商標はいずれも007、米国企業が檳榔(ビンロウ)業者に勝訴

2014-05-14 2011年

■ 判決分類:商標

I 商標はいずれも007、米国企業が檳榔(ビンロウ)業者に勝訴

■ ハイライト
「007」の商標を登録している米国企業、ダンジャック・エル・エル・シー(Danjaq, LLC、以下「ダンジャック」)が、台湾の檳榔(ビンロウ、これは噛みタバコのような嗜好品として使用される植物の種子)業者が「007阿松」という商標を使用していることをみつけ、知的財産裁判所に対して商標の取消を求めて提訴したところ勝訴した(知的財産裁判所行政判決-99行商訴113)。
ダンジャック側の主張によると、台湾の檳榔業者である品天下実業公司(以下「品天下」)は「007阿松」商標を腕時計等の製品区分での使用で登録し、当該商標は手でピストルの形状をかたどった図形であり、ダンジャックの商標に類似しているため、消費者に同シリーズの製品であると誤認を生じさせるおそれがある。さらに「007阿松」商標の腕時計はすでに3年間市場で販売されておらず、商標法に基づいて商標権を取り消すべきである。
一方、品天下側の主張によると、ダンジャックの「007」シリーズ商標製品は大部分が海外で使用されており、国内では幅広く販売されていない。また、消費者の印象にあるのは「007」の映画であって、商標ではない。品天下が「007阿松」を商標とした腕時計は檳榔の販売店(スタンド)に置かれ、消費者が檳榔材料製品を購入した時の景品であり、販促機能をそなえている。購入者に贈るものなので、同商標の製品を市場で販売し、使用してきたとみなすべきである。
裁判官は、品天下の「007阿松」商標とダンジャックの「007」は類似しており、品天下は「007阿松」腕時計の販売記録に関する証拠書類を提出しておらず、又これは販促景品に属するため、品天下が「007阿松」商標を3年間使用していないとみなし、商標法に基づいて当該企業「007阿松」の商標権を取り消すとの判決を下した。(聯合報20101206/A9)

II 判決内容の要約

■ 基礎データ

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】99,行商訴,113
【裁判期日】991125
【裁判事由】商標廃止

原   告 米国企業‧ダンジャック・エル・エル・シー DANJAQ LLC
被   告 経済部知的財産局
参 加 人 品天下実業有限公司

上記当事者間の商標廃止事件につき、原告は経済部2010年4月20日経訴字第09906053680号訴願決定に不服として行政訴訟を提起し、本裁判所では參加人が独立して本件被告の訴訟に参加するよう命じた。本裁判所の判決は次の通りとなっている。

主文
訴願決定及び原処分は共に取り消す。
被告は登録第811244号「阿松007」商標廃止の処分を下すべきである。
訴訟費用は被告が負担する。

一 事実要約
参加人は1996年9月13日に「007阿松」商標として、当時商標法施行細則第49条に定められた製品及び役務分類表第14類の「時計、腕時計、キャラクター腕時計、ネックレス時計、指輪時計、ブローチ時計、掛時計製品」への使用を指定し、被告(本来の名称は経済部中央標準局で、その後1999年1月26日に経済部知的財産局と名称を変更)に対して登録を出願し、被告の審査を経て、第811244号登録商標(以下係争商標と称する)として許可された。その後原告は係争商標の登録が商標法第57条第1項第2号に規定されている正当な事由なくして不使用又は使用の停止が引き続き3年を経過したことを理由として、2007年1月25日にその登録の廃止を申請したが、被告が審査した結果、2009年9月30日に中台廃字第960024号商標廃止処分書で「申請不成立」の処分を下した。原告はそれに対し不服として、訴願を提起し、訴願決定によって棄却されたが、またも不服として、本裁判所に行政訴訟を提起した。本裁判所は本件訴訟の結果が参加人の権利又は利益に影響を与えることになると認めたので、行政訴訟法第42条第1項の規定に基づいて、職権によって参加人に対して、独立して本件被告の訴訟に参加することを命じる裁定を下した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告声明:
訴願決定及び原処分は共に取り消す。
又、被告は登録第1228532号「007手でピストルの形状をかたどった図形」商標の取消処分を下すべきである。
(二)被告声明:
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は原告が負担する。

三 本件の争点
係争登録商標「阿松007」には商標法第57条第1項第2号に規定された事情があるか否か?
(一)原告が主張した理由:略する。判決理由の説明を参照。
(二)被告が主張した理由:略する。判決理由の説明を参照。

