Adidas(アディダス)、Jump(ジャンプ)商標対戦が、知的財産裁判所に蔓延

2014-05-14 2011年

■ 判決分類:商標

I Adidas(アディダス)、Jump(ジャンプ)商標対戦が、知的財産裁判所に蔓延 
六年にわたる訴訟は、行政裁判所の上、下級審による雲泥の差がある判決で、世界から嘲笑される虞、知的財産裁判所に審理を差戻し

■ ハイライト
ドイツ企業adidas会社と我が国において将門(Jump)をブランド名とする旅東貿易公司との商標が類似することから、市場で併存できないか否かの問題は、adidas製品が台湾で販売できるか否かに関わるため、大きな影響を及ぼした。Adidas会社は、知的財産局がその商標権を取消したことに対して、告訴を提起した。最高行政裁判所では昨日、原審の台北高等行政裁判所による差戻審の判決を破棄し、知的財産裁判所に審理を差し戻した。 
最高行政裁判所では、台北高等裁判所による原判決を二回目に破棄した今回の結果は、6年にわたった訴訟が「原点」に戻ることになった。本件の行政訴訟過程については恐らく世界から嘲笑されることになる。 
Adidas会社が台湾において商標の行政訴訟を提起した過程から見れば、台北高等行政裁判所による二回の判決ではともに、adidasとJumpの商標が類似していることから、消費者に混同誤認を生じさせやすい事由に該当すると認定し、両製品は、長年にわたり市場で併存している事実を無視した。最高行政裁判所では、台北高等行政裁判所による原判決を二回も破棄した理由も全く同一であり、つまり、両商標が類似と混同誤認を構成しないとして、知的財産局がadidas商標を取消す条件を満たさないとのことである。 
ところが、上、下級審の見解に「雲泥の差がある」ため、業者にダメージを与え、訴訟が六年も長引かれた末、原点に辿ったことは、行政裁判所の訴訟効率と正義があるかと疑問視される。幸いに、我が国は、2008年7月1日に知的財産裁判所を設立したので、今回最高行政裁判所が下級審である台北高等行政裁判所の判決を破棄した後、知的財産裁判所という専門の裁判所に審理を差戻すことができることになった。さもなければ、行政裁判所の一、二審間で引き続き「争いあう」実態の決着が何時つくのかは知る由もなく、世界から嘲笑される虞がある。 
知的財産裁判所の本件に対する判決が、一体、最高行政裁判所と「同一」の見解を示すか、それとも、台北高等行政裁判所による二回の判決結果を支持するかは、本件の「嘲笑される商標の争い」に関して、我が国の裁判所で「紛争、争議を解決する」公正な判決を言い渡すか、それとも業者が裁判所による審理体系において、「たらいまわし」にされ、終審裁判所でも決着がつかない実態にとどまるかに左右されることになる。【2010-02-27 工商時報A14/記者張国仁】
Adidas商標訴訟に関する数回の判決
期日 裁判所 結果
2005.11.02 台北高等行政裁判所 Adidas敗訴
2007.07.12 最高行政裁判所 Adidas敗訴。原判決を破棄し、台北高等行政裁判所に審理を差し戻した。
2008.04.24 台北高等行政裁判所 Adidas差戻一審敗訴
2010.02.25 最高行政裁判所 Adidas勝訴、原判決を破棄し、知的財産所に審理を差し戻した。
リスト作成者:張国仁 資料出所:一、二審行政裁判所による判決書

II 判決内容の要約

基礎データ

最高行政裁判所判決
【裁判番号】99,判,189
【裁判期日】20100225
【裁判事由】商標の無効審判
上訴人 ドイツ企業‧亞得脱士‧沙洛蒙股份公司(Adidas AG;旧名:Adidas—Salomon AG)
被上訴人 経済部知的財産局
参加人  旅東貿易股份有限公司
上記当事者間における商標の無効審判請求事件につき、上訴人は、2008年4月24日台北高等行政裁判所による96年度訴更一字第131号判決に対して、上訴を提起したので、本裁判所は次のとおり判決する。

