知的財産裁判所、Apple Line商標を取消

2014-05-14 2011年

■ 判決分類:商標

I 知的財産裁判所、Apple Line商標を取消

■ ハイライト

知的財産裁判所はAppleという文字を用いて出願した商標が「類似」にあたり、消費者の誤認混同を招くおそれがあるとして、米アップル社(中国語名:美商蘋果公司、英語名:Apple Inc.)に勝訴を言い渡し、知的財産局に対して台湾の山宝伝播有限公司(以下、「山宝伝播」)が登録していた「Apple Line」商標の登録を取り消すよう命じた。【知的財産裁判所行政判決-99行商訴145-1000127】
高雄市の山宝伝播は2007年知的財産局に対して「Apple Line及び図」商標を出願し登録を許可された。アップル社によると、知的財産局が登録を許可した山宝伝播の商標はアップル社の「Apple蘋果」、「Apple Press」等の商標と同一又は類似がみられ、商標法の規定に反しており、消費者の誤認混同を招くおそれがあるため、知的財産局に「異議」申立を行っていた。
知的財産局は、山宝伝播の商標に用いられているリンゴの図形は音符の図形を組み合わせた特殊なデザインであり、リンゴの一部が欠けているアップル社の商標のデザインとは区別することができ、さらにそれぞれ外国語の「Line」と「Press」があるため一般消費者の誤認混同を招くことはないと判断していた。
知的財産裁判所の判断は知的財産局とは全く異なり、判決書においてAppleの後に続く「Line」と「Press」の差異は両商標の最も重要な識別部分ではなく、Appleとリンゴの図形全体の印象が類似していることを打ち消せるものではない、としている。
また同裁判所の裁判官によると、アップル社のAppleは世界的な著名商標であり、Apple商標の知名度が世界的に高まった後に山宝伝播が類似した商標を登録して使用したことは、「他商標の知名度を利用しようとした」疑いがないとはいえない。

II 判決内容の要約

■ 基礎データ

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】99,行商訴,145
【裁判期日】2011年1月27日
【裁判事由】商標の異議申立

原   告 米国企業・アップル(Apple Inc.)
被   告 経済部知的財産局
参 加 人 山宝伝播有限公司

以上の当事者間での商標異議申立事件をめぐり、原告は経済部による2010年6月4日経訴字第09906057480号訴願決定を不服として行政訴訟を提起し、本裁判所(知的財産裁判所)は参加人に対して本件訴訟に独立参加することを命じた。本裁判所は以下のように判決を下すものである。

主 文
訴願決定及び原処分を取り消すものとする。
被告は登録番号第1330810号「Apple Line及び図」商標異議申立案件について本判決の法律見解に基づき別途処分するものとする。
原告のその他の訴えを棄却する。
訴訟費用は被告が負担するものとする。

一 事実要約
参加人である山宝伝播有限公司(以下、「山宝伝播」)は2007年11月23日に「Apple Line及び図」商標(以下、係争商標、図1に示す通り)を商標法施行細則第13条に定める改正前の商品及び役務区分表第18類の「札入れ、バッグ、財布、バックパック、ナップザック、旅行バッグ、ハンドバッグ、買い物バッグ、買い物カート、アタッシュケース、スーツケース、キーケース、化粧ポーチ、傘、皮革、合成皮革、牛革、ペット用衣類、動物用カバー」の商品での使用を指定し、被告で原処分機関である経済部知的財産局に登録を出願し、被告の審査を経て登録番号第1330810号商標として登録された。その後原告は当該商標が商標法第23条第1 項第12号、第13号及び第14号の規定に違反しているとして、「APPLE 」、「蘋果」、「APPLE 蘋果」、「APPLE LOGO」等の商標(以下、引用諸商標)を以て異議を申し立てた。被告は審査した結果、当該商標には前述規定の違反がないと認定し、2010年2月25日に中台異字第980021号商標異議決定書を以て「異議申立不成立」の処分を下した。原告はこれを不服として行政訴願を提起したが、経済部は2010年6月4日経訴字第09906057480号訴願決定でこれを棄却した。原告はさらに不服とし、本裁判所(知的財産裁判所)に対して行政訴訟を提起した。本裁判所は本件の判決結果が参加人の権利又は法律上の利益に影響を及ぼすと判断し、職権を以って参加人に対して本件訴訟に独立参加することを命じた。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告:
訴願決定及び原処分を取り消すことを請求する。
被告は登録番号第01330810号「Apple Line及び図」商標異議申立事件に関して異議申立成立とし登録取消処分を下すことを請求する。
(二)被告:
原告の請求を棄却することを請求する。
訴訟費用は原告が負担することを請求する。

