兄弟間でマットレス「德泰」商標をめぐる類似争議。裁判所が「德泰」の2文字は消費者に商品の供給元を識別させる機能を欠いていると認定。兄弟ともに継続使用可能。

2014-05-14 2011年

■ 判決分類:商標

I 兄弟間でマットレス「德泰」商標をめぐる類似争議。裁判所が「德泰」の2文字は消費者に商品の供給元を識別させる機能を欠いていると認定。兄弟ともに継続使用可能。

■ ハイライト
「德泰」マットレス商標で対立。ベッド製造で著名な台南の顔得鴻と顔得安の二人が兄弟で袂を分かち、それぞれでマットレスを製造しているが、同一の「德泰」商標を使用している為に、兄弟で40年以上もの間、法廷における商標権の争議を繰り広げてきた。兄は知的財産局に德泰マットレス登録が認められなかったことを不服として告訴し、最近になって知的財産裁判所から商標が高度に類似しているとの判決が下り、兄側の敗訴となった。
本件判決では確かに弟が風上に立ったが、なおも双方は「德泰」の二文字を使用して引き続きスプリングベッドを製造することが認められた。但し、どちらもマットレス商品区分における商標登録権を手中に収めることができなかった。

兄弟で袂を分かち、 商標権を争い四十余年

判決書によると、「德泰」商標権は当初德泰スプリング工場の兄である顔得鴻が登録したが、その後顔得鴻と弟の顔得安等が1963年11月に共同で「德泰スプリングベッド公司」を設立した。しかし兄弟で袂を分かち、顔得安がこの会社とその商標権を引き継ぎ、顔得鴻が別途に「法蘭西ベッド公司」を設立した。
双方はそれぞれ德泰及び図、德泰、TEH TAI等の図案で、次々に数十件の商標を出願登録し、その内、弟がその後出願登録した十数件の商標は、全て異議申立てを受けて取消しが確定している。また、兄が出願登録した数十件の商標の内、中国語の二文字「德泰」は「スプリングベッド」商品に使用指定していたが、弟の公司名称と同一であることから登録が取消され、「スプリング、掛け布団、ベッドカバー」等の商品においてのみ有效となっていた。
四十年来、兄弟の間では民、刑事及び行政訴訟などの訴訟が絶えず、これまで双方がスプリングベッド商品に使用している「德泰」商標も登録を許可されていない。今回は法蘭西ベッド公司が2003年に、「德泰及び図」を商標登録したが、弟がこれを発見して知的財産局に異議を申立てたところ、商標の取消しが成立したものである。兄側はこれを不服として訴願を提起したが棄却された為、知的財産裁判所に対し知的財産局を相手取って訴えを起こした。
兄である顔得鴻が経営する法蘭西ベッド公司は、自分達が商標を取得した時期が弟の顔得安の「德泰スプリングベッド公司」創立の時期よりも早く、なお且つ父親である顔清浪も1976年に「德泰」は顔得鴻のオリジナルであるとの証明書を出していると主張した。しかし一方の德泰スプリングベッド公司側は、商標について双方が共同で創作して使用していたものであり、父親の証明書は兄が書いた後で父親にサインを迫ったものだったと抗弁した。

スプリングベッドには未登録の為、双方ともに德泰の使用が可能

合議審では、両商標が高度に類似しており、商品区分も全て同一商品であるので、消費層も高度に重複しており、双方とも「德泰」の二文字を商品にすると一般の購入者も「德泰」の二文字だけで識別することができないと認定し、告訴棄却の判決を言い渡した。(自由2010年11月20日‧A27版)

II 判決内容の要約

■基礎データ

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】99,行商訴,126
【裁判事由】商標異議
【裁判期日】991111

原   告 法蘭西ベッド股份有限公司
被   告 経済部智慧財産局
參 加 人 德泰スプリングベッド股份有限公司

上記当事者間の商標異議事件について、原告は経済部2010年5月12日経訴字第09906056480号訴願決定を不服とし、行政訴訟を提起した。本裁判所は職権により参加人に本件訴訟に独立参加するよう命じ、以下のように判決する。︰

