商標「LOVOL」は「VOLVO」に酷似で取消し

2015-04-09 2013年
■ 判決分類:商標権

I 商標「LOVOL」は「VOLVO」に酷似で取消し

■ ハイライト
 知的財産局は、中国の河北欧力重工公司(Hebei Aulion Heavy Industries Co., Ltd.、以下「欧力重工」)が自動車に使用する登録商標「LOVOL」がスウェーデンのボルボ・トレードマーク・ホールディングAB(以下「ボルボ社」)の商標「VOLVO」に高度に類似しているため、「LOVOL」の登録を取り消すよう審決した。欧力重工は行政手続を踏んで訴訟を提起したが、知的財産裁判所から敗訴の判決を下された。
 2008年1月欧力重工は当時の商標法施行細則に定められる(商品及び役務区分表第12類の)自動車、農業機械、二輪自動車等15種類の車両を指定商品として商標「LOVOL」の登録を経済部知的財産局に出願し、許可査定を受けた。
 しかしながら2009年2月、ボルボ社は欧力重工の商標「LOVOL」がボルボ社の商標「VOLVO」に類似しており消費者(需要者)に混同を生じさせるおそれがあるとして、知的財産局に異議を申し立てた。
 2012年11月21日、知的財産局は両社の商標には高度な類似があるとして、商標法に基づき欧力重工の商標「LOVOL」の登録を取り消すべきであると審決した。
 商標法では、商標が同一又は類似の商品又は役務について、他人がすでに登録している商標、又は他人が先に出願した商標と同一又は類似のもので、関連消費者に混同誤認を生じさせるおそれがあるときは登録できないと規定されている。
 知的財産裁判所は以下のように認定した。両社の商標は外観と称呼がやや異なるものの、商標図案を全体観察すると、関連消費者は両商標に使用されている文字が見る者に同じような印象を与えると理解するため、両商標は高度に類似している。さらに商標間における誤認混同のおそれの有無を考慮するときは、商品と役務についてそれぞれ対比するだけではなく、該商標を所有する企業の経営多角化の状況についても考慮すべきである。(2014年1月14日 工商時報 A16面)

II 判決内容の要約

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】102年度行商訴字第104号
【裁判期日】2013年12月25日
【裁判事由】商標登録の異議申立

原告 中国地区・河北欧力重工有限公司(Hebei Aulion Heavy Industries Co., Ltd.)
被告 経済部知的財産局
参加人 (スウェーデン企業)ボルボ・トレードマーク・ホールディングAB

上記当事者間における商標登録の異議申立事件について、原告は経済部の2013年7月16日経訴字第10206103840号訴願決定を不服として行政訴訟を提起した。本裁判所は職権に基づき参加人が本件被告の訴訟に独立して参加するよう裁定し、次のとおり判決する。

主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用を原告の負担とする。

一 事実要約
原告は2008年1月25日当時の商標法施行細則第13条に定められる商品及び役務区分表第12類「自動車、農業機械、二輪自動車、操重車、小型動力車、自転車、電気自動車、電気二輪自動車、電動自転車、陸用車両発動機、フォークリフト、コンクリートミキサー車、トラクター(運輸用)、トラック」商品を指定商品として商標「LOVOL」の登録を被告に出願した。被告が審査した結果、登録第1346332号商標(以下「係争商標」)として登録が許可された。その後、参加人は2009年2月13日、該商標が登録時の商標法第23条第1項第12号及び第13号の規定に違反しているとして、これに対して異議を申し立てた。商標法が2012年7月1日に改正されたのにともない、該法第106条第1項の規定に基づき、本法の改正条文施行前にすでに受理されたが、未処分の異議申立て又は無効審判請求の案件は、登録時及び本法の改正施行後の規定のいずれにも違反する事由がある場合に限り、その登録を取り消す。本件の元来の異議申立理由は現行商標法第30条第1項第10号及び第11号に改正されている。被告は審理した結果、係争商標には登録時の商標法第23条第1項第13号及び現行商標法第30条第1項第10号の規定が適用され、2012年11月21日中台異字第980144号商標異議審決書を以って係争商標を取り消す処分を行うべきだと認定した。原告はこれを不服として訴願を提起したが、訴願機関に棄却された。原告はなお不服として、本裁判所に行政訴訟を提起した。本裁判所は、本件訴訟の判決結果により訴願決定及び原処分が取り消された場合、参加人の権利又は法律上の利益に影響を与えると判断し、職権により本件被告の訴訟に参加人が独立参加することを命じた。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告:訴願決定と原処分を取り消す。
(二)被告:原告の請求を棄却する。

