裁判官は「VERTER」商標とドイツ企業の「WERTHER'S」商標(偉特糖)と非類似の認定

2014-05-14 2011年

■ 判決分類:商標

I 裁判官は「VERTER」商標とドイツ企業の「WERTHER'S」商標(偉特糖)と非類似の認定

■ ハイライト
商標「VERTER」はキャンディ商標「WERTHER'S」と類似するか?
ドイツ‧オーガスト‧ストーク社(AUGUST STORCK KG、以下ストーク社という)のキャンディ「ヴェルタース(WERTHER'S)」は世界的に知名度が高い。ストーク社は2009年に台湾の陽寰宇電子公司(UNIX TECH Co.,Ltd.)が2008年に登録した商標「VERTER」がストーク社の商標「WERTHER'S」に極めて類似していることを発見し、消費者の誤認を招くおそれがあるとして知的財産裁判所に当該商標の取消を請求する訴訟を提起した。【裁判番号:知的財産裁判所99年度行商訴字第112号】
裁判官は審理を行った結果、両商標は1字目のアルファベットがWとVが異なり、発音も異なり、さらに台湾の商標には花が一輪組み合わされており、かつ花のデザインが文字よりも大きいため、消費者が初めてみても両者を同一の商標であると誤認することはないと判断し、ストーク社に対する敗訴判決を言い渡した。(司法院、聯合報20101026 /A8)

II 判決内容の要約

■ 基礎データ

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】2010、行商訴、112
【裁判期日】20101014
【裁判事由】商標の異議申立

原   告 ドイツ‧オーガスト‧ストーク社
被   告 経済部知的財産局
参 加 人 陽寰宇電子股份有限公司
 
上記当事者間における商標異議事件につき、原告は経済部による2010年4月15日付経訴字第09906054470号訴願決定を不服として、行政訴訟を提起したところ、本裁判所は、参加人に対して被告の訴訟に独立参加することを命じ、次のとおり判決する。

主 文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実の要約
参加人は、2008年3月11日付で「VERTER及び図形」商標を、商標法施行細則第13条所定の商品及び役務区分表第30類の「茶葉、茶飲料、コーヒー、ココア、アイスクリーム、ビスケット、キャンディ、トースト、パン、ケーキ、ハンバーガー、プリン、ミートパイ、シュウマイ、大根餅、肉まん、鍋用ぎょうざ、お粥、ご飯、麺」指定商品に使用し、商標登録を出願したところ、被告により第1337884号商標として登録査定された。その後、原告は、当該商標が商標法第23条第1項第12号、第13号及び第14号等規定に違反するとして、異議申立を行った。被告が審査した結果、2009年12月29日に中台異字第980135号商標異議申立審決書をもって「異議不成立」の処分を下した。原告はこれを不服として、訴願を提起したが、経済部により2010年4月15日経訴字第09906054470号決定で棄却されたのに対して、原告はなおも受け止めずに、本件の行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一) 原告の声明:1.原処分及び訴願決定を共に破棄する。2.被告機関は、「異議が成立し、第1337884号『VERTER及び図形』商標の登録を取消する」旨の処分を下す。
(二) 被告の声明:原告の訴えを棄却する。

三 本件の争点
本件の争点は、係争商標と引用商標との比較を行ない、商標法第23条第12、13、14号の違反事由に該当するか否かにある。

(一)原告主張の理由
引用商標の英文字は「Werther's 」及び「Werther's Original」であるが、係争商標は二部分により組み合わせられ、つまり英文字「VERTER」及び花図形からなるものである。両商標の顕著部分は、英文字の「Werther' s」及び「VERTER」である。両者の外観では「Werther 」と「Verter」とが極めて類似している。両者の呼称も極めて類似している。消費者は一般的な日常商品に対する注意力がより低いことから、時間と場所を異にして隔離的観察を行うことで、商標を並列比較する購入方法ではないことを酌量した上で、実際に係争商標「Werther 」及び引用商標「Verter」とを相互に誤認するか、又は異なる出所に関連があると誤認するおそれが絶対にないとは言われ難いものである。

(二)被告答弁の理由
本件係争商標第1337884号「VERTER及び図形」は、英文字「VERTER」及び花の図形からなるもので、「偉特」及び「道地的偉特」等引用商標が中国語の「偉特」又は「道地的偉特」等からなるものとを比べると、図形全体は、関連消費者に与えるイメージにはっきりした区別がある。係争商標と「Werther's」及び「Werther's Original及び図形」等引用商標との図形構造を比較すると、両者の英文字「VERTER」と「Werther's (Original)」は、注目されやすい頭文字「V」又は「W」、語尾「TER」と「ther's」及び構成されているアルファベットの文字数に顕著な差異があり、且つ、係争商標になお花一輪のデザイン図形があり、両商標の全体図形における文字及び図形のデザイン組み合わせが異なり、構図意匠においても人に与えるイメージは全く異なっている。

四 判決理由の要約
両商標の英文字部分を比較したところ、係争商標の「VERTER」の頭文字が「V」で、語尾が「TER」であるが、諸引用商標の「Werther's」部分はその頭文字が「W」で、語尾が「ther's」である。また係争商標は、すべて大文字の英文字アルファベットからなっている一方、諸引用商標は頭文字の「W」が大文字であるが、残りのアルファベットがすべて英文字の小文字からなっている。更に、係争商標はすべて英文字から構成され、諸引用商標になお「'」の符号があることは、両商標を比較して前記の相違点が判明できる。前記両商標には、「頭文字、語尾」、「アルファベットの大、小文字の組み合わせ」、「特殊符号の有無」等の相違点があることから、たとえ英語に馴染みのない消費者であっても、前記の相違点に基づき、外観から、両商標を識別することができる。この他、英文字部分に前記の相違点があるほか、係争商標になおも大一輪、小二輪の花デザインがあり、その花には特殊なデザイン、及び大小、濃淡の差異がある。よって、商標が類似を構成するか否かの比較を行なうとき、もとより両商標の全体的な観察を行うべきで、その一部分を分離し、観察すべきではないので、たとえ花がよく見える装飾図形であっても、係争商標の英文字と組合わせた後、係争商標がなおも識別力を生じさせ、消費者が両商標を表彰する商品を購入する際には、はっきりと区別できるので、両商標の混同誤認を生じさせることがない。それは、両商標は、外観に大きな差異があるからである。また、原告は、両商標の呼称が近い云々と主張したが、現地の消費者にとっては、一般的にドイツ語に馴染みがなく、両者の呼称も原告が主張したように類似していないことから、本件は外観、呼称、観念から判断しても、いずれも両商標が類似を構成しないものである。

前記を総合すると、被告は係争商標の登録が商標法第23条第1項第12、13、14号規定に違反しないと認定し、本件「異議申立不成立」とした処分に誤りがなく、訴願決定を維持したことには妥当を欠くものではないことから、原告が訴願決定及び原処分を取消し、且つ係争商標の異議申立が成立し、登録を取消す処分を下すべきことを被告に命じるよう申立てたことには理由がなく、棄却されるべきである。

中華民国99年10月14日
知的財産裁判所第二法廷
審判長裁判官 陳忠行
裁判官 蔡恵如
裁判官 熊誦梅
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