主 文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実要約
原告は2003年11月20日に「德泰及び図」商標を、当時の商標法施行細則第49条で所定の商品及び役務区分表第20区分の「家具、食器棚、テーブル、椅子、ソファー、ベッド、ベッドフレーム、マットレス、スプリングベッド、棚付きベッド、電動ベッド、スプリングマットレス、ドレッサー」商品に指定使用して被告に出願し、同局の審査を経て、第1115923号商標(以下、係争商標)の登録を許可された。その後、参加人が2004年10月26日に係争商標が商標法第23条第1項第12、13、14及び16号規定に違反しているとして、これに異議を申立てた。被告は審査を経て、係争商標が商標法第23条第1項第12号規定に違反していることを認め、2009年11月27日に中台異字第931258号商標異議審決書を以って係争商標の登録を取消すべきだとの処分を下した。原告はこれを不服として訴願を提起したが、経済部2010年5月12日付経訴字第09906056480号訴願決定により棄却された。原告はやはりこれも不服として本裁判所に行政訴訟を提起した。本裁判所は本件判決の結果が参加人の権利や法律上の利益に影響することから、職権により参加人に本件訴訟に独立参加するよう命じた。

二 両方当事者の請求内容
(一) 原告:「德泰」は原告が自ら創設し、スプリング、スプリングベッド商品に使用している著名な商標であり、参加人とはその商業的名声を共有してはいない。
(二) 被告:係争商標図案は円の中に中国語の「德泰」を配した構成になっており、参加人が異議申立ての根拠とする「德泰及び図」商標図案も同じく中国語の「德泰」を円形の枠の中に配しており、二者は完全に同一である。異議申立ての根拠とする「德泰」、「TEH TAI」商標図案は、単純な中国語の「德泰」もしくは英文字の「TEH TAI」で構成されており、係争商標図案や同一の中国語「德泰」、や英文字「TEH TAI」と中国語の「德泰」の読音も類似しているので、普通の知識経験を有する消費者が購入時に普通の注意を払い、異なる時に異なる地点から観察及び呼称する際には、類似を構成する商標である。また参加人は1963年11月5日の創立時に異議申立ての根拠とする「德泰及び図」、「德泰」、「TEH TAI」等商標表彰をその製造している各種スプリングベッド等商品に使用して、既に四十余年であり、二つの商標が高度に類似していることや、異議申立ての根拠とするいくつかの商標が著名な商標である等の関連要因素があり、原告が関係者の同意を得ずに類似の商標を出願登録して、同一もしくは極めて関連性の強いベッド、スプリングベッド、ベッドフレーム、棚付きベッド、ドレッサー…等商品に使用したことは、関連の公衆に二商標が提供している商品が同一の供給元のシリーズ商品であると誤認させたり、又は、二つの商標の使用者間には関係企業、許諾関係、加盟関係もしくはその他類似関係が存在すると誤認させて混同誤認を招くので、商標法第23条第1項第12号規定を適用しなければならない。

三 本件の争点
係争商標が商標法第23条第1項第12号規定に違反するのか?

四 判決理由の要約
係争商標図案は円の中に中国語の「德泰」を配した構成になっており、参加人が異議申立ての根拠とする「德泰及び図」商標図案も同じく中国語の「德泰」を円形の枠の中に配しており、二者は完全に同一である。異議申立ての根拠とする「德泰」、「TEH TAI」商標図案は、単純な中国語の「德泰」もしくは英文字の「TEH TAI」で構成されており、係争商標図案や同一の中国語「德泰」、や英文字「TEH TAI」と中国語の「德泰」の読音も類似しているので、普通の知識経験を有する消費者が購入時に普通の注意を払い、異なる時に異なる地点から観察及び呼称する際には、高度な類似を構成する商標である。

