スカウト章とは類似せず、知的財産局は商標「ChromeHearts」の再審査へ

2014-05-14 2011年

■ 判決分類:商標

I スカウト章とは類似せず、知的財産局は商標「ChromeHearts」の再審査へ

■ ハイライト
米シルバーアクセサリーブランド、Chrome Heartsの日本支社であるクロムハーツジャパン有限会社(Chrome Hearts Japan, Ltd.、以下「クロムハーツ」)は2008年に知的財産局に対して「BS FLEUR」の商標登録を出願したが、同局は商標がスカウト章に似ていることを理由に拒絶査定を出した。クロムハーツは訴願を提出したものの棄却されたため、行政訴訟を提起していた。知的財産裁判所はスカウト章がスカウトの製品にのみ使用され、一般消費者もこれを熟知していないため、混同には至ることはないと判断し、知的財産局に再審査を行うよう命じた。
クロムハーツのブランドは1989年に創設され、シルバーアクセサリー、メガネ、衣料品等の同ブランド商品が生産されている。コレクターは国内外の芸能人、デザイナー、セレブに及び、さらには張柏芝(セシリア・チャン)との愛情問題を報道されている香港スター、謝霆鋒(ニコラス・ツェー)も愛用者の1人だ。
クロムハーツの主張によると、ブランドのデザインコンセプトは「ゴージャス、パンク」であり、平らな三本の線に炎のようなカーブを組み合わせてデザインしている。花びらのデザインで、外枠がスカウトのロープ状を呈しているスカウト章とは全く異なる。クロムハーツの商品は高級品で、購入者のほとんどが十分な財力を持つ成人であるのに対して、スカウトの商品は学齢期の児童や青少年であるため、消費者グループが異なり、誤認されることはない。
知的財産局は、スカウト商標は識別度が高く且つ独創性が高い商標であり、クロムハーツが登録したい指定商品区分「財布、衣服帽子、ベスト」等も類似しているため、消費者は混同しやすいと判断。同局はさらに、スカウト章は十年前以上に登録され、一般大衆の印象に残っているため、両者の違いを区別することは難しいと主張した。
しかしながら裁判官は調査の結果、クロムハーツの図案の両側には独特な炎の模様があるが、スカウト章にある星と丸いロープの輪がなく、いくつかの違いがあることをみつけた。中華民国童軍総会(英語名:The General Association of the Scouts of China、旧称は中国童子軍総会)はスカウトの製品のみを販売しており、双方の消費グループが異なり商標が混同されることはないため、知的財産局に拒絶査定の原処分を取り消すとともに、再審査を行うよう命じる判決を下した。【2011-08-08/聯合報/B1版/新北市基隆・運動】

II 判決内容の要約

■ 基礎データ

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】100,行商訴,27
【裁判期日】2011年7月28日
【裁判事由】商標登録

原      告 日商‧可洛米哈特斯日本公司(Chrome Hearts Japan, Ltd.)
被      告 経済部知的財産局

以上の当事者間での商標登録事件をめぐり、原告は経済部2010年12月30日経訴字第09906046340号訴願決定を不服とし、行政訴訟を提起していた。本裁判所は以下のように判決を下すものである。

主 文
訴願決定及び原処分をいずれも取り消す。
被告は原告の000000000号「BS FLEUR」商標登録出願について、本判決の法的見解に基づき別途処分しなければならない。
原告のその他の訴えは棄却する。
訴訟費用は被告が二分の一を負担し、その他を原告が負担するものとする。

