Bacterual Cellulose」(Bio Cellulose)であり、被告人がそのフェイシャルマスクには生物繊維が使用されていることを表彰する必要があるのであれば、それが韓国語で「敏感肌用」と表示しているように、直接に「Bacterual Cellulose」又は「Used By Bacterual Cellulose」と表示すればよく、本件商標に極めて類似している「BIO✙SKIN」の図案を使用する必要はもとよりなく、たとえ被告人がその外包装と販売サイトに「變臉貓(UNICAT)の図案」を使用していても、被告人が本件商標に類似したものを使用した事実が変わるものではなく、被告人が当初から「BIO✙SKIN」図案について商標的使用をしていたことは明らかであり、記述的フェアユース(Descriptive fair use )の規定には適合しない。
3.被告人の行為は商標法第95条第3号及び刑法第253条の犯罪を構成しており、原判決は被告人に無罪判決を行い、事実認定と法の適用にはいずれも誤りがあるため、原判決を取り消し、改めて適法の判決を行うことを請求する。

(二)被告人の答弁の趣旨:
1.係争フェイシャルマスク商品の包装箱正面には、添付図二番号1に示される第02361969号商標の図案(以下「第969号商標」)が示され、背面には添付図二番号2に示される第01664754号商標の図案(以下「第754号商標」)が表示されており、係争フェイシャルマスク商品は第969号、第754号商標の図案を以って商標的使用をしていることが分かる。
2.また「BIO」と「SKIN」はスキンケア商品市場でよく用いられる用語であり、曼妙思公司は「UNICAT」ブランドだけで約40から50種類の商品があり、フェイシャルマスク、化粧水、美容液、乳液、クリームが含まれ、フェイシャルマスクだけで7タイプの商品があり、「BIO✙SKIN」の図案は添付図三に示される黄、青、ピンクの3タイプが生物繊維を使用しているフェイシャルマスクであることを記述するのだけに用いられており、商品の品質、原料及び機能を表す記述にすぎず、商標的使用ではなく、たとえ被告人の行為が商標的使用行為を構成したとしても、係争フェイシャルマスク商品に使用されている「BIO✙SKIN」図案は、色彩、デザイン、構図のいずれも本件商標とは異なり、消費者に誤認混同を生じさせるものではない。

三 本件の争点
被告人が係争フェイシャルマスク商品において「BIO✙SKIN」図案を使用した行為は、商品の成分(品質)及び機能を記述する説明に該当し、商標的使用ではなく、本件商標権の効力に拘束されないのか。