三 本件の争点
係争商標は改正前商標法第23条第1項第13号、及び現行商標法第30条第1項第10号(商標が同一又は類似の商品又は役務について他人が登録している商標又は他人が先に出願している商標と同一又は類似のもので、関連消費者に混同誤認を生じさせるおそれがあるときは、登録することができないと、改正前商標法第23条第1項第13号本文と現行商標法第30条第1項第10号本文のいずれにも明記されている)に違反し、登録を許可すべきではない事由が有るか否か。
(一)原告主張の理由:省略。
(二)被告答弁の理由:省略。

四 判決理由の要約
(一)誤認混同のおそれの有無に関する判断:いわゆる「関連消費者に誤認混同を生じさせるおそれ」とは、両商標が同一又は類似を構成しているため、同一又は類似の商品又は役務の関連消費者が同一商標であると誤認するもの、又は同一商標であるとは誤認するには至らないが両商標の商品/役務が同一の出所からのシリーズ商品/役務であると誤認する可能性が極めて高いもの、又は両商標の使用者の間に関連企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在すると誤認させるものをいう。つまり、商標に、関連消費者が商標の表彰される商品又は役務の出所又は生産する主体に対して誤認混同を生じさせるおそれがあることを指す(最高行政裁判所98年度判字第455号判決を参照)。このため、本裁判所は係争商標と引用商標との間に誤認混同のおそれが有るか否かを判断するにあたり、関連の要素を参考とし、認定基準を次のようにした。

1.商標識別力の強弱:
商標の識別力の強弱は創造的商標、恣意的商標、暗示的商標、記述的商標及び普通名称商標の順となっている。識別力と誤認混同は反比例の関係にあり、商標の識別力が強いほど、関連消費者の商品又は役務に対する印象が強くなり、他人が少しでも他商標の知名度を利用しようとすると、関連消費者に誤認混同を生じさせる可能性がある。
(1)引用商標は創造的商標である:
引用商標の図案はラテン語であり、元来は「私は回る」を意味し、その字義はわが国の消費者に広く知悉されていない。その商標の図案は「VOLVO」という5つのアルファベットが組み合わされて構成され、よく見かけるアルファベットの形態ではなく、これを以って商標とし商品又は役務を指定している。(該商標は)指定商品又は指定役務とは関連性がなく、また一般大衆が知悉している普通名称でもない。それは独自の文字で、わざとデザインされた商標図案であり、独創性を具備する創造的商標である。
(2)係争商標は創造的商標である:
商標の図案「LOVOL」は5文字のアルファベットから構成され、該アルファベットの組合せは自ら創作したもので、一般大衆に広く知られている普通名称ではなく、これを以て商標とし商品又は役務を指定している。(該商標は)指定商品又は指定役務とは関連性がなく、創造的商標である。

