「台中で最も高価なお弁当」商標戦の結末 「金之園」が「金g園」に対する侵害告訴で4連敗

2024-01-24 2023年

■ 判決分類:商標権

I 「台中で最も高価なお弁当」商標戦の結末 「金之園」が「金g園」に対する侵害告訴で4連敗

「范記金之園」草袋飯(ヂィンヂィーユァンツァオダァイファン)は、元従業員が独立してオープンした「金雞園」小吃店(軽食店)を相手取り、看板を使用して商標に便乗し、消費者の誤認を引き起こす故意があるとして告訴を提起した。また、金之園は自ら3年連続でミシュランガイド ビブグルマンに選ばれたと主張し、金雞園に店名、商標の変更、賠償として90万台湾ドルの支払いを要求した。これについて、知的財産及び商事裁判所は審理したが、「范記金之園」商標は縦書きの中国語で構成されており、「金g園」は縦書きの中国語、英語で構成されており、「g」に鶏のくちばし、鶏冠とカラフルな尾羽3本が描かれており、まったく違って見えると認定し、更に両者とも弁当を販売しているが、消費者に混同を生じさせないほか、范氏がビブグルマンに選ばれた完全な資料を提出しなかったため、消費者が「范記金之園」商標をより一段と熟知しているとは認定できないうえ、范氏も金雞園の看板が金之園の商業的名声に便乗する故意があることについて挙証していないと認定し、金之園敗訴の判決を下した。本件は上訴することができる。

II 判決内容の要約
知的財産及び商事裁判所民事判決
【裁判番号】111年度民商訴字第47号
【裁判期日】2023年4月27日
【裁判事由】商標権侵害行為の排除等

原告  金之園股份有限公司
被告  賴育菘、即ち金雞園小吃店

上記当事者間の商標権侵害行為の排除等案件につき、本裁判所は2023年3月30日に口頭弁論を終結し、次の通り判決する。

主文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

一、両方当事者の請求
(一)原告の請求
1、被告は付図二に示す文字及び図案、または「金之園」文字と同一もしくは類似のものを草袋飯弁当箱の広告板、広告、看板または他の販売物件に使用してはならないほか、付図二に示す文字または図案の看板を廃棄処分すべき。
2、被告は原告に90万台湾ドル、及び訴状謄本送達の翌日より弁済日まで年利息5%で計算した利息を支払わなければならない。
3、訴訟費用は被告の負担とする。
(二)被告の請求
1、原告の訴えを棄却する。
2、訴訟費用は原告の負担とする。
(一)原告は2018年1月31日知財局に「范記金之園」商標を出願し、権利存続期間は2028年10月31日までであり、商標の指定内容を「商品区分:第043類。商品または役務名称:軽食店;レストラン;ケータリング;飲食提供サービス。」としている。2018年11月1日に公告され、第01949409号商標として登録され、今も商標権存続期間内である。
(二)原告の「金之園股份有限公司」は2018年1月24日に○○市政府に商業設立登記を行い、且つ范家豪を代表者としている。
(三)被告の「金雞園小吃店」は2007年12月26日に○○市政府に商業設立登記を個人事業主の屋号として行い、2020年8月6日に代表者を賴育崧に変更している。
(四)「范記金之園及び図」商標は、原告の法定代理人范家豪の母親洪維貞が1983年4月22日に登録出願し、権利存続期間は2023年10月15日までであり、商標の指定内容を「商品区分:第030類。商品または役務名称:各種弁当、穀物、小麦粉、でん粉及び他の穀粉とその混合製品」としている。

三、両方当事者の争点
(一)被告が付図二に示す文字及び図案を看板に使用したことは、商標法第68条第1項第3号の規定に違反するか。
(二)原告が商標法第69条第3項の規定に基づき、被告に賠償を請求したことに理由があるか。もしあれば、その金額はいくらか。
(三)原告が商標法第69条第1項、第2項の規定に基づき、被告に対し侵害の防止及び排除を請求したことに理由があるか。