主文
原判決を破棄し、知的財産裁判所に差し戻す。

一 事実要約
上訴人は1996年12月17日に「adidas&3-stripedevice」商標(以下係争商標という)を登録第54342号「adidas」商標の連合商標として、登録当時の商標法施行細則第49条所定の商品及びサービス区分表第25類の靴、マフラー、帽子、靴下等使用商品に指定し、被上訴人に登録出願したところ、被上訴人により第798026号連合商標として登録査定された。その後、2003年1月24日に参加人は、係争商標が登録時の商標法第37条第1項第12号に違反するとして、登録第438897号、第203597号、第359277号、第191460号、第741627号商標(以下引用商標という)を付して、無効審判の請求を行った。被上訴人が審査した結果、2003年7月1日付中台評字第920022号商標無効審判審決書をもって「係争連合商標の登録を無効とすべきである」との処分を下した。上訴人はこれを不服として、訴願を提起したところ、経済部は2003年11月19日に経訴字第09206223820号訴願決定書をもって原処分を取消し、改めて適法な処分を下すよう被上訴人に命じた。その後、商標法が改正され、2003年11月28日に公布施行され、同法第86条第1項に基づき、係争連合商標は独立の登録商標と見なすことになっている。無効審判の請求が被上訴人により改めて審査されたところ、2004年4月16日付中台評字第920530号商標無効審判審決書をもって「係争商標の登録が取消されるべきである」との処分を下した。これに対して、上訴人は不服として、訴願を提起したが、原審裁判所による2004年度訴字第3622号判決(以下前審の判決という)で棄却された。上訴人はこれを不服として、上訴を申立てたところ、本裁判所による96年度判字第1214号判決で前審の判決を破棄し、原審裁判所に審理を差し戻した。その後、原審裁判所では、96年度訴更一字第131号判決(以下原判決という)をもって棄却したため、上訴人は、これを不服として本件の上訴を申立てた。

二 両方当事者の請求内容
原告:訴願決定及び原処分取消しの判決を下すよう請求する。
被告:上訴人による訴えを棄却する旨の判決を下すよう請求する。

三 本件の争点
本裁判所で調べた結果、本件の争点は次の通りである。
(一) 「2003年4月29日に改正された本法施行前に、既に登録を出願し、又は無効審判の請求を行ったが、まだその審決が下されていない事件は、本件改正施行前後の違法事由にともに該当する場合に限り、始めてその登録を取消すことができる。その手続きは、改正後の規定により処理する。」と商標法第91条第1項に明文で規定されている。これに基づき、商標見本が「他人の同一商品又は類似商品に同一又は類似の登録商標である場合」、登録を受けることができない;商標が「同一又は類似の商品又は役務における他人の登録商標又は先に出願された商標と同一又は類似であり、関連する消費者に混同誤認を生じさせるおそれがあるもの」は、登録を受けることができないと、それぞれ係争商標が出願時の商標法第37条第1項第12号及び現行商標法第23条第1項第13号の本文に明文で規定されている。それ故、上訴人即ち参加人は係争商標の登録を取消すか否かを争っていることについては、係争商標と引用商標との見本が同一又は類似であるか、指定商品が同一又は類似であるか、関連する消費者に混同誤認を生じさせる虞があるか否かにより判断されるべきである。

(二) 商標無効審判事件について、係争商標が出願時の商標法第37条第1項第12号及び現行の商標法第23条第1項第13号に該当するものは、その商標の類似態様が、外観類似、観念類似及び呼称類似であり、関連する消費者に混同誤認を生じさせる虞があるかを判断するにあたり、商標が類似するか否かに関しては、一般の消費者が普通の注意を施す原則、全体的な観察及び主要部分の比較原則、時間と場所を異にして隔離的観察を行い、改めて商標識別力の強弱、係争商標と引用商標が類似を構成するか、その類似がどの程度か、商品又は役務が類似しているか、その類似がどの程度であるか、先権利者が多角化経営をしているか、実際に混同誤認を生じさせた事由に該当するか否か、関連する消費者は、係争商標及び引用商標に対する熟知度、係争商標の出願人が善意であるか、その他混同誤認を判断する原因等があるかを参酌し、始めて係争商標が出願時の商標法第37条第1項第12号及び現行の商標法第23条第1項第13号の事由に該当するか否かを適当に認定することができ、もって正確に法を適用し、商標の無効審判が成立するか否かの審決を下すものである。又、商標類似及び商品/役務類似の法定要件を満たす場合でも、なおも混同誤認を生じさせる虞がある事由に該当し、始めて無効審判成立の審決を下すことができる。また本法でいう著名とは、既に関連する事業者又は消費者に広く認識されていると認定に足りうる客観的証拠を有していることをいい、これは、改正前の商標法施行細則第31条第1項及び現行の商標法施行細則第16条に明文で規定されている。更に、いわゆる「関連する消費者に混同誤認を生じさせる虞があるもの」とは、商標が関連する消費者にその表彰する商品の出所又は製造の主体に混同誤認を生じさせる虞があることを言う。それ故、上訴人は係争商標を取消すか否かを争っていることについて、係争商標と引用商標との見本が同一又は類似であるか、指定商品が同一又は類似であるか、関連する消費者に混同誤認を生じさせる虞があるか否かにより判断されるべきである。

