「Apple*Love」商標訴訟、米アップル社が知的財産局に勝訴

2014-05-14 2011年

■ 判決分類:商標

I 「Apple*Love」商標訴訟、米アップル社が知的財産局に勝訴

■ ハイライト
米アップル社(Apple Inc.)は経済部知的財産局を相手取り「蘋果」及び「APPLE CENTER」に関連する商標異議申立訴訟を提起していたが、知的財産裁判所は先日、アップル社の主張を認める判決を下した。判決書によると、知的財産局は「Apple*Love」商標登録取消の決定を行わなければならない。
「Apple*Love」商標は、黄○○が2007年5月に「ショッピングセンター、通信販売、テレビショッピング、オンラインショッピング」等の商品における使用を指定して知的財産局に商標登録を出願し、登録を許可されたものである。その後アップル社は「Apple*Love」商標と同社の商標に同一、類似の状況にあることを発見し、消費者に混同を容易に生じさせ、同一の会社の商標であると誤認させるおそれがあり、商標法で登録を受けることができないと規定される状況にあるとして知的財産局に異議申立を提出した。思いがけず知的財産局による審理結果は「異議申立不成立」だった。 
知的財産裁判所は審理の結果、知的財産局は文字の構成だけで、「Apple*Love」商標と「APPLE CENTER」商標の図案が類似していないと判断したが、その判断は誤りであるとの判決を下した。 
判決書によると、「Apple*Love」商標と「APPLE CENTER」商標はいずれもコンピュータ上の役務と商品における使用を指定しているため、「Apple*Love」という文字の意味からみて、消費者に両商標の商品/役務が同一の出所である、或いは両商標の商品/役務が同一の企業、使用許諾関係、加盟関係にあると誤認させる可能性が高く、商標法で登録を受けることはできないと規定される状況にあたる。
知的財産裁判所は最終的に知的財産局の原処分と経済部の訴願決定を取り消すとともに、知的財産局に対して「Apple*Love」商標登録取消の決定を行うよう判決を下した。

II 判決内容の要約

■ 基礎データ

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】98年度(2009年度)行商訴字第243号 
【裁判期日】2010年5月27日
【裁判事由】商標異議申立 
【裁判要旨】商標法第23条第1項第12号、第13号の規定に基づき、他人の著名な商標又は標章と同一又は類似し、関連する公衆に誤認混同を生じさせるおそれがある、又は著名商標又は標章の識別性又は信用・名声に損害を生じさせるおそれがある場合、或いは同一又は類似の商品/役務について他人の登録商標又は先に出願された商標と同一又は類似であり、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある場合は登録を受けることができない。本件の係争商標「Apple*Love」は単純なアルファベットと符号「*」を組み合わせた商標であり、実際に使用される商品/役務に関して商標法第 23 条第1項第13 号の状況が係争商標に見られるため登録を受けることができない。又、たとえ係争商標の使用を指定する商品/役務が引用商標に類似していないとしても、引用商標が著名商標であるため、係争商標には商標法第23条第1項第12号の状況がみられ、登録を受けることはできない。従って経済部知的財産局による異議申立不成立の決定は法にそぐわない。

原   告:米アップル社(Apple Inc.)
被   告:経済部知的財産局
参 加 人:山宝伝播有限公司

主文
訴願決定及び原処分をいずれも取り消す。
被告は第第1293532 号「Apple*Love」商標登録取消の決定を行うものとする。
訴訟費用は被告の負担とする。

一 事実要約
參加人は2007年5 月31日に商標法施行細則第13条に定める商品/役務の区分表第35類の「ショッピングセンター、通信販売、テレビショッピング、オンラインショッピング(ネットショッピング)-布地及び被服及び服飾アクセサリーの小売、金物及び家庭日用品の小売、宝飾品及び貴金属の小売、化粧品の小売」等における使用を指定して被告に「Apple*Love」商標の登録を出願し、被告は登録第1293532 号商標として登録を許可した。その後、原告は当該登録商標が商標法第23条第1 項第12号、第13号及び第14号之規定に違反しているとして、異議申立を行った。被告は審理の結果、係争商標の登録は商標法第23条第1 項第12号、第13号及び第14号の規定を適用されないと判断し、2009年6 月25日に中台異字第970312号商標異議決定書において異議申立不成立の決定を下した。原告はこれを不服として訴願を提起したが、経済部は2009年10月15日経訴字第09806119240 号で棄却決定を行った。原告はさらにこれを不服として、本件の行政訴訟を提起した。本裁判所は、本件訴訟の判決結果により訴願決定及び原処分が取り消された場合、参加人の権利又は法律上の利益に損害を与えると判断し、行政訴訟法第42条第1項に基づき、職権による決定を以って本件被告の訴訟に参加人が独立参加することを命じた。

二 両方当事者の請求内容
原告の主張:略(詳しくは判決理由を参照)
被告の答弁:略(詳しくは判決理由を参照)