一 事実要約
原告は2010年5月12日「BS FLEUR」商標を商品区分表第18類「皮革バッグ、ハンドバッグ、ショルダーバッグ、ブリーフケース、バッグパック、サイドバッグ、ナップザック、札入れ、旅行バッグ、スーツケース、傘」及び第25類「紳士婦人服、シャツ、Tシャツ、セーター、スウェットシャツ、スポーツパンツ、ベスト、カウボーイ衣装、パンツ、皮革パンツ、ジャケット、コート、帽子、シューズ・ブーツ、ソックス、服飾用ベルト、スカート、ワンピース、アンダーウェア」商品での使用を指定して出願した。被告によって申請(出願)第099880066号商標及び申請第099880067号商標(以下、「係争商標」)と番号を付けられた。被告が審査を行った結果、係争商標は拒絶の根拠となる註冊(登録)第960963号、第961468号「中国童子軍総会標章」商標(以下、引用商標)と類似を構成しており、また両者の指定商品も類似度が高いため、商標法第23条第1項第13号規定が適用され、2010年9月24日商標核駁(拒絶)第0326382号査定書で「拒絶すべきである」との処分が下された。原告はこれを不服とし行政訴願を提出したが、経済部が2010年12月30日に経訴字第09906046340号訴願決定書で却下したため、本裁判所(知的財産裁判所)に行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一) 原告の主張:1.被告の原処分及び経済部の訴願決定をいずれも取り消す。2.被告に対して係争の第00000000号商標出願への許可を命じるよう請求する。3.訴訟費用は被告が負担する。
(二) 被告の主張:1.原告の訴えを棄却する。2.訴訟費用を原告が負担する。

三 本件の争点
本件の争点は商標法第23条第1項第13号の規定を如何に適用するかという問題にある。
(一) 原告の主張の理由:省略。判決理由を参照。
(二) 被告の答弁の理由:省略。判決理由を参照。

