台湾においてWOLSEYは著名商標ではないので、英国企業代理店からの異議申立が敗訴となる

2014-05-14 2011年

■ 判決分類:商標

I 台湾においてWOLSEYは著名商標ではないので、英国企業代理店からの異議申立が敗訴となる

■ ハイライト
英国の著名な服飾ブランド「WOLSEY」が2つ出現!英国のWOLSEYは台湾の華益皮件有限公司(以下「華益皮件」)の英語商標が「WOLSEY」であるため、行政訴訟を提起し、商標の登録取消を請求していた。[知的財産裁判所行政判決99行商訴115]
英国のWOLSEYは1755年に創業され、1897年にWOLSEYの商標で服飾ブランドを立ち上げた。ゴルフウエアを販売し、1935年と1959年の二度にわたって英国王室御用達の委任状を獲得し、英国王室御用達のニット製品サプライヤとなった。
一方、華益皮件は台湾企業で、他人が登録した「德全瓊玉及びWOLSEY」商標を引き継ぎ、ベルトのバックル、ボタン、ファスナーに商標を使用している。
2007年英国WOLSEYの台湾代理店である台湾中瑞国際企業股份有限公司(以下「中瑞公司」)は華益皮件の商標が代理販売する服飾の商標と同じであり、華益は他商標の知名度を利用しようとした疑いがあるとして経済部知的財産局に対して無効審判を請求したが、棄却された。
中瑞公司は知的財産裁判所に行政訴訟を提起し、同社の商標は英国において長い歴史を持ち、英国王室御用達の服飾メーカーで世界20カ国に販売拠点を持っており、華益皮件の商標が使用されるベルトのバックル、ボタン及び服飾関連のアクセサリーであるため、消費者に混同を生じさせるおそれがあると主張した。
それに対して華益皮件は、同社の商標は、中国語部分が責任者夫妻の氏名を組み合わせたもので、英語部分のWOLSEYもその他の英単語と組み合わせたものであるため、WOLSEY商標の知名度を利用しようとしたものではないと反論した。
知的財産裁判所は審理の結果、英国企業の代理店である中瑞公司は商標法で定められた期限内に異議申立を行わず、台湾消費者が熟知した有名商標であることも証明できないため、英国企業に敗訴を言い渡した。(2010-11-22/聯合報/A10版)

II 判決内容の要約

■ 基礎データ

知的財産裁判所 判決書 -- 行政類
【裁判番号】99年度行商訴字第115号
【裁判期日】2010年11月11日
【裁判事由】商標の無効審判請求

原   告 台湾中瑞国際企業股份有限公司
被   告 経済部知的財産局
参 加 人 華益皮件百貨有限公司

上記当事者間における商標の無効審判請求事件につき、原告は経済部の2010年5月5日経訴字第09906056060号訴願決定を不服として行政訴訟を提起した。本裁判所は参加人に対して本件被告の訴訟に独立参加することを命じ、以下のように判決を下した。:

