立体商標識別性の認定

2025-05-20 2024年

■ 判決分類:商標権

I 立体商標識別性の認定

■ ハイライト
 上訴人の前権利者が靴の立体形状からなる立体商標の登録出願を行い、第25区分の商品に使用指定したが、経済部知的財産局は審査のうえ、商標法第29条第1項第1号所定の識別性を有しない事情に該当すると認定し、拒絶査定を下した。上訴人の前権利者は当該処分に対し訴願を提起したが、経済部により訴願が棄却された後、係争立体商標の出願権利を上訴人に譲渡した。上訴人は、訴願決定を不服とし、行政訴訟を提起したが、知的財産及び商事裁判所は、識別性を有しないと認定し、その訴訟を棄却する判決を下した。また、上訴人はこれを不服とし、上訴を提起したが、最高行政裁判所は判決をもって、上訴に理由がないと認定し、上訴を棄却した。また、最高行政裁判所は判決において、係争立体商標を「靴底;中底;中敷き(非整形外科用);ブーツ」商品に使用指定して出願したが、関連消費者は、通常これを商品自体に関する特性の説明とみなし、商品の出所を識別するための表記とするものではないと認識するため、先天的識別性を有せず、原審判決を検討したところも、法律の適用を誤った事情がないほか、商標登録を受けようとする係争立体商標が上訴人により長年にわたって繰り返して広く使用され、商品の出所を表彰する意味を生じているために後天的識別性を有するものであると証明することは難しいと認定した。前記を総合すると、本件上訴審は判決をもって、知的財産及び商事裁判所の原審判決を維持し、原判決において、上訴人が指摘した法令違反があるとの事情もなく、上訴に理由がないので、上訴を棄却しなければならない。

II 判決内容の要約

最高行政裁判所判決
【裁判番号】112年度上字第55号
【裁判期日】2024年04月12日
【裁判事由】商標登録

上訴人 ドイツ企業・勃肯知識産権有限公司 Birkenstock IP GmbH
被上訴人 経済部知的財産局

上記当事者間における商標登録事件につき、上訴人は、中華民国111年11月16日付知的財産及び商事裁判所による111年度行商訴字第47号行政判決に対し、上訴を提起したので、本裁判所は、次のとおり判決する。

主文
一、上訴を棄却する。
二、上訴審の訴訟費用は、上訴人の負担とする。

一 事実概要
 上訴人の前権利者であるドイツ企業・勃肯斯多克銷售股份有限公司(以下ビルケンシュトック社という)は、2019年11月5日に「Footwear Model 1」立体商標(登録を受けようとする立体商標、以下係争立体商標という)を被上訴人が公告した商品及び役務第25区分の「靴底;中底;中敷き(非整形外科用);ブーツ」商品に使用指定し、被上訴人に登録出願を行い、2019年5月6日にドイツで登録した第000000000000.0号商標出願をもって優先権を主張した。被上訴人は審査したうえで、商標法第29条第1項第1号所定の識別性を有しない事情に該当すると認定し、2021年11月30日に第419185号商標拒絶査定書をもって拒絶の処分を下した(以下原処分という)。ビルケンシュトック社はこれを不服とし、訴願を提起したが、棄却された。その後、係争立体商標の権利が上訴人に譲渡されたので、上訴人が訴願決定を不服とし、行政訴訟の提起により、訴願決定及び原処分を取り消し、被上訴人に係争立体商標登録査定せよと命じるよう請求したが、原審判決により棄却されたため、本件上訴を提起した。

