御茶の争い、二審判決で維他露が再度商標権を奪回

2015-02-24 2013年
■ 判決分類:商標権

I 御茶の争い、二審判決で維他露が再度商標権を奪回

■ ハイライト
 「御茶園」は維他露が製造、販売する著名な茶飲料であり、2001年に商標登録を出願した。「御茶醸」醬油は佳格が製造、販売する高級な醤油であり、2007年に商標を取得した。
 一審の際に、維他露は、「御茶醸」が醤油商品であっても、「御茶園」商標との類似性が高いので、同一シリーズの商標であると消費者に誤認混同を生じさせると主張した。
 これに対して、佳格は、醸と園の文字外観が全く異なっているほか、醬油とお茶は異なる生活必需品であり、その使用方法も異なり、全く違う商品であるとした。また、消費者に誤認混同を生じさせないために、既に「御茶醸」を「醬油、調味品」二項目だけの使用に減縮しているうえ、もともと経済部知財局により「御茶醸」商標が査定され、合法的に当該商標を五年間以上使用してきているとのことであった。
 知的財産裁判所第一審裁判官林靜雯は、両商標が類似を構成しているので、確かに消費者に誤認混同を生じさせると認定したほか、佳格が再度「御茶醸」を商品又は広告に使用することを禁止した。
 知的財産裁判所二審合議法廷では、「御茶醸」と「御茶園」商標の類似性が高いので、消費者に誤認混同を生じさせると同じく認定し、佳格による上訴を棄却した。しかし、維他露が更に一歩進んで、商標権を侵害し得る佳格の行為を差し止めるよう請求したのに対して、裁判官は佳格が既に侵害行為を中止したので、維他露が「侵害の防止」を請求する必要がなくなったと認定し、維他露によるこの上訴請求を棄却した。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】102年度民商上字第12号
【裁判期日】2013年12月26日
【裁判事由】商標権侵害行為の排除

上訴人即ち被上訴人 維他露食品股份有限公司
被上訴人即ち上訴人 佳格食品股份有限公司

上記当事者間における商標権侵害行為の排除事件につき、両方当事者が、2013年2月26日に知的財産裁判所101年度民商訴字第29号第一審判決に対して、上訴を提起したので、本裁判所は2013年12月12日に口頭弁論を終結し、次のとおり判決する。

主文
両方当事者の上訴を共に棄却する。
第二審訴訟費用は両方当事者がそれぞれ負担する。

一 事実要約
維他露公司は「御茶園」商標(即ち係争商標)を出願登録し、2001年より使用し、且つその他の文字、図形と組み合せて、次々と知的財産局から登録査定を受け、幅広くドリンク、食品、レストラン、旅館、ホットコールドドリンク店、飲食店、軽食店、鍋料理店、カフェ、ビヤホール、バー、ホテル、セルフサービスレストラン等指定商品又は指定役務に使用している。
佳格公司による「御茶醸」商標について、知的財産局は2012年3月28日に(101)智商40189字第10180157260号無効審判審決書をもって、その登録を無効とする審決を下し、それは経済部により維持された。これに対して、佳格公司が行政訴訟を提起し、本裁判所が佳格公司の敗訴とする判決を下したのに対して、佳格公司は上訴を提起したが、最高行政裁判所による102年度裁字第465号決定により棄却された。
佳格公司は知的財産局によりその商標無効の審決が下された後、行政訴訟の確定前に、なおも引き続き「御茶醸」商標を醤油商品に使用し、製造していたほか、市場への出荷を続けていた。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告による上訴の請求:
(1)原判決での維他露公司にとって不利な部分を破棄する。
(2)前記廃棄部分について:佳格公司は、維他露公司が有している原審判決付表(二)に示す通りの「御茶園」シリーズ商標と同一又は類似する文字又は図形を醤油商品又はそれに類似するその他の調味料商品包装、容器又はその役務提供に関する物品に使用したり、前記商品を所持、陳列、販売、輸出又は輸入したりしてはならない。また維他露公司が有している原審判決付表(二)(原証1号)に示す通りの「御茶園」シリーズ商標と同一又は類似する文字又は図形を醤油又はそれに類似するその他の調味料商品又は役務と関わりのあるビジネス書類若しくは広告、又はデジタル動画、電子媒体、ネット若しくはその他の媒介物に使用してはならない。
(3)原審訴訟費用は佳格公司の負担とし、且つ(1)佳格公司による上訴を棄却する。(2)第一審及び第二審訴訟費用は共に佳格公司の負担とすることを答弁の趣旨とする。

(二)被告による上訴の請求:
(1)原判決での佳格公司にとって不利な部分を破棄する。
(2)前記破棄部分の維他露公司による第一審の訴えを棄却し、且つ維他露公司による上訴を棄却することを答弁の趣旨とする。
(3)第一、二審費用は維他露公司の負担とする。

三 本件の争点
(一)維他露公司による係争商標は著名商標であるか?
(二)佳格公司が「御茶醸」商標を使用したことにより、著名な「御茶園」係争商標の識別性又は信用・名声が減損したか?
(三)佳格公司は醤油商品に使用してきた「御茶醸」商標は、維他露公司が飲食物の提供サービスに使用していた係争商標との類似性が高いので、消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるか?

