トカゲに似ている? ヤモリ商標登録は妥当

2014-05-14 2011年

■ 判決分類:商標

I トカゲに似ている? ヤモリ商標登録は妥当

■ ハイライト
ヤモリとトカゲは区別がつかない?靴を製造する宋○○は経済部知的財産局に対してヤモリの図案を被服・靴の商標として登録するよう出願していたが、知的財産局は当該商標が仏アニエス・トゥルーヴレ(Agnes Trouble)氏の有名ブランド「agnes b.」のトカゲ商標に類似しているとして拒絶査定を行った。宋○○はこれを不服として行政訴訟を提起。裁判所は審理の結果、両動物が類似しているからといって宋○○の商標登録を拒絶するべきではないと判断し、知的財産局に対して再審査を行うことを命じた。
裁判官の合議体は判決の中で、例えばハトとキジバトの外観は似ているが、ハトのデザインの商標がすでに登録しているからといって、他人によるキジバトのデザインの商標登録を制限するのは厳しすぎると強調している。
アパレルブランド「agnes b.」は1975年パリで誕生し、世界には250ヵ所近い専門販売店がある。当該ブランドは自然とシンプルを強調し、熱狂的なファンが多い。ファーストレディーの周美青氏も「agnes b.」のバッグを持って公の場に現れたことがある。この商標行政訴訟におけるトカゲ商標は、実際に創設者が飼っていたペットで、その後当該ブランドのスポーツシリーズの商標となった。
靴メーカーを営む宋○○は2009年に頭が右側に向いているヤモリの図案の下部に英語名「GECKO STEP」を配置した商標の登録を知的財産局に出願し、自社で生産する靴のブランドとしようとした。ところが知的財産局は審査の末、当該商標が「agnes b.」の登録している3種類のトカゲの商標及び独サラマンデル社(Salamander GmbH)の商標に類似しているとして拒絶査定を行った。
宋○○は2010年末に裁判所に対して行政訴訟を提起し、「agnes b.」のトカゲ商標はいずれも頭が上に向いており、ドイツの商標もファイアサラマンダー(火のトカゲ)であり、宋○○が出願した頭が右、尾が左に向いているヤモリの図案とは全く異なると主張した。
知的財産局は、宋○○の商標の下部には英語のブランド名が配置されているが、両商標とも爬虫類の図案を使用しているため、外観が極めて類似している上、宋○○は被服・靴における使用を指定しており「agnes b.」と同一であるため、消費者が急いで買い物をした場合に誤認混同してしまうおそれがあると判断した。
これに対して裁判所は自然界における動物の外観は元来似ており、ヤモリ商標の下部には英語名称も配置されているため、知的財産局の拒絶査定を取り消し、知的財産局に差戻して再審査を行うよう命令する判決を下した。 (2011.03)

II 判決内容の要約

■基礎データ

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】99,行商訴,207
【裁判期日】2011年3月3日
【裁判事由】商標登録

原   告 宋○○
被   告 経済部知的財産局

以上の当事者間での商標登録事件を巡り、原告は経済部2010年8月26日経訴字第09906061730号訴願願決定を不服とし、行政訴訟を提起していた。当裁判所は以下のように判決を下すものである。

主 文
訴願決定及び原処分をいずれも取り消す。
被告は原告の098026877号「GECKO STEP」商標登録出願について、本判決の法的見解に基づき別途処分しなければならない。
原告のその他の訴えは棄却する。
訴訟費用は被告が二分の一を負担し、その他を原告が負担するものとする。