二 両方当事者の請求
 上訴人による提訴の主張及び被上訴人の原審における答弁は、すべて原判決の記載を引用する。

三 原審判決の趣旨
(一)本件の係争立体商標は、願書に記載の描述内容によれば、靴が立体形状で構成され、それには「靴上方に各付属の調整可能留め金がある二本の甲バンド」及び「厚底で足跡形状のある中底と骨構造のソール」が含まれるほか、訴願時に「一枚皮のアッパーでU字型にカットされた皮面」、「靴底の溝がいくつもの砂時計形状図案の密集排列組み合わせ」を補充したものも含まれる。サンダル商品の消費者層は幅広いほか、民生の消耗品であり、外観のデザインスタイルは季節に応じて頻繁に不定期に更新されるので、消費者の購入時の注意程度がより低いことを考えると、先天的識別性を得ようとする場合は、高度な特殊デザインを必要とする。そうであって、初めて関連消費者の当該商品が単純に示す商品内容のイメージから抜け出し、出所の識別機能を十分果たすことができる。係争立体商標の靴上方に付属の調整可能留め金、及びU字型デザインの方法については、靴類業界でよくみられる、外観装飾のスタイル及び美的デザインであり、実は、数多くの同業他社も同一の製品を発売している。また、中敷き部分の凸型突起の前緣、帯状つま先は滑り止めと快適性の為であり、土踏まず、踵のカップが長時間立ったときのストレスを軽減するが、これはいずれも人体工学に基づくデザインである。靴底部分の溝は耐摩耗性、滑り止めのデザインであり、これはいずれも靴類業界でよくみられる機能的なデザインであるほか、関連消費者はサンダル類商品を購入するにあたって、外観のスタイル、美しさ、快適さ、機能性を追求するので、係争立体商標を商標として、「靴底;中底;中敷き(非整形外科用);ブーツ」商品に使用指定しても、関連消費者は、通常これを商品自体に関する特性の説明とみなし、これを商品の出所を識別する表記とするのではないと認識するので、自ずと先天的識別性を有しないと認定することができる。
(二)上訴人が提出した会社沿革、オフィシャルサイト、オンライン販売ページ、販売拠点、商品カタログ、店舗プロモーション、新聞・雑誌と関連オンラインメディアの報道、ソーシャルメディアマーケティング資料、ブロガーによる情報共有からわかるように、上訴人は主に、ブランド名「BIRKENSTOCK」または「勃肯」、及び係争立体商標の靴の名称「Arizona」又は「勃肯鞋」をもって、当該サンダルを紹介しているが、「靴上方に各付属の調整可能留め金がある二本の甲バンド」、「U字型設計のアッパー」、「厚底で足跡形状のある中底と骨構造のソール」及び「靴底の溝がいくつもの砂時計形状図案の密集排列組み合わせ」等の特色を強調しているのではない。ましてや、前記ブロガーによる情報共有でも、上訴人が主張した係争立体商標の前記特色に触れたことはないほか、前記資料の多くが、係争立体商標に関する靴の販売資料ではないことから、上訴人がその「BIRKENSTOCK」ブランド又はすべての「勃肯鞋」の靴を統合的に販売しており、係争立体商標「Arizona」の靴だけに限っているのではないことがわかる。更に、上訴人が提出した係争立体商標の商品を台湾に輸入した伝票、台湾の小売店における販売伝票、明細書及び商品の写真からも、係争立体商標「Arizona」の靴だけではないことがわかる。上訴人が自ら統計した「Arizona」靴の2012年から2019年11月にかけての販売数量及び金額は90万足余り、1,687万ユーロと計算しているが、これは上訴人が自らリストアップしたものにすぎない。当該販売金額が市場でどのぐらいの割合を占めているか、関連消費者に係争立体商標が一定の出所を示す及び区別する表記であると十分認識させているかどうかについては、やはり裏付けとして証明できる関連証拠がない。また、台湾における小売店の販売データ又は伝票コピーのいずれも、係争立体商標「Arizona」の靴に関わるものだが、その数量はわずか数十枚であるので、当該販売額をもって、既に関連消費者が、係争立体商標の図案による商品出所の識別性を十分区別することができると認定することは難しい。上訴人はもとよりニールセンマーケティング会社(尼爾森行銷研究顧問股份有限公司、以下ニールセン社という)が行った市場調査レポートを提出したが、当該市場調査レポートのサンプル数は都市部に偏っており、他の自治体(県・市)の消費者を統計するサンプル数から排除しており、且つ割合からみると、明らかに台北の地域的な偏りがあるので、これは本件市場調査レポートの参考価値に影響する。ましてや、当該調査レポートの靴写真を提示したときに、関連消費者に、直接ブランドのリストを開示して選ばせる方法をとっているので、つまり先に写真だけを開示して、第一印象に基づいてブランド名を正しく識別できるかどうかを消費者に答えてもらったのではない。また、開示後に58%が靴の種類を正しく識別できたものの、やはり17%が他のブランドだと識別しており、23%が写真の靴がどのブランドなのかを知らないと回答したので、当該サンプルからわかるように、係争立体商標の外観をもってその商品出所を正確に区別するには明らかに不十分である(比率で換算すると、約580人だけ)。よって、その数量は、台湾各地で靴類商品等民生用品を購入する関連消費者と比べて、やはり少ないので、当該市場調査レポートをもって、係争立体商標が後天的識別性を取得していると認定することは難しい。また、上訴人の「BIRKENSTOCK」ブランドは、ドイツの著名なブランドであり、早くから欧米諸国で靴類製品を発売してきたが、欧米地区における係争立体商標と同一図案の登録資料によればEnded、Filedを示したものが殆どであり、たとえ取下げ済、棄却又は出願、審査中の状態であっても、そのいずれも登録査定を受けておらず、係争立体商標が後天的識別性を取得していないことの証明になるので、おのずと本件には商標法第29条第2項規定の適用はない。
(三)本件係争立体商標は商標法第29条第1項第1号所定の識別性を有しない事情に該当するので、商標法第31条第1項の規定により拒絶査定しなければならない。原処分が、係争立体商標は登録できず、拒絶査定しなければならないとしたことは、法に合致する。訴願決定でも、これを維持したことに誤りはない等と認定しており、よって判決をもって上訴人による原審の訴えを棄却する。