四、理由
(一)付図二は、関連事業者又は消費者に混同誤認を生じさせる恐れがないので、商標法第68条第3号所定の原告の商標権侵害に該当しない。
1、付図二は係争商標と同一または類似するか:
(1)係争商標は縦書きの中国語からなる「范記金之園」であり、付図二は中国語、英語の「金」、「g」、「園」から構成されており、そのうちの「g」の上に鶏冠図形、その左側に鶏のくちばし図形、その下側にカラフルな鶏の尾羽があるものである。よって、付図二と、係争商標が目視した関連消費者に与える全体的な印象は、図案または文字の設計により識別に供する差異があり、視覚体験も異なる。付図二と係争商標が表す全体的な外観、コンセプトを比較して総合的に判断した。よって、全体的に考察すると、付図二と係争商標の文字、図案設計が表す全体的なスタイル、外観は異なっており、且つ付図二も他の図案と結合して、人に与える目視印象に差異があるので、付図二は係争商標と類似しない。
(2)商品または役務が同一または類似するか、及びその類似程度:係争商標を使用指定している「軽食店;レストラン;ケータリング;飲食提供サービス」と、付図二を実際に使用している飲食サービスとの比較を行うと、両者はともに飲食提供サービスに当該する。よって、一般の社会通念及び市場の取引実態から判断すると、同一の役務に該当する。被告が草袋飯を販売しておらず、原告と同一商品ではない云々と抗弁したことは採用できない。
(3)商標識別性の強弱:係争商標と軽食店、レストラン、ケータリング、飲食提供サービスとの間には明確な関わりがなく、関連消費者も直接、商品の出所を指示または区別する標識であると認識できるので、相当な識別性がある。
(4)実際の混同誤認の状況:本件には、関連消費者が係争商標、付図二が表彰する役務が同一の出所に由来する、又は関連があると誤認して、実際に混同誤認したことを証明する証拠がない。
(5)関連消費者の各商標に対する熟知程度:原告は、2020年から2022年の3年連続でミシュランガイド ビブグルマンに選ばれ、台中市において長蛇の列ができる人気店であると主張し、さらに証明のために「台中2020、2021、2022ビブグルマン推薦店」資料を提出した。前記資料を見ると、そのうち2020年、2021年資料の出典の表示がなく、どこに掲載された資料なのかがわからない一方、2022年資料の出典は蘋果新聞網だとしたが、それは一枚の表だけであり、原告に対する詳細な報道内容もないほか、当該ウェブ上の表を見た人数の表示もないので、関連消費者の係争商標に対する熟知程度が付図二より高いと認定するには不十分である。
(6)被告が善意であるか:原告は、被告が付図二を飲食サービスに使用した行為に悪意があるかについて論述しなかったほか、裏付けとする証拠も提出しなかったので、被告が付図二を飲食サービスに使用したことに、原告の商業上の名声に便乗する悪意があると認定することは難しい。
(7)係争商標と付図二は類似の商標ではなく、指定使用及び実際に使用する役務のいずれも飲食業界であり、係争商標と付図二はともに相当な識別性を有し、関連消費者に混同誤認を生じさせる事由がなく、被告による原告商標の使用に、悪意がないこと等関連要因を酌量して、総合的に判断した結果、被告による原告商標の使用は、関連事業者及び消費者にその商品の出所または製造主体について混同誤認を生じさせるおそれがなく、本件に商標法第68条第1項第3号規定の適用がないと認定すべきである。
2、原告が商標法第68条第3号の規定に基づき、被告が商標権等を侵害したと主張したことは採用できないので、原告が、被告による侵害の排除、防止及び連帯で損害の賠償を請求した他の争点にも理由がない。
(二)前記を総合すれば、被告の商標は係争商標と類似しないので、消費者に混同誤認を生じさせるおそれがない。それ故、被告には、商標法第68条第3号所定の原告の商標権侵害の事情がなく、原告が商標法第68条第1項第3号、第69条第1、2項の規定に基づき、請求の趣旨の通りに判決を下すよう請求したことには理由がないので、棄却すべきである。

以上を総じると、原告による請求には理由がないので、知的財産案件審理法第1条、民事訴訟法第78条に基づき、主文の通り判決する。

中華民国112年4月27日
知的財産裁判所第三法廷
裁判官 王碧瑩 

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