四 判決理由の要約
(一) 商標法第23条第1項第13条には「商標が次に掲げる情況の一に該当する場合は、登録を受けることができない。十三.同一又は類似の商品又は役務における他人の登録商標又は先願商標と同一又は類似であり、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある場合」と明記されている。誤認混同のおそれの有無を判断する際に、以下の関連要因を参考すべきである。(1)商標識別性の強弱、(2)商標の類似の有無とその類似の程度、(3)商品/役務の類似の有無とその類似の程度、(4) 先行商標権者の多角経営の情況、(5)実際の誤認混同の事件、(6)関連消費者の各商標に対する熟知度、(7)係争商標出願人の善意の有無、(8)その他誤認混同等の関連要因の強弱、相互影響の関係及び各要因等を総合的に鑑みて、関連消費者に誤認混同を生じさせるおそれの有無を判断する。
(二) 商標の類似とは、もし両商標が同じ又は類似した商品又は役務に使用された場合、通常の知識経験を有する消費者が購買時に普通の注意を施し、両商品又は役務が同一の出所からのシリーズ商品/役務であると誤認するか、又は両商標の使用者の間に関連企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在すると誤認させることを指す。商標に類似があるかどうかは、通常の知識経験を持つ消費者の角度から観察すべきであるが、商品の性質によって、消費者の注意力も異なり、商標類似の有無の判断基準も異なる。先願商標が表彰する出所が著名な公益団体であり、先願商標の使用商品の関連消費者が通常の社会的観念に基づいて該公益団体の設立目的、主旨又は該団体がそなえる人格的属性との連結(例えば、該団体の活動に参加したことがある場合、又は該団体が一定の資格を与えたことがある場合)に共感するならば、先願商標の商品の関連消費者はより高い注意力をそなえ、該商標とその他の商標との類似の有無に対する判断は一般商品の消費者よりも注意深くなる。たとえ後願商標の図案が先願商標の図案と外観、観念、呼称において高度に類似していても、消費者は両商標の商品を同一の出所を持つ、又は両者に関連性があると誤認しないはずである。調べたところ、1.引用商標は世界スカウト機構(World Organization of the Scout Movement)が創設した「世界スカウト章」であり、スカウトの身分を表彰するのに用いられ、各国のスカウト組織に対して使用を許諾されている。またスカウト運動は1908年に始まり、1922年にNational Scout Associationが設立され、現在は世界216ヵ国にスカウト組織があり、2800 万人の青少年と成人がスカウト活動に参加している。3年に一度の世界スカウト会議、4年に一度の世界スカウトジャンボリー及び世界スカウトムートが開催され、国際的に著名な組織だといえる。我が国では1934年に「中国童子軍総会」が設立され、1937年に中国童子軍総会は世界スカウト機構に加盟し、現在に至っている(訳注:2009年に中華民国童軍総会に改名)。中華民国童軍総会会則第1条に「中華民国童軍総会(以下、「本会」)は人民団体法に基づいて設立された非政治的、非営利の教育社会公益団体である」と規定されている。中華民国童軍総会のサイト資料及び会則は書類として添付されているため参照することができ、これから引用商標権者が我が国の著名な公益団体であることが判る。次に、中華民国童軍総会会則第22条には「中華民国スカウトの名称、制服、徽章、旗等はいずれも法に基づいて登録手続きを行い、中華民国スカウトのみの使用に限定しなければならない」と規定している。ここから引用商標のスカウト徽章はスカウトのみの使用に限られており、通常の社会的観念に基づき、引用商標商品を使用するのは該消費者がスカウトである、又は少なくともスカウト活動の主旨に共感する者であることが判る。2.さらに調べたところ、係争商標と引用商標はいずれも3枚の巻いた花びらの図形があるが、引用商標は主に3枚の花びら、五角星及び円形のロープの輪で構成されており、該図形の各組成部分とデザインには特殊な意味が含まれている。3枚の花びらは左から右にそれぞれ「service to others(他の人々をたすける)」、「duty to God(神に誠を尽くす)」、「obedience to the scout law(スカウトの規律を守る)」という3つの誓いを、左右の花びらの上にある五角星はそれぞれ「truth(真理)」と「knowledge(知識)」を、2つの五角星の10個の角はスカウトの10個の規律を、円形のロープの輪は団結と世界スカウト機構のファミリーをそれぞれ象徴している。また世界スカウト機構が制作・配布しているスカウト・ブランド・マニュアルによると、引用商標(即ち、世界スカウト章)の使用方法も厳格に規範されており、図案の任意な変更、分割、歪曲をしてはならない。例えば、世界スカウト章はロープの輪を分割したものは使用できず、ロープの輪を使用しない場合は3枚の花弁のみを使用する。その使用は縦横の比率や表示の角度にも一定の制限があり、任意に歪曲してはならない。引用商標商品の関連消費者はスカウト又は少なくともスカウト活動の主旨に共感する者であり、その消費者がスカウト徽章の商品を購入する注意力は、通常の日用品を購入する注意力とは異なる。