主 文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実要約
訴外人丙○○は1988年11月21日に「德全瓊玉及び図Wolsey」商標を以てその登録第437162号「德全瓊玉」正商標の連合商標にし、当時商標法施行細則第24条第42類の「バックル、ボタン、ファスナー、ジッパー」商品における使用指定を行い、被告に対して商標登録を出願し、その後訴外人丙○○は1991年2月1日に被告に対して、商標出願者を訴外人佳美革製品工場の呉賜卿に変更することを出願し、被告による審査の結果、登録第530415号聯合商標の登録(以下は係争商標と称する)を許可し、権利期間は1991年8月1日から1999年3月31日までとした。係争商標はその後、二回にわたり登録が更新され、現在「バックル、ボタン、ファスナー」商品に登録が更新され、商標権利期間が2019年3月31日までとなっている。また1993年8月24日に訴外人呉賜卿は係争商標を参加人華益皮件百貨有限公司(名称変更前は華益皮件有限公司)に譲渡した。その後、商標法は2003年11月28日に修正、施行され、現行商標法第86条第1項の規定では、2003年11月28日から、係争商標は独立した登録商標と見做すことになった。原告(元名は皇家金狐狸股份有限公司で、その後2008年1月7日に会社名称が台湾中瑞国際企業股份有限公司に変更された)は、無効審判請求の根拠とする商標として、「WOLSEY」、「A Device」等商標(以下は無効審判請求の根拠とする商標と称する)を提出したが、2007年11月29日に係争商標の1999年4月1日付の更新登録は、当時の商標法第37条第7号及び現行商標法第23条第1項第12号の規定に違反するとして、無効審判を請求した。被告による審査の結果、2009年11月18日付の中台評字第960407号商標無効審判請求審決書を以って「請求を退ける」の処分を下した。原告はこれを不服として訴願を提起したが、訴願決定で棄却され、原告はさらにこれを不服として本裁判所に行政訴訟を提起した。本裁判所は、本件訴訟の判決結果が、参加人の権利又は法律上の利益に損害を与えると認定し、行政訴訟法第42条第1項に基づき、職権による決定を以って本件被告の訴訟に参加人が独立参加することを命じた。

二 両方当事者の請求内容
(一) 原告:原処分書及び訴願決定では無効審判請求の根拠とする商標について、1992年から1999年までの間に日本で製品カタログを発行し、製品を販売した事実があると認定したが、その使用の地域が国外であり、無効審判請求の根拠とする商標が国外で広く使用され、その知名度が我国にも及んでいると証明できるその他の客観的証拠もなく、これを以って無効審判請求の根拠とする商標は我国の関連事業または消費者に普遍的に認知され、高い知名度を有しているとは認定できない。従って、無効審判請求の根拠とする商標の服飾商品等における高知名度は、係争商標を含む部品パーツ業者に熟知されているので、我国においても無効審判請求の根拠とする商標は著名商標であるはずだが、原処分及び訴願決定はこの部分について斟酌しなかったので、明らかに重大な瑕疵がある。参加人は前手から係争商標権を譲り受けた時、著名な商標権者及び消費者の権益に損害を与える可能性があり、且つこれで不正競爭による利益を得ることを知っていたはずなので、係争商標の登録を出願した時に参加人に悪意があったと認定できる。

(二) 被告:係争商標の1999年4月1日の更新登録から原告の無効審判の請求までに、既に5年も過ぎたことについて、原告は否認しておらず、係争商標の更新登録は現行商標法第23条第1項第12号の規定に違反し、且つ悪意がなければ、現行商標法第51条の規定により、当然無効審判が請求できない。よって、たとえ無効審判請求の根拠とする商標がかつて著名商標であったとしても、係争商標の更新登録の許可を得た時、著名商標でもあるとは限らず、著名商標保護審査基準第2.1.2.1点の6規定により著名商標と認定できる。また前記証拠では無効審判請求の根拠とする商標が係争商標の更新登録時、即ち1999年4月1日に、我国の関連事業または消費者に普遍的に認知されたから、著名程度であると推論できない。
しかし前記証拠では、無効審判請求の根拠とする商標が係争商標の更新登録時、即ち1999年4月1日に、我国の関連事業または消費者に普遍的に認知されたから、著名程度であるとは認定できない。
原告は、参加人が係争商標の登録を出願した時に悪意があったと主張したが、原告は2007年11月29日に係争商標の1999年4月1日付更新登録について無効審判を請求した時、前記現行商標法第51条第1項に規定されている5年の除斥期間が過ぎ、同法第51条第3項規定が適用されないので、原告の係争商標の1999年4月1日付更新登録は、更新登録時の商標法第37条第7号及び現行商標法第23条第1項第12号規定に違反したとの主張は、当然棄却されるべきであり、併せて原告の訴えの棄却も声明した。

三 本件の争点
係争商標「德全瓊玉及び図Wolsey」は商標法第23条第1項12号の規定に違反したか否か?