四 本裁判所で審理のうえ、原判決に誤りがないと認定するが、上訴理由については次のとおり補充して論述する。
(一)調べたところ、上訴人は、原審の職権による証拠取捨、事実認定の行使について、原審判決に法令の違反があると任意に指摘したが、これは採用するに足りぬものである。また、上訴の趣旨は、被上訴人が挙証した「富発牌防水拖鞋」、「GILIS雙槓拖鞋」、「鱷魚氣墊拖鞋」のいずれも、販売、製造時間の表示がないか、又は本件の出願日以降であったので、市場の現行の靴が係争立体商標を模倣するおそれがあると合理的に疑っており、原審が後に使用した係争立体商標を盗用した商品資料をもって、本件を登録出願してはならない理由としたことは、経験則及び論理則に反し、判決には法律適用誤りの違法がある云々を述べた。しかし、上訴人は、当該靴が係争立体商標を模倣したものであることを挙証して証明していない。よって、原審が当該証拠資料をもって、係争立体商標のデザインは通常よくみられるスリッパ、サンダルの外観と異なるものではないと認定したことに誤りはない。上訴人による前記の主張も受け入れられない。
(二)原審が係争立体商標に後天的識別性があるかについて、既に上訴人が提出した会社沿革、オフィシャルサイト、オンライン販売ページ、販売拠点、商品カタログ、店舗プロモーション、新聞・雑誌と関連オンラインメディアの報道、ソーシャルメディアマーケティング資料、ブロガーによる情報共有、係争立体商標の商品を台湾に輸入した伝票、台湾の小売店における販売伝票、明細書及び商品の写真、ニールセン社が行った市場調査レポート等証拠資料を斟酌したうえで、上訴人が提出した前記の証拠では、係争立体商標が既に上訴人により長期にわたって繰り返して使用されたこと、取引において、上訴人による商品を識別する表記となっており、これをもって商標図案本来の意味のほかに、商品の出所を表彰する意味を生じているため、後天的識別性を有すると証明することは難しいと認定した一方、ニールセン社による市場調査レポートをもって、何故係争立体商標が既に後天的識別性を取得していると認定することは難しいのかについても、その事実認定の根拠及び心証取得の理由を詳細にわたり述べたことは、ファイルにある証拠と一致しているほか、審理を経た結果、論理則又は経験則にも違反せず、判決における法律の不適用、又は適用の誤り、理由の不備等の法令に反する事情もない。上訴の趣旨において、係争立体商標を台湾で、大量に、幅広く且つ長年にわたって販売してきた具体的な証拠を提出し、且つニールセン社による市場調査レポートからわかるように、台湾の消費者が係争立体商標を相当程度に認識しており、後天的識別性を取得していることを十分証明できるのにもかかわらず、原審でこれを詳細に調査しないことは、判決における法律の不適用、又は法律適用の明らかな誤りがあるほか、証拠による事実認定を怠った違法がある云々を主張したことについては、すべて自身の主観的な意見に過ぎず、原審の職権による証拠取捨、事実認定の行使、及び詳細に論断した事項について、再度争ったことは、おのずとこれを採用することができない。
(三)前記を踏まえ、原判決に、上訴人が指摘した法令違反の事情はなく、上訴の趣旨でやはり前言をもって、原判決に法令違反があると指摘し、破棄するよう求めたことにも理由はなく、棄却しなければならない。

 以上を総じると、本件上訴には理由がないので、改正前の知的財産案件審理法第1条及び行政訴訟法第255条第1項、第98条第1項前段に基づき、主文のとおり判決する。

中華民国113年4月12日
最高行政裁判所第二法廷
審判長裁判官  陳国成
裁判官    李君豪
裁判官    簡慧娟
裁判官    陳文燦
裁判官    蔡如琪

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