四 判決理由の要約
(一)佳格公司は「御茶醸」商標を使用したことにより、維他露公司による係争商標の原審判決付表(一)に示す部分の商標権を侵害した。
(1)係争商標の原審判決付表(一)に示す通りの部分が著名商標に該当する。
著名商標の認定については、識別性の程度、関連事業者又は消費者による商標の熟知又は認識程度、商標使用期間、範囲及び地域、商標の推進期間、範囲及び地域、商標登録、出願期間、範囲及び地域、商標がその権利行使に成功した記録(特に行政又は司法機関により著名であると認定された場合)、商標の価値等要素を総合的に判断しなければならない。
商標法第30条第1項第11号にいう著名とは、当該商標又は標章が既に関連事業者又は消費者に広く認識されると認定するに足りる客観的な証拠があることを指すことは、商標法施行細則第31条に明文で規定されている。また、同号にいう著名商標に該当するか否かの認定時点については、商標法第30条第2項により商標出願の時点で、つまり商標登録を出願するにあたり、市場において同一又は類似している他の著名商標が存在するか否かにより判断するべきである。
本件の佳格公司による「御茶醸」商標は2006年7月28日に登録出願し、2007年4月1日に公告されたので、係争商標の原審判決付表(一)に示す通りの部分が、著名商標に該当するか否かを判断したうえで、佳格公司による「御茶醸」商標侵害時点を2006年7月28日前とすべきであると認定するに足りる。
調べたところ、維他露公司が2001年より、毎年各テレビ局及び平面媒体において「御茶園」茶飲料シリーズ商品の広告を掲載し、且つ数多くの芸能人をイメージキャラクターとして「御茶園」茶飲料シリーズ商品を広告したことは、維他露公司が別件の本院99年度行商訴字第242号商標無効審判行政訴訟事件において無効審判の請求時に「御茶園」シリーズ商品の広告資料、商品広告量及び広告光ディスク等がファイルに付されていたので裏付けることができる。また、本裁判所99年度行商訴字第242号は、審理時に維他露公司が提出した広告量統計、広告資料、市場占有率、ブランドイメージ調査等の資料を証拠として提出したので、維他露公司による「御茶園」商標のシリーズ商品は市場に相当の知名度があると認定するに足りるとしている。
更に管理雑誌が行った2007年台湾消費者ブランドイメージ調査の資料によれば、「御茶園」シリーズ商品は、2006年及び2007年の第二位にランキングされたので、その茶飲料商品が表彰する信用・名声及び品質は、台湾における関連事業者又は消費者に熟知され、著名の程度に達しており、著名商標に該当するはずであると証明するに足りる。

(2)佳格公司は係争商標の原審判決付表(一)に示す通りの部分が、維他露公司の著名商標に該当することを明らかに知っていた。
維他露公司は早くも2001年頃から係争商標を使用しており、且つ前述の通り、維他露公司が長年にわたり販売促進を行って、関連事業者、消費者に広く認識されているうえ、佳格公司も調味料、飲食物の供給業務に従事しており、「御茶園」商標を知らないと言い逃れることはできない。

