「台船」の旧社名「中船」奪回に勝訴判決

2015-01-29 2013年
■ 判決分類:商標権

I 「台船」の旧社名「中船」奪回に勝訴判決

■ ハイライト
台湾が世界に誇る造船会社「台湾国際造船公司」(以下「台船」)は2007年8月に「中国造船」の商標を登録していたが、2009年2月台船で長年董事(取締役)を務めた許○堅が「中国造船公司」を設立する事件が発生し、台船は「中国造船」商標の侵害にあたると主張していた。知的財産裁判所は先日、許○堅に「中国造船」を社名に使用してはならないとの判決を下した。
台船の旧名は「中国造船公司」であり、2007年政府が実施した「正名(名称の本土化)」に応えて、「台湾国際造船公司」と改名した。台船が登録した商標は元来「中国造船」であり、許○堅が設立を申請した「中国造船公司」に対して台船は自社の商標を侵害されているとして訴訟を提起した。知的財産裁判所は、「中国造船」が「台湾国際造船」によって長年にわたり使用された著名商標であることを許○堅は明らかに知りながら、該名を社名として登記したことは確かに視覚的、聴覚的に混同を招くと認定し、許○堅に「中国造船」を社名として使用してはならないとの判決を下した。
判決が下された後、知的財産裁判所は許○堅に対して新聞第一面に連続3日間判決の主要部分を掲載するよう命じた。全件はさらに上訴することができる。【自由時報2013年12月30日】

II 判決内容の要約

知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】102年度民商訴字第22号
【裁判期日】2013年12月16日
【裁判事由】商標権侵害行為の排除等

原告 台湾国際造船股份有限公司
被告 中国造船股份有限公司

上記当事者間における商標権侵害行為の排除事件について、本裁判所は2013年11月18日に口頭弁論を終え、以下のように判決を下すものである。

主文
被告は「中国造船」と同一又は近似する文字をその社名の主要部分に使用してはならず、「中国造船」と同一又は近似する文字を含まない名称に社名の変更登記を行わなければならない。
被告は連帯で費用を負担し、本件判決書の裁判番号、当事者、裁判事由及び主文全文を蘋果日報(高さ11.4cm×幅4.4cmの紙面)、聯合報(高さ13.8cm×幅4.95cmの紙面)及び自由時報(高さ4.5cm×幅9.2cmの紙面)の全国版第一面にそれぞれ3日連続で掲載しなければならない。
訴訟費用は被告が負担する。

一 事実要約
原告の旧社名は「中国造船股份有限公司」である。原告は民営化以前、誰もが知る著名な国営企業で、2007年に政府による「正名(名称の本土化)」を国営企業から始めるという政策に応えて、2007年3月1日原告の株主総会で「中国造船股份有限公司」から「台湾国際造船股份有限公司」への改名が承認され、2008年12月に株式が上場されて、無事に民営化が完了した。
原告は2007年3月1日に株主総会で社名変更が可決されたが、原告は長年にわたって「中国造船」を会社の名称としており、原告の経営、宣伝及び販売によって「中国造船」の名称は原告を代表し、指し示す著名商標となっている。
被告の許○堅は「中国造船」商標が原告の著名商標であり、且つ改名前の会社名称であり、原告にとって30年の歴史を持つ看板(商標、商号、標識)であると明らかに知りながら、2009年2月9日に原告がすでに登録している係争の中国造船商標を使用し、被告の「中国造船股份有限公司」設立を申請した。

二 両方当事者の請求内容
原告の請求:主文に示す通り。
被告の請求:原告の請求を棄却する。

三 本件の争点
(一)係争の「中国造船」商標は著名商標であるか否か。
(二)原告が2007年に改名した後、係争商標は再び使用されていたか否か。
(三)被告による中国造船股份有限公司の登記は商標法第70条第2号規定事由に該当するか否か。
(四)原告が被告に対して「中国造船」の名称を使用しないこと、及び(判決文を)新聞に掲載することを請求するのに理由が有るか否か。

四 判決理由の要約
(一)係争の「中国造船」商標は著名商標であるか否か:
原告は1973年に政府の「十大建設」政策に合わせて設立され、その造船の実績は誰もが知る所であり、台湾における唯一の巨大造船会社であり、「中国造船」と聞けば原告を連想するため、原告は関連する事業や消費者が普遍的に認知する企業であり、原告の係争商標「中国造船」は著名商標に属する。
本件の原告はその旧社名である「中国造船」の商標登録を出願しており、これは原告の全職員が造船業界において長年にわたり築いてきた名声によるもので、一朝一夕に成就できるものではない。該商標を取得する目的は原告が造船業界における長年の信用と名声を保有するためであり、その他の企業主体と区別するためではない。政府の政策転換により原告は社名を変更するよう要求され、原告は致し方なく受け入れた。ただし、原告が長年にわたり国内外の造船業界で築いてきた名声は原告にとって重要な資産であるため、2008年4月16日から係争商標を次々と取得し、商標権の独占使用に対する効力を得ており、社名変更により影響を受けることはない。