四 判決理由要約
(一)係争フェイシャルマスク商品が「BIO✙SKIN」図案を使用する行為は、商標的使用ではない。
1. 商品の包装
係争フェイシャルマスク商品の外包装は上から下へ「猫の図と UNICATの 文字」、「BIO✙SKIN」の図案、韓国語の順で表示されている。そのうち「猫の図と UNICATの 文字」が占める割合が最も大きく、中央の上方という最も目立つ場所に配置され、消費者の注目を最も惹きやすく、関連する消費者が商品の出所を識別する主要な識別部分(要部)であるはずである。曼妙思公司は2020年1月15日、マレーシアに対して第969号商標を登録し、その後2023年4月17日に知的財産局に出願し、2024年3月16日に登録されている。係争商品の包装と第969号商標を対比すると、商標図案の下方に「變臉貓」の三文字が追加されているという違いしかない。商品包装は多くの箇所に「猫の図と UNICATの 文字」が表示され、背面には明瞭に曼妙思公司の完全な情報が開示されており、係争フェイシャルマスクには第969号、第754号商標が主な商標として使用されていることを証明できる。
2.オンラインショッピングのプラットフォームにおける実際の使用態様
曼妙思公司は各オンラインプラットフォームで係争フェイシャルマスク商品を販売する時、商品名には明瞭に「UNICAT」又は「UNICAT變臉貓」と表示されている。公式サイトには「【UNICAT變臉貓】吸油面膜-女神代謝面膜」、Yahoo超級商城には「UNICAT吸油女神面膜」、MOMO購物網には「【UNICAT變臉貓】黑頭髒汙掃地機生物纖維代謝面膜」、東森購物網には「【UNICAT變臉貓】吸油清潔微生物纖維清潔面膜」、蝦皮商城には「UNICAT晶鑽礦物女神吸油面膜」、博客來には「女神代謝面膜【UNICAT變臉貓】」等と記載されていた。比較すると、すべての販売広告資料は包装箱の正面に「BIO✙SKIN」と表示されている以外に、本件商標「BIOSKIN」又は「BIO✙SKIN」の図案は全く触れられておらず、消費者に仄めかしたり、私人訴追人のグッドウィルにただ乗りしたりする意図がないことは明らかである。
3.「BIO✙SKIN」図案の説明的性質
係争フェイシャルマスク商品の外包装に表示されている「BIO✙SKIN」の図案は、その真上にある「猫の図と UNICATの 文字」と比べて書体、字体、文字サイズ、色及びデザインのいずれも特別に顕著なものではない。一般的な社会通念によると、消費者は「BIO」と「SKIN」の中間に「+」という記号で構成されているとわかる。「BIO」はBiologyの略語であり、生物を意味し、バイオテクノロジー関連の技術でよく使われる。「SKIN」は皮膚を意味する英単語である。フェイシャルマスク業界において、バイオエッセンスというブランドの「Bio-Treasure植萃日本柚子亮白面膜」、「BIO雪肌面膜」等のように、「BIO」を接頭辞として他のアルファベットを組み合わせて複合語を形成する事例が多い。包装下方には韓国語で「敏感肌用」と表示されており、「BIO✙SKIN」は消費者に対して、そのマスクがバイオテクノロジーで製作され、かつ敏感肌に適合することを示していることがわかり、これは商品自身の説明的文字に該当する。
4. フェアユースの認定
曼妙思公司がもし「BIO✙SKIN」の商標的使用を意図していたならば、それが2023年4月17日知的財産局に第969号商標の登録を出願したとき、「UNICAT變臉貓」の図案のみを請求の範囲とすることはないはずである。商品包装の構図、オンラインプラットフォームにおける実際の使用態様及び業界の商習慣を総合すると、関連する消費者は主要識別部分(要部)である「UNICAT變臉貓」図案のみに注目し、そのブランドと曼妙思公司との連結関係を認識する。そして「BIO✙SKIN」図案は商品の品質、性質、特性、用途を描述する説明であり、商業上の一般的な表示習慣と誠実な取引の状況に合致するものであり、商標識別性の効果を奏せず、販売を目的とする商標的使用ではなく、善意的、かつフェアユースという方法で商品成分の説明を表示するものに該当し、改正前の商標法第36条第1項第1号規定により、商標権の効力に拘束されない。

(二)被告人には犯罪の故意がなく、かつ消費者に誤認混同を生じさせないため、犯罪を構成しない。
1. 商標法第95号第3号の犯罪は、行為者が客観的に同一又は類似の商品又は役務において、登録商標又は団体商標と類似する商標を使用し、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある以外に、その主観的構成要件は、行為者に商標権侵害の故意があることである。
2. 本案係争フェイシャルマスク商品包装箱に使用される「BIO✙SKIN」の図案は、商品の材質や機能性等に対する記述的表示にすぎず、商標的使用ではなく、主観的に「BIO✙SKIN」図案を使用して商品の出所を表彰し、関連する消費者に本件商標と誤認混同を生じさせる故意があるとは認めがたい。
3.係争フェイシャルマスク商品の包装箱全体の構図と販売広告資料によると、被告人が関連する消費者に容易に識別させるものは依然として「UNICAT 變臉貓」ブランドであり、包装箱に商品の品質、用途等を説明する「BIO✙SKIN」図案が使用されていることで、消費者が本件商標と同じ出所からのものである、又は、出所は同じではないものの関連する出所からのものであると誤認して、誤認混同が生じるおそれはない。かつ私人追訴人は係争フェイシャルマスク商品の包装箱に「BIO✙SKIN」の図案を使用していることにより、関連する消費者に本件商標の商品と誤認混同を生じさせるおそれがあるという関連の証拠を提示しておらず、また、被告人が主観的にわざと本件商標のグッドウィルにただ乗りしようとする商標権侵害の故意はないと認められる。
4.さらに、係争フェイシャルマスク商品の包装箱に「BIO✙SKIN」図案を使用することは、すでに商標的使用ではなく、私人追訴人が主張する刑法第253条の人を欺いてすでに登録した商標を偽造又は模倣する事情がないことは、言うまでもない。 
5.以上をまとめると、被告人がオンラインショッピングのプラットフォームで、「BIO✙SKIN」図案を使用している係争フェイシャルマスク商品を陳列、販売することは、商品自身の品質、性質、特性等に対する記述的表示のみであり、商品の出所を示しておらず、商標的使用行為とは認めがたく、本件商標権の効力に拘束されず、かつ刑法第253条の犯罪構成要件に該当しない。

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