2.商標の類否及びその類似性の程度:
両商標が見る者に与える全体的印象には似ているところがある。それらが同一又は類似の商品又は役務に標示されたとき、通常の知識経験を有する関連消費者が購買時に通常の注意を払ったとき、両商品又は役務が同一の出所からのもの又は異なる出所に関連があるものであると誤認混同させるおそれがある。そこで、本裁判所は両商標に関する類否とその類似性の程度を次の通り検討した。
(1)二商標の図案の外観は高度に類似している:
両者の外国語はいずれも5文字のアルファベットで構成され、さらには「V、O、L」という同じアルファベットが場所を入れ替えられており、両商標の全体の外観は対称性があり、見る者にはほぼ同じ印象を与える。係争商標は同じ「L、O、V」の組合せであることに加えて、同様にアルファベット「O」を2文字含んでおり、係争商標の5文字のアルファベットのうち、4文字は引用商標と同じであり、とくに子音と母音「O」との排列方法によって全体の外観は対称性を呈し、見る者にほぼ同じ印象を与え、外観の高度な類似を構成している。
(2)二商標の図案の称呼は高度に類似している:
係争商標と引用商標はいずれも2つの音節から構成され、2音節の発音も極めて似ているため、時間と場所を異にして隔離的に観察すると、又は取引する時に一連に称呼すると、同一又はシリーズの商標であると連想させやすいため、両者が称呼の類似する商標であると証明するに足る。
(3)二商標の類似の程度は極めて高い:
全体の商標図案をみると、関連消費者は二商標の図案に使用される文字がほぼ同じ印象を与え、二商標の観念が高度に類似していると理解できるため、二商標の称呼、外観及び観念等の要素の判断において、いずれも見る者にほぼ同じ印象を与え、高度に類似する商標である。通常の知識経験を有する関連消費者が購買時に通常の注意を払ったとき、二商標は同一の商標である、又は二商標の指定商品の出所が同一若しくは関連していると連想させるため、関連消費者にその商品が引用商標と同じ製造元からのもの、又は(二商標の使用者の間に)関連企業、使用許諾、加盟の関係が存在するものと誤認させ、誤認混同を生じさせるおそれがある。よって類似の商標であり、類似の程度は極めて高い。
(4)原告は、係争商標が自動車等の商品に使用することを指定しており、その単価は高く、消費者(需要者)の多くは専門家であり、購入時に比較的高い注意を払うと主張しているが、係争商標と引用商標の類似の程度が極めて高く、たとえ類似を判断する基準が日用品よりも高いとしても、二商標は類似を構成している。況してや自動車は日常生活における輸送機械であり、消費者は必ずしも専門家ではなく、二商標の類似の程度が通常の潜在的消費者に誤認混同を生じさせるかどうかを考慮すべきであり、原告のこの主張は採用することはできない。
(5)商標の類似の有無は商標の図案が客観的に示すものを根拠とする:
原告は係争商標の設計には意味がある云々と主張しているが、係争商標の設計理念は関連消費者が商標図案の外観から知りうるものではなく、商標の類似の有無の判断は、商標の図案が客観的に示すものを根拠とすべきであり、原告又は設計者の主観的な心理的要素には係わらない。

3.商品の類否及びその類似性の程度:
いわゆる商品の類似とは、商品が消費者の需要を満足する上で、及び商品の提供者又はその他の要素において、共通又は関連する点があり、商品に同一又は類似の商標を使用したとき、一般的な社会通念及び市場での取引状況に基づき、通常の商品を受け取る者にその出所が同一である、又は異なるが関連があると容易に誤認させることをいう。本裁判所はここで二商標の指定商品について類否とその類似性の程度を次の通り検討した。
(1)二商標の指定商品の類型:
係争商標は自動車、農業機械、二輪自動車、操重車、小型動力車、自転車、電気自動車、電気二輪自動車、電動自転車、陸用車両発動機、フォークリフト、コンクリートミキサー車、トラクター(運輸用)、トラック等の商品での使用を指定している。一方、引用商標は各種航空機、船舶、自動車、バス、トラック、トラクター、ダンプカー及びその他部品・部材等の商品での使用を指定している。
(2)二商標の指定商品の類似性は高い:
両商標の指定商品はいずれも自動車等の輸送機械であり、一般的な社会通念及び市場での取引状況に基づいて同一である又は相当な程度の類似関係が存在する商品である。よって、関連消費者にそれが同一の出所のもの、又は相当な関連性を有するものと容易に誤認させてしまう。

4.先権利者の多角化経営の状況:
引用商標の出願と登録はいずれも係争商標より先に行われたため、参加人が先権利者である。参加人は引用商標を多くの区分の商品と役務に使用しており、長期にわたりわが国の市場で幅広くマーケティングを行い、自動車、トラック、バス、トラクター等の商品及び関連の保守サービスに使用している。さらに参加人は“Volvo”Car Corporation及びその他の「Volvo」グループ内の関連企業への使用許諾を行っており、引用商標の使用範囲は広く、自動車、トラック、バス、建築機械、モーターボート及び工業用エンジン、航空及び宇宙設備から、分割ローン等の関連する金融サービスまでに及んでいる。よって、参加人は引用商標権利者であり、多角化経営に力を入れている事実があると認めることができる。

5.実際の誤認混同の状況:
調べたところ、原告は台湾地区で係争商標を関連役務に実際には使用しておらず、提出された使用の証拠は中国地区における係争商標の使用を説明できるにすぎず、台湾の関連消費者の係争商標に対する熟知度を証明することはできない。さらに原告の被許諾者00000000はそのサイトにおいて「LOVOL」を「VOLVO」と明らかに誤植している(本裁判所ファイル第170 頁を参照)。これにより、係争商標は引用商標と高度に類似し、関連消費者に誤認混同を生じさせた事実がある。