四 判決理由の要約
(一) 本件原告が本件無効審判を請求した時期が2007年11月29日であり、係争商標の更新登録から既に7年7ヶ月程も経過しており、前記規定の説明では、明らかに5年期間が過ぎたので、原告が本件無効審判を請求したことは、法に違反することになった。

(二) その中の一部の証拠は、係争商標の1999年4月1日付更新登録から既に約7年を経過し、前記資料が7年後でも、消費者に普遍的に認知されているか否かについては、なお不明である。たとえ原告の無効審判請求の根拠とする商標がかつて著名商標であったとしても、前記時期を経た後、係争商標の更新登録が許可された時でも著名商標であるか否かについて、まだ疑問があり、原告が提出した前記証拠資料だけでは、無効審判請求の根拠とする商標が係争商標の更新登録、即ち1999年4月1日の時に、我国の関連事業または消費者に普遍的に認知された著名程度であるとは確信し難い。その中の一部資料で表示された時間は係争商標の更新登録の後なので、係争商標の更新登録を出願した時、無効審判請求の根拠とする商標が著名な商標であるか否かについての認定資料にならなく、且つ我国の関連事業または消費者に普遍的に認知されたから、著名程度であるとは認定し難い。なお原告は、無効審判請求の根拠とする商標商品の国内の広告宣伝、販売地域、販売数量金額についても証明しておらず、無効審判請求の根拠とする商標が係争商標の更新登録、即ち1999年4月1日の時に、我国の関連事業または消費者に普遍的に認知された著名程度であるであると認定するに足りない。

(三) 原告はまた、参加人が係争商標の登録を出願した時に悪意があった云々と主張したが、原告は我国の国境において無効審判請求の根拠とする商標が係争商標の更新登録時に著名商標であるか否かについて証明しなかったので、参加人に悪意があるか否かについて、再び論争する必要がない。たとえ原告の無効審判請求とする商標が確かに著名商標であると認定しても、原告は参加人が係争商標を譲り受け、係争商標の更新登録時に悪意があるか否かについて、証明しておらず、且つ係争商標が我国に登録を出願し、同時に数十年にわたり併存し、2007年11月29日に始めて係争商標の1999年4月1日付更新登録について無効審判を請求した時、既に前記現行商標法第51条第1項で規定された5年の除斥期間が過ぎたので、原告が係争商標の1999年4月1日の更新登録は、更新登録時の商標法第37条第7号及び現行商標法第23条第1項第12号規定に違反した云々と主張したことには、理由がないので、棄却されるべきである。

中華民国99年11月11日
知的財産裁判所第一廷
審判長裁判官  李得灶
裁判官 林欣蓉
裁判官 汪漢卿

五 関連条文抜粋
商標法第91条第2項:「2003年4月29日に改正された本法施行前の登録商標、証明標章及び団体標章に対して、本改正施行後に無効審判を請求、又は提起するものは、その登録時及び本改正施行後の規定によりいずれの違法事由にも該当する場合に限る。」
係争商標1999年4月1日更新登録時商標法第37条第7号:「他人の著名商標又は標章と同一又は類似のものであって、公衆に誤認混同を生じさせるおそれがあるものは、登録を受けることができない。」。商標法第23条第1項第12号:「他人の著名な商標又は標章と同一又は類似し、関連する公衆に誤認混同を生じさせるおそれがあり、又は著名商標又は標章の識別性又は信用・名声に損害を生じさせるおそれがあるものは、登録を受けることができない。」
商標法第51条第1項及び第3項:「商標の登録が第23条第1項第1号、第2号、第12号乃至第17号又は第59条第4項の規定に違反するときでも、登録公告の日から5年を経過したものは、無効審判を請求又は提起することができない。」
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