四 判決理由の要約
(一)調べた結果、本件の原処分及び訴願決定は、係争商標と引用商標との商標見本を比較したところ、その商標全体が与えられるイメージが同一であり、時間と場所を異にして観察すれば、類似商標を構成し、且つ両商標が同一又は類似の指定商品に使用され、関連する消費者に混同誤認を生じさせる虞があることを理由にし、係争商標の登録を取消した。そのため、原処分及び訴願決定は、商標見本及び商標を使用した商品の比較結果だけでもって、係争商標の登録を取消したもので、関連する消費者に混同誤認を生じさせる虞があるか否かに関連する重要要素の存在、又は混同誤認の衝突の排除要素の存在を酌量したこともないことから、酌量すべきことを怠った虞があるものである。原判決では次の見解を示している。
1.係争商標と引用商標の商標見本を比較する際に、外観上与えられる全体的イメージについて時間と場所を異にして観察し、普通の知識経験を有する商品消費者が、購買時に普通の注意を施すだけで、類似を構成する商標とみなすべきである。
2.係争商標と引用商標がブーツ・靴、帽子、靴下等と同一又は類似の商品に使用されていることから、両商標及び商品の類似程度等要素を総合的に判断したところ、一般の消費者に両商標の商品が同一の出所に由来するか、又は両商標の使用者の間に関連企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在すると誤認させることにより、混同誤認を生じさせることから、改正前の商標法第37条第12号及び現行の商標法第23条第1項第13号を適用すべきである。
3.また、上訴人の提出した1992-1996年商品カタログによれば、係争商標の使用は国内市場で1995、1996年頃からであり、出願時は著名商標ではないが、著名メーカーを理由にし、その登録した商標のすべてが著名商標に該当すること等を推論し、上訴人による原審の訴えを棄却すると認定され難いものである。原判決が差し戻された後、「商標類似」、「商品類似」の必要な要素、両商標の併存状況、係争商標が著名であるか否かの事情が酌量されたが、「関連する消費者に混同誤認を生じさせる虞があるか否か」、「なおもその他の補助要素を参酌しなければならない」という本裁判所による差戻し趣旨、つまり、両商標の商標識別力の強弱、両商標の類似を構成し、並びにその類似程度、先権利者が多角化経営をしているか否かの事情、実際に混同誤認を生じさせる事情があるか否か、関連する消費者が係争商標と引用商標に対する熟知度、係争商標の出願人が善意であるか否か、混同誤認を判断するその他の混同誤認要素等が存在するか否かに対して、原判決では一々斟酌するか、それとも斟酌を必要としないかの理由をも釈明していないことは、上訴人からも指摘されていることから、原判決が理由不備の違法に該当しないとは言われ難いものである。

(二)次に調べたところ、原判決で係争商標の登録公告後から(1998年3月1日)審決にかけて(2004年4月16日)の期間において、両商標が併存でき、混同誤認の虞がないと判断した根拠について、上訴人が提出した1992年から1996年までの商品カタログ、1992年から1997年までの民生報、大成報又は雑誌の報道、1979年から1988年までの新聞切抜きのいずれも係争商標の登録公告前のことであり、現行の商標法第54条但書の審査範囲ではないことから、商標法第54条但書規定を適用しないと認定したことには間違いがないものである。ところが、商標法第54条に基づくと、「無効審判請求の審決が成立した案件においては、その登録を取消さなければならない。但し、審決時において、当該不登録事由が既に存在しないものは、公益及び当事者の利益を参酌した後、不成立の審決にすることができる。」となっていて、その規定は、もとより、係争商標が審決時に登録を取消すべき事由に該当するが、審決時に当該取消すべき事由が存在しないときは、例外として始めて但書の規定を適用し、公益及び当事者の利益を参酌した後、不成立の審決を下すことができるものである。一方、もし係争商標が登録公告前(即ち1998年3月1日前)に、既に引用商標と併存し、且つ関連する消費者に混同誤認を生じさせる虞がないときは、もとより登録を取消す事由に該当せず、即ち、商標法第54条規定の前段を適用しないことで、同条但書規定を適用するか否かの問題にならないのは当然である。本件両商標がもとより商標の類似、及び指定商品が同一又は類似の事由に該当するが、これら商標の類似程度が関連する消費者に混同誤認を生じさせる虞があるか否かについて、更に調査する必要があることは、前述で指摘した通りである。係争商標が「無効審判請求の審決が成立した案件においては、その登録を取消さなければならない」という前提要件に合致するか否かについてなおも究明する必要がある。