一 事実要約
原告2009年6月24日「GECKO STEP及び図」商標(以下、「係争商標」とする)を商標法施行細則第13条に定められている改正前の商品及び役務区分表第25類「履物、靴、ソール、継ぎ目革、婦人靴、紳士靴、ズック、スポーツシューズ、レジャーシューズ及び被服」商品での使用を指定して被告に登録を出願した。被告が審査を行った結果、登録出願された係争商標であるヤモリの図は拒絶の根拠となる註冊(登録)第713646号「Lizard device AGNESB.」商標、註冊第713648号「B.JEAN AGNESB. + lizard device」商標、註冊第931783号「LIZARD(device)」商標及び第36705号「SALAMANDER(火のトカゲの意)の文字及び図(WORD AND DEVICE SALAMANDER)」商標(以下「引用商標」とする)と類似を構成し、さらに係争商標の指定商品である履物、靴、被服等の商品は引用商標の指定商品であるブーツ、靴、紳士服、婦人服及び子供服等の商品と同一又は類似の商品に属し、消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるため、登録を認めるべきではないと判断し、2010年6月18日商標核駁(拒絶)第323844号査定書で拒絶の処分を下した。原告はこれを不服として行政訴願を提出したが、行政訴願担当機関が却下したため、原告はさらに不服として当裁判所(知的財産裁判所)に行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一) 原告の主張:1.被告の原処分及び経済部の訴願決定をいずれも取り消す。2.被告に対して原告の第098026877号商標出願への許可を命じる。
(二) 被告の主張:原告の訴えを棄却する。

三 本件の争点
係争商標「GECKO STEP及び図」には商標法第23条第1項第13号の規定が適用されるか否か。
(一) 原告の主張の理由:省略。判決理由を参照。
(二) 被告の答弁の理由:省略。判決理由を参照。

四 判決理由の要約
(一) 「同一又は類似の商品又は役務において他人の登録商標又は先行商標と同一又は類似のもので、関連する消費者に混同誤認を生じさせるおそれがある場合、商標を登録することができない」と商標法第23条第1項第13号に規定されている。誤認混同のおそれ有無の判断においては、商標識別力の強弱、商標の類似並びに商品/役務の類似等の関連要素の強弱程度、相互に影響しあう関係及び各要素等を参酌し総合的に関連する消費者に誤認混同を生じさせるか否かを認定するものである。
(二) 上記の引用商標を総合的にみると、すべて自然界でみられるトカゲの外観を写実したもので、付記された文字で区別できなければ、図案だけで観察することは困難である。原告が提出した添付書類十一にはすでに許可され、且つ爬虫類のデザインを有する商標が示されている。爬虫類の図案だけを識別の依拠とすると、確かに区別するのが困難であることを証明している。この事については、被告も行政訴訟答弁書の理由五において「引用商標は自然界でよくみられる爬虫類動物の容貌であり、識別力はやや低く…」等と自ら認めている。
(三) この種の類似の原因は、原告の係争商標が引用商標の中の関連する爬虫類動物と相互に盗用したことによるものではない。自然界においてトカゲとヤモリの外観、歩き方は高度に類似しているため、この種の類似した動物のデザインを以って商標の類似有無を判断する基準とするならば、不公平である。ここからわかるように、自然界でよくみられる動植物の外観を写実で表現して商標とする場合、その識別性は検討されるべきである。前述の通り、本件原告の係争商標は自然界でよくみかけるヤモリの図案をデザインの内容とし、英語「GECKO STEP」と表示している。一般消費者が係争商標をみた場合、全体を識別判断の依拠とする。さもなくば、原告が提出した添付文書十一に示されているすでに許可され且つ爬虫類のデザインを有する商標が、すべて爬虫類の図形を識別の依拠とするのであれば、どの商標が誰のものかを区別することは困難である。ゆえに被告も前述商標の登録を許可した際にはこのような考慮に基づいて行ったはずである。もしそうでなければ、前述商標にはすべて議論の余地が残ってしまう。このような状況において、係争商標に識別性があるか否か、引用商標と比べて、消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるか否かについては、探究する余地がないとはいえない。(被告がやはり係争商標には)関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるとするならば、原告が提出した前述の爬虫類の図にその他の図又は文字を付した商標が(係争商標出願の)前後に登録されていることから、理論に一貫性がなくなってしまう。
(四) 原告の係争商標には爬虫類の図案以外に「GECKO STEP」等の文字があり、引用商標と区別できるか否か、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるか否かを再度明確にする必要がある。況してや本件原告が使用する前述の「GECKO STEP」という文字は「ヤモリのステップ」を直訳したものであり、どこでも楽に行け、いかなる地形に適しているという意味を暗に含んでいる。靴類の商品での使用が指定されていることがいかなる意味も持たないとは言い難く、その他の爬虫類商標に比べてその意味は明らかである。被告が原告の係争商標に自然界でよくみられる爬虫類動物を使用し、引用商標と同じだというだけで、図案の構成が類似し指定商品が同一又は類似していることを理由に、関連する消費者に誤認混同させるおそれがあると判断することは、軽率であるおそれがあり、前述した多数の類似する商標とは立論が相反するものであるため、再び参酌する必要がある。
(五) 原告が登録出願した本件の商標が許可査定を受けるべきか否かは、被告が再びその他の法定要件を満たしているかどうかを審査して決定する必要がある。そこで行政訴訟法第200条第4項の規定に基づき、被告に対して当裁判所判決の法的見解に照らして原告の処分を決定するよう命じるものである。原告は被告に対する係争商標の許可査定命令を請求していたが、全面的に理由があるとはいえないため、原告の当該部分の請求を許可しがたく、棄却するものである。