(二)原告が2007年に改名した後、係争商標は再び使用されていたか否か:
原告は中国語名を変更しているが、英語名はなお「China Shipbuilding」を使用しており、これは元来使用していた「CSBC」に等しい。また原告が発行する雑誌「台湾国際造船月刊」の表紙には毎期とも「CSBC/中船/中国造船/台船/台湾造船/台湾国際造船」を使用して、その歴史を伝承しており、その中に係争商標「中国造船」も含まれている。上記事実証拠に基づき、原告は商品とサービスの販売を目的として、係争商標「中国造船」をサイトのページ、サイト上に掲載される動画、原告が対外的に宣伝するDVD、対外的な英文での通知、雑誌等による原告会社の紹介、商品カタログ、原告の造船設備及び作業管理における競争力を述べるビジネス文書と広告に標示することは、前出商業法第5条に定める商標使用の行為に該当する。

(三)被告による「中国造船」名義での会社登記は係争商標を侵害するか否か:
商標法第70条第2号規定によると、著名商標権者は「(商標権侵害者が他人の)著名商標を自らの会社を表す名称としていること」を証明する証拠を提出するだけで、「関連消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある」又は「当該商標の識別力又は信用・名声を減損(希釈)する」等の(侵害の)要件を満たすことができる。公司法(会社法)で定められる会社の名称の登記は、名称が既存の同類業務の会社と完全に同じでなければ行うことができ、単純な形式の対比である。これは商標法の立法趣旨が公正競争の維持であり、消費者にそれが表彰する商品又は役務の出所とトレードドレスを認知させるという目的とは異なる。したがって、著名商標の中英名称を社名として会社登記するときは、商標法法理に基づきそれが公衆に誤認混同させるおそれ(これは公衆に当該標示や当該商標に対して連想させるおそれも含まれる)がある否かを決定すべきである。
被告の許○堅は原告の董事(取締役に相当)を務めたことがあり、「中国造船」の名義で知的財産局へ商標登録を出願したこともある。それは「中国造船」の名義で会社設立を申請しており、「中国造船」が原告の登録した商標であり、知的財産許局が著名商標と認定していることを知っている。
さらに、被告の許○堅が運輸業界関係者の集まる公の場において、「中国造船股份有限公司董事長許○堅」名義の賀聯(祝賀の対句)を用いて混同を生じさせたため、原告はその商業上の信用を減損されたとして2012年6月13日被告に警告書を送った。被告は「中国造船」の名義で会社設立を許可された後、米国のPORTER HEDGES LLP 法律事務所に委託して2013年1月30日原告に書簡を送り、原告による米国での名称「CSBC」の使用は、被告と関連、結合があることを想起させると指摘した。これからもまた被告による「中国造船」、「China Ship Building」名義での会社登記が関連する者に原告の係争商標と誤認混同させる可能性があると証明できる。
被告の許○堅は、「中国造船」は原告が長年経営していたもので、著名商標であることを明らかに知りながら、この名義を以って会社設立登記を行った。これは、関連する事業又は消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあり、原告の係争商標の権利が侵害されたとみなすことができ、原告が被告に除去を請求することには根拠がある。

(四)原告が被告に連帯で新聞に判決文を掲載するよう請求することに理由が有るか否か:
被告は係争商標「中国造船」の名義で会社設立の登記を行い、船舶業界関係者や一般大衆に被告の中国造船股份有限公司が原告と関連があると誤認させた。原告の業務上の信用を回復するため、被告が連帯で費用を負担し、本件民事確定判決書の裁判番号、当事者、裁判事由及び主文(全文)を蘋果日報、聯合報、自由時報の新聞にそれぞれ3日連続で掲載するよう命じる判決を請求することは必要なものである。況してや許○堅は原告の董事を務めたことがあり、以前「中国造船」商標を出願して知的財産局から拒絶査定を受けており、その利害関係をより一層理解したはずであり、なお「中国造船股份有限公司」の名称で会社登記を申請したことは善意とはいえず、よって原告が前記規定に基づき、人々の認識を正すために本判決を新聞に掲載するよう請求したことは、法に合わないところはない。

以上をまとめると、被告の許○堅が係争商標「中国造船」が著名商標であると明らかに知りながら、該商標の中国語を自らの会社名としたことは、関連消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるため、商標法第70条第2号規定に基づいて商標権の侵害とみなす。原告が公司法第69条第1項、公平交易法(日本の独占禁止法、不正競争防止法などに相当)第30条及び第20条第1項第2号規定に基づき被告に対して、「中国造船」と同一又は近似する文字をその社名の主要部分に使用してはならず、かつ「中国造船」と同一又は近似する文字を含まない名称に社名の変更登記を行わなければならず、さらに被告が連帯で費用を負担し、本件判決書の裁判番号、当事者、裁判事由及び主文全文を蘋果日報(高さ11.4cm×幅4.4cmの紙面)、聯合報(高さ13.8cm×幅4.95cmの紙面)及び自由時報(高さ4.5cm×幅9.2cmの紙面)の全国版第一面にそれぞれ3日連続で掲載しなければならないと請求することには理由があり、許可すべきである。

結論:本件原告の請求には理由があるため、民事訴訟法第78条により主文の通り判決する。

2013年12月16日
知的財産裁判所第一法廷
裁判官 李維心

TIPLO ECARD Fireshot Video TIPLO Brochure_Japanese TIPLO News Channel TIPLO TOUR 7th FIoor TIPLO TOUR 15th FIoor