台湾BURBERRYが真正品を模倣品と鑑定ミス

2014-05-14 2011年

■ 判決分類:商標

I 台湾BURBERRYが真正品を模倣品と鑑定ミス
貿易業者が日本から輸入した真正品を、台湾BURBERRYが写真(税関撮影)鑑定で模倣品と判定し、貿易業者が賠償請求

■ ハイライト
貿易業者の蔡○○が日本から真正品のBURBERRYメンズショーツを輸入した。税関が模倣品ではないかと疑い、1点を抽出して写真を撮り、鑑定のため写真を台湾博柏利股份有限公司(BURBERRY台湾法人、以下「博柏利公司」)へ送った。同社の法務經理(部長に相当)である巫○○はそれらの貨物がすべて模倣品であるとの鑑定報告を提出したため、蔡○○は商標法違反で告訴された。
蔡○○は無実だと主張し続けたが、刑事訴訟、民事訴訟及び行政訴訟のすべてに敗訴し、第一審では拘留2ヵ月を言い渡された。第二審の裁判官が台北駐日経済文化代表処を通じて、BURBERRYブランド製品を製造している日本の「福助株式会社」へ鑑定のためサンプルを送ったところ、サンプルは真正品であり、博柏利公司の鑑定結果が誤りだったことが分かり、蔡○○に無罪が言い渡された。
容疑が晴れた後、蔡○○は博柏利公司と巫○○に対して200万新台湾ドル近い損害賠償を請求した。しかしながら台北地方裁判所は、税関が抽出したサンプルは1点のみであり、さらに巫○○は写真のみで鑑定しなければならなかったため、故意や過失はなかったと認めて、蔡○○による賠償請求を棄却する判決を下した。本件はさらに上訴することができる。

II 判決内容の要約

■基礎データ

台湾台北地方裁判所民事判決
【裁判番号】99,訴,5279
【裁判期日】2011年6月1日
【裁判事由】損害賠償等

原   告 智誠有限公司(Eassica Trading Co.,Ltd.)
被   告 巫○○
      台湾博柏利股份有限公司(Burberry Taiwan Co., Ltd.)

上列当事者間での損害賠償請求等の事件をめぐり、当裁判所は2011年5月11日に口頭弁論を終結し、以下のように判決を下すものである。

主 文
原告の請求と仮執行宣言の申立はいずれも棄却する。
訴訟費用は原告が負担する。

一 事実要約
原告は2006年9月26日に日本製の真正品であるBurberryメンズショーツ計261点(以下、「係争貨物」)を輸入した。財政部基隆関税局(以下「基隆関税局」)の検査官、即ち訴外人である史○○が検査したところ係争貨物に模倣品の疑いがあると認め、サンプルを抽出し、(その写真を)商標権者である被告・台湾博柏利股份有限公司(以下「博柏利公司」)に送った。博柏利公司の法務経理である被告・巫○○が提出した鑑定報告(以下「旧鑑定報告」)には、係争貨物がすべて模倣品であるとの見解が示されていたため、基隆関税局はこれに基づき原告が商標法に違反したと判断し、原告に対して過料と係争貨物の没収という処分を下した。原告の法定代理人である蔡○○(訳注:智誠有限公司董事長)は商標法違反により台湾基隆地方裁判所(以下「基隆地裁」)へ書類送検され、検察署で取り調べを受けた。その後、基隆地裁は2008年度基簡字573号刑事簡易判決を以て、蔡○○を商標法第82条違反で有罪に処した。蔡○○はこれを不服として上訴し、上訴手続において旧鑑定報告に誤りがあると主張して、Burberry商標権者が該ブランド製品生産を許諾している日本企業・福助株式会社へ係争貨物を送り鑑定することを請求した。基隆地裁は蔡○○の同席の下、被告・巫○○による係争貨物を開封、検査、サンプリングを行い、台湾高等裁判所(以下「高裁」)へ提出し、外交部に台北駐日経済文化代表処を通じて福助株式会社での鑑定を行うよう委託した。福助株式会社は2009年(平成21年)1月21日に報告書(以下「新鑑定報告」)を作成し、係争貨物が真正品であるとの見解を示した。基隆地裁は新鑑定報告の結果に基づき、被告・巫○○が作成した旧鑑定報告に誤りがあったと認定し、2008年度簡上字第78号刑事判決を改め、蔡○○の無罪確定判決を下した。
その後原告は損害賠償請求の訴訟を提起し、以下のように主張した。被告・巫○○は模倣品の鑑識能力を持ちながら、旧鑑定報告において係争貨物が模倣品だと明確に断定し、福助株式会社の新鑑定報告とは全く異なる判断を示しており、被告・巫○○は故意に不実な内容の旧鑑定報告を提出した。たとえ被告・巫○○が故意ではなく係争貨物すべてを模倣品であると指摘したとしても、専門知識を以て係争貨物が模倣品ではないことに注意を払わなかったため、過失があったと認められるべきであり、被告・巫○○はすでに権利侵害行為の要件を構成している。
原告は被告・巫○○が故意または過失により旧鑑定報告を提出したことにより182万4470元の損害【計算式:財産的損害32万4470新台湾ドル+非財産的損害150万新台湾ドル=182万4470新台湾ドル】を受けたため、被告・巫○○に賠償を請求するものである。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求:
1.被告は連帯で原告に182万4470新台湾ドル、並びに起訴状副本の送達翌日(つまり2010年9月18日)から年利5%で計算した利息を支払うべきである。
2.原告は担保の提供を請求するため、仮執行宣言の申立を行う。
(二)被告の請求:
1.原告の請求と仮執行申立を棄却する。
2.不利益な判決を受けた場合、被告は担保を供するので、仮執行の免除を請求する。

