青島啤酒による台湾青啤の商標登録出願 敗訴が確定

2014-05-14 2011年

■ 判決分類:商標

I 青島啤酒による台湾青啤の商標登録出願 敗訴が確定

■ ハイライト
中国の青島啤酒(ビール)は、「台湾青啤」商標登録を出願したが、知的財産局は、「台湾啤酒」との混同誤認を引き起こさせると認定し、拒絶査定した。台湾青啤公司はこれを不服として、行政訴訟を提起したところ、最高行政裁判所による台湾青啤敗訴の判決が確定し、当該商標の登録を受けず、使用できなかった。

三洋維士比は青島啤酒を輸入
2000年頃、台湾三洋維士比公司は「台湾青啤股份有限公司」を設立し、「中国青島啤酒」を輸入し、且つ屏東内埔郷に青島啤酒龍泉啤酒廠(龍泉ビール工場)を設立した。
2006年7月頃、台湾青啤公司は中国語の「台湾青啤」商標を、知的財産局に同社の関連酒類指定商品に使用し、登録を出願したが、台湾菸酒公司が長年にわたり登録した「台湾啤酒TAIWAN BEER」、稲穂植物等図形及び文字と類似し、知的財産局は審査した結果、拒絶査定したのに対して、台湾青啤がこれを不服として、結果を翻すために、行政訴訟の提起を繰り返した。
台湾青啤は、台湾啤酒が中国語の「台湾啤酒」、英語の「TAIWAN BEER」及び稲穂の態様を結合したものであり、同社の「台湾青啤」商標とは外観、呼称等諸方面と著しく異なり、また「台湾」、「TAIWAN」が地理的名称であり、「啤酒」と「BEER」が商品名であり、創作性を欠き、識別性も低いものであると指摘した。
台湾青啤によると、青島啤酒は中国で有名な酒であり、「青啤」が略称であり、台湾の現地文化を示すために、「台湾青啤」の商標登録を出願し、高度な識別性があるはずであると表明する一方、知的財産局による拒絶査定が行政の違法に該当すると指摘した。

知的財産局︰高度な類似性がある
知的財産局では、台湾青啤と台湾啤酒との四文字のうち三文字が同じであるほか、同一の酒類指定商品に使用され、高度な類似性を有することから、商標法第23条に基づき、商標の類似を構成すべきであるとの見解を示した。

裁判所︰台啤はより広く保護されるべきである
最高行政裁判所では、「台湾啤酒」が台湾でお馴染みの商標であり、既に商業上の信用を築き上げており、識別性を有していることから、広く保護されるべきであるとし、これらに類するその他の商標の出願を排除すべきであると認定したほか、消費者にも両商標が同一の出所に由来するかとの混同誤認を生じさせ、両商標の使用者の間には関連企業、許諾関係又は加盟関係があると誤認させる可能性が高いとして、台湾青啤の商標登録を拒絶した。[自由2010年2月28日‧日曜日‧B2/記者楊国文]

II 判決内容の要約

基礎データ
最高行政裁判所判決
【裁判番号】99, 判,178
【裁判期日】20100225
【裁判事由】商標登録 

上訴人  台湾青啤股份有限公司
被上訴人 経済部知的財産局

上記当事者間における商標登録事件につき、上訴人は2008年3月27日に台北高等行政裁判所96年度訴字第2551号判決に対して上訴を提起したので、本裁判所は次のとおり判決する。

主文
上訴を棄却する。
上訴審の裁判費用は上訴人の負担とする。

一 事実要約
上訴人は、かつて2006年7月10日付で「台湾青啤」商標(以下係争商標という。付図一に示す通り)を、商標法施行細則第13条所定の商品及び役務区分表第35類の酒の小売サービスに使用するとし、被上訴人に登録を出願したところ、被上訴人による審査を経て、本件の商標出願が登録第699486号「台湾啤酒TAIWAN BEER及び図形」商標(以下引用商標という。付図二に示す通りである)との類似を構成するばかりでなく、酒類等類似の指定商品又は指定役務に使用しているので、関連消費者に混同誤認を生じさせる虞があるとして、商標登録を受けるべきではないと認定し、2007年3月22日第299045号商標拒絶査定書をもって拒絶査定の処分を下した(以下係争処分という)。上訴人はこれを不服として、訴願を提起したが、また決定をもって棄却された。それ故、本件の行政訴訟を提起したところ、台北高等行政裁判所2007年度訴字第2551号判決で上訴人の訴えが棄却されたのに対して、上訴人は、上訴を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告:訴願決定及び原処分を取消す旨の判決を下し、第000000000号「台湾青啤」商標登録をすべき旨の査定を被上訴人に命じるよう請求する。
(二)被告:上訴人による訴えの棄却を請求する。

三 本件の争点
「商標が次に掲げる事由のいずれかに該当するときは、商標登録を受けることができない。...十三、同一又は類似の商品又は役務における他人の登録商標又は先に出願された商標と同一又は類似であり、関連する消費者に混同誤認を生じさせる虞があるもの。...」と商標法第23条第1項第13号に明文が規定されている。