さらにスカウト徽章が表彰する意味に対して一定の程度の理解と識別力を持ち、消費者がスカウト徽章商品の購入においてはより高い注意義務がなされているはずである。従って、両商標は外観上いずれも3枚の巻いた花びらの図案を呈しているが、係争商標の両側には炎の巻いた模様があり、且つ3枚の花弁の中に2つの五角星がなく、さらに円形のロープの輪もない。引用商標の「五角星」、「円形のロープの輪」等のデザイン要素はスカウト運動の観念において上述の特殊な意味を含んでおり、引用商標商品の消費者による注意力によって、商標類似の有無の基準は一般日用品の消費者よりも高く、引用商標とその他の商標の差異に対して識別力が高い。被告は引用商標商品の特殊性を考慮せず、該商品に関連する消費者の注意の程度と両商標図案の類似度を考慮して、両商標の総体的な外観が類似しているため、両商標が類似していると認定したが、これは妥当ではなく、両商標の類似度は低いはずである。
(三) 次に、係争商標は「皮革バッグ、ハンドバッグ、ハンドケース、ショルダーバッグ、ブリーフケース、バッグパック、サイドバッグ、ナップザック、札入れ、旅行バッグ、スーツケース、傘、」商品での使用を指定しており、引用商標(註冊第960963号商標)の指定商品「札入れ、皮革バッグ、バックパック、スクールバッグ、ウエストバッグ、ナップザック、ハンドバッグ、スーツケース、キャンプバッグ、ステッキ傘、ビーチパラソル、キャンプパラソル…」と比べると、両者はいずれも外出または屋外活動時に必要な携帯品の収納や遮光のための道具である。また係争商標の指定商品である「紳士婦人服、シャツ、Tシャツ、セーター、スウェットシャツ、スポーツパンツ、ベスト、カウボーイ衣装、パンツ、皮革パンツ、ジャケット、コート、帽子、シューズ・ブーツ、ソックス、服飾用ベルト、スカート、ワンピース、アンダーウェア」を引用商標(註冊第961468号商標)の指定商品「スウェットシャツ、ベスト、セーター、シャツ、Tシャツ、スーツ、スノーウェア、ヤングウェア、ダウンジャケット、レジャーウェア、エアロビクスウェア、不織布作業服、オーバー、ドレスシールド、レインコート、スポーツウェア、スカーフ、バンダナ、ネクタイ、リボン、麦わら帽子、夏用帽子、レインハット、キャップ、布製帽子、スポーツキャップ、日よけ帽子、カウボーイハット、ビーチキャップ、ベレー帽、スカウトキャップ、グレンガリー帽、男女成人用学士帽、防寒用耳宛、スポーツソックス、登山用ソックス、サスペンダー」と比べると、両者はいずれも人類の着用に対する需要を満足する商品であり、係争商標と引用商標の指定商品はその機能が同じ又は類似しており、類似商品に属する。
(四) 商標の識別性の強弱については、引用商標がよく見かける図形ではなく、そのデザインの各要素には上述の特殊な意味を含み、創意ある商標に属し、より高い先天的識別性を有する。係争商標には巻いた3枚の巻いた花びらの図案以外に、両側には巻いた炎の模様があり、これもよく見かける図形ではなく、より高い先天的識別性を有する。引用商標は2000年に出願され、2001年9月に登録されてから現在まで維持されている。引用商標権者が我が国で実際に使用しているスカウト章は引用商標を変更したもので、国章、「智仁勇」及び「日々善行」の結び目等のデザイン要素を加えており、引用商標とは異なる。また、被告は引用商標がすでに我が国で長期的に販売・使用されていることを示す証拠を提出しておらず、引用商標の国内における後天的識別性は高くなく、関連消費者が引用商標を熟知しているので大きな範囲の保護を行うべきであるとは認めがたい。引用商標権者は非営利団体であり、長期的にスカウト関連商品を販売しているだけで、その他の業界には進出していない状況から、多角経営は行われておらず、その保護範囲も縮減すべきである。
(五) 係争商標の図案と引用商標の図案の類似度が低く、係争商標の指定商品と引用商品の指定商品の類似度が高いものの、両商標の先天的識別性が高いこと、さらに関連消費者は引用商標に対して熟知しておらず、引用商標権者も多角経営を行っておらず、その保護範囲は縮減されるべきであること等の情況を斟酌した結果、関連する消費者に両商標の使用者の間に関連企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在すると誤認させるとは認めがたく、誤認混同のおそれはない。

以上をまとめると、被告が最初に掲げた規定に基づいて登録を拒絶すべきとする処分は法にそぐわない。訴願決定を維持することも適法ではない。原告が原処分と訴願決定をともに取り消すよう請求することは法にそぐわないところがなく、認めるべきである。但し、原告の本件商標に登録査定を出すべきかどうかは、被告がその他の法定要件に違反がないかを審査して決定すべきであり、行政訴訟法第200条第4号の規定により、被告に対し本判決の法的見解に基づいて原告に対する処分を決定するよう命じる。即ち、被告に対して係争商標の登録査定処分を行うよう命じる請求は、すべてに理由があるとはいえず、原告の該部分の請求は許可しがたいため棄却する。

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