「関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるか」の判断基準

2014-05-14 2011年

■ 判決分類:商標

I 「関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるか」の判断基準

■ ハイライト
たばこの商標である「三喜」と「雙喜」の対決は、「雙喜」が勝訴した。インドネシア企業である蘇門答臘煙草貿易公司(N.V. SUMATRA TOBACCO TRADING COMPANY.、以下「蘇門答臘煙草」)の商標「喜喜喜Tri Happiness(三喜)」が上海煙草(集団)公司(Shanghai Tobacco (Group) Corporation、以下「上海煙草」)に「紅雙喜」の商標と類似しているとして異議を申し立てられ、三喜の商標登録が取り消されたため、蘇門答臘煙草は知的財産裁判所に提訴した。
蘇門答臘煙草側は、「Happiness」と「Tri」を組み合わせたことで、新たな標語となっており、「囍」という文字とは意味が異なると主張。一方、上海煙草側は「紅雙喜」は1999年に登録されており、両商標にはわずかな差異しかみられないため、誤認混同されるおそれがあると主張していた。
裁判官の合議体による審理の結果、両商標は外観、観念、呼称のいずれも類似しており、同一区分の商品を登録しているため、上海煙草の主張を認める判決が下された。ただし本案はまだ上訴することができる。

II 判決内容の要約

■基礎データ

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】99年度行商訴字第109号 
【裁判期日】2010年9月30日
【裁判事由】商標異議申立

原告:インドネシア企業/蘇門答臘煙草貿易公司(N.V. SUMATRA TOBACCO TRADING COMPANY.)
被告:経済部知的財産局
参加人:中国地区‧上海煙草(集団)公司

上記当事者間における商標異議申立事件につき、原告は経済部2010年4月14日経訴字第09906054510号訴願決定を不服として行政訴訟を提起した。本裁判所は参加人に対して被告の訴訟に独立参加することを命じ、以下のように判決を下した。

主文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実の要約
原告は2007年11月2 日に添付図1「喜喜喜Tri Happiness及び図」商標(以下、係争商標)について、商標法施行細則第13条に定める商品及び役務の区分表第34類の「葉たばこ、紙巻たばこ、たばこ巻紙、葉巻たばこ、灰皿、ライター、マッチ」商品における使用指定を行い、被告に対して商標登録を出願し、被告によって第1324402 号商標として登録査定された。その後、参加人は添付図2の第839114号「囍」商標及び添付図3の第839166号「囍及び図」商標(以下、諸引用商標)を以って、係争商標に対する異議申立を行った。被告による審査の結果、2009年12月24日に中台異字第971099号商標異議決定書を以って係争商標の登録取消処分を下した。原告はこれを不服として訴願を提起したが、経済部は2010年4月14日経訴字第09906054510号の棄却決定を行った。原告はさらにこれを不服として本裁判所に行政訴訟を提起し、原処分及び訴願決定の取消を請求した。本裁判所は、本件訴訟の判決結果により訴願決定及び原処分が取り消された場合、参加人の権利又は法律上の利益に損害を与えると判断し、行政訴訟法第42条第1項に基づき、職権による決定を以って本件被告の訴訟に参加人が独立参加することを命じた。

二 両方当事者の請求内容
原告:訴状にて訴願決定及び原処分の取消を請求する。
被告:答弁書にて原告の訴えを棄却することを請求する。

三 本件の争点
係争商標が引用商標と類似を構成するかどうか、同一又は類似の商品に使用されているかどうか、係争商標と引用商標との類似はどの程度か、同一又は類似の商品及び役務に使用される際、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるかどうか?

四 判決理由の要約
(一) いわゆる「関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるか」とは、両商標が同一又は類似を構成しているため、関連する消費者が同一商標であると誤認する、又は同一商標であるとは誤認するには至らないものの、両商標の商品/役務が同一の出所からのシリーズ商品/役務であると誤認する可能性が極めて高い、又は両商標の使用者の間に関連企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在すると誤認させることを指す。誤認混同のおそれがあるかどうかを判断するにあたっては、商標識別力の強弱、商標の類似並びに商品/役務の類似等の関連要素の強弱程度、相互に影響しあう関係及び各要素等を参酌して、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるかを総合的に認定しなければならない。次にいわゆる「商標が同一又は類似を構成するか」は、普通の知識経験を有する一般商品消費者が購買時に普通の注意を施し、両商標の主要部分の外観、観念又は呼称について隔離的に観察して誤認混同を生じさせるおそれの有無を判断する。両商標の外観、観念又は呼称において、その主要部分の文字、図形、又は記号が類似しており、一般の関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある場合は、即ち類似の商標となる。商標の外観又は観念上における誤認混同のおそれの有無を斟酌するには、客観的な事実に基づく必要がある。以下の原則に則り判断する。(1) 普通の知識経験を有する一般商品消費者が購買時に普通の注意を施すことを基準とする。(2)商標の文字、図形又は記号は時間と場所を異にして隔離的かつ全体的に観察することを基準とする。(3)商標が文字、図形又は記号を結合したものである場合は、各部分について観察し、主要構成部分を基準とする。ゆえに両商標の類否については各商標の「外観」、「観念」、「呼称」上において特に顕著で消費者が標章全体に対して核心的な印象を構成するに足る主要部分を時間と場所を異にして隔離的観察を行い、誤認混同を生じさせるおそれがあるかどうかを判断する必要がある。

