商標訴訟 婦潔が敗訴

2014-05-14 2011年

■ 判決分類:商標

I 商標訴訟 婦潔が敗訴

■ ハイライト
台湾における著名な女性用ケア商品メーカー、「婦潔」公司は知的財産裁判所に次のように主張した。同社は、二十数年前に、既に「婦潔液」商品の販売を行ってきていて、「婦潔」は国内における著名商標となっているが、大統公司による輸入、賽吉兒公司による販売の「菁萃婦潔凝露」商品に「婦潔」の二文字があることから、消費者に混同誤認を生じさせやすいとのことである。
これに対して大統及び賽吉兒公司は次のように反発した。会社商品にある婦潔の二文字は、もとより「菁萃婦女潔浴凝露」という商品名が長すぎるため、「婦潔凝露」と略称し、且つ商品の宣伝に使用した商標はすべて「賽吉兒」であるとのことである。
裁判所で審理した結果、賽吉兒公司が広告や記者会見を問わず、関連商品の販売に際しては婦潔の二文字を目立たないようにし、賽吉兒を商標として対外的な宣伝に使用し、賽吉兒の商品パッケージにも婦潔の二文字を目立たせないことから、その商品名が婦潔公司のそれと混同誤認を生じさせたり、「婦潔」商標の識別力を減損させたりするとは認定され難いものである(聯合報2010.11.08 /A10)。婦潔公司はこれを不服として、上訴を提起したが、上訴審裁判所ではなおも原審判決を維持し、「婦潔」の上訴を棄却した。

II 判決内容の要約

■ 基礎データ

知的財産裁判所 裁判書 -- 行政類
【裁判番号】2010、民商上、2
【裁判期日】20101028
【裁判事由】商標権侵害行為の排除

上訴人               婦潔薬品有限公司
被上訴人            大統貿易股份有限公司
被上訴人兼法定代理人 乙○○
被上訴人            賽吉兒股份有限公司
被上訴人兼法定代理人 丙○○

主 文
上訴及び追加した訴えを共に棄却する。
第二審訴訟費用は上訴人の負担とする。

一 事実要約
(ハイライトと同旨、略)

二 両方当事者の請求内容
(一)上訴人の声明:
1. 原判決を破棄する。
2. 主位的請求:本件を知的財産裁判所第一審に差し戻す。
3. 予備的請求:
(1)被上訴人である大統公司、賽吉兒公司は即時、「婦潔」文字をその販売するSAUGELLA凝露商品のパッケージ、説明書等関連物品、及び平面図像、デジタル映像・音声、電子メディア、又はその他の媒介物の方法による使用を停止する。
(2)被上訴人大統公司及び乙○○は連帯して、上訴人に新台湾ドル352,500元及び訴状謄本が到達した翌日より年利率5%で計算した利息を支払う。
(3)被上訴人賽吉兒公司及び丙○○は連帯して上訴人に新台湾ドル352,500元及び訴状謄本が到達した翌日より年利率5%で計算した利息を支払う。
(4)いずれかの被上訴人が給付した場合、その他の被上訴人の給付責任を免除する。
(5)被上訴人は費用を負担し、本件民事の最終事実審判決の当事者、事由及び主文の内容を28.7センチ掛ける16センチのサイズで蘋果日報全国版の一面の下半分に一日掲載する。
(二)被上訴人答弁の声明:上訴棄却を請求する。

三 本件の争点
(一) 被上訴人等は上訴人の同意を得ないで係争商品の包装箱、商品説明書及びホームページに「菁萃婦潔凝露」を商品名として使用し、販売したことに関して、同一又は類似の商品に係争商標と類似するものを使用したことにより、関連する消費者に混同誤認を生じさせる虞があるとして、商標法第29条第2項第3号の規定に違反し、係争商標を侵害したか否かにある。
(二) 係争商標は、著名商標に該当するか否か?もし著名商標に該当する場合、被上訴人等の前記行為は、係争商標中の「婦潔」二文字が営業主体又は出所を表彰する標識として使用されたことにより、係争商標の識別力を減損し、商標法第61条第1号に違反する係争商標の侵害と見なすか否かにある。

