他人の商標登録出願日より前に類似の該商標の図案を同一の商品に使用し、使用許諾を得た場合、商標権の効力に拘束されない

2014-05-14 2011年

■ 判決分類:商標

I 他人の商標登録出願日より前に類似の該商標の図案を同一の商品に使用し、使用許諾を得た場合、商標権の効力に拘束されない

II 判決内容の要約

■ 基礎データ

知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】99,民商訴,23
【裁判期日】2011年7月21日
【裁判事由】商標使用許諾契約事件

原告  亞周服飾有限公司(Asia Chou Clothes Co., Ltd.)
被告  青韋國際有限公司(Goodwsky International Co., Ltd.)

上記当事者間での商標使用許諾契約事件をめぐり、本裁判所は2011年6月29日に口頭弁論を終結し、以下のように判決を下すものである。

主文
原告の請求及び仮執行宣言申立はいずれも棄却する。
訴訟費用は原告が負担するものとする。

一 事実要約
被告は元来、登録第01116045号の「eDUCK」商標(以下、「係争商標一」)及び登録第01158804号のダック図案商標(以下、「係争商標二」)の商標権者であり、2004年9月27日に被告は係争商標一、二の使用を訴外人の陳秋方、劉美純に許諾し、その期間を2004年10月1日~2009年9月30日とした。その後被告は2008年4月11日に係争商標一、二の商標権をその他の16件の商標権とともに原告に移譲し、2008年7月31日に移譲登録を完了した。原告は現在、係争商標の商標権者である。
被告は2004年9月27日に使用許諾契約を締結し、係争商標一、二の使用を訴外人の陳秋方、劉美純に許諾すると同時に、非公式に訴外人2人に対して起訴状添付図3の商標の使用に同意した。添付図3の商標は係争商標一と文字、呼称が同じであり、添付図3のダックの図案部分については、全体の構図、頭の向き、胸と尾の部分のいずれも係争商標二と極めて類似しており、消費者が誤認混同するに足る類似の商標を構成している。被告は2008年4月11日係争商標一、二の商標権を原告に移譲した際に、訴外人の陳秋方、劉美純に対して類似している添付図3の商標の使用に同意している事実を原告に告知していなかった。
原告は被告の行為が明らかに原告との契約の約定に違反しているとして、被告に損害賠償を請求した。

二 両方当事者の請求内容
(一) 原告の請求:被告は原告に3,073,615新台湾ドル、並びに起訴状副本の送達翌日から賠償金支払完了日まで年5%での割合による利息を支払うべきである。並びに担保を提供するので、仮執行宣言を申し立てる。
(二) 被告の請求:1.原告の請求を棄却すべきである。2.もし不利な判決を受けた場合、被告は担保を提供するので仮執行免除を申し立てる。

三 本件の争点
被告は訴外人の陳秋方、劉美純に対して係争の二商標を「シャツ、Tシャツ(襟有り、襟無し)、ジャケット、セーター、ズボン等の紳士カジュアル衣料品」の商品に使用することを許諾した他、訴外人の陳秋方、劉美純に対して添付図3の図案の使用に同意したことは、商標法第61条第1、2項、第63条第1項第2号及び民法第227条の規定に違反するのか否か。

四 判決理由の要約
(一) 商標法第30条第1項第3号に「以下に掲げる事情は、他人の商標権の効力に拘束されない。三.他人の商標登録出願日より前に、善意で同一又は類似の商標を同一又は類似の商品又は役務に使用するもの。但し、元来使用していた商品及び役務に限られる。商標権者は適当な識別標示を付記するよう要求することができる」と規定されている。
1.調べたところ、添付図3の図案はかつて訴外人の馬立華が商標登録を出願し、2001年7月1日に登録査定・公告されていることが書類に記録されている。訴外人の陳秋方、劉美純は当時馬立華から使用許諾を受け、2000年から添付図3に示される図案を使用してきた。その後、馬立華の商標登録が被告から異議が申し立てられ登録が取り消された。2004年7月16日に公告され、訴外人の陳秋方、劉美純は2004年9月27日に係争の二商標に関して被告と使用許諾契約を締結した。被告は訴外人の陳秋方、劉美純に対して係争の二商標を「シャツ、Tシャツ(襟有り、襟無し)、ジャケット、セーター、ズボン等の紳士カジュアル衣料品」の商品に使用することを許諾した他、訴外人の陳秋方、劉美純に対して添付図3の図案を継続して使用することに同意した。
2.調べたところ、係争の二商標は被告からそれぞれ2002年3月25日、2004年10月15日に出願され、2004年8月16日、2005年6月16日に登録が公告された。商標法第27条第1項の規定に基づき、被告は各該登録公告日から商標権を取得したことになる。訴外人の陳秋方、劉美純は2000年(係争の二商標の登録出願日以前)すでに係争の二商標に類似した添付図3の図案を同一商品上に使用し、使用期間中には訴外人の馬立華から使用許諾を受けていた。彼(女)らは被告が後日係争の二商標を登録することを予知できなかったため、善意の使用に属する。
(二) 1.訴外人の陳秋方、劉美純は被告が係争商標一、二の登録を出願する以前に添付図3の商標を使用していたことは、すでに前述した。さらに被告は双方が前記の商標移譲契約書に調印するまでは係争の二商標の商標権者であり、訴外人の陳秋方、劉美純に対して添付図3の図案を継続して使用することに同意していた。また訴外人の陳秋方、劉美純とともに共同で被告が自己の商標権を侵害したとは認めがたく、原告が商標法第61条第1、2項、第63条第1項第2号に基づいて被告に損害賠償を請求することは、採用できない。
2.被告はすでに契約に記載されている商標のすべてを原告に移譲しており、被告に前記契約の違反、又は不完全の給付があったとは認めがたく、原告が前記契約書第4条及び民法第227條第1項に基づいて被告に損害賠償を請求することにも理由がない。
3.訴訟費用の負担は民事訴訟法第78条に基づく。

2011年7月21日
知的財産裁判所第三法廷
裁判官  林育幟

係争商標一
登録第01116045号
係争商標二
登録第01158804号 
添付図3
登録第00963635号 
01116045 01158804 00963635

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