四 判決理由の要約
(一) 「商標が登録された後、正当な事由なくして不使用又は使用の停止が引き続き3年を経過した場合、商標主務官庁は職権又は請求によりその登録を廃止(取消)しなければならない。」ことは商標法第57条第1項第2号に明文で規定されている。又、この法律で商標の使用とは、販売を目的として、商標を製品、役務又はその関連物に用い、又は平面図形、デジタル映像音声、電子媒体又はそのほかの媒体に利用され、関連する消費者に商標として認識されるに足りることをいう。商標権者がその使用の事実を証明するときは、商標上の取引慣習に合致するものではければならないこと等も、商標法第6条、第59条第3項により明文で規定されている。よって、商標権者はテレビCM又はそのほかの方式で製品又は役務を販売するとき、販売を目的として、それ等の製品または役務の商標を関係消費者に認識させ、且つ商業上の取引慣習に合致しなければならないことを先に併せて明確に叙述する。
(二) 参加人が新聞広告を掲載した内容及び方式について、係争商標と登録番号、使用が指定された製品及び社名を記載し、「代理業者の加盟募集中」という字句を注記した。
1.(当該広告が人に与えた印象は、単純に登録が許可された各商標及び使用が指定された製品は何なのかを述べただけで、業者が消費者の注意又は購入したい欲望を起こさせるため、商標及び特定の製品外観又は特徴などを写真又は文字を新聞に掲載し、当該製品を販売するという一般の商標上の取引慣習とはあきらかに差別がある。
2.もし事前に何の販売準備の行為がなく、その後も実際の販売行為がなく、ただ登録商標を新聞広告に掲載し、「代理業者募集中」という文字を加えただけでも商標の使用と認定できるのであれば、販売の目的でない新聞に商標及び代理業者募集広告の掲載も商標の使用行為と認定できると異なることがなく、商標の使用は販売を目的にしなければならないことに合致していないことは明らかで、関係消費者を当該製品又は役務を表彰する商標として認識させたり、商標上の取引慣習に符合したりした要件を満たさない。参加人が新聞に掲載した目的は販売だったので、事前に販売準備の行為又は事後に実際の販売行為があって始めて一般の商業上取引慣習に符合することになり、さもなければ販売を目的としない広告を掲載した行為とは区別できなくなる。本件参加人は代理業者との代理契約の締結前後、何れの工場に製造を依頼したのか、どう代理業者に出荷したのか、毎月の出荷量はどの位だったのか、代理業者毎月の実際販売量はどの位だったのか、などについて、全て具体的に説明していず、挙証もしなかったので、上記の新聞広告だけでは、参加人が係争商標の製品を販売した事実があるとは認め難い。
(三) 参加人は代理契約を提出したが、係争商標を使用したことを証明する実際販売の証拠を一切提出しなかった。
1.参加人ははやくも2004年2月20日に訴外人楊国秋と代理契約を締結し、2006年5月1日まで、次々と陳敏得、許順和、黄建源、黄明德と代理契約を締結し、2004年2月20日に代理契約を締結した日から2007年1 月25日に原告が被告に対して、廃止を申請した日まで(知的財産局ファイル第13頁を参照)、代理期間が前後3 年近くにもなり、もし参加人は確かに販売の目的のために係争商標を腕時計などの製品に使用した行為があり、代理業者と形式上の代理契約を締結しただけではなかったのであれば、係争商標の製品の実際販売証拠が提出できない筈がない。よって、参加人は代理業者の係争商標の製品を販売した証拠を提出することができなかったので、代理契約だけでは参加人が係争商標を使用した事実があることを認定し難い。
2.又、上記代理契約の締結期日は遅くても2006年5月1日で、参加人が代理業者募集の広告を掲載したのは早くても2006年6月24日だったので、上記代理業者が全て参加人が新聞広告を掲載する前に参加人と契約を締結しており、参加人が広告を掲載して始めて代理契約を締結したのではないことは明らかである。参加人は代理業者がかつて係争商標製品を販売したことを証明する実際の販売証拠が提出できなく、且つ新聞広告掲載の内容が係争商標の製品の販売と無関係だったので、その後の新聞に代理業者募集の広告を掲載したことによって、参加人が代理契約締結の期間内に係争商標を製品に使用した事実があったことは認定できない。
(四) 參加人は係争商標の使用を証明するために、「阿松007」商標の年度紀念腕時計引換券のDM 1枚、現場写真6枚及び実物2点を証拠として提出したが(知的財産局ファイル第60-63、110、134頁を参照)、上記DMに「当社出品の紅灰白灰は共に商標タグが付されており、愛好者の権利を保障致します。タグを集めて当社発行の年度記念腕時計と引き換えできる」などが記載されている。広告宣伝の目的は製品販売にあり、一般的な商業慣習によると、広告と同時又はその後まもなく製品の販売があってはじめて広告の実益を収めるものであるが、参加人が提出した上記D及び写真が全て確かに係争商標製品を販売したことがあるとの証明ができないばかりか、その実物は単なる景品に過ぎないことを証明するだけで、それに檳榔売店のなかに置かれており、一般的な商業取引慣習に合致しないので、上記DMは係争商標の使用に指定された製品の広告ではないことは明らかである。本件参加人は実物を2点提出したが、上記実物2点が2007年1月25日以前にすでに製作完成し、販売されていたことは、製造販売又は仕入れ販売などの証明書類を提出することができ、挙証に何らの困難もない筈なのに、参加者は挙証して証明しなかったので、その提出した2点の実物は原告が廃止を申請する前に既に製造完成し、販売されていたとは認め難く、それに参加人は原告が無効審判提起した後に提出した2点の実物によって、参加人は原告が廃止を申請する前に既に係争商標を使用して、係争実物を販売したことがあったとは認め難い。