前記争点についての上訴人主張の理由及び被上訴人答弁の理由:省略。判決理由の説明をご参照下さい。

四 判決理由の要約
(一) 本件上訴人は、係争商品の包装箱、説明書、ホームページに「婦潔」文字を使用したことにより、関連する消費者に上訴人が製造した商品であると混同誤認を生じさせるに足りるとして、誤認させる虞がある云々と主張している。これに対して、被上訴人は「婦潔」が被上訴人の商品名の一部分に過ぎず、係争商品の種類、効能及び性質の説明に該当し、被上訴人の商標として使用したことでないばかりか、関連する消費者に混同誤認を生じさせる虞がない云々と抗弁した。調べた結果:
1、商標の主な機能は、商品又は役務の出所を識別することにある。このため、商標権者に与えられた排他権が、商標を商品又は役務の出所とする標識に限定し、第三者が、それを商標として使用しただけで、消費者に商品又は役務の出所についての同一性又は関連性の混同誤認を生じさせる可能性があり、始めて商標侵害を構成することになる。それ故、第三者が、もし商品又は役務の出所を表彰する目的に基づき他人の登録商標を商品、又は役務に使用した場合、始めて商標法でいう商標の使用に該当する。もし、商品又は役務を表彰する目的でなければ、形式的にたとえ商標を商品又は役務に使用した事実があっても、その使用の目的及び方法を酌量したところ、商品又は役務の関連説明のために使用するにとどまり、商標を使用する意図(intent to use)がなかった場合、通常の使用であり、商標法でいう商標の使用に該当しないとしている。また、商標使用のためであるか否かを判断するにあたり、その平面図像、デジタル映像・音声又は電子メディア等版面(画面)の前後配置、字体字形、フォントサイズ、色彩及びデザインに顕著性があるか否かを総合的に酌量するほか、その使用の性質により消費者にその表彰する商品又は役務の出所を区別させるに足りるか、並びにその使用目的は商標権者の商業上の信用にあやかった意図があるか等客観的証拠をもとに総合的に判断しなければならない。商品のパッケージに表示されたか、又は商品の広告、説明書の文字、図形に出現しただけで、当然として商標の使用を構成するとは限らない。
2、係争商品の商品説明書、包装箱、ビニールコート及び商品のホーンページ資料のすべてに「菁萃婦潔凝露」文字があり、すべてに係争商標の「婦潔」二文字が含まれている。しかしながら、商品ボトル自体をはじめ、商品説明書、包装箱及び商品ホーンページ資料等係争商品からなる全体的図形を総合的に考察した場合、その使用している色彩、図形、フォントサイズ等のデザインが、消費者の注意を引き、商品又は役務の出所を識別させようとするものは、いずれも顕著なピンク色の長方形枠内にやや大き目の白色英文字「SAUGELLA」(即ち中国語訳、「賽吉兒」である)である。また包装盒、商品説明書及び商品ホームページ上の「婦潔」二文字がその他の文字と並列し、例えば「賽吉兒7.0(初経前/閉経後)菁萃婦潔凝露」、「賽吉兒7.0(初経前/閉経後の女性用)菁萃婦潔凝露」、「賽吉兒菁萃婦潔凝露」、「賽吉兒菁萃婦潔凝露 黄金女郎型」の内の「婦潔」二文字の色彩、字体及び字形サイズのいずれも、並列しているその他の「菁萃」、「凝露」等文字又は商品説明文字とほぼ同一であり、特に目立った箇所がない。包装箱正面のビニールコートの真ん中に貼り付けている黄色円形シールの上にやや目立ったピンク色の字体で「菁萃婦潔凝露」と表示され、当該シールにも目立った青色の字体で「賽吉兒」(即ち「SAUGELLA」の中国語訳)と表示されている。そのため、係争商品のパッケージ及び関連表示から既にその出所が明確に被上訴人賽吉兒股份有限公司であることが示されている。被上訴人等は色彩、字体、字形又は美術デザインをもって故意に「婦潔」二文字を目立たせたことにより、消費者に女性用生理清潔薬剤商品の購入に際して、「菁萃婦潔凝露」等文字の表示により当該商品の出所が上訴人であると混同誤認を生じさせることがない。また、そのパッケージの上にある俳優をイメージキャラクターとして招聘し、「賽吉兒という秘密のお肌最高級ケア用品」をすすめたことから、被上訴人が係争商品の販売に際して、「賽吉兒」又は「SAUGELLA」をその商品の出所識別標識として使用し、係争商品と上訴人との関係を消費者に連想させたか、又は上訴人の商業上の信用にあやかった意図がないことは明らかである。これに準じて被上訴人は係争商品のパッケージ、説明書又は広告のホームページに「婦潔」の二文字を使用しているが、それを商品又は役務の出所標識として使用したのではないことから、商標使用の意図がなく、客観的に係争商品を購入するときに、消費者にその出所が上訴人又はその関係企業であるとの混合誤認を生じさせる可能性がない。