(3)係争商標の原審判決付表(一)に示す部分の識別性が減損した状況について:
商標は特定商品又は役務の出所を識別し、且つ他人の商品又は役務を区別できる重要な機能を有している。また、同法第70条第1号にいう著名商標の識別性減損とは、第三者が著名商標の権利者による同意を得ないで、無断で当該著名商標の中の文字を自己の商標とし、商品の出所を表彰することにより、著名商標がもとより、商品又は役務の単一且つ特定の出所を強く識別する特徴及びイメージを弱め、当該商標が複数の出所に由来すると推定されることにより、著名商標の識別性を希薄化又は薄弱化させることを言う。
著名商標の保護は、当該商標の表彰する識別性及び信用・名声が関連事業者又は消費者に広く認識されていることに重点を置くので、商品又は役務が類似しているか否かは重点ではない。しかし、過保護を避けるために、なおも関連大衆に誤認混同を生じさせるおそれがあるか、又は著名商標若しくは標章の識別性又は信用・名声を減損させるおそれがあることを要件としなければならない。
本件では、原審判決付表(一)に示す通りの係争商標を使用している茶飲料だけが著名商標に該当するが、茶飲料は佳格公司による「御茶醸」商標の醬油指定商品とは、ともに飲食物と関わりがあり、それに関連する消費者の多くが重なっているほか、佳格公司による「御茶醸」商標と「御茶園」は一文字の差異だけで類似しているので、係争商標を使用している飲食商品の関連消費者に、両商標が同一の出所に由来するシリーズ商品、役務であるとの誤認混同を生じさせるか、又は両商標を使用している者に関係企業、許諾関係、加盟関係又はそれに類似する関係があると誤認させるので、商標法第70条第1号が適用されるべきである。また、あやかる意図はなくても、客観的になおも消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるので、著名商標の著名性により、不当に利益を受ける可能性があるものにも適用される。佳格公司から提出された資料はすべて佳格公司「御茶醸」商標の登録後に使用した証拠であり、これをもって佳格公司による「御茶醸」商標がその出願時に原審判決付表(一)に示す通りの係争商標と併存していることにより、関連消費者に誤認混同を生じさせるおそれがないと証明することはできない。佳格公司は「御茶醸」商標と「得意的一天」を併用していると強調したが、実際に商品の醤油瓶パッケージを見れば、縦書きの「御茶醸」文字がなおも商品の最も目立ったところにあり、「得意的一天」はむしろその上にあって、フォントも小さいので、目立っていない。それ故、「御茶醸」商標が、「得意的一天」と併用していることをもって、原審判決付表(一)に示す通りの係争商標と誤認混同を生じさせないとした佳格公司の抗弁は、採用に足りぬものである。

佳格公司は確かに台湾で「御茶醸」商標を使用しており、且つそれを商品又はその包装容器に使用している行為があったので、関連事業者、消費者も佳格公司による「御茶醸」商標の主要部分である「御茶」を十分に知っており、その販売している製品と連想させたことにより、原審判決付表(一)に示す通りの係争商標の中の著名商標のもとより維他露公司の単一出所を識別する機能を弱め、複数の出所に変更したことにより、原審判決付表(一)に示す通りの係争商標の識別性を弱めることにつながった。

(4)維他露公司による侵害の排除及び防止の請求部分:
侵害の排除及び防止の請求権は、侵害又は侵害のおそれがある事実が発生しただけで、主張することができる。つまり、主観的な責任の帰属要素を酌量せず、侵害者による故意又は過失を要件としないので、商標権が侵害されたか否かを問わない。
侵害排除の請求権は、侵害停止又は危険消滅の時に消滅する。それは、現在及び将来の侵害を対象とし、侵害又は危険が存在するだけで、商標権者が侵害者に侵害の排除及び防止の請求権を行使することができるので、時効消滅が適用されないからである。これに準じて、仮に被疑侵害者が確かに権利者の係争商標を侵害するおそれがあると証明するに足りる事実、つまり被疑侵害者に、係争商標を侵害する危険があれば、前記最高裁判所の判決趣旨に基づき、商標権者は商標法第69条第1項後段の規定により防止を請求することができる。
佳格公司が、2013年4月11日に最高行政裁判所により102年度裁字第465号決定でもって、上訴を棄却された後、「御茶醸」商標の使用を中止し、その侵害状況が存在しなくなったので、維他露公司が商標法第69条第1項前段の侵害排除の規定により、佳格公司に「御茶」をその商標名称の主要部分とする商標の使用行為があってはならないと請求したことには理由がない。

(二)維他露公司による上訴部分について:
維他露公司が商標法第69条第1項後段の規定により侵害防止を請求したことは、もともと佳格公司に主観的に侵害の故意又は過失があるか否かと関わりがない。しかし、調べたところ、佳格公司は既に最高行政裁判所による102年4月11日付102年度裁字第465号決定を受領した後、「御茶醸」商標の使用を中止した。よって、知的財産局が2013年6月16日に佳格による「御茶醸」商標の無効を公告したことにより、当該商標がはじめから無効となったとき、佳格公司に確かに侵害行為がなくなり、原審判決書付表(二)に示す通りの係争商標を侵害する行為が最初からなかったことになったので、更に侵害の故意又は過失があるとは言えない。それ故、維他露公司の商標法第69条第1項後段の規定による侵害の防止請求には根拠がない。

以上を総じると、両方当事者による上訴は何れも理由がないので、知的財産案件審理法第1条、民事訴訟法第449条第1項、第78条により、主文の通り判決する。

2013年12月26日
知的財産裁判所第二法廷
審判長裁判官 陳忠行
裁判官    林洲富
裁判官    曾啓謀
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