6.関連消費者の商標に対する熟知度:
関連消費者が対抗する二商標のうち一方のみを熟知しているならば、より熟知されている商標により大きな保護を付与すべきである。関連消費者の商標に対する熟知度は該商標使用の広さに関連する。原則的に熟知度は主張する者が使用の事実証拠を以って証明すべきである。本裁判所はここで関連消費者の二商標に対する熟知度を次の通り検討した。
(1)引用商標は台湾地区の関連消費者に熟知されている:
引用商標「VOLVO」は長期にわたりわが国市場で幅広くマーケティングが行われ、自動車、トラック、バス、トラクター等商品と関連する保守サービスに使用されてきたため、すでに著名商標の域に達しており、関連消費者に強い印象を与え、強い識別力を有すると認定すべきである。
参加人は積極的に引用商標「VOLVO」の自動車、トラック等商品及び関連役務の販促を行い、すでに30年以上が経過している。その間に「VOLVO製造元が台湾市場で直営、台湾富豪汽車を設立」、「スウェーデンの国宝Volvoが 卒寿、自動車業界の歴史を見届けてきた」、「サービス品質を向上、Volvoトラック及びバス中壢サービスセンターが正式オープン」、「VOLVO總代理店の太古汽車が台湾市場開拓30周年!今後も『品質、安全、エコ』の高い目標を追求」等のマスコミによる報道が行われた。引用商標の知名度については、被告の2001年11月7日中台異字第G00901217号商標異議審決書において著名商標と認定されている。引用商標は自動車、トラック、トラクター等の商品及び関連の保守サービスに使用され、わが国の関連する事業又は消費者が普遍的に認知でき、著名商標の域に達している。
(2)引用商標はより大きな保護を受けるべきである:
原告は、係争商標がすでに中国大陸地区と世界各地で大量に使用され、広くマーケティングや広告が行われ、関連消費者がすでにその出所を熟知している中国大陸地区の著名商標であり、引用商標と誤認混同を生じるおそれはない云々と主張している。ただし調べたところ、次の通りであった。
本裁判所が原告の提出した証拠資料を総合的に見たところ、係争商標の商品はすでに中国大陸又は外国地区で販売、使用されており、さらに2003年には台湾企業と販売契約を結んだ事実があるが、契約は2件のみで、取引量は極めて少ない。
原告は2001年6月26日付の東森新聞(ニュース)の静止画面写真2枚(異議申立ファイルの答弁書添付文書46、異議申立ファイル第331頁を参照)を提出し、ニュース画面には係争商標の外国語が標示されているショベルカーが映し出されている。しかしながらその文字の説明をみると、それは重いものが機敏になり、ショベルカーのドリフトが絶妙の域に達する等を意味しており、単に中国大陸地区で発生した事を報道しているにすぎず、係争商標の商品を台湾で宣伝する広告ではない。よって、原告が提出した関連する事実証拠は係争商標が台湾の関連消費者に熟知されていることを証明できない。引用商標は新聞、テレビ及び雑誌等の報道やマーケティングによって、台湾の関連消費者に熟知される商標になっており、参加人による引用商標の継続使用と関連消費者の利益の保護に基づき、より大きな保護を与えるべきである。

7.販売方法及び販売場所:
調べたところ、係争商標と引用商標の指定商品の範囲は、商品又は役務の類似を検索した参考資料表、社会の一般通念のいずれに基づいても、同一又は類似の商品又は役務である。二商標の指定する商品又は役務は、実体の店舗で販売又は提供されている以外に、インターネットを通じて販売又は受注も行われている。よって、二商標が指定する商品の取引(販売)方法及び販売場所は、高度に重複している。

8.商標出願人の主観的意図: 
関連消費者によるその出所の誤認混同を生じさせる可能性があると明らかに知っていながら、さらには関連消費者によるその出所の誤認混同を意図して商標登録を出願したならば、その出願は善意ではなく、保護を受けるべきではない。
(1)係争商標の出願人は善意ではない:
原告の事前従犯である000000000000公司は元来「LEIWO」という「雷沃」の英訳を「LOVOL」に変更し、その間には関連性はない。
(2)係争商標の出願人には引用商標の知名度を利用しようとする動機がある:
二商標の図案は外観、観念及び称呼等の要素についてすべて高度に類似しており、係争商標の「LOVOL」そのものには言語的意味を含まない。原告の事前従犯は「雷沃」の英訳である「LEIWO」を使用せず、引用商標に極めて類似している「LOVOL」を使用しており、主観的に僥倖を頼もうとし、引用商標「VOLVO」を模倣する意思があったと認定するに足る。原告の被許諾者もまたかつてホームページで「LOVOL」を「VOLVO」に誤植したことがあり、実際に誤認混同があったと推認できる。原告による係争商標「LOVOL」の登録出願と実際の使用はいずれも引用商標の知名度に便乗、利用しようとする動機があると判断でき、原告による係争商標の登録出願は保護という正当な利益を受けることはできない。

