VICTORIA'S SECRETサブブランド、犬の図形商標が敗訴

2014-05-14 2011年

■ 判決分類:商標

I VICTORIA'S SECRETサブブランド、犬の図形商標が敗訴
米国企業vs. 日本企業、ゴールデン・レトリバーvs.ラブラドール・レトリバー、混同のおそれで米国企業の訴願は棄却され、行政訴訟でも敗訴。

■ ハイライト
米国の大手アンダーウェアブランド「VICTORIA'S SECRET」は台湾で「dog design」の図案を少女向け服飾サブブランドに使用する商標として登録するよう出願したが拒絶査定を受けたことを不服として知的財産裁判所に訴訟を提起していた。裁判所は、当該商標が日本の株式会社ニューイングランドが登録している商標に極めて類似しているとして米国企業に敗訴を言い渡した。 
裁判官によると、米「VICTORIA'S SECRET」は日本の犬の商標がラブラドール・レトリバーであるのに対して、自社の商標がゴールデン・レトリバーの子犬であると主張していたが、両者の商標はほぼ区別できない高類似度の商標に属する。
またVICTORIA'S SECRETは、当該社の犬の商標がすでにEUやその他十数ヵ国で商標を登録されているのに対して、日本の犬の商標は台湾で登録されているが台湾で商標を使用しておらず、サイトで日本の消費者にサービスを提供しているだけであり、両商標を比較するとVICTORIA'S SECRETの方が台湾における知名度が高い、と主張していた。
しかしながら裁判官は、VICTORIA'S SECRETの販売データにはそれを証明できる文書がなく、ネット上で当該商標に関する書き込みも極めて少なく、当該商標がすでに大量に使用され台湾消費者に広く知悉されているとは認めがたいため、両商標は消費者に混同を生じさせるおそれがあると判断し、VICTORIA'S SECRETに敗訴を言い渡した。

II 判決内容の要約

■ 基礎データ

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】99年度行商訴,100
【裁判期日】2010年11月25日
【裁判事由】商標登録

原   告 美商維多利亞的秘密商店商標管理公司(VICTORIA'S SECRET STORES BRAND MANAGEMENT,INC.)
被   告 経済部知的財産局
以上の当事者間で商標登録事件をめぐり、原告が経済部2010年3月25日経訴字第09906053540号訴願決定を不服として行政訴訟を提起した。知的財産裁判所は以下のように判決を下した。

主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告が負担するものとする。

一 事実要約
商標法施行細則第13条に定められている商品及び役務の区分表第3、25、35類の商品又は役務における使用を指定し、被告に対して商標登録を出願した。その後原告は2009年4月7日に被告に対して分割を出願し、被告によって第098880019号商標及び第098880020号商標に分割され再び審査を受けた。その結果、被告は係争商標が拒絶の根拠とされる登録第0000000号「Labrador Retriever & dog Device」商標(以下、「引用商標」)と類似を構成しており、さらには指定の商品/役務も同一又は類似しているため、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるとして、2009年9月15日商標核駁第0000000号査定通知書にて拒絶査定を行った。原告はこれを不服として行政訴願を提起したが棄却され、すぐに知的財産裁判所に行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告:1.訴願決定及び原処分の取消を請求する。2.被告に本件の出願第098880020号「Dog Design」商標の登録を許可することを請求する。3.訴訟費用の被告負担を請求する。
(二)被告:1.原告の訴えを棄却することを請求する。2.訴訟費用の原告負担を請求する。

三 本件の争点
引用商標が商標法第23条第1項第13号に規定される登録できない状況があるか否か。
(一)原告側の主張:略。判決理由の要約を参照。
(二)被告側の主張:略。判決理由の要約を参照。