五 関連条文抜粋
商標法第 23 条
商標が次の各号のいずれかの事情に該当する場合は、登録することができない。
1. 第 5 条の規定要件を満たさないもの。
2. 商品又は役務の形状、品質、用途又はその他の説明を表示するもの。
3. 指定する商品又は役務の慣用標章又は名称であるもの。
4. 商品又は包装の立体形状が、その機能を発揮するために必要であるもの。
5. 台湾の国旗、国章、国璽、軍旗、軍章、官印、勲章又は外国の国旗と同一又は類似のもの。
6. 国父(孫文)又は国家元首の肖像又は氏名と同一のもの。
7. 台湾の政府機関、又は展覧性を有する集会の標章又はこれらが授与する褒章と同一又は類似のもの。
8. 国際的に著名な組織又は台湾内外の著名な組織の名称、記章、徽章、標章と同一又は類似のもの。
9. CNS(国家標準)マーク又はこれと同じ性質を有する台湾内外の認証マークと同一又は類似のもの。
10. 公序良俗(公の秩序又は善良の風俗)を害するもの。
11. その商品又は役務の性質、品質又は産地について公衆に誤認、誤信させるおそれがあるもの。
12. 他人の著名な商標又は標章と同一又は類似のもので、関連する公衆に混同誤認を生じさせるおそれがあるもの、あるいは著名な商標又は標章の識別性又は信用・名声を損なうおそれがあるもの。但し、出願人が当該商標又は標章の所有者の同意を得て登録出願する場合は、この限りでない。
13. 同一又は類似の商品又は役務において他人の登録商標又は先行商標と同一又は類似のもので、関連する消費者に混同誤認を生じさせるおそれがあるもの。但し、当該登録商標又は先行商標の所有者の同意を得て出願する場合は、これら両者の商標及び指定商品又は指定役務が同一である場合を除き、この限りでない。
14. 同一又は類似の商品又は役務について他人の先使用にかかる商標と同一又は類似のものであって、出願人が当該他人との間に契約、地縁、業務上の取引又はその他の関係を有することにより、当該他人の商標の存在を知っている場合。但し、当該他人の同意を得て登録出願した場合は、この限りでない。
15. 他人の肖像又は著名な氏名、芸名、ペンネーム、別名を有するもの。但し、当該他人の同意を得て登録出願したものはこの限りでない。
16. 著名な法人、商号又はその他の団体の名称を有し、関連する公衆に混同誤認を生じさせるおそれのあるもの。
17. 商標が他人の著作権、特許権又はその他の権利を侵害し、判決によりそれが確定したもの。但し、当該他人の同意を得て登録出願した場合は、この限りでない。
18. 台湾又は台湾と商標の保護を相互に承認する国家又は地区に係る酒類の地理的表示と同一又は類似のもので、酒類商品への使用を指定するもの。
前項第 12 号、第14 号から第16 号及び第18 号に規定する情況は、出願時を基準とする。
第 1 項第7 号及び第8 号の規定は、政府機関又は関連機関が出願人であるとき、これを適用しない。
第 1 項第2 号に規定する情況を有する又は第5 条第2 項に規定する情況に該当しないものであっても、出願人の使用により取引上すでに当該出願人の商品又は役務を識別する標識となっている場合は、この規定を適用しない。
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