3、また、混同誤認の虞とは、商標又は標章を表彰する商品又は役務の性質、出所又は提供主体の混同誤認を関連する消費者に生じさせる虞があることをいう。混同誤認の虞があるか否かを判断するにあたり、商標識別力の強弱、商標の類否及びその類似程度、商品又は役務の類否及びその類似程度、先権利者による多角化経営の実態、実際に混同誤認を生じさせる事由、関連する消費者が各商標に対する熟知度、係争商標の出願人が善意であるか、販売方式及び販売の場所を総合的に酌量しなければならない。調べた結果、係争商標が女性用生理清潔薬剤、スキンケアジェル、人体用清潔剤等指定商品に使用され、係争商品が女性用生理清潔薬剤であり、両者はもとより同一の商品に該当する。また、係争商品の外観にピンク色の長方形枠内にやや大き目の白色英文字「SAUGELLA」並びに商品名「賽吉兒7. 0(初経前/閉経後)菁萃婦潔凝露」、「賽吉兒7.0(初経前/閉経後の女性用)菁萃婦潔凝露」、「賽吉兒菁萃婦潔凝露」を含む全体的な図形が示されている。その内、商品名に係争商標と同じ中国語の「婦潔」二文字が表示されているが、当該「婦潔」二文字を目立たないことは既に前述の通りである。もし当該二文字を全体的な商品名から分離抽出する場合、通常の取引経験又は消費者の観察により、却って不自然であるばかりか、商標類否を判断するにあたり、通常の知識、経験を有する消費者が購入の際に普通の注意を施し、全体的に観察するもので、商標文字又は図形をそれぞれ分離することができない原則と異なる。それで、係争商品が、関連する消費者に深い印象を与えた部分は、ピンク色の長方形枠内にやや大き目の白色英文字「SAUGELLA」又はピンク色、青色字体の「賽吉兒」等文字であり、商品名のうちの顕著性のない「婦潔」二文字ではない。それ故、係争商標と係争商品の図形との全体的な類似程度が高くないもので、関連する消費者の識別力及び注意力により、両者の商品名の全体的な文字及び図形から時間と場所を異にして隔離的観察が行われた際、その外観、呼称又は観念から判断すれば、いずれも同一又はシリーズ商標と連想させ難いものである。
(二) 上訴人は更に係争商標が既に25年間も登録、使用されていると主張した。係争商標の商品販売拠点及びその販売ルート、売店が各女性用ドラッグストアにわたっていることから、係争商標が著名商標に該当し、被上訴人等は係争商品に「婦潔」二文字を、営業主体又は出所を表彰する標識として使用したことにより、係争商標の識別力を明らかに減損し、被上訴人の行為が既に上訴人の係争商標等を侵害した云々と称している。
1、著名商標とは、既に関連する事業者又は消費者に広く認識されていると認定するに足りる客観的な証拠があることを言うもので、著名商標に高い知名度があり、他人に利用又は模造されやすいので、著名商標の識別機能を希薄化させるか、それとも混同誤認を生じさせる虞があることを避けるために、著名商標に対する特別な保護を与える。著名商標の認定について、個別事件に応じて、著名を十分認定できる次に掲げる要素を酌量しなければならない。
(1)関連する事業者又は消費者が商標の熟知又は認識程度。(2)商標使用期間、範囲及び地域。(3)商標の販売推進期間、範囲及び地域。商標の販売推進とは、商標を使用する商品又は役務の広告又は宣伝、並びに商業展示会又は展覧会での展示を含むことを言う。(4)商標登録、出願の期間、範囲及び地域。それを使用又は認識されると十分反映する程度に達しなければならない。(5)商標がその権利行使に成功した記録。特に行政又は司法機関により著名であると認定された事情をいう。(6)商標の価値。(7)その他著名商標又は標章を認定するに足りる要素。(8)著名商標の認定にあたり、我国において登録、出願又は使用を前提要件とせず、我国において関連する消費者に共同認識されているだけで事足りる。これは登録主義の例外事由に該当する。つまり著名の程度に達しているか否かの判断は、国内での関連する事業者又は消費者により行われるものである。調べた結果、係争「婦潔」商標は1985年2月16日より主務官庁により、商標登録の公告がされ、「女性用生理清潔薬剤」指定商品に使用され、その後、更に2003年ごろ、「婦潔」商標を付表に示す通りの「スキンケアジェル、人体用清潔剤」、「入浴薬剤、女性用潤滑軟膏、西洋薬」等各種類の指定商品に使用していることは、知的財産局による商標検索資料、商標登録証、更新許可書などがファイルに付されているので証明できる。