三  本件の争点
本件の争点は商標法第23条第1 項第12、13、14号におけるいわゆる「類似」が具体的な案件においていかに認定されるかにある。

四 判決理由の要約
(一) 他人の著名な商標又は標章と同一又は類似し、関連する公衆に誤認混同を生じさせるおそれがあり、又は著名商標又は標章の識別性又は信用・名声に損害を生じさせるおそれがある場合、同一又は類似した商品/役務における他人の登録商標、又は先に出願された商標と同一又は類似であり、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある場合、及び同一又は類似の商品/役務について他人の先使用にかかる商標と同一又は類似であり、出願人が当該他人との間で契約関係、地縁、業務取引又はその他の関係を有することにより、他人の商標の存在を知悉していた場合は登録を受けることができない。これらは商標法第23条第1項第12、13、14号において明示されている。本件の参加人は商標法施行細則第13条に定める商品/役務の区分表第35類の役務における使用を指定して被告に「Apple*Love」商標の登録を出願し、被告は審査の結果、登録第1293532 号商標として登録を許可した。その後、原告は当該商標が商標法第23条第1 項第12号、第13号及び第14号の規定に違反しているとして異議申立を行った。被告は審理の結果、係争商標は引用商標と類似していないと判断し、異議申立不成立の決定を下した。原告はこれを不服として経済部に訴願を請求したが、経済部訴願審議委員会も両商標は類似していないという同じ理由で原告の訴願を棄却した。本件では原処分及び訴願決定が合法かつ適切であったかどうかを審理する以外に、原告による係争商標の登録取消請求についても審理された。本件の争点は係争商標と引用商標を比較して、商標法第23条第1 項第12、13、14号の規定に違反しているかどうかにある。
(二) 次にいわゆる商標が同一又は類似を構成するかは、普通の知識経験を有する一般商品消費者が購買時に普通の注意を施し、両商標の主要部分の外観、観念又は呼称について隔離的に観察して誤認混同を生じさせるおそれの有無を判断する。両商標の外観、観念又は呼称において、その主要部分の文字、図形、又は記号が類似しており、一般の関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある場合は、即ち類似の商標となる。商標の外観又は観念上における誤認混同のおそれの有無を斟酌するには、客観的な事実に基づく必要がある。例えば(1)普通の知識経験を有する消費者が購買時に普通の注意を施すことを基準とする。(2)商標の文字、図形又は記号は時間と場所を異にして隔離的かつ全体的に観察することを基準とする。(3)商標が文字、図形又は記号を結合したものである場合は、各部分について観察し、主要構成部分を基準とする。ゆえに両商標の類否については各商標の「外観」、「観念」、「呼称」上において特に顕著で消費者が商標全体に対して核心的な印象を構成するに足る主要部分を時間と場所を異にして隔離的観察を行い、誤認混同を生じさせるおそれがあるかどうかを判断する必要がある。
(三) 係争商標の「Apple*Love」は単純なアルファベットと記号「*」を組み合わせた商標であり、原告の引用商標である登録第38248号「蘋果」、第35458号「APPLE CENTER」等の商標の図案と比較すると,中国語と英語の違いやアルファベットの大文字・小文字の違いがあるが、「APPLE」は「蘋果」にあたる英語であり、台湾は英語圏の国ではないが、「APPLE」という英単語は一般消費者が義務教育において、又は旧制の中学1年生、新制の7年生において英語の授業が始まる際に学習する単語であり、さらにメディアの影響を深く受けて子供の頃から英語を学習している消費者にとっては極めて基本的な英単語であるため、一般消費者の同英単語に対する識別性はその他の英単語に比べて高いといえる。中国語と英語の違いはあるが、一般消費者はその意味が中国語の「蘋果」であること知悉している。また係争商標と登録第35458号商標との間にはアルファベットの大文字・小文字の違いがあるが、いずれもリンゴの意味を持っており、さらに大文字・小文字はシリーズを区別するものにすぎず両商標が同じブランドの異なるシリーズであるかと誤認させる可能性がある。さらに係争商標には「*」、「Love」等の記号と異なる英単語が含まれているが、「Love」という単語は前述した「Apple」の説明と同様に一般消費者が熟知した英単語であり、一般消費者はそれが「喜愛(好む)」という意味であることを理解している。又、「*」の象徴する意味は商標設計者ならば知悉しているが、一般消費者にとっては単なる記号にすぎない。それらが結合された「Apple*Love」商標は「リンゴを愛する、好む」という意味となる。係争商標の指定商品/役務には「通信販売、テレビショッピング、オンラインショッピング(ネットショッピング)」が含まれており、係争商標をこれらの役務に使用した場合、消費者は係争商標が引用商標と同一の出所又は生産者で、異なる役務の項目を提供しているだけだと誤認しうる。又、消費者は原告が引用商標の使用される商品を専ら販売するために別途開設したショッピングプラットフォームであると誤認する可能性があるため、係争商標と引用商標は類似商標に属し、被告が文字の構成だけで両商標に類似がないと判断したことは誤りである。
