看板における診療所名称要部の目立つ表記は、商標の使用か否か
2025-06-20 2024年
■ 判決分類:商標権
I 看板における診療所名称要部の目立つ表記は、商標の使用か否か
■ ハイライト
上訴人は以下のように主張している:上訴人は2002年に登士美牙醫診所を開業し、経済部知的財産局(以下「知財局」)に「登士美Dens Beauty及び図」商標の登録を出願して許可された(商標登録番号第00187496号)。被上訴人は2022年6月に「登士美數位牙醫診所」を開業し、「登士美」という文字を診療所の看板に使用し、かつその看板の写真を歯科診療所の広告文とともにGoogleビジネスプロフィール、Instagram及びFacebookに掲載して、関連する消費者に二つの役務が同一の又は関連する出所からのものであると連想させ、誤認させるため、被上訴人は商標法第68条第3号規定に違反しており、かつ被上訴人は上訴人の知名度にただ乗りし、そのグッドウィルを侵害しており、公平交易法(訳注:日本の不正競争防止法や独占禁止法に相当)第21条第1項、第2項、第4項、第22条第1項第2号、第25条に違反している。
知的財産及び商事裁判所112年度民商訴字第10号第一審民事判決では上訴人の主張が棄却されたため、上訴人はこれを不服として、上訴を提起した。知的財産及び商事裁判所の第二審判決では、「被上訴人はわが国の登録番号第00187496号商標と同一又は類似の文字、図を有する看板、名刺、広告、サイト及びその他の販促物品を使用してはならず、該商標と同一又は類似の文字、図を有する看板、名刺、広告、サイト及びその他の販促物品を除却し廃棄しなければならない。その他の上訴を棄却する。」と判決された。
II 判決内容の要約
知的財産及び商事裁判所民事判決
【裁判番号】112年度民商上字第14号
【裁判期日】2024年5月16日
【裁判事由】商標権侵害行為排除等
上訴人 呉錫堯即ち登士美牙醫診所
訴訟代理人 張宏銘弁護士
被上訴人 莊玉崢即ち登士美數位牙醫診所
訴訟代理人 孫奕貞
上記当事者間の商標権侵害行為排除等事件について、上訴人は2023年8月22日付の112年度民商訴字第10号第一審判決に対して上訴を提起し、本裁判所は2024年4月18日に口頭弁論を終え、以下のように判決した。
主文
原判決における上訴人の後出第二項に係る請求を棄却した部分と、訴訟費用に係る裁判を取り消す。
上記の取消部分について、被上訴人はわが国の登録番号第00187496号商標と同一又は類似の文字、図を有する看板、名刺、広告、サイト及びその他の販促物品を使用してはならず、該商標と同一又は類似の文字、図を有する看板、名刺、広告、サイト及びその他の販促物品を除却し廃棄しなければならない。
その他の上訴を棄却する。
第一、二審の訴訟費用は被上訴人が二分の一を負担し、その余を上訴人の負担とする。
一 事実要約
上訴人は主に以下のように主張している:上訴人は2002年に登士美牙醫診所を開業し、2003年6月16日に「登士美Dens Beauty及び図」商標の登録査定が下され商標登録番号第00187496号として公告された。その後上訴人は被上訴人が2022年6月に「登士美數位牙醫診所」を開業し、「登士美」という文字を診療所の看板に使用し、かつその看板の写真を歯科診療所の広告文とともにGoogle ビジネス プロフィール、Instagram及びFacebookに掲載したことを知り、上訴人は被上訴人が商標法第68条第3号規定に違反し、また公平交易法第21条第1項、第2項、第4項、第22条第1項第2号、第25条にも違反していると考えた。知的財産及び商事裁判所112年度民商訴字第10号第一審民事判決では上訴人の主張が棄却され、上訴人はこれを不服として、上訴を提起した。
二 両方当事者の請求内容
(一)上訴人の主張(上訴の趣旨):
1.原判決を取り消す。
2.被上訴人は係争商標と同一又は類似の文字、図を有する看板、名刺、広告、サイト及びその他の販促物品を使用してはならず、該商標と同一又は類似の文字、図を有する看板、名刺、広告、サイト及びその他の販促物品を除却し廃棄しなければならない。