(五) 景品とする物は、直接販売してはならないとは言え、景品が市場に出現したので直接販売したことがあると推定することはできない。ところが、参加人は写真に示す通りの檳榔売店で販売した係争腕時計の実物を証拠として提出しなかったし、他人と計5件もの代理契約を締結したし、もし参加人には確かに係争腕時計の実物を販売した行為があるとしたら、取引常識から考えると、代理業者が係争腕時計の実物の販売業績は檳榔売店の業績よりよい筈なので、檳榔売店に置かれた腕時計の実物を代理業者の販売に提供すれば常識に合うのではないか。よって、参加人は檳榔売店で係争腕時計の実物を販売した証拠も、代理業者の係争腕時計の実物を販売した証拠も提出できず、参加人は写真に写された檳榔売店と代理業者とが係争腕時計実物を販売した証拠を提出することができなかったので、係争腕時計の実物が景品として市場に出現したことだけによって、既に市場で販売していたことを推定することができないわけである。
1.本件参加人は先に5件もの代理契約を締結したが、いかなる代理業者もかつて係争商標製品を販売した証拠を一つも提出できず、その後、新聞に代理業者募集の広告を掲載したが、その広告掲載の行為は代理業者が販売の実際証拠を提出できないからであり、新聞広告によって参加人に製品販売の目的があったと認定することは、明らかに常識に反することである。
2.参加人が新聞広告に掲載した内容には「双子星阿松007 阿松00700SEVEN」、「本商標品天下実業有限公司委任総代理業者」、「商標登録番号:811244」、「時計、腕時計、キャラクター腕時計、ネックレス時計、指輪時計、ブローチ時計、掛時計」などの文字、及び本件係争「007阿松」商標図形及びその登録番号第811244号が記載されているが、いかなる製品の写真及びカタログもなく、如何に係争商標製品を購入するかについての情報もなく、関係消費者に係争商標は一体何の製品若しくは何の役務を表彰するのかを認識させることにも足りなく、又、参加人と第三人の陳敏得とは2004年及び2006年に締結した代理契約の内容では、本件係争登録第811244号商標シリーズの各種の腕時計の代理業務に関することが記載されてはいるが、係争製品を販売した証拠を提出することができなかった。参加人は「阿松007 」商標の腕時計の実物を2点提出し、その会社の営業項目第6 項が「時計」売買の業務となっているが、原告が廃止を申請する前に係争腕時計が既に製造完了し、販売に供されたことが証明できず、そして参加人が提出した写真からでは、係争腕時計の実物は檳榔売店に置かれていたが、参加人が確かに時計売買業務を経営していた事情もあったとは認定できないので、それ等の資料を相互に証明しあっても参加人が主観上既に販売の目的があり、並びに代理の方式を通して係争商標製品を販売したとは認定し難い。
3.以上を総合すると、参加人は新聞広告、代理契約各5点、係争商標の年度記念腕時計引換キャンペンのDM 1枚、現場写真6枚及び実物2点などを証拠として提出したが、係争商標が廃止申請の前に既に行使されていたことが証明できず、且つ参加人がもし確かに係争商標を使用した製品を販売した事実があったのであれば、上記各証拠しか提出できず、いかなる実際の係争製品を販売した証拠が提出できない筈がないので、参加人が提出した上記の証拠は、係争商標を使用した事実を認定することに足りない。参加人は1996年9月13日に係争「阿松007」商標として登録を出願した後、被告により登録が許可されたが、その時から2007年1月25日に原告が係争商標の廃止を申請した時まで、参加人は商標を使用していた事実を証明することができないので、係争商標は商標法第57条第1 項第2 号の規定の「登録後正当な事由なくして不使用の事情」があったので、被告が廃止処分を下すのが当然である。被告上記の抗弁はなお採用できない。
(六)よって、被告は係争商標登録が商標法第57条第1 項第2 号の規定に違反していず、原告の廃止申請に対する申立不成立の処分は法律上適当ではない。訴願決定でそれを指摘せずに、その処分を維持したのも妥当ではない。原告が訴願決定及び原処分を取消すこと、被告が参加人が登録した第811244号「阿松007 」商標の廃止処分を下すべきことの請求には理由があるので、許可すべきである。

以上の論結に基づき、本件原告の訴えには理由があると認めるので、知的財産案件審理法第1条、行政訴訟法第98条第1 項前段の規定により、主文の如く判決する。

2010年11月25日
知的財産裁判所第一法廷
審判長裁判官  李得灶
裁判官 林欣蓉
裁判官 汪漢卿

五 関連条文抜粋
商標法第57条第1項第2号
商標登録後に次に掲げる事情の一に該当するものは、商標主務官庁が職権又は請求によりその登録を廃止(取消)しなければならない。
二、正当な事由なくして不使用又は使用の停止が引き続き3年を経過したもの。但し、使用権者が使用しているときは、この限りでない。
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