且つ上訴人及びその前身即ち大亞公司は、更に1986年より、相次いで各平面メディア及びテレビメディアの広告で係争商標を使用した「婦潔液」商品の販売促進を行ったことも、各年間の新聞雑誌、テレビ広告の写真等がファイルに付されているので参考できる。このことは、係争商標が長年且つ広範にわたり販売促進のために使用され、既に国内での関連する消費者に通常認識され、係争商標が国内における著名な登録商標であることを認定するに足りるものである。
2、「商標権者の同意を得ず、次に掲げる事情の一に該当するものは、商標権を侵害するものとみなす。一、他人の著名な登録商標であることを明らかに知りながら同一又は類似の商標を使用し、又は当該著名商標にある文字を自らの会社名、商号名、ドメイン名又はその他の営業主体又は出所を表彰する標識とし、著名商標の識別性又は信用・名声に損害を生じさせるとき」と商標法第62条第1号に明文で規定されている。前記規定でいう「著名商標の識別性又は信用・名声に損害を生じさせるとき」とは、実際に損害を発生したとき、始めて該当するので、侵害のおそれがあるだけでは、前記の規定を適用できない。また、著名商標又は標章の識別力を損害するおそれがあるものとは、第三者が著名商標権者又は標章権者の同意を得ないで、無断で当該著名商標又は標章と同一又は類似の標識を使用したことにより、単一且つ特定商品又は役務の出所を高度に示した当該著名商標又は標章がもとより有する特徴及びイメージが弱くなり、当該著名商標又は標章が二種以上の出所に由来すると示され、当該著名商標又は標章の識別力を希薄化又は弱化させる可能性がある。
3、調べた結果、被上訴人等は「菁萃婦潔凝露」を商品名として使用したが、上訴人が提出した被上訴人の雑誌及び新交通システムの照明ボックスに掲載した平面広告では、すべてが「賽吉兒」及び「SAUGELLA」を強調したものである。係争商品は被上訴人等が販売している「賽吉兒菁萃潔浴凝露」、「賽吉兒菁萃柔嫩乳霜」、「賽吉兒菁萃婦潔凝露」等シリーズ商品の一種類にすぎず、被上訴人は記者会見でその商品の促進販売又は係争商品を陳列棚に陳列、販売したとき、人に注目され、その営業主体又は出所を十分連想させる顕著な標識は、いずれも「SAUGELLA」又は「賽吉兒」であり、「婦潔」二文字を営業主体又は出所の表彰標識として使用していなかったことは、現場写真が裏付けとして証明できる。また、上訴人が「婦潔」二文字を検索条件として各オークションサイトで検索した資料を提出した。その上に係争商品又は上訴人商品が同時に見つかったか、それとも係争商品が見つかっただけである。しかし、その見つかった係争商品の表示がそれぞれ「SAUGELLA賽吉兒菁萃婦潔凝露」又は「賽吉兒PH7.0菁萃婦潔凝露」である一方、上訴人の商品はそれぞれ「《婦潔》洗露」、「《婦潔》私密緊実精華凝膠」、「《婦潔》私密専用潔膚露」と表示されていることから、両者が明確に区別できる。ましてや、本裁判所では職権で「婦潔液」及び「賽吉兒」を条件としてグーグルで検索した結果、「婦潔液」及び「賽吉兒」が異なる出所に由来するブラントであると認定した消費者が数多くおり、それぞれ愛好者がいることが判明した。それ故、被上訴人等は「婦潔」二文字を商品名の一部文字として使用したことは、もとより単一且つ特定商品又は役務の出所を高度に示した係争商標が有する特徴及びイメージが弱くさせ、その識別力を希薄化又は弱化させた何らかの事情に該当するとは認定され難い。更に、上訴人は係争商品名の使用について、前記商標の識別力を希薄した結果に繋がると証明できる何らの証拠も提出していないことから、被上訴人等が商標法第62条第1 号に違反した事由に該当するとは認められ難いものである。

前記を総合すると、上訴人の請求はいずれも理由がなく、棄却する。その仮執行の請求にも根拠がないことから、併せて棄却する。原審で上訴人が原審における訴え及び仮執行の申立てを棄却したことは適切である。上訴人による上訴趣旨で原判決の不当を指摘し、それを破棄し、改めて判決を下すよう要請したことには理由がないので、棄却されるべきである。

中華民国99年10月28日

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