3.被上訴人は「登士美」と同一又は類似の文字をその診療所名称要部に使用してはならず、新北市政府衛生局に対して診療所名称を「登士美」と同一又は類似の文字を含まない名称に登記変更しなければならない。
(二)被上訴人の主張(上訴の趣旨に対する答弁):上訴を棄却する。
三 本件の争点
(一)被上訴人は商標法第68条第1項第3号の商標権侵害を構成する状況があるか。公平交易法第21条第1項、第2項、第4項、第22条第1項第2号及び第25条の規定に違反しているか。
(二)上訴人は商標法第69条第1項又は公平交易法第29条の規定に基づいて侵害の排除及び防止を請求することに、理由はあるか。
四 判決理由の要約
(一)被上訴人が係争商標の要部と類似する商標を同一又は高度に類似の役務に使用することは、商標法第68条第1項第3号の商標権侵害の状況を構成する:
上訴人は「登士美」を先に商標登録しており、被上訴人は同一又は類似の文字を商標として今後使用してはならない。被上訴人は「登士美」という文字を役務の出所を識別する根拠としており、おのずと商標の使用行為を構成している。係争商標の要部である文字は被上訴人が商標として使用する文字と同一のものであり、係争商標と被上訴人の商標は類似を構成し、かつ類似の程度は低くはない。また係争商標は第44類の「歯列矯正、ホワイトニング」等の役務での使用を指定しており、被上訴人が提供する歯科治療等と同一又は類似を構成し、関連する消費者に両商標は同一の商標であると誤認させる、又は同一商標であるとは誤認するには至らないものの、両商標の商品又は役務が同一の出所からのシリーズの商品又は役務であると誤認させる、又は両商標の使用者の間に関連企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在すると誤認させる可能性が極めて高い。
(二)被上訴人は公平交易法第21条第1項、第2項、第4項、第22条第1項第2号、第2項及び第25条の規定に違反していない:
1.本件係争商標はかつて行政機関又は司法機関から著名の認定を受けたことがなく、上訴人は係争商標がすでに関連する消費者に熟知されていることを証明するに足る資料を提出しておらず、係争商標がすでに著名であるとは認めがたく、公平交易法第22条第1項第2号規規定の適用はない。
2.被上訴人と上訴人の営業場所はそれぞれ北部と中部にあり、両者はもとより知り合いではなく、上訴人の係争商標は著名ではなく、被上訴人は自らのグッドウィルを高める目的で機会を利用してただ乗り(フリーライド)したということはないはずであり、係争商標と類似しており関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるものの、商標法では前記行為についてすでに規定があり、被上訴人に公平交易法第21条第1項、第2項規定違反があるとは認めがたい。
3.公平交易法第25条は概括的規定であり、本件上訴人は、どのようなその他取引秩序に影響するに足る欺瞞的な又は著しく公正さを欠く行為が、前記規定(訳注:公平交易法第21条第1項、第2項、第4項、第22条第1項第2号、第2項)の包摂に及ばないか等の状況について、証拠を示して証明していない。
(三)以上をまとめると、上訴人が商標法第69条第1項規定により、係争商標と同一又は類似の文字、図を有する看板、名刺、広告、サイト及びその他の販促物品を使用してはならず、係争商標と同一又は類似の文字、図を有する看板、名刺、広告、サイト及びその他の販促物品を除却し廃棄することを被上訴人に命じるよう請求すること(即ち、上訴の趣旨第2項)には理由があり、許可すべきである。
被上訴人が公平交易法第21条第1項、第2項、第4項、第22条第1項第2号、第2項及び第25条の規定に違反しているとする上訴人の主張について、上訴人は証拠を示して証明しておらず、公平交易法第29条により、被上訴人は「登士美」と同一又は類似の文字をその診療所名称の要部に使用してはならず、新北市政府衛生局に対して診療所名称を「登士美」と同一又は類似の文字を含まない名称に登記変更することを被上訴人に命じるよう請求すること(即ち、上訴の趣旨第3項)には根拠がなく、許可すべきではない。
2024年5月16日
知的財産第二法廷
裁判長 彭洪英
裁判官 曾啓謀
裁判官 汪漢卿