9.その他の誤認混同に関する要素:
(1)商標審査制度:
商標異議申立制度は商標主務機関が出願段階における審査不足を補い、審査の適法性を見直すために設計された公衆審査制度である。ゆえに原告が登録許可を受けた後、他人の商標と誤認混同するおそれ等の状況が絶対に無いとはいいきれない。よって、被告は異議申立の審理過程において法に基づき原告と参加人が主張する事実証拠を再度審理し、係争商標の登録出願時に行った審査の拘束を受けるものではない。
(2)商標個別審査原則:
商標登録出願を許可するか否か又は異議申立を成立させるか否かは、商標個別審査原則を採用し、それぞれの具体的事案について合法性と適正性を審理して、被告はそれぞれ個別の事案をみて正確に事実と法律の適用を認定すべきであり、他の事案の拘束を受けるものではない。原告はその他に登録第01325858、01346333、01324756号「LOVOL及び図」商標があり、いずれも登録から現時点まで異議申立を受けていないと主張しているが、これらの登録商標と係争商標は全く同じではなく、それは別案件の問題であり、ここに引用して比べることはできない
(3)属地主義と独立保護原則:
原告は、係争商標は2006年から米国、EU、カナダ、日本等200余りの国と地域で登録出願を行っており、現時点ですでに数十の国と地域で登録されており、出願過程において、参加人からの意義申立を受けたが、中国大陸地区、米国、EU、カナダ等の国や地域の商標主務官庁又は裁判所はいずれも、二商標は類似していない、又は関連消費者の誤認混同を生じさせるおそれはないと認定している云々と主張している。しかしながら調べたところ次の通りであった。
原告は以前EU、英国、米国及び日本等の国で「LOVLO」商標の登録を出願しているが、各国の法制度は同じではなく、審査基準も異なり、台湾商標制度は属地主義を原則としており、商標の類否、誤認混同のおそれの有無は台湾の関連消費者の認知を基準とすべきである。
原告は中国大陸地区と外国での出願、異議申立、判決を引用し、係争商標は関連消費者の誤認混同を生じさせるおそれはない云々と主張している。しかしながら商標には属地性があり、各国の法制度、市場取引習慣及び審査基準が同じではないため、商標の出願又は取消は対比する商標、指定商品又は役務の本件との類否、各国の法令と誤認混同の審査基準、使用言語、市場状況、消費者の認知、使用の証拠等複雑な要素が関連しており、中国大陸や外国の審査結果を一面的に引用して比べ、原告にとって有利な根拠とすることはできない。

(二)以上をまとめると、本裁判所は引用商標の識別力が強い、係争商標と引用商標の類似の程度が高い、二商標は同一又は高度に類似する役務での使用が指定されている、引用商標権者に経営の多角化がみられる、二商標には実際に誤認混同の状況がみられる、引用商標の方が関連消費者により熟知されている、二商標の販売方法と販売場所は同じである又は類似している、係争商標の出願人は善意ではない、商標審査制度、商標個別審査原則、属地主義と独立保護原則等の要素を総合的に判断し、関連消費者が両商標の商品が同一の出所からのシリーズ商品であると誤認する、又は両商標の使用者の間に関連企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在すると誤認する可能性が極めて高いと認め、係争商標の登録は改正前商標法第23条第1項第13号規定と現行商標法第30条第1項第10号を適用すべきである。よって登録を取り消すべきと審決した原処分には根拠があり、(原処分を)維持するとする訴願決定も誤りはないといえる。原告が以前からの主張に徒にこだわり、原処分及び訴願決定の取消を請求することは理由がないため、これを棄却すべきである。

2013年12月25日
知的財産裁判所第一法廷
裁判長 李得灶
裁判官 林秀圓
裁判官 欧陽漢菁
2013年12月27日
書記官 葉倩如

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