(三)最後に「この法律で商標の使用とは、販売を目的として、商標を商品、役務又はその関連物に用い、又は平面図形、デジタル映像音声、電子媒体又はその他の媒体に利用され、関連する消費者に商標として認識されるに足りることをいう。」との商標法第6条の規定から分るように、商標の使用は、登録、公告済の商標に限らず、つまり、係争商標と引用商標が併存する使用状況を参酌し、両衝突商標の類似程度の高低を斟酌した後、一歩進んで関連する消費者に混同誤認を生じさせる虞があるか否かを酌量するにあたり、参考となる商標識別力の強弱、実際に混同誤認を生じさせる事由に該当するか、先権利者が多角化経営をしているか、係争商標の出願人が善意であるか、その他混同誤認等関連要素の有無などを酌量する場合、係争商標が実際に使用した期日を基準としなければならない。ところが、調べたところ、上訴人が原審で提出した更一審1979、1980、1981、1984、1988、1995年経済日報及び1984年中国時報の新聞切抜きからでは、上訴人の商品が1979年頃より台湾で売り捌かれていたことが判明できる。更に上訴人が提出した中国語版の商品カタログ(Autumn Winter Collection、Spring Summer等)、1992-1997年民生報、大成報、籃球(バスケットボール)雑誌等資料に間違いがなければ、係争商標が少なくとも1992年(民国81年)より台湾地区で販売、使用されていることが判明できる。本件の無効審判審決に至るまで(2004年4月16日)、実に十数年も経たことから見れば、係争商標の販売、使用時間が短期間ではなく、それが引用商標と少なくとも十数年間も併存していることから、両商標識別力の強弱程度の如何、関連する消費者が、係争商標と引用商標に対する熟知度の如何、係争商標の識別性がなおも存在し、引用商標と区別するに足りるもので、関連する消費者に識別でき、混同誤認を生じさせる虞がないか、また市場で販売するにあたり、実際に混同誤認を生じさせた事情があるか否か、係争商標の出願人が善意に使用したか否かについて究明する余地がないことではない。これらは、両商標が関連する消費者に混同誤認を生じさせる虞があるか否かを斟酌するときの重要な要素であるが、原審で酌量を怠ったことは適切を欠くものである。

前記を踏まえて、原処分及び訴願決定では、係争商標と引用商標の商標見本及び指定商品が同一又は類似であるとの比較を行っただけで、直ちに両商標が類似商標を構成し、関連する消費者に混同誤認を生じさせる虞があると認定し、係争商標の登録を取消した。ところが、関連する消費者に混同誤認を生じさせる虞がある関連要素の存否、又は混同誤認の衝突の排除要素の存否を酌量せずに、酌量すべきことを怠った虞がある。原判決では、両商標の類似及び同一又は類似商品に使用することを酌量した結果、商標法第54条但書規定に基づく適用事由に該当しないとの見解は、不適切ではないが、なおも前記の関連要素等を究明しなければならないことから、原処分及び訴願決定を維持したことは、妥当ではない。それ故、本件の上訴趣旨で、原判決を指摘した理由のすべてが受け入れられるものではないが、原判決で認定した事実に前記の調査すべき事項があるので、維持することができない。それ故、正確に法律を適用し、公正さを保つために、上訴に理由があると認定し、原判決を廃棄し、知的財産裁判所に審理を差し戻しなければならない。

前記を総合して、本件の上訴に理由があり、行政訴訟法第256条第1項、第260条第1項、智慧財産案件審理法施行細則第5条第1項に基づき、主文のとおり判決する。

中華民国99年2月25日
最高行政裁判所第四法廷
審判長裁判官 劉 鑫 楨
裁判官 黄  秋  鴻
裁判官 林 文 舟
裁判官 曹 瑞 卿
裁判官 陳 鴻 斌
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