三 本件の争点
係争商標が引用諸商標と同一又は類似を構成するか否か。係争商標の登録には商標法第23条第1項第12号、第13号、第14号の登録できない事項があるか否か。
(一)原告主張の理由:略。判決理由の説明を参照。
(二)被告答弁の理由:略。判決理由の説明を参照。

四 判決理由の要約
(一) 商標法第23条第1項第12号、第13号及第14号各号規定の適用は、もとより両商標の同一又は類似を以てその要件とする。しかしながら商標の類似の判断には規範する目的の価値判断が含まれる。商標法が規範する目的は消費者を保護するとともに、取引の秩序を維持することにあるため、故に商標の類似の判断は消費者の混同を招くかどうかを最高原則として行うべきであり、単に両商標の図案を機械的に対比するものではない。さらに商標の類似は誤認混同を招くおそれがきわめて高くても、絶対の必然ではない。その他の重要な因子が存在することで誤認混同のおそれがない可能性もある。一方、商標は類似していなければ誤認混同の可能性はない。このため商標が類似していないと判断する場合、両商標の差が顕著であることが前提である。誤認混同のおそれを生じさせるその他の関連因子が最大の程度に達していても(例えば商品が完全に同じである、先行商標が高い識別性をそなえ且つ関連する消費者が熟知している、先行権利者が多角経営を行っている、係争商標の出願者に悪意が見られる等)、誤認混同が明らかに発生しえない場合のみは商標が類似していないという結論を出すことができるが、そうでない場合は両商標が類似していると認定すべきである。
(二) 調べたところ、係争商標は外国語の文字「Apple Line」とリンゴの図案を組み合わせたもので、原告の引用諸商標は「APPLE」、「APPLE LOGO」、「蘋果」、「APPLE 蘋果」等の商標である。兩者を比較すると、係争商標のリンゴの図には音符の図が組み合わされているが、引用諸商標は一部欠けたリンゴのデザインである。さらに両商標は外国語の「Line」と中国語の「蘋果」という文字の違いもある。しかし両商標の図案はいずれも「APPLE」、「蘋果」の文字とリンゴの図があり、これらは同じく自然界でよく見かけられる果物「リンゴ」を指し、この部分の概念が同一である。且つ係争商標の「Apple Line」と引用諸商標の「APPLE」はいずれも外国語の文字の構図で、その外観と構図の意匠は類似に属している。普通の知識経験を有する消費者が購買時に普通の注意を施し、時間と場所を異にして隔離的に観察し、同一又はシリーズの商標であると容易に連想させ、誤認混同を招くおそれがあるため、前述の説明に基づいて類似の商標だと認定すべきである。
(三) 且つ本件の状況をみると、原告の引用諸商標「APPLE」、「蘋果」、「APPLE LOGO」、「APPLE 蘋果」は世界的に著名な商標であり、リンゴは自然界に存在する果物ではあるが、長期にわたって慣用され、当該商標の識別性は強化され、一般大衆に認知されている。他人が少しでもその知名度を利用すれば、消費者の誤認混同を招く可能性がある。引用諸商標の著名度はすでに被告が中台異字第G00900567号等多くの商標異議決定書を以て認定している。ここでは原告が提出した前述決定書を参酌するに値し(本裁判所ファイル45~56頁参照)、引用諸商標の識別性が高いことは十分にうかがい知ることができる。引用諸商標はすでに原告が長期且つ広く使用して著名商標の水準に達しており、これも被告が是認するところであり、つまり引用諸商標が消費者に対して与える商業上の印象は深い。たとえ両商標の間にはリンゴの図と音符の図の組み合わせもの、又は一部欠けたリンゴの図、及び異なる外国語「Line」がある等の違いはあるが、引用諸商標の印象が深いため、消費者が係争商標に接する際に混同する可能性が全くないとはいえない。