次に、参加人德泰スプリングベッド股份有限公司は1963年11月5日の創立時から、異議申立ての根拠とする「德泰及び図」、「德泰」、「TEH TAI」等商標表彰をその製造する各種スプリングベッド等商品に使用して、既に四十余年となっている。長期的に新聞、雑誌等の広告宣伝による販売促進の外、全国各地に販売業者及び販売拠点を設け、それと並行して国外に製品を販売し、長年にわたり国内外の各ホテル及び旅館も参加人の異議申立ての根拠とする各商標の製品を使用してきたことは、参加人が異議申立て階段で提出した会社基本資料(異議理由書添付8)、2001及び2002年中華民国室内設計協会「CSID專刊」、2001年9月1日付大買家科技股份有限公司と締結した「台湾内装網廠商提携契約書」、2002年6月20、27日、7月28日付の中国時報、2002年7月11日付新聞広告、2002年7月12日付中国時報夕刊、2002年8月10日付自由時報、2003年6月26日付の聯合報(異議理由書添付3)、1962年から1989年の参加人スプリングベッドユーザー一覽表(2005年4月22日提出の添付12)、圓山大飯店及び老爺大酒店がそれぞれ1974年7月1日及び1988年3月5日付で発給した書類(2005年4月22日提出した添付13、14)、杉林溪遊樂事業股份有限公司が1986年3月31日に参加人スプリングベッド商品を購入した際に発行した小切手関連書類(2005年4月22日提出した添付15)、1985年から2003年までの各ホテル及び旅館と参加人が交わしたスプリングベッド売買契約書(2005年4月22日提出の添付16)、1994年から2004年までの顧客販売統計表(2005年4月22日提出の添付17)、1988年から2001年まで関係人製品をグァム、香港、ハワイ、日本等へ輸出した書類資料(2005年4月22日提出の添付20)等証拠資料写しがファイルに添付されており、確認することができる。以上から、異議申立ての根拠とする種々の商標が表彰する商品の品質と評判は係争商標が2003年11月20日に出願登録される以前から、既に広く関係業者もしくは消費者に認知されている著名と言える程度であったと認められる。

係争商標が使用指定されている「ベッド、ベッドスプリング、スプリングベッド、電動ベッド、スプリングベッドスプリング」商品と、異議申立ての根拠とする各種商標が実際に使用されている各種スプリングベッド等商品は同一商品に属するものであり、係争商標が使用指定されている「家具、食器棚、テーブル、椅子、ソファー、ベッドフレーム、棚付きベッド、ドレッサー」商品は、スプリングベッド商品とは、相互の組合わせによる使用、もしくは同一の場所で陳列販売する形で消費者に選択してもらう状況があり、消費層が高度に重複している。よって、一般的な社会通念及び市場状況に基づけば、二つの商標が使用されている商品の間には共同もしくは関連したところがあると言える。

しかし、双方はこれまで「德泰」商標を継続的に「スプリングベッド」商品に使用しており、また、それぞれが提出した使用資料は少数ではない。原告の使用方法は通常円形枠内に縦書きの「德泰」の二文字を配し、なお且つ四隅に「登録商標」の四文字を標示し、更に「ベッド内に使用の德泰ブランドスプリング登録14701商標」又は「スプリング登録14701号」等の文字を注記している。一方、参加人の使用方法は圓形枠内に縦書きの「德泰」二文字を配し、その横に「德泰スプリングベッド股份有限公司」という公司名称を標示しており、なお且つ広告の文では「ベッドスプリングに『德泰スプリングベッド股份有限公司』のフルネームがあるものだけが、真正品ですので、模倣品を防ぐ為ご確認ください。」と注記している。双方とも「德泰」の二文字を商品のシンボルとしており、各自公司名称及び称号等の文字を注記して販売促進をしているので、一般商品の購入者は「德泰」の二文字のみによって二つの商品の供給元を知る根拠とすることができないのである。

2010年11月11日
知的財産権裁判所第二法廷
審判長裁判官 陳忠行
法裁判 熊誦梅
裁判官 曾啓謀

五 関連条文抜粋
商標法第23条第1項第12号:他人の著名な商標又は標章と同一又は類似し、関連する公衆に混同誤認を生じさせるおそれがあるか、又は著名な商標もしくは標章の識別性や信用・名声を減損させるおそれがあるものは出願登録することができない。
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