(四) 又、いわゆる「関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるか」とは、両商標が同一又は類似を構成しているため、関連する消費者が同一商標であると誤認する、又は同一商標であるとは誤認するには至らないものの、両商標の商品/役務が同一の出所からのシリーズ商品/役務であると誤認する可能性が極めて高い、又は両商標の使用権者の間に関連企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在すると誤認させることを指す。誤認混同のおそれがあるかどうかを判断するにあたっては、商標識別力の強弱、商標の類似並びに商品/役務の類似等の関連要素の強弱程度、相互に影響しあう関係及び各要素等を参酌して、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるかを総合的に認定しなければならない。係争商標は商標法施行細則第13条に定める商品/役務の区分表第35類の「ショッピングセンター、通信販売、テレビショッピング、オンラインショッピング(ネットショッピング)-布地及び被服及び服飾アクセサリーの小売、金物及び家庭日用品の小売、宝飾品及び貴金属の小売、化粧品の小売」等の商品における使用を指定している。一方、原告の引用商標は「各種コンピュータ、コンピュータプログラム及びコンピュータへ周辺設備の販売、見積もり及び入札」における使用を指定しているものの、原告は引用商標をショッピングセンター、通信販売、オンラインショッピング(ネットショッピング)サービス(原告の企業サイトwww.apple.comを参照)でも使用しており、且つ原告は引用商標をコンピュータ及びその周辺設備以外に手帳、マグカップ、被服、帽子、バックパック、キーチェーン等のオフィス用品やアクセサリー等にも使用している(訴願書類の原告証拠2、12及び本裁判所証拠書類10を参照)。係争商標は「Apple*Love」という文字の意味によって消費者に原告の引用商標のシリーズであると誤認させやすく、両商標の商品/役務は同一の出所のシリーズ商品/役務であると誤認を生じさせたり、両商標の使用権者の間に関連企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在すると誤認させたりする状況が発生しうる。よって係争商標と引用商標は類似しており、係争商標の登録している指定商品/役務と引用商標が実際に使用している商品/役務も極めて類似しているため、関連する消費者に誤認混同を生じさせる可能性があり、商標法第23条第1項第13号に定める状況がみられるといえる。況してや被告は中台異字第G00000000号、第G00000000号、第G00000000号、第G00000000号、第G00000000号商標異議決定書(本裁判所資料48~59ページを参照)においても、原告の引用商標は「著名商標」であると述べており、原告が現在全世界で行っている販売活動からみて(訴願資料の原告証拠8、9、10を参照)、引用商標は世界、台湾を問わず著名商標である。このため、たとえ両商標が使用を指定する商品/役務が類似していないとしても、係争商標と引用商標は類似しているため、関連する消費者に両商標の商品/役務が同一の出所のシリーズ商品/役務であると誤認混同を生じる、又は両商標の使用権者の間に関連企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在すると誤認させる状況があり、つまり商標法第23条第1項第12号で定められた状況があるといえる。
(五) 原告は係争商標と引用商標には商標法第23条第1項第14号に定める状況もみられると主張しているが、同号規定は他人の商標を剽窃したり、先に登録したりすることを回避するためのものであり、条文は「契約関係、地縁、業務取引」の関係を例として挙げている他に、「その他の関係」には他人の商標の存在を知悉していて先に登録することと概括的に規定している。故に「その他の関係」は同条文の例示した規定を斟酌しなければならず、それによって初めて立法の真意に符合することができる。このため、上記規定「その他の関係」とは出願人と他人の間に「契約関係、地縁、業務取引」等に類似する関係があり、他人の商標を知悉していることだといえる(最高行政裁判所98年度判字第1039号判決を参照、司法院99年度知的財産法律座談会の行政訴訟関連議題第4号も同じ見解)。本件関連書類のすべての資料を調べたところ、参加人と原告との間に契約関係、地縁、業務取引等に類似する関係がなく係争商標の登録を出願したことが分かる。ゆえに原告のこの部分の主張は採用しないことをここに併せて述べる。

以上をまとめると、引用商標が実際に使用されている商品/役務に基づいて、係争商標には商標法第23条第1項第13号に定める状況がみられるため登録することができない。又、たとえ係争商標が使用を指定する商品/役務が引用商標に類似していないとしても、引用商標が著名商標であるため、係争商標には商標法第23条第1項第12号の状況がみられ、登録することはできない。従って経済部知的財産局による異議申立不成立の決定は法にそぐわないといえる。訴願決定もこの点が指摘されておらず商標を維持しているため、同様に妥当ではない。原告が請求している訴願決定及び原処分の取消は理由があるため認められるべきである。原告は被告に参加人の第01293532号「Apple*Love」商標登録取消を決定するよう請求しており、これには理由があり、且つ明確な証拠もあるため、被告に主文第2項に示す内容の決定を行うことを命ずる。

五 関連条文抜粋
行政手続法 第43条(2005.12.28)
商標法 第2 条(2003.05.28)
知的財産案件審理法 第1条(2007.03.28)
行政訴訟法 第42、98条(2007.07.04)
商標法施行細則 第13 条(2007.09.03)
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