(二) 係争商標と引用商標等を比較すると、いずれも「喜」が並列する中国語の「囍」という文字を有し、外観上極めて類似した印象を見る者に与える。原告側は、係争商標が3つの「喜」と外国語の「Tri Happiness」を結合して構成されており、「外観」、「観念」、「呼称」ともに異なり、関連する消費者に誤認混同を生じさせるに至らないと主張した。係争商標が3つの「喜」と外国語の「Tri Happiness」を結合して構成されてはいるものの、係争商標における図案「喜喜喜」は中国語の辞典には存在せず、またその独立した「呼称」や「意味」も持たない。ゆえにこれは一般消費者が識別できる中国語ではなく、図案「喜喜喜」は左から右へ、又は右から左へ見ても「囍」という字が存在する。消費者が識別する際に、重点は「囍」という字に置かれ、図案「喜喜喜」が表わす意味は無視される。また引用商標にはいずれも「囍」という字が含まれ、外観の観察から両者は類似しているといえる。係争商標の下部には「Tri Happiness」という外国語の文字が含まれるが、英語の部分が商標全体に占める割合が甚だしく少ない。且つ「Tri Happiness」は慣用されない英単語であり、非英語圏に属さないわが国の消費者にとって、慣れ知らず且つ商標に占める割合が少ない英語の部分は無視されるだろう。商標全体を観察する際、識別の重点は中国語又は中国語に類似する図案に集中する。観念について述べると、図案「喜喜喜」は独立して表彰する中国語の意味を持たない上、英語の部分も前述した如く消費者の識別重点ではないため、それが表わす意味が消費者の注目を集めるのは容易ではない。況してや「Tri Happiness」は慣用される英単語ではなく、一般消費者はそれが象徴する中国語の意味も理解できない。係争商標が象徴する観念を識別するために、図案「喜喜喜」からその脈絡を捜しだすことになる。「喜喜喜」は独立した中国語の文字ではなく、それが象徴する中国語の意味を持たない。消費者がその観念を判断する際、図案に含まれる「喜」又は「囍」という字を選択して図案「喜喜喜」に一つの明確な観念を与えようとする。「喜」と「囍」は中国語の意味がほぼ同一であり、「雙喜」の方が「単喜」より喜びの程度が大きいという差しかない。ゆえに消費者が「喜喜喜」という図案の観念を判断する場合、そこから「喜」又は「囍」という文字を取り出して判断するため、その観念は原告が述べる「囍」の観念と同じである。さらに呼称の部分は係争商標の全体感が突出した部分である。消費者がその呼称を判断する際、「喜喜喜」の呼称は「三喜(san-xi)」、引用商標は慣習上「雙喜(shuang-xi)」であるため、係争商標と引用商標は呼称上も類似する部分がある。よって、原告と参加人の商標は外観、観念、呼称のいずれにおいても類似しており、類似を構成する商標である。

(三) また係争商標は「葉たばこ、紙巻たばこ、たばこ巻紙、葉巻たばこ」における使用を指定しており、引用商標は「紙巻たばこ、葉たばこ」等の商品における使用を指定しているため、同一又は類似するたばこ類商品だといえる。係争商標が「灰皿、ライター、マッチ」等の商品における使用も指定しており、それらは通常喫煙者がたばこに火をつけたり、たばこの灰やフィルターを置いたりする用品で、常に「紙巻たばこ、葉たばこ」等の商品と組み合わせて使用される。ゆえにこれらは類似する商品に属し、係争商標と引用商標が使用を指定する商品構成は類似しており、その商標の図案には前述した通りの類似程度がみられているため、消費者が両商標の商品を同一の出所からのシリーズ商品である、又は両商標の使用者の間に関連企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在すると誤認する可能性が極めて高く、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある。ゆえに係争商標と引用商標を比較すると、確かに商標法第23条第1項第13号の規定に違反する状況がみられるため、商標登録を認めるべきではない。

(四) 以上をまとめると、係争商標は商標法第23条第1 項第13号の状況に該当するため、登録取消に処する。よって被告の行った原処分は法規に符合しないところがなく、訴願決定が維持されたことにも誤りはない。原告が以前からの主張に徒に固執し、原処分及び訴願決定の取消を請求することは理由がないため、これを棄却する。

添付図:係争商標及び引用商標

 

係争商標の図案 
添付図1
【商標名称】:「喜喜喜 Tri Happiness 及び図」
登録番号第1324402号
喜1

引用商標
添付図2 
【商標名称】:「囍」
登録番号第839114号
喜2

  
 添付図3
【商標名称】:「囍及び図」
登録番号第839166号
喜3

 

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