四 判決理由の要約
(一) 前記条文でいう「類似」とは、両商標に類似する箇所があると全体的なイメージを与え、もし、同一又は類似の商品又は役務に表示したとき、普通の知識、経験を有する消費者が購入時に普通の注意を施しても、二商品又は役務が同一の出所に由来するか、それとも出所が異なるが、関わりがあるかとの混同誤認を生じさせる虞があることをいう。また、消費者に混同誤認を生じさせる虞があることとは、消費者に与える商標のイメージが、出所が異なる商品又は役務が同一の出所に由来するか、又は両商標の使用者に関係企業、許諾関係、加盟関係或いはこれらに類する関係があること等、商品又は役務の出所に混同誤認を生じさせる可能性があることをいう。調べたところ、原判決では、係争商標と引用商標との注目される主要部分の中国語に関して、それぞれが「台湾青啤」及び「台湾啤酒」であり、「台湾啤」との三文字が同一であり、外観に一文字の差異だけがあることから、消費者に「台湾青啤」と「台湾啤酒」は同一の製造元又は役務主体に属するシリーズ商標であるとの混同誤認を生じさせやすいことは当然であり、外観、観念が高度に類似した商標に属すべきであると認定した。また、係争商標を使用する「酒の小売サービス」と、引用商標を使用するビール商品とは、一つが役務で、もう一つが商品であるが、同じ酒類商品であり、且つ「青啤」が台湾語で「生啤酒」(生ビール)を意味することから、「台湾青啤」と「台湾啤酒」との出所が同一であるか、それとも関わりがあるものであるかとの混同誤認を消費者に生じさせやすい事実、及び上訴人が採用に足りないと主張した事項を詳細にわたり説明したので、原判決で適用した条項が当該事件で適用した現行法律に反することもなく、解釈判例と抵触することもないことから、原判決が法令に反すると指摘した事情はない。

(二) また、文字の結合に地理的名称が含まれる場合、当該文字の結合は消費者に与える全体的なイメージが、商品の製造地、生産地等、又は役務の提供地、商業場所の出所等であり、商品又は役務の出所を識別する標識でないとき、もとより、先天的な識別性を有しないが、商標権者の使用により、一般の消費者に商品又は役務を表彰する標識であると認識させるに足りるもので、取引上出願人の商品又は役務であることを識別できる標識となり、それをもって他人の商品と区別することができるとき、その識別性を否認することができないのは当然である。更に、取引上、幅広く使用及び発展させ、国内の消費者に当該商標が存在し、著名度を有すると認識させた。これは、使用により後天的な識別性を取得していることから、一般の消費者にそれが商品を表彰する標識であることを認識させるに足りるもので、それをもって他人の商品と区別することができ、関連消費者に出所を区別する標識であると見なされることは当然である。調べた結果、原判決で説明したように、引用商標である「台湾啤酒」は台湾地区における一般の消費者がお馴染みの商標となり、識別性を有し、幅広く保護され、類似商標を構成するその他の商標出願等を排除するに足りることは、適切である。

(三) 更に引用商標である「台湾啤酒」の登録期日は、早くも1999年の前に既に登録され、係争商標の出願期日である2006年7月10日よりも早かったことは、原審で確定した事実である。それ故、引用商標権者は、上訴人より当該商標を先取りして登録し、且つ台湾菸酒股份有限公司の前身である台湾省菸酒公売局が専売期間に専売し、並びに引用商標である「台湾啤酒」の使用及び宣伝が行われ、市場で高い知名度及び識別性を有していることは、公知の事実である。原審では、別件で青啤が取消すべき無効審判の審決事件だけを引用し、二者が併存することが出来ないと説明するにとどまり、上訴人が原審で提出した「台湾青啤」の使用証拠をそれぞれ論断しなかったが、判決の結果に影響を与えないので、判決理由不備の誤りがあるという法に反する事由に該当しないものである。

(四) 最後に、商標を構成する図形、文字等の標識が類似すると認定されたとしても、その他の理由を総合考慮して、始めて衝突商標が混同誤認を生じさせる虞がある否かを正確に判断することができる。更に、類似の程度自体についてもその他の存在原因を総合考慮しなければならない。それで、個別事件の具体的な事実は、各種の判断理由に含まれている場合、商標の類似、商品の類似程度の如何、消費者が商標に対する熟知度、識別力の強弱等の判断原因について、個別事件の事実及び証拠態様の差異により、個別事件で調査、認定した結果が異なることは当然である。それ故、衝突商標の出願人又は商標権者がその他の商標類似事件をもって、引用することができると主張し、同じく有利な論断を下すよう求めることができないことは言うまでもない。調べた結果、原判決では、両商標の類似程度、指定商品及び役務がかなり類似していること等の原因で、関連する消費者には、両商標が同一の出所に由来するか、それとも両商標の使用者の間に関連企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在すると誤認させる可能性が高く、これにより混同誤認を生じさせる虞がある事実、及び上訴人は、主張した各当該商標態様、又は使用する指定商品又は指定役務のいずれも係争商標のと異なることから、商標個別事件審査の拘束原則に基づき、本件の係争商標が登録査定されるべきであると論断の根拠とされ難い事項などを詳細にわたり、説明した。それ故、原判決で適用した法律が当該事件で適用すべき現行法規に反することもなく、解釈判例との抵触もないことから、原判決が法令に反する事由に該当しないものである。

前記を総合すると、本件の上訴には理由がないので、行政訴訟法第255条第1項、第98条第1項前段に基づき、主文のとおり判決する。

中華民国99年2月25日
最高行政裁判所第六法廷
審判長裁判官 呉 明 鴻
裁判官 林 茂 権
裁判官 侯 東 昇
裁判官 劉 介 中
裁判官 黄 秋 鴻

五 関連条文抜粋
行政訴訟法 第 98、255 条(2010.01.13)
商標法 第 23 条(2003.05.28)
「混同誤認の虞」審査基準 第 5 条(2004.04.28)
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