四 判決理由の要約
(一) 調べたところ、係争商標は輪郭のラインのみが描かれ、頭が左向き、尾が上向きで立っている犬の図案で構成されている。一方、引用商標は黒色で頭が左向き、尾が上向きで立っている犬の図案の中にアルファベット「Labrador Retriever」が組み合わされている。両商標を比較すると、アルファベット「Labrador Retriever」の有無、犬図案が中抜きか否かの差異がある。「Labrador Retriever」はラブラドール・レトリバーの意味で、これは引用商標の犬の図案がラブラドール・レトリバーであることを示している。係争商標は中抜きでラインのみのデザインで、引用商標は黒色の影絵(黒ベタ)であるが、原告が提出した商品カタログによると、係争商標を実際に商品上で使用する際、一部は中抜き、一部は影絵としており(本裁判所ファイル45-45、49、51-52、55ページを参照)、引用商標の犬の図案とは区別しがたい。両商標の犬の図案が人に与える印象はいずれも頭が左向きで立ち、尾が上を向いている他、頭部のデザイン、体のプロポーションと前後脚で立っているという全体の構図もほぼ同じである。消費者が商品を購入する際、中抜きのラインで構成されたデザインで犬がラブラドール・レトリバーかゴールデン・レトリバーかを判断することは難しく、両者は外観及び観念上類似している。両商標が同一又は類似の商品又は役務で使用された場合、普通の知識経験を有する消費者が購買時に普通の注意を施した時に、二つの商品又は役務が同一の出所を有すると誤認混同する、又は出所は異なるが関連のあるシリーズ商標であると誤認する可能性があり、高類似度を構成する商標に属するといえる。

(二) 調べたところ、両商標はいずれもよく見かける犬の図案を持ち、関連商品の購買者にとってその出所を識別する機能は弱い。双方の差異は主にアルファベットの有無のみであり、その他のデザインの特徴はない。原告は異なる文字を加えて消費者に係争商標と引用商標が表彰する商品の出所が違うと区別させることをしていないため、その外観と観念の類似度は極めて高い。これらの犬の図案の識別性が弱いだけで、両商標が類似を構成しないとすることはできない。

(三) 係争商標は指定商品を「被服、アンダーウェア、スポーツウェア、スポーツスーツ、ジャケット、ハイソックス、シューズ・ブーツ」としており、引用商標の指定商品である「被服、スポーツウェア、アンダーウェア、シューズ・ブーツ、ソックス」等と商品の機能、用途が同一または類似している。通常は同一の生産主体からのもので、販売ルート、販売場所とも極めて類似している。一般的な社会通念と市場取引状況から判断して、同一又は類似の商品に属するといえる。このほかに、係争商標は被服、アンダーウェアの小売又はネット販売サービスを指定役務としており、「被服、アンダーウェア」等の特定の商品の販売を行っているため、引用商標の指定商品と高度の類似を構成している。

(四) 原告が出願時に提出した添付資料5及び訴願時に提出した添付資料6(すなわち起訴証拠4)はいずれも外国語の商品カタログで、且つ商品価格がいずれも米ドルで表示されており、前述のカタログが海外で使用されていることは明らかであり、原告がわが国で係争商標を使用しているという証拠にすることはできない。原告は係争商標の商品が2004年から2009年7月12日までに台湾で326,483.59米ドル販売され、2010年1月29日までに台湾消費者がネット上で係争商標を購入した取引記録は2万件以上に達しており、係争商標は消費者に広く知悉されている等を主張している。しかしながら調べたところ、前述の販売金額は原告からが提出したいかなる資料からも証明されていない。

(五) 原告は本件両商標が米国又はシンガポールで併存登録されており、係争商標はEU、オーストラリア、ドミニカ、グアテマラ、ホンジュラス、香港、ヨルダン、メキシコ、ノルウェー、フィリピン、ロシア、スイス等の国で登録されていると指摘し、確かにこれは提出された商標登録証と商標検索資料で証明されている。係争商標は確かに長期間にわたって米国で指定商品に使用され販売されており、原告は提出した2004~2007年のカタログで証明している。しかしながら原告が各国で係争商標を使用している状況は異なり、係争商標が各国で登録の審査を受けた結果も異なる。ましてや前述の国家がすべて登録主義を採用しているかは分からない。たとえ登録主義を採用していたとしても、引用商標が上記国家で登録されていない、あるいはすでに取り消されており、その審査結果も異なるため、それに基づいて係争商標が登録を許可されるべきであるとする有利な論拠とはしがたい。

以上をまとめると、本件は両商標の先天的な識別性がいずれも高くないが、類似度が高く、且つ指定商品又は指定役務も高度に類似しており、ファイル内で使用された証拠に基づいて係争商標がすでに原告によって大量に使用され、わが国の消費者に広く知悉されている要素を認めがたいことを斟酌し、関連する消費者に両商標の商品/役務が同一の出所を有すると誤認させる、又は両商標の使用者の間に関連企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在すると誤認させ、誤認混同を生じさせるおそれがあるため、商標法第23条第1項13号の規定を適用するものとする。被告は係争商標登録を拒絶査定するべきである。

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