三 本件の争点
原告が民法第184条第1項及び第188条第1項の規定に基づき、被告に対して182万4470新台湾ドルの損害賠償を請求したことに理由が有るか否か?

四 判決理由の要約
(一)被告・巫○○が係争貨物を模倣品であるとする旧鑑定報告を提出したことは、故意又は過失により原告の財産権と名誉権を侵害したか否か?
1.基隆関税局が被告・巫○○に提供した係争貨物の写真を調べたところ、洗濯ラベルには騎士のロゴマークが印刷され、「Burberrys」という商標の文字がみられたものの、Burberry社の下着を製造した福助株式会社の社名と電話番号がなかった。被告・巫○○は基隆関税局が提供した係争貨物サンプルの写真を入手した後、2006年10月3日午前11時9分頃、電子メールで日本支社の知的財産法務担当者であるJunkoに識別を依頼した。2006年10月3日午後5時5分頃Junkoから、福助株式会社に確認したところ(真正品の)洗濯ラベルには騎士のロゴマークが印刷されず、「Burberrys」の文字も記載されていないため(係争貨物は)模倣品であるとの連絡を受けたため、被告・巫○○は2006年10月23日に旧鑑定報告を提出し、係争貨物の標示、商品の包装方法が正確ではなく、商品全体の品質が劣ることを理由に、係争貨物は模倣品であるの見解を示した。
2.また、基隆税関局進口組(輸入組)験貨課(貨物検査課)の担当者である史○○は基隆地裁検察署2009年度偵字第2551号案件において「(なぜ1点だけサンプリングしたのかとの問いに対して)輸入の量が少なく価格が高い場合は、原則的に多くても1点を鑑定に回す」、「(なぜ実物を鑑定に回さず、写真のみにしたのかとの問いに対して)写真だけではなく、鑑定には彼らに直接現場に来て再度認定してもらっている」と証言している。この証言から被告・巫○○が鑑定した資料は基隆関税局が係争貨物から多くても1点のみ抽出したサンプルの写真で、すべての係争貨物を鑑定しておらず、実物の鑑定でもないことが知りえる。
3.さらに、被告・巫○○は2006年10月3日に基隆関税局が提供した係争貨物サンプルの写真を入手した後、当日電子メールで日本支社の知的財産法務担当者であるJunkoに識別への協力を依頼しており、該サンプルについて、(真正品の)洗濯ラベルには騎士のロゴマークが印刷されず、「Burberrys」の文字も記載されていないはずなので(係争貨物が)模倣品であることが福助株式会社によって確認されたと、2006年10月3日にJunkoから連絡を受けている。すでに上述した通り、被告・巫○○は日本支社に対して検証した後、日本支社から返信された意見と自らの専門知識に基づいて基隆税関局より提供されたサンプルの写真を識別し、商品標示と包装方法が正確ではないこと、商品全体の質が劣ることを理由に係争貨物は模倣品であると認定しており、商標権者としての検証義務を果たしているため、故意又は過失により原告の権利を侵害した状況はみられない。
4.況してや被告・巫○○は2007年10月9日に基隆関税局の要求に応えて、再び鑑定説明を提出した際、鑑定説明において福助株式会社の鑑定意見に基づき「メンズベーシックシリーズ」を模倣したものだと認定している。ゆえに、被告・巫○○は福助株式会社の鑑定意見に基づき、且つ明確に判断の依拠を示したうえで、旧鑑定報告において係争貨物が模倣品であると認定しており、被告・巫○○に故意又は過失により原告の権利を侵害した状況はみられないと認定すべきである。
5.被告・巫○○は、基隆関税局が係争貨物から多くても1点抽出したサンプルの写真を基隆関税局から受け取った際、すぐに写真を日本支社に送り識別を委託しており、福助株式会社により模倣品であることが確認されたとする返信を日本支社から受け取った後、自らの専門知識で判断し、係争貨物が模倣品であると認定する旧鑑定報告を提出した。被告・巫○○が鑑定報告を提出した際、すでに検証義務を十分に果たしており、故意又は過失により原告の権利を侵害した状況はみられないと認めるべきである。

(二)以上をまとめると、被告・巫○○は旧鑑定報告を提出する際に、その検証義務を十分に果たしているため、旧鑑定報告において係争貨物が模倣品であると認定したことは、故意又は過失により原告の権利を侵害したものではない。

2011年6月1日
民事第二法廷 裁判長  張松鈞
裁判官  黄呈熹
裁判官  羅郁婷

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