(四) 況してや係争商標は商品及び役務区分表第18類の「札入れ、バッグ、財布、バックパック、ナップザック、旅行バッグ、ハンドバッグ、買い物バッグ、買い物カート、アタッシュケース、スーツケース、キーケース、化粧ポーチ、傘、皮革、合成皮革、牛革、ペット用衣類、動物用カバー」商品での使用を指定しており、引用諸商標の指定商品であるバッグ、ハンドバック等とは同一又は類似に属する。一般的な社会通念及び市場の取引状況に基づき、一般の商品及びサービスの消費者に同一又は関連する出所だと誤認させ易く、即ち誤認混同のおそれがあると判断するのに必要な商標の類似度は下がる。参加人は係争商標が札入れやバッグ等の日用品を指定商品とし、引用諸商標は著名なコンピュータ、コンピュータのハードウェア又はソフトウェア、コンピュータ周辺機器又は民生電子領域の関連商品を指定商品としていることを以て、両指定商品に類似の関係はないと判断しているが、これを採用することはできない。
(五) さらに著名商標はその著名度や多角経営の程度の違いによって、保護される範囲も異なる。もし当該著名商標が長期にわたって特定の商品と役務にのみ使用され、且つ特定の市場又は特定の消費者層だけに著名性がある、つまり関連する消費者のみが熟知している場合、その保護範囲は当該特定の商品と役務に限られる。それに対して、著名商標の商標権者の多角経営の程度が高いか、又は当該商標が一般大衆に熟知されている場合、その保護範囲は同一又は類似の商品又は役務に限らず、関連性の低い商品又は役務にも及ぶ。調べたところ、本件の参加人が所有する係争商標の指定商品は原告の引用諸商標の指定商品又は役務と一部異なるが、全く重複しないものではない。引用諸商標の指定商品はコンピュータ関連商品以外に、その周辺の非コンピュータ関連商品についても枚挙にいとまがない。言い換えると、原告は引用諸商標でその商品と役務を長年にわたり多角経営しており、その経営形態も実体の商店とは限らず、消費者の生活に深く広く入り込んでおり、参加人が比較できるものではない。引用諸商標は著名商標であり、その保護範囲はその指定商品に限らず、係争商標の指定商品は引用諸商標の指定商品とは一部の商品の種類が重複している。
(六) また係争商標と引用諸商標は類似を構成しているものの、具体的な状況における混同誤認のおそれの有無と前述各号の登録を許可すべきではない事由の有無については、被告が原告と参考人の主張と証拠を斟酌するのを待たなければならない。ゆえに本件の事実証拠は明確ではない。被告が本裁判所の上記法律見解に基づいて再度審査を行うよう差し戻す必要がある。原告が被告に係争商標の登録取消を求める部分については、被告が本判決の法律見解に基づいて別途審査するのを待つ必要があるため、本裁判所は直接判断することができない。原告はこの部分の請求については理由がないため棄却するものとする。
(七) 双方のその他の攻撃防御方法はともに本件の判決結果に影響をもたらさないため、逐一論述せず、ここに併せて説明しておく。

以上の論結に基づき、本件原告の請求は一部に理由があり、一部には理由がない。行政訴訟法第104条、第200条第4号、民事訴訟法第79条に基づいて、主文の通り判決を下すものである。

 

添付図1(係爭商標の図案)
商標登録番号:第1330810号
商標権者:山宝伝播有限公司
出願日:2007年11月23日
商標名:「APPLE LINE及び図」
商品(役務)の区分及び名称:第18類の「札入れ、バッグ、財布、バックパック、ナップザック、旅行バッグ、ハンドバッグ、買い物バッグ、買い物カート、アタッシュケース、スーツケース、キーケース、化粧ポーチ、傘、皮革、合成皮革、牛革、ペット用衣類、動物用カバー」等。
商標権存続期間:2008年10月1日~2018年9月30日
1330810

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